樺崎八幡山〜奥山〜寺山
毎年のことながら、この時期は忙しくて、前回の山歩きからひと月ちょっとの間が空いた。運動不足が甚だしいので、この週末は軽い行程の山歩きでリハビリを図る。そんなとき、気軽に出かけることができて、最近、重宝しているのが足利百名山(以下、足百)巡り。今回は、樺崎寺跡を起点として、足百4座を周回してきました。
桐生を朝遅くにのんびり車で出発。足利市街からR293を田沼方面に向かい、北関東道足利ICの入口を過ぎて、樺崎八幡宮の看板のある交差点を左折。曲がってすぐの所にある「北の郷農産物直売所」に立ち寄る。天気の良い週末のせいか、大勢のお客さんが訪れて賑わっている。手作りの焼きそばとイチゴ大福が美味しそうなので、買って行く。
直売所から少し山間に入った所が史跡樺崎寺跡で、八幡山の山麓に芝生の園地や池が復元整備されている。ここの広い駐車場に車を置く。まず、樺崎八幡宮に参拝。説明板によると、樺崎寺は文治五(1189)年に足利義兼が奥州合戦の戦勝祈願のために創建し、樺崎八幡宮は当地で入寂した義兼を祀る。樺崎寺は足利氏の廟所として崇敬を集めたが、明治の神仏分離令で廃寺となった、とのこと。
樺崎寺跡から、裏山の八幡山に登る。今回は下調べしていなかったので、登り口を探してうろうろ。それらしいところが見当たらないので、八幡宮本殿の右手から適当に取り付き、杉林内の道なき急斜面を直登する。気温が高く、昨夜の雨で湿った落ち葉から饐えた匂いが立ち昇って、あまり気持ち良い登りではない。
登り着いた頂上稜線には明瞭な山道が通じ、左(南)に進むと三角点標石がある。山道はその先にも続いて山麓に下っており、文字が掠れてかろうじて「樺崎八幡山パワースポットコース」と読める道標がある。なーんだ、ちゃんと登山コースがあったのか。これは、登り口を確かめねばなるまい。
という訳で山道を下り、登り口を確認。昼になったので樺崎寺跡に戻り、園地のベンチで焼きそばを食べる。もちもちの麺と軽く焦げ目が付いてほくほくのジャガイモが美味い。
昼食後、リスタート。ここまでが前置きで😅、ここから登山ルートをガイドする。
樺崎八幡宮の本殿から向かって左へ、池の辺りの歩道を辿り、民家が点在する山の端の車道を進むと、一段上がったところに赤い鳥居が建っているのが見える。小さな道標もあるが、文字は掠れて読めない。
鳥居の左から奥に進むと笹藪に突き当たるが、ファイト一発、強行突破。すぐに藪を抜け、伐採地の作業道跡をジグザグに登る。ルートは分かりにくいが、所々にある「樺崎八幡山パワースポットコース」の道標で確認できる。
伐採地を斜め左上に登ると、ヒサカキ等の常緑樹が多い林に入る。林内は道型が明瞭になり、道標も多い。
やがて、三角点標石がある樺崎八幡山の頂上に着く。展望は樹林に囲まれて乏しく、南面の樹林が切れて、時期外れのツツジの花と低木藪越しに僅かに得られる程度だ。三角点標石の傍らには「史」と刻まれた御影石の標石もあり、国指定史跡の境界を表しているようだ。ここは足百No.57の頂だが、足百の山名標識は見当たらなくて、ちょっと残念。
頂上から先の稜線上には明瞭な山道がさらに続き、道標もある。平坦な稜線を辿ると石祠がある。最初、樺崎八幡宮から直登した際は、この辺りに登り着いた。
稜線を緩く下ると再び「史」の石標があり、その先に「←水道山 万民の水」との道標がある。行く手には木立を透かして北の尾根が見えているが、そことの間には北関東道の巨大な切り通しがあり、尾根筋は断絶している。道標から左へ戻り気味に下ると、地形図にも記載されている車道に出る。路面は枯れ薄や低木藪に埋もれて、完全に廃道化している。
九十九折りの車道からは、山麓を通る北関東道や、両崖山から大岩山にかけての山並み、足利市街が眺められる。両崖山では先月、大きな山火事が発生した。まだ完全には鎮火していないそうだが、ここからでは遠くて様子は伺えない(3/15に鎮火宣言が出された)。
山麓に下り着いて、北関東道の側道に出る。ここにある案内看板によると、下って来た九十九折りの車道は、配水場整備のために築造された進入路だそうだ(車道終点にはそれらしいものは見当たらなかったが🤔)。
北関東道をアンダーパスで潜り抜けて北側の側道に出、右の切り通しに向かう。
途中で斜め左に分岐する道に入ると、切り通しの法面の縁を登るプラ階段の道となる。フェンス越しに北関東道を見おろしながらプラ階段を急登し、切り通しでぶった斬られた稜線の上に登り着く。
稜線上には明瞭な道型が通じていて、緩く登ると小さな石祠がある。新しい紙垂とビールの空き缶があるから、最近お参りした人があるようだ。
石祠の先、道型は怪しくなるが、幅広くなだらかな稜線の上は藪も少なく、ヒサカキの小枝を躱しながら緩く登っていく。まだ冬枯れの明るい雑木林の登りとなると、ほどなく203m標高点のピークに着く。
ここまで来ると、北に続く稜線とその先にこんもり盛り上がる山王山が見通せる。遥か北方には白い雲が厚く長い堤となって押し寄せ、その下には雪に覆われた日光連山が横たわる。今日は気温は高いが、北風がかなり強い。低山でこの強さだから、北方の高山ではかなりの強風が吹いていそうだ。
ここから、左側が伐採斜面となった稜線を辿る。陽当たりが良いので笹藪の勢力が増すが、踏み跡が通じ、藪漕ぎまでは行かない。そこそこ歩かれている様子が窺える。左側には大岩山〜行道山の稜線、その手前に昨年末に歩いた田島川左岸尾根の展望が得られる。
明るい雑木林の稜線をアップダウン。伐採斜面から行く手に見えるピークは229m三角点峰のようだ。その右肩には山王山の頂が覗いている。
一旦下って、雑木林にぽそぽそと笹が生えた急坂を登ると、三角点標石(点名:奥山)のあるピークに着く。立木に「足利百名山 第37座 奥山」の山名標識が架かっている。これは足百ではお馴染みの山名標識だ。
さらに、笹と低木が少々藪っぽい雑木林のなだらかな稜線を辿る。緩い登りの途中に「足利百名山 第26座 寺山」の道標があり、うっかり見逃すところだった。地形図の264m標高点はこのすぐ先で、僅かに標高が高い。樹林に囲まれて、クリアな展望は得られない。
少し細くなった稜線を辿り、小ピークを過ぎると、行く手の木の間越しに山王山を仰ぐ。だいぶ近づいてきた。小さく下り、登り返すと今日一番の長い急坂となる。
登り着いたピークから、大網林道が通る鞍部を隔てて、山王山がなかなか高く眺められる。雑木林と薄暗い杉林の境を下って大網林道に出る。ここに山王山登り口があり、山王山を往復できるが、往復30分程かかるし、昨冬に登頂している(山行記録)ので、今回は割愛しよう(それにここまでで実は結構疲れている)。
ここからは足利・佐野市境稜線の縦走路を歩き、塩坂峠から樺崎寺跡に戻る。塩坂峠までは昨冬歩いていて、記憶に新しい。縦走路に入り、すぐに寺久保山への道を左に分ける。
市境稜線を辿り、岩場が点在する尾根を登って前寺久保山、続いて朝日山に至る。朝日山で一休み、イチゴ大福を食べる。イチゴの酸味と餡子のさっぱりした甘味のハーモニーが絶妙で美味しい。
さらに市境稜線を辿ると、まばらな雑木林から展望が開け、登って来た樺崎八幡山から奥山にかけての尾根が眺められる。北関東道の切り開きの法面が巨大で、良く目立つ。
301m三角点の肩を通過し、なだらかに下って少し登り返すと249m標高点。ここから右(西)に分岐する枝尾根に足百の未踏の1座があるので、立ち寄ってみる。
雑木林に覆われたなだらかな枝尾根を辿ると、フェンスに囲まれた伐採地が現れ、夥しい数のビールやチューハイの空き缶が、マニ車よろしく鉄柵に架けられ、折りからの強風に煽られてカランカラン鳴っている。こりゃなんじゃ〜。なんか不穏な雰囲気が漂っているのだが…。足百の山名標識を探すと、ビニルシートの小屋掛けの下に「足利百名山 第36座 御堂山(もけいやま)」の標識が隠れるようにぶら下がっていた。足百では立岩山がアレな頂だったが、ここは双璧を成すな😅
気を取り直して縦走路に戻る。尾根は痩せて小岩稜となり、足利側の北関東道や市街地の眺めが良い。
程なく塩坂峠に到着。ここから足利側へ峠道を下る。古の峠道で、関東ふれあいの道として良く整備されており、なかなか風情のある良い道だ。
枝尾根を絡んで緩やかに下り、谷筋に降りる。枝道の分岐に石道標が建つ。刻まれた文字は風化して「右… 左赤見 道」とのみ辛うじて読める。やがて小広く開けた平地に出て、「まんさくの花咲く道 起点」の道標やベンチがある。ベンチの周囲にマンサクが植えられているが、花は残念ながら疾うに終わっている。
未舗装道を歩くと谷が開けて、北関東道に突き当たる。アンダーパスを潜ると、田んぼが広がり民家が点在する長閑な山村となり、今日歩いた奥山〜寺山、山王山に続く尾根が眺められる。もう一度、アンダーパスで北関東道を潜ると、車を置いた樺崎寺跡までは僅かの距離である。
お昼から登り出して、休憩込みで4時間ちょっとのごく短い行程の山歩きであったが、脚力が落ちているせいか、意外とガッツリ歩いた感覚があり、リハビリとしてはちょうど良かった。日はまだ明るいが、陽射しが傾いて山陰に入ると流石に寒い。暖房を効かせた車内に入り、桐生への帰途についた。