鶉山〜鍋割山
先週末は赤城山南面で気になるスポットの櫃石(ひついし)を訪れ、足を延ばして荒山に登った(山行記録)。この週末の山歩きも同じパターンで行こうかな。という訳で、赤城山南面で未踏の鶉山(うずらやま)を訪ね、足を延ばして鍋割山に登ることを考える。
鶉山は昔、やまの町桐生にアップされた「鶉山」の記事を読んで初めて知った山だが、地形図を見ても山名の記載がないばかりか、それらしいピークも見当たらないので、ほんとに山?と思えて、これまではあまり食指が動かなく、登頂が後回しになっていた。
しかし、改めて調べてみると、最近の版の山と高原地図には山名が記載されているし、国立赤城青少年交流の家から県立赤城森林公園に至る赤実線(登山コース)の途中から分岐して鶉山に登る赤実線まで引かれている。交流の家から鶉山を経て森林公園まで行き、そこから鍋割山に繋げば、今回やりたい山歩きのコースとしてピッタリだ。
また、この登山コースは交流の家の野外活動のフィールドになっていて、道標が設置されているとのこと。交流の家を起点とした鶉山コースの紹介動画や、鍋割山・荒山縦走コースの資料も公開されている。これらの情報で予習させて頂いて、交流の家から鶉山と鍋割山を周回して歩いてきました。
桐生を朝、車で出発。からっ風街道を走って交流の家に向かい、正面入口のゲートを入ってすぐ左の第一駐車場に車を置く。ここは交流の家の構内で関係者以外立入禁止なので、管理研修棟の事務室に出向き、登山のため駐車して良いか許可を求めて、快諾を頂く。
今日は先週の山歩きと比較して少し暖かい。インナーの長袖シャツ・長ズボンはなしで出発。交流の家の構内から林道鶉山線に出る。構内と林道は樹林と笹藪で隔てられているが、あちこちに抜け道があってショートカットできる。
林道を少し上がると、斜め右に分岐して植林に入る山道がある。ちょっと分かり難いが、ここが鶉山コース入口であることは動画で予習済だ。また、山道に少し入った所で笹に隠れているので気づきにくいが「鶉山コース」の道案内もある。なお、道案内の右上に描かれているムササビ?は、交流の家のマスコットキャラクターのササビーである(これも動画で予習済み😃)。
植林中の山道を辿り、緩斜面をトラバース。緩く下ったのち、緩く登り返す。足元の路面は湿って柔らかく、踏まれた様子はあまりない。フェンスに囲われた畑地に突き当たって左折。フェンス沿いの未舗装道を進む。
すぐにフェンスの角に達すると「鶉山コース」の道案内があり、右折してフェンスに沿った小径を指し示している。この小径を入口から見ると、草と笹にポサポサと覆われて、道案内(これ自体もボロボロ)がなければ踏み入るのが躊躇われるレベル。
右はフェンス、左はグラウンドに挟まれて草藪に覆われた小径を進む。グラウンドの向こうには鍋割山が大きくくっきりと眺められる。グラウンドでは小学生くらいの子供達がジョギング中。こちらに気づいて、おはようございまーす、と元気よく挨拶してくれたので、おはよーす、と挨拶を返す。
小径はグラウンドから離れると、丈が高くて高密度な笹藪の切り開きを進む。途中に交流の家が設置した立派な道標はあるが、最近は整備の手が入っていないのか、笹が被さってきて少々荒れ気味。里山にしては冒険的な雰囲気があり、ちょっと楽しくなってきた。
やがて笹藪の中の十字路に着く。古い「鶉山ハイキングコース」と記された道標があり、左の道は「山頂まで400m」、右の道は「起点まで3.7km」と指し示している。やまの町桐生の記事によると、起点はR353沿いの大胡ぐりーんふらわー牧場だそうだ。直進する道は、赤芝を経由して森林公園に向かう。ここから左の道に入って鶉山を往復する。
鶉山への道は、ますます笹藪が濃い。再び、鶉山ハイキングコースの道標があるが、半壊している。杉植林に入ると少し笹藪が薄くなる。右折して短い急坂を登ると、「芳賀地区最北端の鶉山」と書かれた山名標柱のある鶉山頂上に着く。
山頂は樹林に囲まれているが、冬枯れで明るく、鍋割山が大きく眺められる。東側の斜面は急で、意外とピークらしい雰囲気がある。山名標柱の傍らには大きく平らな石があり、マスの中にバツ印の周りに冨士見村、芳賀村、大胡町、宮城村、村宮と刻まれている。これは、この頂がかつて4つの町村の境であったことを示している。昔は山野の利用で境界が重要だから、このような境界を示す標石が置かれたのかな。現在は、4町村とも前橋市に編入され、鶉山は境の山ではなくなっている。
後日、古地図を調べると、確かに四方から境界線が集まっているのが確認でき、その上、鶉山の山名まで記載されている。これは由緒ある歴とした山だなあ。頂上の町村境界石は郷土史的に貴重な物ではなかろうか。ほんとに山?などと思っていて、失礼しました。
ちなみに、芳賀村は昭和29(1954)年に前橋市に編入された。山頂の「前橋最北端の鶉山」の朽ちた標識は、その後、建てられた物らしい。大胡町と宮城村は平成16(2004)年、富士見村は平成21(2009)年に前橋市に編入されている。
これは余談だが、山頂が複数の市区町村の境界にある山は、市区町村の合併が進むと当然、境を接する市区町村の数が減少する方向にある。かつての鶉山のように、山頂が4つ以上の市区町村の境界にある山は、現在では全国で佐賀の天山(唐津市、多久市、小城市、佐賀市)の1座しかない。閑話休題。
鶉山から十字路に戻り、森林公園に向かう。笹藪の切り開き道を進み、植林帯を抜けると車道(林道溝ノ口線)に出る。ここにも交流の家が建てた立派な道標がある。左へ林道を登る。この林道は通行止が続いており、車は全く通らない。すぐに道標があり、再び登山道に入る。水害があったのか、大きく抉れた枯れ沢で登山道が分断されている。
対岸に渡ると、その先は良い登山道が続く。大きく右にカーブして山腹を斜めに登る。小尾根を越えると赤芝の集落に入り、緩斜面の上に園地が広がって、民家が点在する。
道標のある十字路で左折し、車道を真っ直ぐ登って行く。左手には大規模な太陽光発電所が広がり、正面には鍋割山がだいぶ近づいて見える。やがて右手は広大な草地の斜面となり、その一部はやはり太陽光発電所となっている。草地の元は畑地か牧場だろうか。
赤城山学園というミッション系の施設を過ぎ、車道が左へカーブしたところから右の山道に入る。ここも道標あり。最初は植林と笹藪の中を進むが、程なくアカマツと丈の低いミヤコザサに覆われた緩斜面の登りとなる。左手には木立を透かして鍋割山を間近に仰ぎ、なかなか雰囲気の良い登山道が続く。
やがて伐採された斜面に出、防獣ネットの間を登って車道(林道鍋割相吉線)に着く。車道を右に進んですぐの所が森林公園で、WCや駐車場がある。駐車場にはハイカーさんの車が4台程。人気が高過ぎて、すぐに満車になる姫百合駐車場に比べて、こちらの駐車スペースは余裕綽々である。ここから鍋割山へは2004年冬と、今日とは逆コースで2016年夏に歩いたことがある。
登山道に入ると大岩が多い急斜面に取り付いて、ジグザグに登る。やがて緩斜面の上に出て、明るい樹林と笹原の中をゆるゆると登る。行く手に荒山のなだらかな頂上が見えてくると、程なく棚上十字路に到着する。ここは休憩中のハイカーさんや、荒山高原、荒山と行き来するハイカーさんがポツポツと居られる。
十字路の休憩舎で昼食休憩とする。じっと止まっていると流石に寒く、フリースを着る。スモークタンをつまみにDRY ZEROを飲み、ガソリンストーブで鍋焼きうどんをぐつぐつ煮立てて食べる。冬はやはり熱いうどんが美味いねえ。デザートに柿を食べてまったりしたのち、腰を上げて鍋割山に向かう。
荒山高原までは緩斜面を横切る平坦な道だ。木立を透かして、荒山高原から鍋割山へ向かう稜線が間近に眺められる。やがてなだらかな鞍部に芝生が広がる荒山高原に到着。すぐに鍋割山に向かう。道端には僅かに雪が残り、路面もごく一部だが凍結している。
山腹を斜めに登って稜線上に出ると四方に眺めが広がる。上空に雲が広がり始め、陽が翳る。天気は下り坂のようだが、あとは鍋割山を経て下るだけだから、展望を楽しみつつのんびり歩く。13時を回って時間が遅いせいか、交差するハイカーさんはあまり多くない。
火起(ひおこし)山、竈山と眺めの良い小ピークを越える。この辺りの草原に覆われた稜線は開放的で気分が良い。通称、人面岩を通過して緩く下り、少し登り返して鍋割山の頂上に着く。休憩中のハイカーさんはチラホラで4,5人くらい。鍋割山にしては空いている。
頂上からの眺めは相変わらず素晴らしい。南麓を俯瞰し、関東平野を一望する。北から灰色の雲が押し寄せて上空を覆い、その下も靄って遠望は効かないが、桐生市街や吾妻山の山影あたりまで視認できる。南麓に広がる樹林の中には交流の家らしき建物も見える。そう遠くなくて、車道歩きがそんなに長くなさそうだから、ちょっと安心する。その向こうには前橋と高崎の市街が広がり、奥に御荷鉾山系の山影を望む。
展望を一通り楽しんだのち、南へ下る。笹原の急斜面に木の階段道が続く。山麓へ飛び込んでいくような眺めが爽快だ。右に鍋破山前不動への道を分ける辺りで傾斜が緩み、樹林の中の道となるが、その先は岩がゴロゴロした急降下となる。
ひとしきり急降下して、笹原の緩斜面が広がる鍋割高原に下り着く。山麓がだいぶ近づいて、振り返ると鍋割山が既に見上げる高さだ。
鍋割高原の端から再び急降下となる。眼下の樹林は伐採されていて、鍋割山登山口や林道の三差路が俯瞰できる。樹林園を左に見て斜面をトラバースし、鍋破山前不動からの登山道を合わせて、鍋割山登山口に下り着く。
登山口付近の路側に駐車が4台程。こちらの駐車スペースはあまり余裕はない。周囲が伐採されたおかげ?で、林道からも鍋割山を仰ぐことが出来る。三差路から南へ林道鶉山線を下る。標高が下がると日差しが戻って暖かい。ゴルフ場の間を通過すると左に鶉山への道を分ける(鶉山から北西に進むと、ここで林道に出る)。
あとは林道をテクテク下る。林道の両側には篠竹藪の分厚い壁が続き、ある種、壮観。往路で通った鶉山コースの入口の向かいから交流の家の構内に入ると、管理研修棟の少し上手に出る。構内のメインの坂道を下って、駐車場に帰着した。
これでまた赤城山の未踏の1座に登れたし、鶉山は思ったよりも山らしくて楽しめた。また、森林公園への登山コースも、部分的に車道歩きがあるが、静かな山歩きが楽しめ、特に上部のカラマツとミヤコザサの斜面は雰囲気が良かった。鍋割山まで歩けば展望も楽しめ、歩き応えも十分。なんなら荒山を含めることも可能。なかなか良いコースだった。
帰りは富士見♨見晴らしの湯ふれあい館に日帰り入浴で立ち寄る(520円)。ゆったり入浴して温まったのち、桐生への帰途についた。