赤薙山〜女峰山
この週末の山歩きも、酷暑を避けて標高2000m以上の高山に登りたい。久し振りに日光連山に出かけようと考えて、霧降高原から赤薙山を経て女峰山へ往復することを思い付く。
女峰山に登るのは3回目。1986年に野門沢を1泊2日で遡行して登頂したとき以来の、35年振りとなる。そのときは女峰山から赤薙山を経て霧降高原に下山したので、今回のコースは一度歩いてはいる。しかし、大昔だし、沢登りについては落差120mの布引滝など、印象が強く残っているが、下山路に関してはさーっぱり記憶にないので、新鮮味がある。
ヤマプラで霧降高原↔︎女峰山のコースタイムを調べると、登り5時間42分、下り4時間16分で、往復10時間の長丁場となる。来たるお盆休みには少しハードな山に行きたいので、最近鈍っている脚力で大丈夫か、脚試しにも良い行程だ。という訳で、出かけてきました。
桐生を深夜に車で出発。R122、霧降高原道路を走り、キスゲ平園地のP3(登山者用駐車場)に車を置く。ちょうど日の出の頃合で、太陽が高原山の右肩から昇り始めている。ここは既に標高1350mの高地にあり、空気がヒンヤリと冷たい。
広い駐車場には登山者の車がポツポツあり、トレランの出立ちの見るからに屈強そうなおっさんグループが出発するところだ。朝、コンビニで買ったパンを食べ、WCを済ませて、私も出発。行く手には丸山がもっこりと大きく、その左奥にちょんと尖った頂の赤薙山が意外と高く仰がれる。
まだ営業時間前のレストハウスの前から、天空回廊と呼ばれる長〜い階段遊歩道を登る。小丸山の展望台まで、計1445段もあるそうだ。周囲はかつてのスキー場のゲレンデ跡地で、現在は草原が広がる。6月中旬〜7月のニッコウキスゲで有名な場所だが、今は時期が過ぎて、代わりにピンクのヨツバヒヨドリとシモツケソウが群れ咲いている。
階段遊歩道は、最初はゆるやかだが、途中から傾斜を増して、一直線に草斜面を登る。朝早いが、観光客の姿もちらほら。眺めが良く、左手に日光市街を俯瞰し、鳴虫山や鶏鳴山の山影が朝靄に浮かぶ。階段の終点の小丸山展望台(1582m)から鹿避けの回転式ゲートを抜けると、すぐ上が小丸山(1601m)のだだっ広い頂上だ。
小丸山からは、終始、赤薙山の頂を見上げつつ、ビロードのような笹原が広がる尾根を登る。踏み跡が錯綜し、笹が被るところでは露で少々ズボンの裾が濡れるが気にしない。笹原の中にはツツジ類の群落があり、道端にはコバギボウシやソバナが咲いている。
途中で焼石金剛の標識を見る。ハイトスさんの記事によると、この辺りに木祠があるそうだが見過ごした。赤薙山に近づき、笹尾根を先行するグループが見える。左側の中ノ沢に落ちる斜面も一面の笹原で綺麗だ。振り返ると笹尾根の向こうに丸山が見おろせる。
笹原が尽きてコメツガ林に入る所に道標があり、尾根の右を絡むように急登する。ロープや積雪期登山用のの標識が設置されている。赤薙山は積雪期の登山も面白そうだ。
針葉樹と笹の中を急登すると「↑赤薙山 女峰山→」の道標があり、右に巻き道を分ける。直登すると程なく赤薙山の頂上に着く。ハイカーさん二組程が休憩中。三角点標石と赤薙山神社の木の鳥居、石祠がある。樹林に覆われているが、木立の切れ間から女峰山や男体山が眺められる。ここから眺める女峰山は、左の黒岩にかけて赤茶けた大崩壊壁を巡らせて峻険な山容を示し、格好良い。しかし、予期したより遠くに見え、既に結構疲れているので、先が思いやられる。手前の尾根上の台形のピーク(1983m標高点)は内ノ外山と呼ぶそうで、ネット上にいくつかある山行記録を読むと、登るのはかなり難しいらしい。
しばらく休憩したのち、赤薙奥社跡へ向かう。ロープが張られた岩尾根を下り、小ギャップから登り返す。痩尾根や岩尾根の通過など変化に富むが、急登が続いてペースが上がらない。その間、後発のハイカーさん数人に道を譲る。ようやく傾斜が緩み、林間の湿った草地にバイケイソウの花を見る。赤薙山から55分で奥社跡に到着。コースタイムの5分遅れで、この区間はバテた。樹林に囲まれて展望なし。木陰で涼んで、気力の回復を図る。
奥社跡で縦走路は右(北)に折れ、樹林帯を少し下って、ヌタ場もある広い鞍部から緩く登り返す。大鹿落ノ頭(2209m標高点)の少し西で平坦な一里ヶ曽根の稜線に乗る。樹林に覆われて展望は乏しいが、しばらく平らな道が続くから、距離は稼げて助かる。途中に「ヤハズ」の標識あり。シャクナゲがとても多く、開花期は見事ではないかと思う。
やがて、2295m標高点に到着。広いガレ場の頂に、一里ヶ曽根の道標と潰れた石祠がある。周囲は360度に開けているが、あいにくガスに覆われて、何も見えない。先行のハイカーさんが一人、食事を準備中で、私も一休みする。
女峰山からハイカーさんが一人戻ってきて挨拶を交わす。ハイカーさん同士の会話が耳に入ってきて、それによると8時半に頂上に立ったが、既にガスで眺めがなかった。休憩中のハイカーさんは、展望が望み薄なので、ここから引き返すらしい。私もどうするか迷ったが、今日は女峰山再訪と脚試しが目的で、展望は二の次。初志貫徹で女峰山を目指す。
頂からガレ場を下り、ダケカンバが生えるなだらなな鞍部から少し登ると「水場→」の道標があり、右にほんの少し入ったところに、水場がある。塩ビのパイプからバンバン水が流れており、冷たくてうまい!これは生き返った。ここまで、2ℓプラティパスの水を半分近くも消費していたが、これで帰りの水の心配はなくなった。
水場から樹林帯を急登して稜線の上に出る。一時的に雲が切れて青空が覗き、女峰山の頂上がだいぶ近づいて見えて、元気が出る。この辺りで、赤薙山〜奥社跡で先行して、頂上から戻って来たハイカーさんとすれ違う。はやっ!
樹林に覆われた稜線を辿ると、左側に向かって崩壊した急坂に差し掛かる。ここは慎重に登れば危険はない。頂上稜線に登り着いて、さらに女峰山の頂上に近づく。
固定ロープのある小さな岩場を登り、頂上稜線を辿る。途中で屈強なおっさんグループと交差し、挨拶を交わす。ふと、先頭のおっさんの足元を見るとサンダルだ。すごっ!
稜線はガスに巻かれているが、北面のガスが切れて、野門沢源頭にある広い河原(その名も広河原)が俯瞰できる。その先の谷が断ち切れたところが布引滝だ。この光景は良く覚えているので、懐かしい。頑張って登って来た甲斐があった。野門沢の右岸尾根には、これも日光連山の秘峰、三界岳がある。私はまだ登ったことがない。頂上はどの辺だろう。
頂上稜線をゆるゆると登り、女峰神社で唐沢小屋からの登路を左から合わせる。女峰山の頂上は神社のすぐ裏手の岩峰だ。霧降高原から5時間10分で到着。コースタイムはなんとかクリアしたが、疲れたー。
頂上は狭く、数組のハイカーさんで満杯。一角の岩に腰を下ろして、まずは鯖味噌と缶ビール。🍺最高!しかし、食欲はないので、今回も昼食はパス。頂上は風が吹き抜けて、暑くもなく、寒くもなく、過ごしやすい。ガスで視界は閉ざされているが、一時、帝釈山が姿を現す。これと野門沢源流域が眺められたから、頂上からの展望は上出来だ。
ゆっくり休憩したのち、往路を戻る。下りは楽で、サクサク進む。水場で冷たい水をゴクゴク飲み、プラティパスを満タンにする。ガレ場を急登し、一里ヶ曽根に登り着く。行く手に延びる平坦な尾根を、重そうな雲が包もうとしている。
一里ヶ曽根を辿っていると、ポツポツと雨粒が落ちてきて、遠くでゴロゴロと雷が鳴っている。いよいよ来たか。雨具を着て、ザックを付属のザックカバーで覆うと、程なく本格的な雨降りになる。雷雨に遭うことは安全上宜しくないので反省だが、山で雨具を来て雨の中を歩くのは久し振りなので、それはちょっと楽しい。
雷鳴は遠くで数回、雨も長くは続かず、しばらくして止む。赤薙山の頂上に戻り、もう降りそうにないので、雨具を脱ぐ。赤薙山を下って笹尾根に出ると、一面真っ白にガスに覆われている。しかし、標高が下がると雲の下に出て、小丸山や山麓が眺められる。あとは、笹原の中の道を下り、小丸山から多くの観光客が登り降りする天空回廊を下る。レストハウスも営業していて、観光客で賑わっていた。なんとか10時間行程の山をこなせたが、登りはバテた。お盆休みの山歩きは、十分に余裕のある計画を立てよう。
帰りは、やしおの湯に立ち寄る。新型コロナ対策のため、やしおの湯は翌日(8/2)から8/31まで臨時休館になるとのこと。ネットで調べて事前に知っていたが、今日まで営業していて良かった。山歩きのあとの温泉がないなんて、楽しみ激減である。お客さんはそう多くなく、ゆったり湯船に浸かる。汗をサッパリ流したのち、R122経由で桐生に帰った。