稲含山〜白髪岩

天気:
メンバー:T
行程:鳥居峠 9:15 …稲含山(1370m) 9:50〜10:20 …白髪岩(1512m) 11:50〜12:40 …夫婦ケヤキ 13:55 …秋畑稲含神社 14:30 …鳥居峠 15:00

現存するものは三つしかないという原三角測点の標石の一つを目指して、稲含山(いなふくみやま)から微かな踏み跡を辿って白髪岩に往復して来ました。稲含山〜白髪岩間の稜線は疎らな雑木林と背の低いササで藪漕ぎはなく、快適に歩けました。ただし、登山道はなく、踏み跡も不明瞭なところが多いので、一般ルートではありません。今回は携行した eTrex Legend C-J が大活躍でした。

桐生を車で出発。甘楽町秋畑側から鳥居峠まで車で入る。荒船山方面がよく見えたが、遠くの浅間山は雪雲の中。風がとても冷たい。稲含山山頂までは急だがよく整備された道だ。稲含山に登るのはこれで2回目。前回、2002年元日に登ったときは初めての西上州の山だったので、見える山は知らない山ばかりだった。今回は既に登った馴染みの山が増えたのでよく判る。南には西御荷鉾山から赤久縄山、目指す白髪岩にかけての山並みが連なる。白髪岩付近の樹木には霧氷がついて白くなっている。どおりで寒いはずだ。

鳥居峠から仰ぐ稲含山
稲含山山頂から荒船山を遠望

白髪岩へは、山頂の「ごみ捨て禁止」という立て看板の左から踏み跡に入る。ここにはもう一つ看板があって「登山者へ。これより先、登山道未整備です。落石、滑落等事故防止のため入山はお断り致します。下仁田町栗山稲含神社」と書いてある。ちょっと躊躇したが、自己責任で歩くことにする(そもそも登山自体、自己責任で行うべき事柄である)。実際歩いてみると、危険なところはない(天狗岩〜烏帽子岳の稜線コースの方がよっぽど危険だった)が、下には一般登山道が通っているので、落石は絶対に起こさないように注意しなければならない。まぁ、お断りと書いてある所を歩くのは良くはないことなので、復路に歩いた稲含山山頂を巻くルートをお勧めします。

稲含山東峰付近から白髪岩
(中央右のピーク)
東峰付近から稲含山を振り返る

東峰を越え、林間のざれた急斜面を下ると、鞍部で左から巻き道を合わせる。鞍部からは最初は緩い登りで、一部スズタケが被って来る区間があるが踏み跡ははっきりしている。やがてササの種類が背の低いミヤコザサに変わって、なかなか快適な道になる。しかし、甘楽・神流・下仁田の三町境界となっているジャンクション・ピーク(JP)直下の登りは少し急で、踏み跡も判然としない。ササの中のそこはかとない踏み跡を辿って、尾根の右斜面(下仁田町側)を絡み気味に登るとピークを行き過ぎてしまったので、最後は半ば強引に斜面を登って(基本的にどこでも歩けてしまう)稜線に出る。JPの1377.5mの四等三角点は少し戻ったところの落ち葉の中にあった。

ジャンクション・ピーク
後方は1461m峰
1461m峰へササの尾根を登る

JPの先も矮小なササと疎らな雑木林が続く。白髪岩の一つ手前の1461m峰の山頂付近は落ち葉を踏んで歩く。1461m峰を越え、木の間に白髪岩を見ながら雑木林の緩くて広い尾根を下ると浅い皿のような凹地のある鞍部に着く。ここから白髪岩へ最後の登り。露岩のある急な尾根を避けて右側斜面を登り、右から回り込むようにして頂上に出た。

白髪岩山頂
背景の山は赤久縄山
原三角測点の標石

原三角測点の標石は細長い頂上の真ん中にある。普通の三角点の標石の形状が角柱なのに対して、この標石は台形になっていてどっしりとしている。側面には「原三角測點」「内務省地理局」「明治十五年十月」と彫り込まれている。日本の近代化黎明期の遺構が、このような山深い場所にひっそりと残っていることは感慨深い。

標石の傍らの木には「白髪」と書いた山名板が掲げられていて(岩の字は消えた訳ではなく、最初からなかった模様)、その向こうには赤久縄山が見えた。かつては稲含山から白髪岩を経て赤久縄山に登るロングコースが歩かれていたそうだ。

ちょっと寒いが缶ビールを飲んで、ラーメンの昼食とする。寒い割にはのんびり休憩して、頂上を辞す。帰りは往路を戻るが、ルートの様子がわかったので、JPの下りは踏み跡のない尾根上をまっすぐ下る。落ち葉とササの斜面を足任せに下るのは心地よい良い。

稲含山には登り返さず、手前の鞍部から右へ巻き道に入る。稲含山の急峻な東面を通る点が不安だったが、良い道で問題ない。杉林を通り抜けると、落ち葉がふかふかの自然林のトラバースになる。途中に夫婦(めおと)ケヤキという巨木がある。説明板によると推定樹齢500年、根元周囲約10mで、かんら銘木十選のひとつとのこと。

稲含山東面の巻き道
樹齢500年と言われる夫婦ケヤキ

夫婦ケヤキから少しで、道標のある三叉路に出る。まっすぐ行くと一ノ鳥居を経て神ノ池公園、左は神の水、二ノ鳥居を経て秋畑稲含神社である。鳥居峠に戻るにはまっすぐ行けば良いのだが、せっかくの機会なので秋畑稲含神社に立ち寄って行くことにする。

神ノ水は懸け樋から冷たい水がちろちろと流れている。ここから岩場を縫う急登で、寄り道したことをちょっと後悔し始める。二ノ鳥居をくぐり、さらに登ると杉の巨木に囲まれた秋畑稲含神社だ。神社の起源の説明板によると、530年頃に創建されたと記した1503年付の文書が山麓の那須に残されているそうで、とにかく古い。今日は人の気配がなくひっそりと静まりかえっているが、養蚕と五穀の守神として参詣を集め、5月3日には神楽が奉納されるそうだ。

ここまで登ると、さらに登って鳥居峠から稲含山への往路に合流した方が早い。ちょっと寄り道、の範囲を大きく超え、結局頂上直下まで登って、鳥居峠への道に合流。しかし、こちらのルートは神さびた雰囲気で見所も多くて良かった。稲含山に登るルートとして大変お勧め。

車を置いた鳥居峠へ戻り、帰りは下仁田側に下る。「かぶら健康センターかのさと」で冷えた身体を温めて(うーむ、極楽じゃ)帰桐した。

参考URL:『下仁田町最高峰「白髪岩(しらがいわ:1512m峰)」を訪ねる』を参考にさせて頂きました。