坊主岳

天気:
メンバー:T
行程:駐車地点 6:40 …坊主岳登山口 6:50〜7:15 …1429m三角点 8:00 …坊主岳(1961m) 9:20〜10:35 …1429m三角点 11:35 …坊主岳登山口 12:15 …駐車地点 12:20
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

7月に入り、ぐずつき気味の天気ながら最高気温が30℃を越える蒸し暑い日が続く。今度の日曜も猛烈な暑さになるとの予報。低山には登れないなー。標高がある程度高くて涼める山に登りたい。GPV天気予報で雲の動きを見ると、長野県南部が比較的に晴れそう。遠出になるが、木曽山脈北部の坊主岳に登ることにする。2000mに僅かに足りないだけの標高があるので、酷い暑さは避けられるだろう。という訳で、出かけてきました。

桐生を深夜に車で出発。佐久南IC→R142新和田トンネル→岡谷ICを経由して、伊那ICで中央道を降りる。車で伊那に来たのは、経ヶ岳に登ったとき以来、20年振り。ここからR361権兵衛トンネルを通って塩尻市側に抜ける。権兵衛トンネルは全長4467mの長いトンネル。20年前はなかった気がする(後日調べると2006年開通だそうだ)。

県道姥神奈良井線に入って奈良井川の下流に向かうと、V字の深く細長い谷底に満々と水を湛える奈良井ダム湖が現れる。湖畔で最初に大きな沢(イノコ沢)を渡る橋の袂に「→坊主岳登山口」とデカデカと書かれた案内標識がある。予めヤマレコの記事で得ていた情報によると、以前はここからイノコ沢に少し入った所に数台駐車できたそうだが、水害で駐車スペースが流失したとのこと。県道をさらに500m程進んだ所の広い路側に車を置く。

駐車地点
ホタルブクロ

駐車地点から登山口へ車道を戻る。道端に咲くホタルブクロなどの初夏の草花をカメラに収めながらのんびり歩いていると、丈が高くて黄色い花穂を付けた、私は初めて見る草が生えている。とにかくデカくて衝撃的。後日調べるとビロードモウズイカ、別名ニワタバコという帰化植物らしい。

ビロードモウズイカ
花をズームアップ

車道から灰緑色の水を静かに湛えたダム湖の湖面を眺める。上流の谷を見通した奥には奇麗な三角形の頂が高く聳えている。あの山は大棚入山(2375m)かな。興味を惹かれる。

奈良井ダム湖(ならい湖)上流を望む
坊主岳登山口

「坊主岳登山口」の案内標識からイノコ沢沿いの作業道に入ると、すぐに左に登山道が分岐する。作業道はこの先、沢に近づいてすぐに終点となる。転回困難なので、車で入らない方が吉。登山道の入口には関係者以外立入禁止の看板があり、ギョッとさせられるが、「坊主岳登山口」の文字が消えかけた板切れが落ちているし、他に道はないし、登山道以外の山林に踏み入るなということだろうと解して、登山道に入って登り始める。

左の登山道に入る
登山道入口の看板

登山道は樹林に覆われた急斜面を大きくジグザグを切って登っていく。7分程で石垣で仕切られた2段の平地のある地点に登り着く。宮坂七郎著『新版信州の山・南部』の坊主岳の記事によると、かつては石仏群と小鳥居があったそうだが、現在は石垣だけが残る。

急斜面をジグザグに登る
神社跡の石垣

登山道はここから尾根上の一直線の急登となる。強い風が尾根の右から左に吹き抜けるので、涼しくて助かる。道は良く、段差が少なくて登り易い。効率よく高度を稼いでいく。

尾根上を急登
ひたすら急登

やがて笹原が現れ、その中の切り開き道を登る。笹原が尽きて傾斜が緩まると、1429m三角点に着く。三角点標石の横には2脚の椅子がある。子供向けの小さな椅子で、「1429mベンチ」「どうぞの椅子」と書いてある。有り難く椅子を利用させて頂き、水を飲んで一休みする。なお、『新版信州の山・南部』ではこの地点を小坊主峰と称している。

笹原が現れる
1429m三角点

1429m三角点からしばらくは傾斜も中弛みして、笹原に覆われたなだらかな尾根を進む。相変わらず展望はないが、右手に木立を透かして坊主岳から経ヶ岳に向かう稜線が高々と見える。「1500m」と書かれた標識を過ぎると徐々に傾斜が増し、笹原の切り開き道を延々と登る。やがて急坂が現れ、その手前で登山道が二手に分かれる。右には「男坂」、左には「女坂」の標識がある。ここは男坂へ。尾根を絡んで急登すると、すぐに左から登って来た女坂に合流する。

笹原を緩く登る
1500m標識
男坂女坂分岐は男坂へ
左から上がって来た女坂

程なく「1700m」の標識を過ぎ、ひらすら一直線に急登。ぐんぐん高度を稼いで「1800m」の標識を過ぎる。樹林の背丈が低くなり、日差しが笹原に届くところもある。夜来の雨か朝露かで笹の葉が濡れており、トレッキングパンツの腿から下に水が滲みてくるが、今更、下ゴアを履くのも面倒なのでそのままゴー。ところどころ木立の隙間から、経ヶ岳方面へ連なる稜線が目の高さ辺りに見えてくる。ちょんと尖ったピークは2184m峰のようだ。胸突き八丁の登りで、時々、立ち休みを入れる。風が通って涼しいのは助かる。

1700m標識
1800m標識
2184m峰を望む
頂上直下の急登

ようやく樹林を抜け、丈の低い笹原に覆われた坊主岳頂上に登り着く。頂上は小広く平坦で、ほぼ360度の展望が開け、雰囲気が明るく素晴らしい。笹原の中央に三角点標石と山名標柱、その傍らに祠と霊人碑がある。祠の前にはベンチもあるので腰掛けて、時間は早いが昼食休憩とし、まずは缶ビールと鯖味噌煮、それからカップヌードル担担を食べる。

坊主岳頂上に到着
三角点標石と山名標識
頂上の祠と霊人碑
ササユリ(1)

昼食後、改めて展望を楽しむ。トレッキングパンツはいつの間にか乾いていた。頂上に着いた時はまだ雲が多かったが、晴れ間が広がって来た。まず目を引くのは南東に深い谷を隔てて聳える2184m標高点の鋭峰だ(『新版信州の山・南部』では仏谷と称している)。その右肩には経ヶ岳が丸い頂を少しだけ覗かせている。2184m標高点の左奥に見えるなだらかな頂は黒沢山(2127m)のようだ。さらに左に目を転じると八ヶ岳連峰が蓼科山から権現岳までズイーッと眺められる。

八ヶ岳連峰を遠望
2184m峰(仏谷)と経ヶ岳

経ヶ岳から南に連なる山並みは、権兵衛峠で高度を落としたのち、大きく盛り上がって木曽駒ヶ岳の山塊を起こす。木曽駒の右には木曽福島の市街が俯瞰される。

西には御嶽山を遠望するが、膨大な山容の山裾が見えるだけで、頂上は雲に隠れている。北西には木祖村の集落や畑地を望み、その奥にはまだ雪を残す乗鞍岳を遠望する。

木曽駒ヶ岳を遠望
乗鞍岳を遠望

頂上の祠の傍には、「坊主岳 一心霊神」や「坊主岳開山 覚一霊神」などの石碑が建つ。黒御影石に銘を刻んだ新しい石碑で、最近も御嶽信仰で登られていることが窺える。頂上には他に古い石碑があるが、風化して文字は読み取れない。

古い石碑の奥には笹原に微かな踏み跡が通じ、北の峰続きの1961m標高点峰に向かっている。1961m峰は、ネット情報によると天照山(あてらやま)と呼ばれている。行ってみようかとも思ったが、笹藪が深いのと頂上は眺めがないそうなので、止めておく。

古い石碑群
1961m峰を望む

笹原の中にはササユリがポツポツと咲いている。これは初めて見る花だ。奇麗だなー。その名の通り葉が笹に似ているので、パッと見、笹に花が咲いているのかと勘違いする。

ササユリ(2)
ササユリの蕾

頂上は風が吹いて涼しく、展望も良くて快適。思わずのんびりして長居する。そろそろ、下山にかかろう。復路は往路を戻る。頂上直下の急坂を下ると風が弱まり、暑さを感じ始める。笹の葉ももう濡れていない。途中でソロハイカーさんとすれ違う。山中で出会ったのはこのお一方のみ。復路は女坂を通る。男坂とどっちを通っても大差ない。1429m三角点で一休みしたのち、あと一息の下り。木の間にダム湖に湖面が見えると、程なく登山口に下り着く。車道を歩いて駐車地点に戻る。

6時間弱の短い行程の山歩きだったが、急坂の登降で歩き応えがなかなかあり、頂上は雰囲気が良くて展望が楽しめたし、貴重な花も見ることができて、遠路来た甲斐があった。

下山にかかる
登山口に下り着く

帰りは伊那IC近くの「みはらしの湯」に日帰り入浴で立ち寄る(600円)。ここは経ヶ岳に登ったときも立ち寄っており、久し振り。伊那盆地を俯瞰し、甲斐駒から塩見岳にかけて南アを一望する眺めが良い。みはらしファームの農産物販売所にも立ち寄って、土産に五一わいん赤1.8ℓを買う。屋外はとても暑い(この日の伊那の最高気温は34.6℃)ので、ソフトクリームを食べる。なお、この近辺でもビロードモウズイカを見かけたので、長野では蔓延っているのかも。伊那ICから高速に乗り、桐生への帰途についた。

P.S.翌日、筋肉痛になった😅