古賀志山
5月は多忙と週末の天気の不調が続いて、山歩きの間隔が空いた。ようやく仕事が一段落ついたので、この週末はひと月振りに山歩きに出かけることにする。そろそろ高山にも登りたい季節だが、予報では天気がイマイチな感じなので軽く低山を歩くことにし、古賀志山の南面を周回して、滝や岩壁を眺めてきました。
桐生を車で出発。東北道を鹿沼ICで降り、古賀志山南麓の南駐車場に向かう。南駐車場(現地の標識は南登山道駐車場)は山間に三段に分かれて計40台程のスペースがある。簡易WCあり。既に8時を過ぎているが、まだ5台程しか駐車がなくて空いている。外に出ると空気は冷たいが良く晴れていて、すぐに暑くなりそうだ。Tシャツ1枚で歩き出す。
南駐車場から車道を上ると、すぐに斜め右へ杉林に分け入る山道があり、これを辿る。道端に大きな石碑や石鳥居があるから、古からの参道だろう。左手には並行して車道が通じている。林間にはコアジサイの群落が瑞々しい葉っぱを繁らせ、薄紫の花が見頃で、なかなか良い雰囲気。久し振りの山歩きはやはり気分が良いなあ。ゆるゆると登る。
林道古賀志線を横断すると、傾斜は緩いが木の階段が整備された堀割状の道を一直線に登る。Y字の分岐があり、左に沢沿いの道を分けて、右の階段道を進む。やがて行く手に杉木立を透かして岩壁が見えてくる。右に御嶽山への登山道を分け、左の沢沿いの道を上がる。注連縄と「奉納瀧大権現御…」と刻まれて苔むした石柱を過ぎ、岩壁の基部に着く。
谷間の広場を囲むように岩壁が聳え、半洞窟の中、覆屋の屋根の下に大きな朱塗りの社が祀られている。これが瀧神社だ。左脇のオーバーハングした岩壁の上から、細々と水が落ちている。水量はないが高く威圧的で、見応えがある。左方の岩壁ではロッククライミング中。広場ではちょいワル系二人組おやじさんが休憩中で、彼らもクライマーのようだ。瀧神社の説明板によると、天仁元(1108)年に日光山瀧尾権現を勧請したのが始まり(諸説あり)で、明治の神仏分離令で瀧大権現から瀧神社に改められた、とのことである。
瀧神社から右手へ、ゴツゴツした岩壁を見上げつつ御嶽山に向かう。杉林に覆われた水流のない谷間に入り、転石を踏んで坂道を登る。小さくジグザグを切って登って行くと、左手に再び岩壁が現れる。岩壁の基部に沿って踏み跡を登ると、小岩窟に「記念 中興開山米山治平翁之碑」の石碑が建つ。側面には「明治四十三(1910)年三月發見 大正六年一月宇都宮三寶講建立」の銘がある。ここがアルマヤ堂らしい(少し先に標識がある)。アルマヤと言えば、木曽御嶽山に登った際、そんな名前のピークを踏んだことがある。
アルマヤ堂からひと登りで、御嶽山〜古賀志山の縦走路の巻道に合流する。まずは縦走路を左(西)へ、御嶽山に向かう。小さな岩場を鉄梯子で越えると、数組のハイカーさんが憩う御嶽山の頂上に着く。
御嶽山に登るのは3年振り3回目。前回は馬蹄形コースを歩いて、とても楽しめた。ここからの展望も印象に残っている。季節柄、遠方は靄っていて、日光連山は雲の中だ。西には赤岩山へ主稜線が続き、その向こうに二股山やかまど倉、羽賀場山の山影が認められる。
北には馬蹄形コース北辺の鳥屋山、その向こうには笹目倉山〜鶏鳴山の山塊が眺められる。目を右に転じると、御嶽山と古賀志山の中間から北に派生した急峻な岩稜を、ヘルメットを着用したソロハイカーさんがフリーで登攀中なのが見える。凄い所を登っているなあ(後日調べると子マラ尾根というらしい)。その向こうにもいくつか小岩稜があり、班根石山の西にも岩稜がある。興味が湧く。
少し休憩したのち、古賀志山に向かう。巻道ではなく、稜線上の縦走路を進むと、鎖を手摺にした岩場のトラバースがある。ま、大したことはない。岩場を抜けると右に南登山道を分ける。この分岐の道標には南登山道の他、猪落(ししおとし)や古賀志山大神〜対面岩のコースの案内があり、興味を惹かれる。
樹林に覆われたなだらかな稜線を辿ると古賀志山の頂上に着く。展望は乏しく、南麓の一部が見えるだけだが、たくさんベンチがあって休憩適地。外国の方のグループも含めて大勢のハイカーさんが休憩中。まだ10時と早いが昼食休憩にする。ベンチに腰掛けてお湯を沸かし、カップヌードル味噌を食べる。陽射しが強く、5月末とは思えない暑さになってきた(この日の鹿沼の最高気温は26.6℃)。
昼食後、サクッと下山にかかる。縦走路を少し戻って、南登山道を下り始める。急斜面に階段道がジグザグに付けられて、良く整備されている。
途中、登山道の真ん中に大岩が鎮座ましましている。これは事前に調べたネット情報(古賀志山を守ろう会のお知らせ)によると2018年12月に発生した落石で、このGW中にも同じ場所で落石があったらしい。このすぐ先で年配の方のグループがのんびり休憩中😨…
さらに下ると広大な伐採跡地の斜面に出て、山麓の展望が開ける。歩く予定の古賀志林道も俯瞰できるが、単調で暑そう。道標があり、右へ岩下道が分岐する。その名の通り、南面の岩壁を間近に仰ぎながら伐採地をトラバースする道で、こっちの方が面白そうだ。
予定から変更して岩下道に入る。小尾根を回ると猪落の岩壁が聳える。樹林が伐採されてまるっと眺められ、なかなか素晴らしい。
猪落の岩壁の下を回ると、右のルンゼへ登る踏み跡が分岐する。分岐から少し登ってみると鎖が設置されている。これが対面岩コースらしい。トラバース道に戻って進む。見上げる岩壁の上が古賀志山大神のピークだろうか。振り返ると、猪落の岩峰が聳り立つ。低山の岩場なのでスケールは小さいが、実に険しくて侮れない。
岩壁が眺められるトラバース道の区間は短く、程なく杉林に入る。しかし、面白かったな。猪落と対面岩コースは機会を作って歩きたい。杉林に覆われた山腹を巻いて行くと、木立を透かして男瀧周辺の岩壁が見えてくる。瀧神社には立ち寄らず、沢沿いの道を下る。途中、水場がある。暑くて喉が渇いてきたところだったで、丁度良い所にあった。
さらに下ると車道終点の広場に出る。ここも駐車可能かな。車はない。ここには古賀志神社、御嶽山神社、湯殿山神社の3基の新しいめの石祠が合祀されている。傍に「古賀志温泉(鉱泉)」の説明板がある。それによると石祠の裏手が温泉跡で、鉄分の多い鉱泉を引き、明治の一時期、二階建ての湯屋で営業していた、とのこと。
後は車道をのんびり下って、南駐車場に戻る。駐車場の車は増えていたが、まだまだ余裕がある。3時間ちょっとのごく短い山歩きで、午後もそこそこ天気が保ちそうだからもう少し歩けたかもだが、変化に富んだコースで結構満足したから、良しとしよう。早い時間帯でガラガラの鹿沼♨華ゆらりに日帰り入浴で立ち寄ったのち、桐生への帰途についた。