入馬山〜源五郎山〜大猿山〜白髪岩
2月に小梨山〜亀穴峠を歩いたのが切っ掛けで、その西に続く稜線上の山々にも興味が湧いてきた。この稜線は藤岡市と甘楽町の境界で、鮎川と雄川(おがわ)の分水界を成し、熊倉山(896m)、カラカラ山(925m)、黒仁田山(938m)、入馬山(いりうまやま)(902m)、源五郎山(1185m)、大猿山(おおざるやま)(1332m)といったピークを起こして、甘楽・神流・下仁田の三町境界の羽毛山(はけやま)(1378m)に至る。
未踏のピークを順に登るならば、次はカラカラ山と黒仁田山がターゲットとなるが、ネット上の山行記録を読むとどうも地味な山のようだ。先に入馬山〜羽毛山を歩くことにし、昨年4月に重鎮さんが歩かれた山行記録を後追いさせて頂いて、出かけてきました。
桐生を早朝に車で出発。上信越道を富岡ICで降りて、県道富岡神流線を南下。城下町小幡を抜け、雄川に沿って山間に入る。最奥の集落のある那須地区は、雄川源流に立派な山容の稲含山を仰ぎ、斜面を耕して天に至る山村風景が素晴らしい(後日調べると、にほんの里100選に選ばれている)。
県道富岡神流線は、那須地区から小峠までの標高差270mを、狭隘な九十九折で登って行く。途中、那須地区を俯瞰して一望できるスポットがある。小峠に登りつくと、反対側は鮎川本流の河床まで標高差50mしかなく、著しく非対称で興味深い地形だ。
小峠から会場(かいしょ)橋に向かうが、災害復旧工事中のため通行止。明後日に開通と書いてある。手前の広い路側に車を置く。すぐ下の渓流沿いに釣り堀があり、大勢のお客さんで賑わっている。周囲の山々の新緑は標高が高い分、まだ淡く、今日は風も冷たい。
県道を歩いて小峠まで戻り、大山祇神社にお参りしたのち、少し引き返して、法面の切れ目から稜線に上がる。段々に切られた跡が残る斜面を上がり、植林と芽吹き始めた雑木林の境の稜線を登る。藪は全くなく、歩き易い。
途中に八木アンテナがあり、右手の樹林が切れて、雄川の谷間を俯瞰。斜面に広がる畑と集落を一望する。さらに植林帯を登ると、広く平坦な入馬山の頂上に着く。ここにもアンテナが乱雑に設置されている。三角点標石を、ちょっと探し回って、平地の北の端で見つける。地形図に山名は記載されていないが、基準点成果等閲覧サービスで点の記を読むと、点名が入馬山で読み仮名も分かる(源五郎山、羽毛山も同じく点名由来の山名だ)。
入馬山から緩く下ると、右から作業道が上がって来て終点となる。ここから尾根上の急登となる。樹林に覆われて展望はないが、時折、右手の木の間越しに稲含山を仰いだり、那須秋畑の集落を垣間見る。作業道を横断して、急登。広く平らな頂に着いて、ここが源五郎山かと騙されるが、一つ手前のピークであった。
さらに急登が続き、まだ冬枯れの雑木林を登る。傾斜が緩んで、ようやく源五郎山の三角点標石のある頂上に着く。入馬山から300m近い標高差があり、時間も1時間近くかかったから、なかなか立派な山だ。ただし、杉植林と雑木林に覆われて、展望はほとんどない。珍しく山名標識の類がなく、訪れる人が稀なことを物語る。
源五郎山から、雑木林の広くなだらかな稜線を下る。左にカーブすると、急激に落ち込んだ鞍部を隔てて1243m峰と対峙し、その右奥には(写真では分かり難いが)送電鉄塔が見える。なお、1243m峰の標高は『群馬300山』の「稲含山・大猿山」の記事による。
一直線に下って細尾根の鞍部に着く。右には稲含山が高い。鞍部から登り返すと、徐々に傾斜が強まる。振り返ると、植林に覆われた頂をもっこり擡げた源五郎山がもう目の高さだ。微かな踏み跡も消え、最後は崖に近い急斜面の登りとなり、昨年末に登った想台山の頂上直下の"壁"の登りを思い出す。あれを経験しているせいか肝はそう冷えないが、標高差はこっちが上だ。
崖を半ば強引に直上して、1243m峰の頂上に着く。頂上は細長く平坦。中低木に囲まれているが、所々から梢越しの眺めが得られ、雰囲気は明るい。蕾のアカヤシオがポツポツあり、咲き始めたものもある。
1243m峰から送電鉄塔まではアセビの混じる樹林を切り開いた道型があり、こちらを歩く人は多いようだ。緩く下って、雑木林の尾根を登ると、行く手に巨大な送電鉄塔が現れる。途中にはブナの巨木がある。送電鉄塔の基部には巡視路の黄色い案内標柱があり、左(南)を指している。今日は白髪岩まで往復して、帰りはそちらに下る予定だ。
送電鉄塔から雑木林を緩く登って、アセビに覆われたなだらかな稜線を辿る。途中に展望の良い岩場があり、北面の眺めが開ける。展望の中心には稲含山が大きく、右奥には妙義山のギザギザのスカイラインが見える。背景の上信越国境方面は白くボワッとした雲に覆われて、雪が降っているようだ。ここも強い北風が吹き付けて来て、かなり寒い。
展望岩場のすぐ先に黄色標柱があり、右(北)に送電線巡視路が分岐する。送電鉄塔からここまで巡視路の一部だった訳で、道理で道が良かった訳だ。植林と雑木林の境界を一直線に登ると、露岩が点在する大猿山の頂上に着く。
山頂には、新旧三つの山名標識が木立に架けられている。雑木林に覆われて、展望には恵まれないが、行く手の木立を透かして、白髪岩がだいぶ近づいて見える。地形図に記載されている頂上北の池は、水のない凹地になっている。平坦な頂上にも小さな凹凸があり、どうも地滑り地形ではないかと思う。手頃な岩に腰掛け、水を飲んでしばし休憩する。
大猿山からはなだらかな稜線歩きとなる。頂上の西には大岩があり、猿に見えなくもない、かな?明るい雑木林に覆われた稜線を小さくアップダウンする。ところどころで稜線上に地割れがあり、やはり地滑り地形のようだ。やがて丈の低い笹原が現れ、ゆるゆると登ると三角点標石と山名標識のある羽毛山の頂上に着く。
ここから白髪岩までは、稲含山からの往復で歩いたことがある。昔なので、記憶はあまり鮮明でないが、当時に比べると踏み跡がはっきりしているのは確かだ。山名標識の類も、昔は全くなかった。ブナやダケカンバが混じる雑木林の稜線を辿り、ポツンと飛び出た頂の物見山に登る。頂上は広く平坦で、山名標識がある。木の間越しに白髪岩が見える。だいぶ疲れてきたが、白髪岩まであと少しだから頑張ろー。
物見山からゆるゆる下り、鞍部の広い凹地は左から通過。稜線上の岩場を躱して右斜面の笹原の踏み跡を登り、左折して頂上に向かう。短い急坂を登って、白髪岩の頂上に着く。
白髪岩に登るのは9年ぶり4回目。原三角測点標石は健在だ。少し先に岩場があり、主に南面の展望が開ける。鮎川源流域を隔てて赤久縄山〜杖植(つえたて)峠辺りの御荷鉾山系主稜線が長々と横たわり、その奥には両神山や奥秩父の山並みを遠望し、さらに右には御座山を見出す。八ヶ岳も見えそうだが、その方向は雪雲の中だ。
相変わらず風が強くて寒いので、原三角測点付近の風下の樹林に入って風を避け、缶ビールと鯖味噌煮、カップ麺で昼食とする。
下山は送電鉄塔まで往路をそのまま戻る。羽毛山から稲含山に向かう場合には広く急な斜面の下りとなり、ルートが判然としない。一方、大猿山に向かっては笹原に明瞭な道型があり、こちらの方が歩く人が多いのかも知れない。
大猿山から送電鉄塔へ下り、黄色標柱から右(南)の斜面を下る。微かな踏み跡を少し下ると、落ち葉に埋もれたプラ階段が現れ、送電線巡視路を辿っていることが確認できる。
断続するプラ階段を辿って、沢に下って行く。杉林に入るとプラ階段が途切れるが、黄色標柱があり、流水のない沢の左岸に踏み跡が現れる。これを辿るとハイトスさんが騙されたという黄色標柱に下り着く。逆コースで登って来た場合、確かに↗︎が90度違う方向を指していて、黒マジックで修正されてはいるが気づきにくい😅
あとは杉林の中の作業道を降りる。沢を離れてジグザグに下り、鮎川本流沿いの未舗装の林道に下り着く。この地点にジムニーが1台駐車している。林道はさらに上流に向かっているが、どこまで延びているのかな。下流に向かうとすぐにゲートがあり、さらに黄色標柱があって巡視路入口を示している。最後に巡視路を外したようだ。
林道を辿ると再び黄色標柱があり、南に続く巡視路の入口がある。偵察しておこうと思って、鮎川を渡るところまで巡視路を辿ってみる。鮎川の流れは傾斜は緩く穏やかだが、巨岩のゴーロとなっている。
林道に戻って、先に進む。雨裂が深く荒れた林道で、普通車では通行は不可能だ。ただし、ジムニーならば通行できておかしくない。30分程の林道歩きで会場橋に着き、さらに県道を10分程歩いて駐車地点に戻る。県道が通行止になった箇所は路肩が崩壊して、ガードレールが落ちている。路面の補修は、もちろん完了済。
帰りは、甘楽ふるさと館で立ち寄り湯をしたのち、上信越道に乗る。コロナ禍に関係なく車が多く、通常の週末と変わらない気がする。GWはどうなることやら(その後、4都道府県で4/25〜5/11に緊急事態宣言が出されることになった)。
参考URL:山旅DIARYの「小峠~入馬山~源五郎山~大猿山~羽毛山~稲包山」の記事。4/18公開なので、時間的ニアミスでした。