深山
(この記事は温泉旅行3日目、鹿狼山からの続きです。)
温泉旅行4日目。阿武隈山地の北端で、亘理地塁山地の一座の深山(しんざん)に向かう。亘理地塁山地は、太平洋に沿って標高200〜400mの低山が約30kmに渡って一直線に連なるミニ山脈で、昨日登った鹿狼山もこの山地の南部に位置する。
小原温泉の宿より車で出発し、R133で角田市へ。そこから明通峠を越えて太平洋沿岸の山元町に入り、登山口の深山山麓少年の森の駐車場に車を置く。こちらも鹿狼山ほどは多くないが、ハイカーさんの車がある。
準備を整えて出発。まず、深山神社にお参りする。石段の参道の脇には「湯殿山」や「青麻三光宮」、「蠶供養」などの石碑が建つ。ちなみに蠶は蚕の旧字体。もぞもぞする感じの字形が良い。三光宮の石碑は船形山でも見たことがあり、気になって後日調べると、仙台の青麻(あおそ)神社を総本社とし、日月星の三光神を祀る信仰があるそうである。
神社の裏手から山道に入り、少年の森のマウンテンバイクコースに沿って歩く。マウンテンバイクの経験はないが、随分凹凸のあるコースで、かなりスリルがありそう。「深山自然観察路案内図」の標識があり、道標も要所にあって、道は良く整備されている。
少年の森の外れで右に折れ、緩やかな山裾をトラバースすると、「内手(うちで)」の標識のあるT字路に着く。ここから案内図に「こまがえしコース」と記載された山道を辿り、涸れ沢(と言っても僅かに水が流れる)を渡って杉林の中をゆるゆると登る。
短い坂を上がったところには「一服坂」の標識。雑木林と笹の中を登ると峰の清水で、ベンチの脇に沢の水をパイプで引いた水場がある。ここから一直線の急坂となるが、極短くて10分程で「鳥越峠」の標識のある稜線に登り着く。
稜線を右に辿ると展望台(国見台)だが、雑木林に囲まれて展望なし。「これより先は遊歩道ではありません」との標識があるが、稜線の先には踏み跡が続く。戻って稜線を左に辿る。杉林と雑木林の境界の稜線を緩くアップダウン。「お太鼓峠」の標識を過ぎ、杉林が切れて開けた斜面を登ると、三角点標石のある深山の頂上に着く。
頂上は平坦で広く、東西に展望が開ける。東の太平洋を望んでテラスが設けられ、3.11の被害者を悼む「鎮魂の鐘」が建てられている。また、西には角田盆地の明るい枯草色に覆われた平野と周囲の丘陵地帯を望む。低山ながら、なかなか眺めが優れた山だ。
頂上の東屋で一休みして軽くパンの昼食をとる間に、数組のハイカーさんが登ってきて鐘を鳴らしていく。復路は「たかぶつコース」を下る。しばらく平坦な稜線を辿ると、登山道が左に下り始める「鷹討山(たかぶつさん)まで0.1km→」との標識があり、S&Sにはゆっくり先に行って貰って、私だけ往復して登ってくることにする。
短い急坂を登ると鷹討山山頂で、「たかぶつ山 310m」の山名標がある。樹林に囲まれて展望は太平洋が僅かに見える程度。稜線の先には踏み跡が続き、縦走できるようである。
たかぶつコースに戻り、すぐにS&Sに追い付く。雑木林の尾根を落ち葉を搔き分け、木立の間から海を眺めつつ下る。傾斜が緩くて、至極のんびり歩ける。
「中峰の山桜」と言う桜の木を過ぎ、尾根末端に降りて沢を渡る。平坦な山麓の森林の中に入り、烏森の標識で左折。沢を渡って杉林を横断すると集落に出る。丘の上に上水道の配水タンクが見え、「水道山」の標識がある。
「←少年の森 東屋経由」の道標に従って、再び山道に入り、竹・杉・雑木の混じる林を横切って少年の森に入る。ここで右に東屋が見え、後で地図を見るとそっちが少し近道だった。左に折れて木の階段を降り、えっちらおっちら登り返して往路の分岐に出る。ここから少年の森駐車場までは僅かの距離である。
深山は山名とは真逆の本当に裏山と言う感じの低山で、急な登り降りもほとんどなく、子供から老人まで楽しめる山だった。ただし、歩いた距離は昨日の鹿狼山より長く、所要時間(休憩込み)も5割り増しで、意外と歩いた感じがある。今日も良い里山歩きが出来、満足して温泉とビールの待つ小原♨の宿に帰った。
(温泉旅行最終日、阿津賀志山に続く。)