三日月山〜鳩の峰〜越床峠
成人の日を含む3連休は、2日目まで正月旅行のおでかけ記録の作成や締切仕事に費やして、最終日に近場で手軽な山歩きに出かけることにする。足利・佐野市境稜線の山王山〜鳩の峰の間は歩いたことがある(山行記録)が、その続きの鳩の峰〜越床(こしどこ)峠はまだ歩いていない。近くの足利百名山で未踏の三日月山と合わせて歩いてきました。
桐生を朝のんびりと車で出発。足利市街を通り抜け、樺崎八幡宮前の広くてガランとした駐車場に車を置く。今日は良く晴れ、風もなく穏やかな天気で、あまり寒くない。これから登る鳩の峰の西尾根と鳩の峰の頂が間近に眺められる。
小川を石橋で渡り、川に沿って上流に向かう。すぐに平屋の民家風の堂があり、軒先に「子育地蔵尊」「厄除薬師如来」の文字が掠れた額が掲げられている。ブリキの雨戸が閉じられて、中に座すであろう地蔵尊と薬師如来は拝めない。その代わりに堂の左脇に石碑、石像が建ち並び、中に彫りがくっきりして綺麗な青面金剛像が2体あり、目を引く。
一つ目の青面金剛は足元に天邪鬼を踏みつけ、その下に見猿🙈、聞か猿🙉、言わ猿🙊の三猿が大きく浮き彫りにされている。もう一つの青面金剛は少し小さい像で一面四臂、右手に法輪と羂索、左手に宝戟と大きな束のような物を持っているが、これは何だろう。
堂のすぐ東で、尾根の末端から取り付く。坂道を登ると、すぐに石祠がある。
明瞭な山道を辿ると、竹林を囲むフェンスに突き当たる。フェンスに沿って左に進むと、荒く積まれた石段と石垣の上に石祠がある。屋根の正面に「天王宮」、台座に「自入宮内迨」(どういう意味?)と「文化十三丙子(1816)年十一月吉日」の銘がある。
石祠の右を登ると再びフェンスに突き当たるが、親切にも「出入口」のプレートが架かり、フェンスをスライドして通過できる。出入口があるといっても、その先には道型はない。ヒイラギやヒサカキなどの常緑樹を交えた樹林に入り、低い小枝が少しうるさいが、幸い藪はない。近くを通る北関東道から微かに響く走行音を聞きながら、斜面を登る。
171m標高点の頂上は樹林中に小平地があるだけ。丈の低い笹が生える緩斜面を少し下り、登り返してザレ尾根の上に出る。尾根を左に辿り、小さな岩場を登るとその上が三日月山の頂上だ。足百№46三日月山の山名標識の他には何もなく、樹林に囲まれて展望もない。
頂上から少し戻って、鳩の峰への尾根を辿る。相変わらず樹林に覆われて展望はない。落ち葉を踏んで一旦下り、登り返す。右斜面から上がってきた山道に合流して尾根道を登ると、石祠と石碑のある雷電山の頂上に着く。
頂上は小広い平地で、樹林に囲まれているが、明るくて雰囲気は良い。木立を透かして樺崎八幡宮の辺りを見下ろすこともできる。「足利百名山125樺崎雷電山」の古い山名標識と、少し離れて「雷電山 224m S&H」の山名標識がある。石祠の塔身には「嘉永五壬子(1852)年六月吉日」「願主 渋井忠左ヱ門 同 八十次郎 世話人 辻 宮内 赤坂」とくっきり刻まれている。石碑の方は「一金百五拾円也」と刻まれた何ともシンプルかつストレートな金額碑。裏面には「表記之金額ハ東山林購入費ニ使用ス 大正拾四(1925)年六月一日 赤坂谷一同建之」とある(後日調べると、当時の150円は現在の約90万円に相当する)。
正午を過ぎて腹が減ったし、ここで昼食休憩にしよう。少し風があるので、最近、ユニクロで買ったウルトラライトダウンジャケットを着込んで腰を下ろし、DRY ZERO、鯖味噌煮と、ガソリンコンロで煮立てた鍋焼きうどんを食べる。このジャケットは、冬の低山歩きには丁度良い感じ。熱々のうどんを食べ、内側からも温まる。
なお、すっかり忘れていて、このあと気づいたが、足利市内では昨年4月1日から施行された条例により、山林の屋外での火の使用が禁止されている。以後、気をつけます🙇。
うどんを食べている間、男性ソロハイカーさんが登って来て、挨拶を交わしたあと、鳩の峰に向かって行った。昼食を終えて、私も鳩の峰に向かう。ゆるゆると登り、ヒサカキ林を抜けると、鳩の峰直下のハイキングコースに出る。この地点には、文字が掠れて読めないが、雷電山方面を指す古い道標もある。丁度、プードル連れの女性ソロハイカーさんが鳩の峰から来て、雷電山の方へ下って行った。雷電山は結構、登られているようである。
さらに寺久保に下る道を左へ分け、短い登りで鳩の峰の頂上に着く。ここは一昨年に登頂しているから、良く覚えている。前回、見ていなかった足百№16鳩の峰の山名標識も発見して、カメラに収める。
ここから越床峠へ向かい、初めて歩く縦走路に入る。最初の下りはザレた急坂で、手摺りに固定されたロープが頼りになる。一頻り急降下してようやく傾斜が緩む。足利の山らしい、露岩と赤松が多くて明るい尾根で、ところどころから右手に大岩山〜行道山の稜線や鳴神山稜を望み、微かに赤城山を遠望する。昼を過ぎて気温が上がり、益々良い陽気だ。
最低鞍部には東西に堀割状の峠道が通じ、興味を引かれる(ただし、東側の山麓はゴルフ場だから、通り抜けできない可能性がある)。露岩が点在する尾根道を辿り、小さなアップダウンを繰り返して、馬坂山の東の肩に登り着く。3方向を指す文字が掠れた道標があり、「樺崎八幡宮→」の道標に従って縦走路から右に分岐する道に入ると、すぐ先に三角点標石と「馬坂山255.6M」「足利百名山118馬坂山」の山名標識がある。それにしても、足利百名山は全部で一体何座あるのか😅
縦走路に戻って先に進み、緩くアップダウンのある稜線を辿る。小ピークに上がると石祠が南東を向いて建ち、佐野市街や大小山の眺めが開けて、なかなか爽快。やまの町桐生では、この小ピークを「山神山」と仮称している。
「山神山」から短い急坂を下り、小さな凹凸と岩場が連続する稜線を辿る。変化に富んで面白い。一段下る意外と急なギャップがあり、東西に通じる峠道と風化した石祠がある。峠から急斜面をジグザグに登って稜線上に復帰。行く手に間近に足利鉱山のピークを見ながら、明るい稜線を辿る。道標が現れ、ハイキングコースはここから右へ下って旧R293に出るようであるが、稜線上にも道型が続いているからこちらを辿る。
道型は明瞭だが、細くて小さな屈曲が多い。日陰となった急斜面をジグザグに降りて、旧R293に下り着く。薄暗くて、陰気な感じがするのは廃道となって久しいからか。
旧R293の対面から、すぐ上に見えている大坊山〜大小山の稜線に登る道が続いている。ごく短い坂なので、稜線まで往復して来る。この稜線は1年ちょっと前に歩いている(山行記録)。稜線上の道標に「現在地 越床峠」とあるが、本来の越床峠は旧R293の足利・佐野市境、157m標高点だろう。
旧R293に戻り、あとは廃車道を辿る。落ち葉に厚く覆われているが、舗装は今だにしっかりしている。深い切り通しに入ると「足利市」の道路標識とゲートがあり、ここが越床峠ということになる。ゲートの手前にも「山頂番屋」への道標があり、山道が分岐する。
市境から下りとなり、右に鳩の峰へのハイキングコースを分ける。ガードレールには国道時代の痕跡の「293 栃木県」のシールが残る。
「狐のカミソリ群生地」の道標があり、下の枯れ沢の斜面が群生地のようだ。ヘアピンカーブをショートカットし、ゲートを通過すると左に越床峠駐車場と「越床ハイキングコース案内図」、詰所?の小屋がある。この小屋の外壁に「足利市の山々は火器使用禁止です」の貼り紙があり、ああそうだったっけ、と思い出した次第。
足利鉱山の採石場跡の前を通り、R293に出る。途端に車の通行が増える。R293のこの辺りは、佐野・鹿沼方面の山に出かける際に車で何度も通ったことがあるが、歩くのは初めてだ。途中から脇道に入る。冬の田圃が広がり、山裾に民家が点在して、良い田園風景。ぽっこりと盛り上がる樺崎八幡山の麓には、登山口の赤鳥居が小さく見える。
樺崎寺跡の駐車場には16時少し前に戻る。陽が傾いて周囲の山々は夕焼け色に染まりはじめ、流石に寒くなってきた。そそくさと車に乗り込み、桐生への帰途についた。
参考URL:足利市HP「越床ハイキングコース」、やまの町桐生「鳩の峰」の記事。