岳の湯温泉・別所温泉
正月恒例のS&Sとの温泉旅行。今回は長野県上田市の岳の湯温泉に1泊、別所温泉に2泊して、周辺の里山や山麓を極々軽〜く歩いてきました。
武石公園
初日の12月30日は桐生を車で出発し、昼前に上田駅で新幹線で来たS&Sと合流。駅から車で移動して、信州蕎麦の草笛・上田店で昼食とする。お客さんが多くて1時間待ちとなるが、ようやくありついた温かいかき揚げ天蕎麦は出汁(だし)が旨く、量もたっぷりで、待った甲斐があった。
昼食後、岳の湯温泉に向かい、R152を走って丸子市街を通過。千曲川支流依田川に沿って、山間に街並みが続く。依田川を隔てた左岸には低いながらもなかなか険しい尾根が迫り、目を引く(後日調べると丸子城跡で、ハイキングに最適らしい)。
さらに依田川を遡ると武石(たけし)地区に入って、武石川の谷底平野の扇状地に耕地が広がり集落が点在する。平野の中に孤立した小高い尾根があり、あそこが武石公園だ。非常に興味深い地形で、比高もなく簡単に登れそうなので立ち寄ってみよう。
尾根の中央の切り通しを北側に抜けて、路側の広い所に車を置く。日陰の路面には先日降った雪がべったりと残っている。切り通しに登り口があり、その脇に「武石(ぶせき)」の説明板が建つ。武石とは、武石(たけし)公園の尾根や北側にある武石山(ぶせきやま)から産出する珍しい鉱物(黄鉄鉱が褐鉄鉱に変質したもの)だそうだ。ここから北に見える山の中腹に大きな岩場があり、あの辺りが武石山らしい。
切り通しからほんの僅かの登りで尾根の上に出る。切り通しには吊り橋が架かり、それを渡って西へも尾根を辿っていける。今回は東へ。尾根上の遊歩道を辿ると、すぐに眺めの良い東屋に着く。
東屋からもう少し進むとベンチと三角点標石があり、その先が小岩稜となって二つ目の東屋が建つ。東屋からの展望を楽しんだ後、引き返す。尾根は平坦かつ直線的で、高さは20m程しかないが左右は急斜面で平野に落ち、まるで堤防の上を歩いているようで、実に面白い。ちょいと立ち寄るところとしてお勧め。春にはヤマツツジが見事だそうである。
車に戻り、今晩の宿の岳の湯温泉雲渓荘に向かう。武石川からさらに分かれて小沢根川の谷間に入る。すぐに人里から離れ、北向きで日陰の谷間にどんどん分け入る。到着した宿は山に囲まれて、他に何もない。しかし、こういう山奥の一軒宿は好みである。早速、温泉につかり、すき焼きメインの夕食を美味しく頂く。その後は前夜、締切仕事で完徹していたので、速攻で泥の様に熟睡した。
美しの国・頂上公園
ぐっすり眠れて、翌朝はスッキリ起床。バイキングの朝食を頂いたのち、チェックアウトする。折角、山奥まで来たので、さらに小沢根川沿いの車道を上ってみる。路面はすっかり雪に覆われるが、除雪はされて車の通行もそこそこあるようだし、スタッドレスを履いているので問題ない。というか、昨冬はスタッドレスで雪道を走る機会が一度もなかったんだよなー。雪道が走れて、かなり嬉しい。
車道は大きくジグザグを切りながら、なだらかな斜面に広がる「美しの国」という別荘地の間を上って行く。年末年始を別荘で過ごすオーナーさんの車を結構見かける。別荘地の天辺に頂上公園があり、その駐車場に車を置く。辺り一面、雪景色。今日も快晴。展望も良く、ちょっと先の東屋まで行くと浅間連峰から荒船山、蓼科山、八ヶ岳連峰と冠雪した山々を遠望する。いやー、気分が良いな。来てみて良かった。ここから物見石山(1985m)を経て美ヶ原に至る破線路もあり、快適な雪山歩きが楽しめそうで、興味を惹かれる。
別荘地内のジグザグの雪道を運転に注意して下り、岳の湯を過ぎて武石地区に戻る。次は、武石公園の下手の平野にこんもりと盛り上がった小丘(677m三角点峰)の小山城跡(こやまじょうせき)を訪ねる。
宮坂七郎著『新版 信州の山 中部上巻』の「小山城跡」の項を参考にして、小山城跡東麓の沖公民館の前に車を置く。公民館の前から参道石段を登ると、諏訪神社の小さな社殿が建つ。また、石段左手には江戸時代後期、寛政二(1790)年の石仏がある。小さな神社で今は全く人影がないが、初詣には大勢の参拝客があるのだろう。石段には電線が引かれ、足元を照らす電灯が既に設置されている。
神社の右脇から山道に入る。前掲の書籍によると「うさぎコース」というらしく、一日早いが時宜にかなっている。道型は細いがしっかりしている。「東京スカイツリー同標高地点634m」という看板が地面に落ちている(長野県あるある😅)。
冬枯れで明るい雑木林の斜面をジグザグに登る。尾根の上に着くと「戸隠神社」の立派な石碑がある。ここから頂上まではほんの僅かの距離だが、S&Sはお疲れなのでここで待機し、私一人で往復してくる。赤松と露岩の尾根をひと登りすると、右の手に錫杖を持った小さな石仏が御座す。
その先、樹林が開けた所に三角点標石、少し奥に「御嶽大神」の石碑がある。山名標識等は見当たらない。赤松林に囲まれて展望はないが、陽が良く当たって雰囲気は明るい。この先に城跡があるそうだが、藪っぽい。引き返してS&Sと合流し、沖公民館に戻る。
このあと、そろそろ昼時なので、丸子、海野宿と走って食事処を探すが、大晦日なのでどこも営業していない。東御まで行って、ようやくR18沿いで中華料理香福園という店を見つけて入る。ここは当たりで、牛肉入りラーメンが美味かった。
昼食をとって落ち着いたのち、もう一山、上田菅平ICの東にある虚空蔵山(こくぞうやま)に向かう。虚空蔵山は、上信越道を長野方面に走って上田ローマン橋を渡ると、すぐ右手に見かけるこんもりと盛り上がった小山で、以前からちょっと気になっていた山だ。
前掲書籍の「富士見台虚空蔵山」の項を参考にして、虚空蔵山南面の富士見霊園の中段にある駐車場に車を置く。ここは南に開けて、八ヶ岳連峰を遠望し、なかなか眺めが良い。
駐車場の一角に参道石段の入口があり、正月を迎えるしめ飾りが掛けられた石鳥居が建つ。「伊勢太神宮(いせだいじんぐう)」の説明板があり、石鳥居には安政三(1856)年と刻まれているそうである。参道石段を登ると二の鳥居、2基の石灯籠、簡素な作りの社殿がある。S&Sはここまでで引き返して車で待ち、私一人で虚空蔵山に向かう。
社殿の先には紙垂と松の枝で飾られた石祠があり、その向こうには果樹園が広がる。果樹園の縁に沿って右に進む。道は特になく、畦のような場所を歩く。すぐに簡易舗装の車道に合流し、振り返ると果樹園越しに太郎山と東太郎山が眺められる。車道終点から山道に入り、落ち葉を踏んで僅かの登りで虚空蔵山の頂上に着く。
頂上は小広い平地で、冬枯れの雑木林に囲まれる。大木の切り株、ベンチ、「宇賀神社趾」の石碑、「伊勢崎城跡 / 虚空蔵山(こくぞうやま)(かいこ山) / 令和二年十二月 神科まちづくり委員会」と書かれた新しい標柱、少し離れて三角点標石がある。
ここも小さな山だが、山道や頂上は整備の手が入っている。なお、後日調べたら、登山口は別の場所にあり、案内板も設置されているらしい(記事)。
駐車場に戻り、これにて今日の散歩は終了。今晩の宿の別所温泉旅館花屋に向かう。別所温泉には、別の宿だが、一泊して、女神岳に登ったことがある。そのときの宿も良かったが、今回の宿は別格。館内内装は大正ロマンの雰囲気が横溢し、仲居さんは着物姿で若い人に至るまで作法がしっかりしている。早速、温泉へゴー。風呂は三つあり、時間帯によって男湯、女湯が入れ替わる。まず、大理石風呂に入る。名の通り、大理石の湯船で、仄かな硫黄臭のする湯に浸かる。その後に夕食。海老芋の炊き合わせや信州黒毛和牛しゃぶ鍋をメインに美味しくて、酒も進んだ(なお、下の料理の写真は翌日の昼食)。
別所温泉散策
旅行3日目の元旦。今日も晴れて穏やかな天気だ。朝食を頂いたのち(仲居さんはメイド服にチェンジ😀)、午前中は宿が開催している餅搗きを見学したりしてまったり過ごす。昼食は宿で雑煮とおせち料理を頂く。午後、別所温泉を一巡りする散歩に出かける。
花屋から緩い坂を上って北向観音に向かう。我々は裏手から入ったので、本堂の前まですんなり来られたが、表から来た参拝客が長蛇の列をなし、参道石段には入場制限がかかっている。横から割り込む訳にいかないし、北向観音には前回、参拝しているので、今日は割愛。参拝客の列が続く門前街を通り抜け、安楽寺に向かう。
安楽寺への道は人が少ない。途中のハス池は、完全に凍っている。鬱蒼とした杉林に入り、参道石段を上がると本堂がある。拝観料300円を払って、さらに杉林の中を登ると国宝の八角三重塔が建つ。ここも前回来て、一番印象に残っているところだ。周りが墓地なので撮影できるアングルが限られ、結局、前回と同じような構図の写真を撮っていた😅
次は、さるすべり小道と称する山裾の歩道を通って、常楽寺に向かう。途中は見晴らしが良く、別所温泉の街並みや塩田平を一望し、浅間連峰を遠望する。常楽寺は本堂の茅葺の屋根と地を這うように枝を広げる御舟(みふね)の松が見事。奥に国重要文化財の石造多宝塔がある。柵に囲まれて遠目にしか見られないので、苔むしてるな、というのが印象。
常楽寺前の通りを真っ直ぐ下る。右手には別所温泉の背後にある女神岳の山容が眺められる。別所温泉駅から北向観音へ向かう参道と交差すると、途端に人出が増える。少し遠回りして、別所温泉駅まで下り、レトロな駅舎と出発待ちの列車を写真に収めて、花屋に戻る。駅から花屋に通じる通りは、駐車場に入る順番待ちの車がズラーっと並ぶ。今日は車で出かけなくて正解。車で出ていたら、宿に戻る際に、この渋滞に嵌まるところだった。
独鈷山麓寺巡り
旅行4日目の最終日は、塩田平南部、独鈷山の山麓のお寺を車で巡ることにする。温泉と食事を堪能した花屋をチェックアウトし、独鈷山方面に向かう。途中、舌喰池に立ち寄る。塩田平に多数ある「ため池」の一つで、池の名は恐ろし気だが、広い水面を水鳥がのんびり遊弋し、塩田平や上田市北部の山並みの眺めが開けて、気持ち良いところである。
この辺りから眺める独鈷山は、峨々とした山稜を連ねて、1200m級の山とは思えない険しさを見せる。今日は薄らと雪を纏っているから尚更だ。独鈷山登山口の前で左折して、まず塩野神社に参拝する。鬱蒼とした境内に入り、一対の大きな石灯籠、鳥居を通り、太鼓橋を渡ると、二階建ての拝殿(楼閣造りと呼ぶそうな)が建つ。歴史と神さびた雰囲気が感じられる。
次はお隣りの中禅寺へ。ここには国重要文化財の薬師堂がある。茅葺屋根の素朴な感じのお堂だ。周囲は林が切られたようで、青空には白い雲が流れ、足元も一面の雪に覆われて、冷え込みがキーンと聞こえそうな佇まいがある。
最後は車で少し移動して、前山寺に参拝する。ここには国重要文化財の三重塔がある。こちらは、安楽寺の八角三重塔に対して、四角三重塔。窓や欄干がなく簡素な造りだが、険しい独鈷山を背景として、ロケーションは安楽寺より佳いかも。本堂は屋根が重厚で立派。何故か独鈷山の方を向いている。
これにて寺巡りを終了。今回の正月旅行、山歩きは少々物足りなかったが、温泉でのんびり過ごせて、美味い物も食べ、すっかりリフレッシュした。こちら方面で行きたいところも増えたし、今後の楽しみも増えた。
帰りは途中、コンビニで買ったいちごロール?で軽く昼食を済ませる。佐久北IC〜吉井ICは高速を走り、高崎駅でS&Sと別れる。となる予定だったが、新幹線の指定席が夜まで満杯(人出が復活しているなあ)。太田駅へ向かい、りょうもう号の指定席を無事確保。発車時刻まで間があるので、すき家太田内ヶ島店で夕食に牛カレーを食べたのち、太田駅でS&Sと別れて、桐生に帰った。