鹿狼山
(この記事は温泉旅行2日目、女神山・千貫森からの続きです。)
温泉旅行3日目。そして年が明けて元日である。2016年最初の山歩きは、阿武隈山地北部、福島県と宮城県の県境稜線で太平洋を望む鹿狼山(かろうさん)に向かう。
2泊お世話になった土湯温泉向瀧旅館をチェックアウト。温泉街にある聖徳太子堂にお参りしたのち、車で出発して鹿狼山に向かう。福島西IC〜国見ICは東北道を利用し、阿武隈川沿いにR359を走る。福島盆地をゆったり流れた阿武隈川は、この区間では阿武隈山地に険しい渓谷を刻んで流下する。川と並行して走るR359は狭隘で交互通行の区間が断続し、国道らしからぬ国道(所謂、酷道)で、渓谷の景観とドライブが楽しめる。
丸森町で平野に出、R133で鹿狼山の南の大沢峠を越えて、東麓の水源の森登山口に到着する。駐車場には元日にも関わらずハイカーさんの車がたくさん。大人気の山だ。山頂で初日の出を拝むために登る人も多い、とガイド本も書いている。
案内板で今日の登山コースを確認。眺望コース(1.1km約40分)を登り、樹海コース(1.6km約40分)を下って周回する予定である。新しい注連縄が張られた鳥居を潜り、片倉沢沿いの幅広い登山道を進むとすぐに分岐があり、左に樹海コースを分けて右の眺望コースに入る。
登山道は大変良く整備されていて、杉林に覆われた山腹にジグザグを切って緩く登っていく。老若男女の多くのハイカーさんと前後する。中には競走して登っている小学生三人組も。元気だなあ。杉林を抜けると冬枯れの明るい雑木林に入り、尾根を絡んで登る。
やがて中間地点の標識のある地点に着く。振り返れば、疎らな雑木林を透かして山麓の平野とその向こうに広がる太平洋を望むことができる。この先にベンチがあり、一休み。行く手にはモヒカン刈りのように杉林が残る鹿狼山の頂上が見える。
雑木林の尾根を辿り、サラサドウダンの群落(もちろん、今は咲いていない)の間を登ると鹿狼山の頂上に着く。まず、鳥居を潜って石段を登り、鹿狼山神社にお参りする。社殿は大きくはないが立派だ。大山津見神を祭神に祀る。稜線上にあるので強い風が吹き抜け、紅白の幟が激しくはためいている。
神社の隣りは開けた広場となり、三角点標石がある。ベンチもあり、大勢のハイカーさんが展望を楽しんで休憩している。東は山麓を俯瞰し、太平洋を一望する。この沿岸も3.11の津波に見舞われたが、その跡は遠く傍目からでは解らず、風光明媚な景観に感嘆するのみである。
伝説では、昔、この山に年を経た鹿と白狼を連れた手長明神が住み、東の海まで長い手を伸ばして貝を漁って食べ、殻を捨てたところが新地貝塚になったとのこと。手の長い神様というのも面白いし、山名の由来に関わっていることも興味深い。
ベンチは風が強くて寒いので、鳥居脇にある東屋に入る。ここなら風は当たらない。初日の出詣で暖を取る際に使う薪や焚き火台が置かれている(一般は使用禁止)。パンとペットボトル飲料で軽く昼食を済ませて頂上を辞す。帰りは樹海コースを下る。
樹海コースは尾根上を緩く下る。急なところは丁寧にジグザグが切られて、非常に歩き易い。雑木林を透かして振り返ると、谷を隔ててモヒカン頭の鹿狼山頂上が仰がれる。低山ながら、なかなか深山の雰囲気のある山だ。
快適に下って、登山口に戻る。往復2時間の軽い行程の山歩きだったが、頂上から海が見える山はなかなか良いものである。
今日から宮城県白石市の小原温泉に2泊する。R113を走り、白石市街を経由して山形県南陽市方面へ、阿武隈川支流白石川の深く険しい渓谷に入る。やがて開けた平地に3軒の温泉宿があり、その中の旅館かつらやが今宵の宿である。チェックインすると天皇杯サッカー決勝戦が始まったところで、TV観戦(G大阪が2-1で勝って連覇)後に温泉へ。渓流に面して大浴場と露天風呂がある。豊富に湧き出す僅かにヌルっとする湯にゆったり浸かった。
(温泉旅行4日目、深山に続く。)