風越山

天気:☀️
メンバー:T
行程:かざこし子どもの森公園 7:45 …押洞登山口 7:50 …石灯籠 8:15 …秋葉様 8:50 …虚空蔵山(1130m) 9:05〜9:35 …ベニマンサク自生地 9:35 …新展望台 10:20〜10:30 …白山社奥社 10:40 …風越山(1535m) 10:55〜11:40 …ベニマンサク自生地 12:30 …延命水 12:35 …秋葉様 12:45 …かざこし子どもの森公園 13:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

関東甲信は6/10に梅雨入りしたが、この週末は土日とも晴れの予報。久し振りに遠出しての山歩きがしたくなり、中央アルプス前衛の風越山(かざこしやま)を思い付く。飯田市街の間近に聳え、頂上近くに白山社奥社を祀る信仰の山で、古くから飯田市民に親しまれている。信州百名山の一座。標高は1535m、山麓からの比高は約900mあり、歩き応えも結構ある。せっかく遠出するので飯田駅の近くに宿をとり、土曜に風越山、日曜に恵那山に登る計画を立てて、出かけてきました。

桐生を未明の3時半に車で出発。上信越道、R142(新和田トンネル)を経由して、岡谷ICから中央道に入り、伊那谷を一直線に南下する。天気は予報通り青空が広がって、中央アルプスの3000mに手が届こうかという高峰が、白雲を薄く纏って屛風の如く高々と聳えているのが見え、迫力満点。

高速を飯田ICで降り、飯田市街の「かざこし子どもの森公園」の広い駐車場に車を置く。駐車場の看板には、利用時間は8:30〜18:00で、この時間帯外は施錠する、と記されているが、現在7時半でも鍵は掛かってない。

かざこし子どもの森公園駐車場
虚空蔵山に向かって坂を上る

準備を整えて出発。駐車場を出て、住宅地の急な坂道を登る。行く手には風越山の前衛の虚空蔵山がこんもりと聳える。背中を太陽に炙られて暑い。やがて「風越山登山口」の標柱があり、左の道に入って、ゴルフ練習場の脇を登る。民家が尽きると谷間に入って簡易舗装の道となる。木陰に入り、ようやく日差しが遮られて涼しくなり、助かる。道端の苔の上に居るのは、まっくろくろすけ?

風越山押洞登山口
林間に入る
何か居る😅
狢坂

「狢(むじな)坂」の看板を過ぎると未舗装の幅広い山道となる。奥で切り返して斜めに登り、尾根上の道となる。少し登った所に山丸三の紋と「高美徳霊神」の銘が刻まれた立派な石碑がある。

尾根上をジグザグに登る
霊神碑

緑に包まれた尾根道をゆるゆると登ると、左から登って来た滝の沢ルートと合流する。滝の沢ルートが表参道で、一対の石灯籠が表参道からの参拝者を迎えるように建つ。また、登山ルートマップの案内板もあり、実はあまり下調べをしていなかったので、これから歩くルートを確認しておく。

石灯籠
風越山登山ルートマップ
(画像クリックで拡大表示)

登山道はここから傾斜を増した尾根筋を登るが、幅広い道で、小さくジグザグを切って登るので、大変歩き易い。また、緑陰を涼しい風がコンスタントに吹き抜けて、至極快適に高度を上げて行く。道端には如意輪観音などの石仏が点々と建ち並んで、信仰の山であることが窺える。「日向馬留(ひなたまとめ)」という標識があり、かつては馬もこの道を登ったらしい。

道端の石仏
日向馬留

「苦竹(にがたけ)入口」との標識があり、左に夕源平(ゆうげんびら)への山道を分ける。さらにジグザグに登ると「蚕種(こたね)石」がある。同じ名前の石は今年の1月に登った高取山でも見た。こちらの蚕種石は、粒々の苔を蚕の卵に見立てているそうだ。

尾根の左を絡んで登るとT字路となり、「秋葉山大権現」の大きな石碑と如意輪観音の石像が並んで建つ。また、「秋葉様」の標識がある。T字路の左の道は虚空蔵山を巻いて風越山に向かう。そちらの道は復路で使う予定。往路は右の道を進み、虚空蔵山を経由して風越山に向かう。

蚕種石
秋葉様(秋葉山大権現)

道は少し細くなるが、依然、良い山道が続く。尾根の右斜面が切れ落ちた箇所があり、「奴谷(やっこたに)」の標識がある。昔、小童が落ちて死んだ難所だそうだが、現在は整備された道で、どこに難所があったのか全く分からない。やがて、樹林が切り開かれた草斜面に入り、石段を登ると虚空蔵山の頂上に着く。

虚空蔵山へ尾根道を登る
頂上直下の登り

頂上は小広く、大きな休憩舎があり、休憩適地。三方を鬱蒼とした樹林に囲まれているが、南方が草斜面で展望が開け、飯田市街を中心とする伊那谷を俯瞰する。この眺めは高度感があって素晴らしい。お薦め。伊那谷を悠々と天竜川が流れ、その向こうにはちょっと靄っているが南アルプスの高峰が連立する。どれがどの山かな。展望盤があり、見比べながら山座同定する。左には間ノ岳、農鳥岳。他の峰からポツンと離れて兜のような塩見岳。正面には悪沢岳、赤石岳、聖岳のビッグスリー。右の方に見える顕著な双耳峰は池口岳らしい。

飯田市街を俯瞰
展望盤にも何か居る
休憩舎
頂上の片隅に座す石仏

頂上広場の奥の高みに虚空蔵の社と山頂標識がある。虚空蔵のご本尊は、今は白山社の里宮に移されているとのこと。社の裏側には、地元の保育園の園児がグループ登山した記念の絵馬が掛けられている。急で登り2時間半程の山に登るとは、さすが山岳県長野の園児である。

虚空蔵
虚空蔵山頂上

虚空蔵山の頂上で展望を堪能した後、風越山に向かう。平坦でなだらかな尾根を進むと、秋葉様で分かれた巻き道と合流する。ここには「風越山のベニマンサクの自生地」との案内看板がある。ベニマンサク(マルバノキ)とはマンサク科の植物で、秋に紅色の花が咲き、紅葉が見事とのこと。葉の形は別称の通り丸く、飯田西中学校の校章に用いられているらしい。本州中部地方以西に分布し、どおりで聞いたことがない。付近には、緑の丸い葉を広げたベニマンサクがたくさんあった。

巻道と合流
ベニマンサク

檜や笹を交えた樹林の尾根をゆるゆると登ると「比丘尼(びくに)」の標識がある。昔はこの辺りに比丘尼の庵室があり、すぐ先の「金(花)草原」で摘んだ花を神仏に備えたり、参詣者に売った、と伝えられているとのこと。

比丘尼
金(花)草原

さらに尾根道を登って行く。道端に木の鳥居のような物が倒れているのを見かける。これは「矢立木」だそうで、確かによく見ると木の柱に矢羽が付いている。

尾根道を登る
矢立木

今庫の泉方面へ下る細い山道を左に分けると、すぐ先に「展望台」標識があり、伊那谷や南アが眺められるが、樹林の梢に遮られて、いまいちの展望。この先150mに新展望台を整備中との標識があり、そちらに期待しよう。

今庫の泉分岐
展望台からの眺め

伐採された尾根上に出て、短い距離だが、強い日差しを浴びながら登る。小ピークを巻いて裏から登ると新展望台だ。こちらは樹林に遮られることなく、大展望が楽しめる。南アの山並みに掛かる雲が少し下がり、主稜線が雲の上に出て良く見える。この展望もなかなか良い。

伐採斜面を登る
コアジサイ
新展望台からの眺め
一の鳥居

新展望台のすぐ先で、野底山森林公園・風越山麓方面に下る山道を分ける。「駐馬休み」という標識があり、飯田の領主が参拝するときは、ここまで乗馬して登り、馬を留めたとのこと。このすぐ先が一の鳥居で、「信州飯田 風越山 白山社」の額を掲げた赤鳥居が建つ。

鳥居を潜ると花崗岩の露頭の多い細尾根となる。すぐに、大岩に「駐馬巌」や「南無妙法蓮華経」と大きく刻んだ駐馬巌(ちゅうまがん)碑がある。岩を掘り込んだ階段を登ると、前鬼と後鬼を左右に従えた役行者像が大岩に祀られている。

駐馬巌
岩を刻んだ階段を登る
役行者の石像
参道石段を登る

檜と笹に覆われた斜面を石段で登ると、白山社奥社の随神門が建つ小広い平地に着く。説明板によると随神門は安永四(1775)年、この奥の拝殿は享保十六(1731)年に建立されたものとのこと。

さらに石段を登って白山社奥社へ。奥社は風越山の前衛ピークの頂上にある。幣殿と拝殿は江戸時代に増築されたものだが、本殿(国指定重要文化財)は室町時代後期に建てられたものだそうだ。古い歴史があって一驚。

白山社奥社随神門
白山社奥社拝殿

拝殿の左脇から風越山に向かう。小さなギャップに下り、木の根、岩角を摑んで急坂を登り返す。鎖も張られているが、なくて済むレベル。傾斜が緩み、樹林と笹原の中を進む。2体の石仏を過ぎると、風越山頂上に着く。

風越山頂上に向かう
鎖が設置された急坂
石仏2体
風越山頂上

頂上は広く平坦で、真ん中に三角点標石と山名標識がある。ブナなどの樹林に囲まれ、展望は全くない。中央アルプスが見えないのはちょっと残念。丸太に腰を下ろして昼食休憩とし、まずは缶ビール。今日は気温が高いので美味い。それからカップ麺を作って食べる。その間、ハイカーが数組、登頂しては戻っていく。

昼食後、頂上近くにあるという句碑を見に行く。南面へ笹の間の細い踏み跡を下ると、自然の大岩を用いた句碑があり、飯田市出身の詩人・英文学者の日夏耿之介(ひなつこうのすけ)の晩年の句「秋風や狗賓の山に骨を埋む」が刻まれている。

頂上に登り返し、往路を戻って下山にかかる。帰りは虚空蔵山には登らず、手前から巻き道に入る。幅広い山道で、ほぼ水平に山腹をトラバースする。

日夏耿之介句碑
虚空蔵山は右から巻く

程なく、延命水と称する水場に着く。集水域があんまり広くなさそうに見えるが、塩ビのパイプから冷たい清水がチョロチョロと湧き出しており、飲むと冷たくて寿命が伸びる心地。有難い。

延命水
冷たい清水が湧き出る

さらに森林に覆われた山腹をトラバースする。木の間から振り返ると、既に風越山が遠く高い。程なく秋葉様に着き、あとは往路を戻る。

風越山を振り返る
秋葉様に戻る

ここまでの山行中は、終始、涼しい風が吹いて快適だったのだが、下るに連れて気温が上がり、風も弱まって来た。山麓の住宅街に下り着くと木陰もなくなり、強烈に暑い。今日の気温はいったい何度あるんだろう(後日調べると、この日の飯田の最高気温は32.9℃に達していた)。

ジグザグに下る
市街地に下り着く

かざこし子どもの森公園の駐車場に、予定よりだいぶ早く帰着。宿(飯田ステーションホテルまつむら)のチェックイン時刻まで時間があるので、近くのイオンに立ち寄って、冷房の効いた館内でアイスクリームを食べて時間を潰したのち、宿に向かう。

宿でシャワーを浴びて汗を流し、コインランドリーで洗濯したのち、夕食で街に出かける。居酒屋は多いが、営業している定食屋を探してうろうろ。中央通り2丁目の山水楼という中華料理の店に入る。手頃な価格で悪くなかった。土曜の夜の飯田の中心街は人出がそこそこ多く、酔っ払いのグループも居る😅。駅東のコンビニで買い物して宿に戻り、明日の恵那山の準備を済ませて早めに就寝する。明日まで天気が良さそうなので、楽しみである。