烏帽子岳

天気:☀️
メンバー:T
行程:鳩打峠 6:50 …小八郎岳(1470m) 7:35〜7:55 …ミズナラ平 8:30 …飯島分岐 9:05〜9:20 …セキナギ 9:30 …烏帽子岳(2195m) 10:40〜11:40 …セキナギ 12:20 …飯島分岐 12:35〜12:45 …ミズナラ平 13:05 …鳩打峠 14:20
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

烏帽子岳という名の山は日本全国に60数座あるが、今回、目指すのは、中央アルプス主脈の奥念丈岳(2303m)から伊那谷側に派生した尾根上の烏帽子岳(2195m)だ。天竜川支流の片桐松川の源流域を取り巻く2000m級の山の一座で、伊那谷の松川町と飯島町から登山道が通じている。

関東甲信は7/18に梅雨が開けた。7/19〜21の海の日三連休はどこに登ろうかと考え、同じく中ア前衛の山で、先月登った風越山がなかなか良い山で楽しめたので、今回の烏帽子岳を思いつく。松川町HPの「小八郎岳と烏帽子ヶ岳の登山」のページを参考にして、日帰りで出かけてきました。

桐生を深夜に車で出発。新和田トンネルを経由して、岡谷JCTから中央道に入り、伊那谷を南下する。今日は、青空に夏らしい白雲が湧く好天で、駒ヶ根ICの辺りからは大田切川の谷の奥に中アの主稜線を高々と仰ぎ、宝剣岳の鋭峰もくっきり見える。素晴らしい山岳展望で、毎度感嘆する。

高速を松川ICで降り、県道飯島飯田線(伊那街道)を北上。片桐松川を渡り、「←烏帽子岳 小八郎岳 登山口」の標識で左折。あとは要所の標識にしたがって山中の林道に入り、登山口の鳩打峠に向かう。つい2週間前に鉢盛山に登った際、林道走行中にタイヤがパンクし、大変な目に遭ったので、以前にも増して慎重に運転する。

鳩打峠の直下に広い駐車場(キャパ約20台)があり、ここに車を置く。簡易WCあり。既に10台位の車があり、烏帽子岳の人気にびっくり。地元の松本の他、山梨、三河等のナンバーがあり、中央道でアクセスしやすい地域からハイカーが集まっているようだ。

鳩打峠駐車場
鳩打峠・烏帽子岳登山口

駐車場のすぐ上が鳩打峠だ。峠と言っても峠の向こう側に道はなく、林道終点となっている。登山口の脇には登山ポストや登山ルート案内図があり、整備が行き届いている様子。「鳩打峠 標高1118m」の標識もある。歩き出しから標高が高くて涼しい。「↑大島山 2158m」の標識もあり、そちら方向には木の間から、鈍角三角形のピークがすっくと聳えているのが眺められる。山麓の信州まつかわ温泉清流苑(下山後、日帰り入浴で立ち寄る予定)に下る登山道もあり、所要1時間20分。

大島山を望む
ジグザグに急登

烏帽子岳登山道に入り、良く踏まれた道をジグザグに登る。道端に「小一郎」と赤ん坊のイラストが書かれた小さなプレートがあり、続いて小学生の「小二郎」がある(以降、段々成長したイラストの「小◯郎」プレートが丁目石のように置かれ、小八郎岳の手前に仏になった「小七郎」がある)。

「小三郎」を過ぎると、ベンチと「片桐松川ダム展望地」の標識があり、木立の僅かな隙間から急峻な谷間の底を覗き込むと、片桐ダム湖の湖面の一部が見える。靄って定かではないが、ダム湖には土砂が堆積して、水面の割合は僅かなように見える。

片桐ダム展望地
片桐ダム湖を俯瞰してズームアップ

「小四郎」で尾根上に登り着き、緩く尾根道を辿る。ベンチと「←烏帽子岳 小八郎岳→ 分岐」の標識があり、左に小八郎岳の巻き道を分ける。ここは小八郎岳の山頂に向かい、右の道へ。

小四郎のプレート
←烏帽子岳 小八郎岳→ 分岐

傾斜を増した尾根を登る。途中、年配だが快足のソロハイカーに追い付かれて道を譲る。植生保護の柵のある小さな笹原を登る。ここはササユリ自生地だそうだ。花期は6〜7月上旬とのことで、既に咲き終わって花はない。そう言えばササユリの花は、昨年7月に坊主岳に登ったときに見た。程なく、小八郎岳頂上直下の分岐に着き、右へ短い急坂を登って、小八郎岳の頂上に到着する。

小八郎岳への登り(ササユリ自生地)
頂上直下の分岐
頂上へ急坂を登る
小八郎岳頂上の休憩舎と石碑

頂上には休憩舎や「片桐小八郎之霊」と刻まれた石碑がある。南東を中心に眺めが開け、先行したソロハイカーさんが展望を楽しんでおられる。雲に覆われて伊那谷は見えないが、雲の向こうには白峰三山から塩見岳、悪沢岳、赤石岳、聖岳にかけての南アの高峰がスカイラインを描く。

小八郎岳から南アを遠望
烏帽子岳を望む

休憩舎の横手から反対側の北西を望むと、目指す烏帽子岳の鋭い頂が天を刺しているのが見上げられる。これはカッコいい山だなあ。テンションが上がる。烏帽子岳の左には、念丈岳、大島山など片桐松川源流部の山々が稜線を連ねる。

大島山(左)と烏帽子岳
頂上の隅っこに三角点標石

休憩舎で一休みしたのち、分岐に戻って烏帽子岳に向かう。巻き道へのショートカットの下り口を過ぎ、平坦な尾根道を少し進むとベンチがあり、巻き道に合流する。ここには「烏帽子岳登山道 3/10」の標識がある。先は長い。

左に巻道への近道を分ける
巻道と合流して烏帽子岳に向かう

カラマツ等の樹林と笹原に覆われた尾根をゆるゆると登る。20分程で「烏帽子岳登山道 4/10」の標識を通過。さらにだらだらと尾根道を登ると「ミズナラ平」の標識があり、すぐ先にベンチと物置がある。物置の張り紙によると「烏帽子岳〜越百山登山道整備事業」で2019年に松川町が設置したものらしい。

ゆるゆると登る
ミズナラ平

ミズナラ平を過ぎ、すぐに「烏帽子岳登山道 5/10」の標識を過ぎると傾斜が増す。大岩がポツポツ現れ、尾根の左側は切れ落ちて、深山の雰囲気がある。

傾斜が増す
大岩が点在

ひと登りして傾斜が緩むと「烏帽子岳展望地」の標識があり、木の間から烏帽子岳の頂上を仰ぐ。だいぶ近づいてきたが、まだまだ高い。少し進むと崩壊地の縁に出て、ここからも烏帽子岳の険しい山容が眺められる。

展望地より烏帽子岳を仰ぐ
崩壊地の縁から烏帽子岳を望む

登山道は左斜面の崩壊地を避け、右斜面の笹原を切り開いて付けられており、「新設登山道 注意!」の標識がある。大変良く整備されており、ありがたい。

「烏帽子岳登山道 6/10」の標識を過ぎて10分程で1849m標高点(飯島分岐)に登り着き、一休みする。木陰を涼しい風が吹き抜けて、汗がスーッと引く。ここには「烏帽子岳登山道飯島ルート→」の看板があり、飯島町側へ下る登山道が分岐する。看板によると登り170分、下り130分で、初心者向きではないとのこと。

新設された登山道を辿る
飯島分岐

飯島分岐から稜線を小さくアップダウンして進むと、セキナギと呼ばれる崩壊地の縁に出る。登山道の真下まで崩壊が進んで灰白色の岩盤が露出し、崩落した土石で埋もれた急峻な谷間が遥か下まで続いて、凄惨な景観を呈している。

烏帽子岳まで 7/10
セキナギ(下部)

ここから深い森林に覆われた急斜面の登りとなる。少し登ると再びセキナギの縁に出て、崩壊地が見おろせる。さらに急斜面を小さくジグザグに登ると「地蔵平」と「烏帽子岳登山道 8/10」の標識があり、大岩の基部に新し目の石仏が祀られている。

急斜面を登る
セキナギ(上部)
セキナギを見おろす
地蔵平

大岩を左から回り込んで越え、原生林に覆われて露岩の多い急斜面を登る。途中で、先行したソロハイカーさんが下って来るのと交差し、頂上はもう少し、と励まされる。やがて頭上が少し明るくなり、岩壁が現れる。岩壁の左脇を登ると、烏帽子岳の頂上がようやく近くに見え、樹林の上に頂上部の岩場が覗く。再び樹林に入って登ると、程なく「←烏帽子岳山頂 烏帽子岩上級コース→」の道標のある分岐に着く。どのくらい上級かは知らないが、ここは右の上級コースへ。

原生林を急登
頭上に岩壁が現れる
烏帽子岳の頂上が見えた
上級コース分岐

踏み跡を登って、すぐに尾根上に出ると、大きな岩場が連続する。マーキング類はなく、ルートを考えつつ登る。局所的に切り立った岩場となるが、ホールド、スタンスがガバチョとあり、快調に登る。

大きな岩場を登る
ルートはどこかな
ここを登っていく
烏帽子岩の頂に立つ

登り着いた岩場の天辺が烏帽子岩で、烏帽子岳の頂上はすぐそこの、もう一つ奥のピークだ。振り返って、登って来た尾根を俯瞰する。小八郎岳や伊那谷も見えるはずだが、惜しくも湧き上がる白い雲の中。それでも高度感が感じられて、爽快な眺めだ。

烏帽子岩から烏帽子岳頂上を望む
登ってきた尾根を俯瞰

烏帽子岩を下って巻き道と合流し、樹林の中をひと登りして烏帽子岳の頂上に着くと、目の前にドーンと中ア主脈の眺めが開ける。去来する雲に見え隠れして、惜しくも全貌はスッキリとは見えない。正面に一際高く鋭鋒が聳え、そこから左(南)になだらかな稜線が延びて、まろやかなピークに至る(後で登って来たソロハイカーに、鋭鋒は仙涯嶺、左は越百山と教わった)。素晴らしい。

巻き道との合流点から見た烏帽子岩
烏帽子岳頂上
越百山(左)と仙涯嶺を望む

烏帽子岳からさらに奥へ延びる稜線は、緩くカーブを描いて池ノ平山(2327m)へ続き、念丈岳に至る。頂上には「←念丈岳まで2時間30分」の標識がある。さらに片桐松川の谷を隔てて山並みが続き、徐々に高度を下げた先に伊那谷を俯瞰する。

池ノ平山(左)を望む
伊那谷を俯瞰

平たい石に腰を下ろし、展望を楽しみながら昼食休憩とする。まずは缶ビール。うま〜い。それからカップ麺のとんこつラーメンを食べる。休憩していると、数人のハイカーさんが奥の稜線から到着。お話を伺うと、念丈岳まで往復してきたそうだ。すごい。道は良いが、一部、迷い易いとのこと。

中アの展望に名残を惜しみつつ、下山にかかる。烏帽子岩は右側を巻いてガレ場を下り、樹林帯に入って鉄製階段を降りると上級者コース分岐に着く。あとは往路を戻る。

烏帽子岩の右を巻いて下る
この階段を下ってきた

急坂を下ってセキナギ上部まで来ると雲が消えていて、伊那谷や南アの展望が開ける。セキナギ下部から少し登り返し、飯島分岐で一休みして水を飲む。ここからは傾斜が緩んで、楽な下りだ。

セキナギ上部から南アを遠望
飯島分岐

小八郎岳手前の分岐で、眠気に抗えなくなってベンチに寝っ転がる。一休みしたのち、小八郎岳の巻き道に入る。浅い窪を下り、平坦なトラバース道を辿ると、小八郎岳からの登山道と合流する。

小八郎岳の巻道に入る
浅い窪を下る
山腹をトラバース
小八郎岳からの道に合流

尾根上を小さくジグザグを切って下ると、鳩打峠に帰着する。駐車場にはまだ数台の車が残っている。朝方は雲で見えなかったが、駐車場からも仙丈ヶ岳と白峰三山がよく見える。今日は最後まで好天と展望に恵まれた。

ジグザグに下って
鳩打峠に帰着
駐車場から仙丈ヶ岳と白峰三山を遠望
信州まつかわ温泉清流苑
背後に烏帽子岳を仰ぐ

帰りは信州まつかわ温泉清流苑に日帰り入浴で立ち寄る。清流苑は片桐松川の谷の入口にあり、背後には烏帽子岳を高々と仰ぐ。いやー、格好良い山だなあ。あれに登って来たとは、感慨深い。

清流苑は宿泊も可能な立派な施設で、三連休の中日とあって、ロビーは家族連れ等で賑わっている。入浴客も多いが浴室は余裕があり、透明で肌触りがぬるぬるするお湯にゆっくり浸かる。汗を流してさっぱりした後、松川IC入口の酒屋で地元の日本酒「喜久水金泉」1.8ℓを土産に買い、中央道に乗って桐生への帰途についた。