白毛門〜笠ヶ岳〜朝日岳
8月中旬からの週末はどんよりした天気続きだったが、今週末の土曜はようやくスカッと晴れるとの予報。県内で高い山に登りたいと考えて、谷川連峰の朝日岳を思い付く。
朝日岳には大昔に一度、湯檜曽川本谷を遡行して登ったことがある。その後、白毛門から朝日岳に登ろうと出かけたこともあったが、そのときは体力の余裕がなくて笠ヶ岳で引き返し、朝日岳への再訪は成らなかった(山行記録)。今回は同じく白毛門、笠ヶ岳を経由して朝日岳に再挑戦してみよう。
ヤマプラでコースタイムを確認すると、登り5時間40分、下り4時間15分で、往復10時間の長丁場となる。これは8/1に歩いた赤薙山〜女峰山と所要時間は同じだが、白毛門まで厳しい急登が続き、上部は陽射しを遮る木陰のない稜線歩きとなるから、さらにきつい行程となるのは必至。少々不安を抱きつつ、気合を入れて出かけてきました。
桐生を深夜に車で発ち、関越道を経て、5時過ぎに白毛門登山口の駐車場に到着。既に夜が明けて、これから登る白毛門への急峻な尾根が見上げられる。人気の山域なので登山者の車が多いが、昨今の状況のせいか、前回に比べると空いている気がする。
数組の登山者と前後して出発。東黒沢を橋で渡り、ブナ林の急斜面を登り始める。程なく尾根上に出て、クロベなどの樹林中を一直線に急登する。先は長いのでゆっくり上る。
ときおり右に白毛門沢を見おろしつつ登る。行く手に白毛門の頂が見えて来るが、嫌になるくらい高い。急登なだけにグングン高度を上げ、それに連れて周囲の樹林が低くなってくる。この間、数組の登山者に追い越される。鎖が張られた岩場を登ると、大きな露岩のある小ピークに登り着く。標識の類はないが、ここが松ノ木沢ノ頭の頂上だ。
ここまで、コースタイムをちょっと切るくらいの時間で歩けたから、出だしは良いペース。しかし、暑い。 スポドリを飲んで、一休みする。行く手には白毛門が急角度で聳え、その中腹にジジ岩とババ岩が突き立っているのが見える。まだまだ先は長い。左(西)には谷川岳と一ノ倉沢の大岩壁を真正面から望む。今日は眺めが最高にいい。
白毛門へ、先行する数組の登山者を見上げて追いながら登る。左に谷川岳、右に白毛門沢源頭のスラブを眺め、開放的で素晴らしい景観だ。道端にはタテヤマウツボグサなどの花が点々と咲くが、きつい登りをこなすのに手一杯で、写真を撮る余裕はない。急登して頂上稜線の一角に出、緩くひと登りして白毛門の頂上に着く。
頂上に着くと、正面から視界に笠ヶ岳と大烏帽子が飛び込んでくる。青空にくっきりと浮かぶ稜線と、稜線を覆う笹原が優美だ。右に目を転じると、尾瀬から武尊山にかけての山並みが霞んで眺められる。振り返ると登って来た尾根や山麓を俯瞰し、右には天神平を望む。谷川岳の展望は相変わらず素晴らしい。スポドリを飲み、少し長めに休憩を取る。
元気を回復したのち、笠ヶ岳に向かう。笹原と低木帯に覆われた尾根を緩く下って登り返す。端正な三角錐形の笠ヶ岳への登りに取り付き、一面に絨毯のように広がる笹原の中を一直線に登る。円錐の頂点にジリジリと近づいて、ようやく笠ヶ岳の頂上に登り着く。
頂上には三角点標石と山名標柱の他、新しい道標が立ち、アキアカネの群れがツィーツィーと飛び回る。谷川岳からは北に少し遠ざかり、湯檜曽川を馬蹄形に取り囲む茂倉岳や武能岳、七ッ小屋山の稜線が眺められ、その向こうには苗場山を遠望する。そして、笠ヶ岳から笹原の稜線が大烏帽子へ続き、その左奥には朝日岳の平坦な頂が見える。前回は霧で朝日岳は見えなかった。今回は良く見え、距離はまだあるが標高差は少ないから、行ける気がする。よし、頑張るぞー。500mlのスポドリを飲み切って、朝日岳に向かう。
笠ヶ岳の頂上から笹原をちょっと下ったところに、カマボコ形の避難小屋がある。中を覗こうとしたが、ドアの建て付けが堅いので、開けるのはアッサリ諦める。気持ち良い草原が広がる鞍部から、ちょんと尖った小烏帽子への登りにかかる。休み休み登りつつ振り返れば、笠ヶ岳の向こうに谷川岳を望む。今日は本当に眺めが良い。
小烏帽子に登り着くも明瞭なピークはなく、笹原に露岩が点在する細い稜線を絡んで辿る。小さなアップダウンが多い。1934m標高点のピークもそれと気付かず通過。
やがて、稜線の陰に隠れていた朝日岳が再び現れ、頂上に居る人影も判る所まで来た。しかし、時刻は11時を回って太陽がジリジリ照りつけ、風も凪いで暑い。短い急坂を下り、ガレ場を横切っていると、急に足元がふらつきだしたので、腰を下ろして水を飲む。他に異常はなく、しばらく休んで回復した。軽い熱中症になったようだ。用心、用心。
左には笹原に覆われた緩斜面が広がり、小さな池が見える。朝日岳への最後の登りは短いが急だ。のろのろと足を運び、頂上に登り着く。やったー\^o^/。しかし、疲れたー。
平坦で開けた頂上には、三角点標石、山名標柱と石仏、ちょっと離れた岩の上に石祠がある。登山者が数組、休憩中。湯檜曽川側から弱い風が吹いて、じっとしていれば少し涼しい。腰を下ろしてザックから缶ビールを取り出すと、燗につけたように温い。飲むかどうか迷いつつも、飲んでみたらアルコールがきつく感じる。360度に開けた展望を楽しみながら、鯖味噌煮をツマミにビールを飲み、食欲がないので昼食はこれで終わり。
頂上の北側には、朝日ヶ原と呼ばれる草原がいくつかの池塘を鏤めて広がっている。その中を宝川側へ少し下ると水場があるはずだが、そこまで行くのも難儀だし、水はまだ1Lあるので、下山まで足りるだろう。のんびり過ごした後、腰を上げて下山にかかる。
朝日岳から短い急坂を下り、ダラダラと登って大烏帽子を越える。新潟側から曇り始めて、雲が広がって来た。笹原の斜面を下り、少し登り返して笠ヶ岳の頂上に着く。
谷川岳の頂上には灰色の雲がかかり、こちらの頂上も陽射しが陰って、かなり暑さが和らいだ。さすがに小腹が減ったので、クッキーを齧って水で流し込む。
笠ヶ岳から笹原の斜面を一直線に下り、ゆるゆると登り返して白毛門の頂上に着く。新潟側から広がって来た雲もこれ以上は増えないようで、雨や雷の心配はなさそうだ。あとは下り一方だから楽勝、と思ったが、然うは問屋が卸さない。松ノ木沢ノ頭から樹林帯に入ってからの下りが、果て知れず延々と続く。白毛門は登り降りともやはりきつい。
樹林中が薄暗くなり始めて、ようやく山麓に下り着く。駐車場の車はだいぶ少なくなっている。今日は暑かったせいもあり、近年で一番きつい山行になったが、展望は最高だったし、超久し振りとなる朝日岳への再訪を果たしたから、大満足だ。
帰りは先月の谷川岳に続いて「温泉センター諏訪の湯」に立ち寄る。今回は抜かりなくボディソープとシャンプーを持参。コロナ対策のため、19時までの短縮営業となっている。さっぱりと汗を流したのち、とっぷりと日が暮れた中、桐生への帰途についた。