荒海山
帝釈山地の荒海山は以前から登りたかった山だ。桐生から結構遠い山なので、行くならば同じく日本三百名山で近くにある七ヶ岳も合わせて登りたいと考えていた。この週末の3連休は、予報によると前半の天気が良さそう。これは好機到来🤩という訳で、連休初日に荒海山、2日目に七ヶ岳に登る計画を立てて、出かけてきました。
桐生を早朝、車で出発。R122、日光市街を経由し、R121(会津西街道)を北上。山王峠の前後は紅葉が真っ盛りで、車窓から観賞する。会津に入ってR352を走り、阿賀野川源流の荒海川を渡って左折。釣り堀を過ぎ、荒海川の明るく開けた谷の奥へ向かって未舗装の林道を突き進む。やがて、左手に新しい建物(赤倉中和処理場)が現れると、その先の広い路肩が八総鉱山跡の登山駐車場だ。「荒海山登山駐車場 登山口まで400m」の標識もある。既に駐車が4台あり、先行ハイカーさんが居られるようだ。
ヒンヤリと冷たい空気の中、熊鈴を付けて出発。林道を奥へ進むと谷がV字に狭まって陽射しが遮られ、寒々として少し陰鬱な雰囲気となる。傍らには荒海川が滔々と流れ、ところどころの淵を覗き込むと澄み切った水を満々と湛えて、見るからに冷たそう。
コンクリ橋で左岸に渡ると「←荒海山登山道コース 尾根まで1時間10分」との道標がある。以降、道標が要所毎に設置されていて、迷う心配はない。すぐ先に登山ポストがあり、ここが荒海山登山口らしい。いつものように登山届はコンパスで提出済なので、通過。
登山口からは崩壊・流失した林道跡を辿る。ところどころにコンクリ構造物の残骸を残す他は、大部分が自然に還って山道と化している。渓流を数回渡り返すと、板チョコを割ったように路盤が崩壊した区間に着く。出水の威力は凄まじい。傾いて濡れた路盤は滑り易く、注意して通過。手摺としてロープも張られている。
この先で、早くも下山して来たソロハイカーさんに出会う。今日はこのあと、七ヶ岳に登られるそうだ。凄い(後日調べるとYAMAPにレポがあった)。谷が開け、広い河原を渡って左岸の枝沢に入る。少し登った地点より、本流の谷の奥に聳える荒海山を仰ぐ。谷底から一気に立ち上がる峻険な山容を見せ、迫力十分。素晴らしい。
やがて、大量の土石が谷を埋めてできた斜面が現れ、その上にジグザグに付けられた道型を登る。この土石の量は凄い。振り返ると本流の谷を隔てて対岸の尾根が眺められる。快晴の空の下、赤や黄の斑らの紅葉が陽射しを浴びて、晩秋の山らしい良い雰囲気だ。
土石の堆積を越え、堰止湖跡を横断する。山崩れで押し出された土石が沢を塞いだようだ(後日調べると、2015年9月の関東・東北豪雨の水害によるものらしい。そのため、荒海山の登山道は一時閉鎖されたが、2021年5月に復旧したとのこと。知らなんだ😅)。
沢から離れ、山腹に取り付くと急登が始まる。この辺りの紅葉が一番綺麗だ。陽当たりも良くて見栄えがする。木の間を透かして荒海山の頂も眺められる。ところどころ古い固定ロープもある急坂をこなして、尾根上の鞍部に登り着く。
鞍部で少し休憩したのち、尾根道を登る。最初は丈の低い笹原が下生えの雑木林をゆるゆると登る。やがて黒木の樹林帯に入り、尾根の右手を絡む道となって、傾斜が増してくる。途中、岩場を交えた急坂があり、固定ロープの助けで攀じ登る。
樹林に覆われて展望のない尾根道が続く。前方の熊鈴の音に近づき、追い付いつくと年配のハイカーさんであった。同じタイミングで、下山してきたハイカーさんともすれ違う。尾根上を小さくアップダウン。木の間から荒海山の頂上稜線を仰ぐ。だいぶ高度を上げて来たが、まだまだ登りがある。
頂上稜線への急坂に取り付いて登ると、ほどなく大岩に突き当たる。大岩の右側を巻くと足元が切れ落ちた岩場のトラバースとなる。ここはネットの山行記録の写真でよく見た、ちょっとした難所だ。最初、僅かな距離だが、ロープのない下りがあり、下を見ると高度感があって緊張する。その先は手摺の固定ロープが張られ、問題なし。
なおも急登が続くが、樹林が低くなるとようやく傾斜が落ち着く。振り返ると、歩いてきた荒海川の谷と登ってきた尾根を俯瞰する。高度感が爽快。その向こうには、明日登る七ヶ岳がギザギザの稜線を連ねて眺められる。明日も楽しみ〜。
低木帯の稜線を緩く登ると、荒海山の頂上に飛び出る。頂上はほぼ360度の眺めが開けて、栃木と福島に跨る山岳展望が素晴らしい。ハイカーさんが一人休憩中。「大河の一滴ここより生る 阿賀野川水源之標」と刻まれた石碑が、台座から外れて脇に置かれている。
展望を楽しむ前に、腹が減ったので昼食にしよう。頂上は風はなく良く晴れて、黒いトレックパンツが陽射しを吸収して暑いくらいだ。お蔭で缶ビールが美味い(この日、桐生では夏日を観測)。それから、カップ麺を作って食べる。その間、ハイカーさんが入れ替わり、ソロハイカーさん2人が相次いで頂上に到着した。
腹が満ちたところで、じっくりと展望を楽しむ。頂上の南斜面は笹原で、黄葉に包まれた入山沢の谷間を俯瞰し、7月に登った芝草山が意外と近くに眺められる。遠くには高原山の連嶺を望む。目を右に転じれば、栃木県北西部の山並みが広がる。逆光で靄っているうえ、私にとってはまだ馴染みが薄い山域なので、どれがどの山か分かり難いが、持丸山や明神ヶ岳は登ったことがあるから同定できる。右奥の抜きん出て高い山群は日光連山だ。
西には南会津の山々が広がる。こちらも馴染みが薄い。中央の山塊は土倉山のようだ。立派な山容で、いつか登ってみたい。彼方には尾瀬から会津駒にかけて長々となだらかなスカイラインが横たわる。北面は阿賀野川源流の荒海川の谷を俯瞰し、七ヶ岳を望む。
東には荒海山の東峰(1580.5m三角点)が、こことほぼ同じ高さで見える、その向こうには男鹿山塊や那須連峰を遠望する。ハイカーさんが東峰を往復して戻って来たので、道の様子を伺うと踏み跡はあるが藪が酷いとのこと。まあ、折角の機会だから、三角点標石を拝みに私も行くとしますか。
カメラだけを持って空身で向かう。笹が深く、低木帯の枝が煩わしいが、微かな踏み跡が通じている。三角点標石を発見。その脇には「太郎山(荒海山)山頂 イクイが入ります」と書かれた山名標識が落ちている。イクイって何と思ったら、ケイタイの文字が掠れたらしい。やまの町桐生の「荒海山(太郎岳)」の記事によると、かつて南面の入山沢からこの峰に上がる登山道が切り開かれたそうだが、今も歩けるのだろうか。東峰は激藪に囲まれて、来た道以外に登山道らしきものは見当たらない。
頂上からのパノラマを堪能したのち、往路を戻って下山にかかる。下りは速くて楽だ。鞍部で一休みし、急坂を下り、最後に荒海山の頂上を振り返って、荒海川の本流に着く。
まだ15時だが晩秋の太陽は既に傾き始めて、日蔭の谷間はヒンヤリとした空気に包まれる。数台の車を残すのみでガランとした登山口駐車場に帰り着く。荒海山は、行程は6時間強でそう長くはないが山は険しく、なかなか登り応えがあった。天気にも恵まれ、見頃の紅葉と頂上からの大展望が楽しめて、大満足である。
この日は、会津山村道場・うさぎの森オートキャンプ場でテント泊。事前にフリーサイトを予約してある。管理棟で受付を済ませ、駐車場代と合わせて1400円を支払って、指定されたサイトにテントを張る。このテント(DUNLOP VS20)を使うのはようやく2回目。キャンプシーズン終了間際(11/5から冬期休業)だが、場内はテントでほぼ満杯。キャンプがブームとは、本当だったんだな〜。綺麗に整備されたキャンプ場で、居心地は良い。陽が暮れると冷え込むので、長袖シャツ&パンツを重ね着する。🥜をツマミに🥃を飲み、簡単にレトルトカレーで夕食を済ませると酔いが回り、直ぐに就寝した。
(七ヶ岳の山行記録に続く。)