四阿屋山
桐生を早朝に車で出発。R140バイパス、R299を経由して小鹿野市街に入ると、薄らと白くなった両神山が高く大きく見える。先日、高いところにはまとまった降雪があったようだが、周囲の低山には雪は見えないから、今日登る四阿屋山も多分雪はないだろう。道の駅両神温泉薬師の湯に着き、第二駐車場に車を置く。今日は快晴。予報では日中はだいぶ暖かくなるようだが、まだ朝早い山間は空気がヒンヤリと冷たい。ULDジャケットを着込んで歩き出す。
今日は、つつじ新道で四阿屋山に登り、薬師堂コースで道の駅に戻る予定。まず、車道を歩いて、四阿屋山南麓のつつじ新道入口に向かう。県道皆野両神荒川線を南下すると、すぐに「あずまや山ハイキング道 桜本コース入口」の大きな道標がある。道標の指す方向には、畑地の向こうに四阿屋山の東尾根が低くなだらかに横たわり、春めいた長閑な里山風景が広がる。


Y字路で右の県道薄小森線に入る。左の車道は三峰口駅近くのR140に通じ、そちら方向には「山」の字を体現するかの如くピークを連ねる熊倉山が、これも薄らと白くなって眺められる。熊倉山には、酉谷山から縦走して登頂している(山行記録)が、こちら側から、また登ってみるのも良いかも。


車道は里山風景から一転して険しい谷間に入り、小森川の渓流を見おろして進む。押溜(おとも)コース入口の道標を過ぎ、大堤バス停を見るとそのすぐ先に「あずまや山つつじ新道」の道標がある。道の駅からここまで、小鹿野町営の路線バスを使う手もあったが、歩いても30分程度で、ちょうど良いウォームアップになった。なお、この先の堂上地区には節分草園があり、今年は2月末〜3月中旬が見頃だったようだ。


登山口の物々しい警告看板を見て、登山道を登り始める。しばらく尾根筋を急登し、杉林に覆われた浅い窪に入って、ほぼ一直線状に登る。下生えのシダの緑が鮮やかで綺麗だ。


やがて頭上からのしかかるような岩壁が現れ、その右手の斜面を登る。岩壁の基部には石垣があり、かつては祭祀物があったのかも。大きく蛇行して斜面を登り、竹林を通って尾根の上に着く。


尾根道を登って、山居分岐の道標に着く。「これより上級者コース」の標識や、その先には「初級者は山居方面へ迂回してください」の注意看板がある。


注意看板のすぐ先が鎖場だ。下段は岩壁の基部を斜め左上に登る。ここは鎖にあまり頼らずとも登れる。上段の鎖場が難関だ。ここを登った動画がYouTubeにたくさんあり、いくつか試聴して予習して来ているのだが、やはり実際に見ると威圧感と言うか、圧迫感が全然違う。ほとんど垂直に近く、日影と日向の境界の上側はツルツルでスタンスが見えない。深呼吸して気を落ち着け、登り始める。途中、良いスタンスが見つからなくて、セミになりかける。小指幅の狭いスタンスに左足の靴底の外エッジを乗せ、左手で鎖、右手で大きなホールドを掴み、深く曲げた左足を伸ばして何とか体を押し上げる。この一歩は怖かった😱


難しいのはこの一歩だけで、あとは傾斜が緩んで無事に登り切る。こういう鎖場は筋力が衰えたら危ないし、怖いので、そろそろ卒業だな。


このあとも岩尾根が続き、鎖が張り流されているが、傾斜が緩いので問題ない。ところどころで展望を楽しむ余裕も出てくる。小さな瘤に登ると左側の樹林が切れて、先日登った秩父御岳山が薄らと白く雪を纏って眺められる。


大きな岩場を右から巻いてなだらかな尾根を進むと、再び鎖場。こちらは傾斜が緩いので楽勝。


登り着いた小ピークには「鎖場注意」の標識が立つ。小さなアップダウンが続き、痩せた岩尾根を登る。ところどころで展望が開けた明るい尾根道となり、変化に富んでなかなか楽しい。標高が上がり、秩父御岳山の稜線の向こうに和名倉山が浮かび上がって見えて来る。




痩せ尾根や岩稜を辿ると、両神神社奥社から登って来た登山道に合流して、つつじ新道は終点となる。ここには「つつじ新道 岩場クサリ場多し 初級者通行止」の看板が立つ。初級者でなくとも、難場の鎖場の下降は避けた方が吉である。


合流点から岩と木の根が露出した短い急坂を登ると、四阿屋山の頂上に着く。頂上は狭く、三角点標石と山名標柱、展望案内板が寄せ集まって設置されている。2人組のハイカーさんが休憩中でご挨拶。樹林に囲まれているが、北面の樹林の切れ間から両神山が眺められる。両神山は最近何度も眺めているが、今日は青空を背景に薄らと白く雪に覆われ、一段と素晴らしい姿を見せている。




山頂から一段下がった所に1基の石祠と2基のベンチがあり、ベンチに腰を下ろして一休みする。こちら側の展望は、木立を透かして東麓が見える程度。周囲には雪が残るが、気温が高くて融けている。まだ昼食には早いので、水を飲み、ブロックチョコを齧って腹に入れたのち、下山にかかる。
つつじ新道分岐に戻り、両神神社奥社への登山道を下る。急斜面にジグザグを切った道で、手摺りに鎖が設置されている。足元には融けかけた雪が残り、滑らないよう注意して下る。


途中、道の下側に滑落保護ネット(と称して防獣ネット)が張られた箇所がある。そう言えば、四阿屋山で滑落事故があったと聞いた覚えがあるような、ないような。ここがその場所か(後日調べると、2021年2月末に滑落死亡事故が発生し、山頂へのルートが4月まで通行止になったらしい)。


両神神社奥社まで降れば安全圏だ。鳥居山コースを左に分けて直進し、杉植林のなだらかな尾根をゆるゆると下る。やがて両神国民休養地の園地に入り、展望広場と称する緩斜面を下る。ツンと尖った武甲山が霞んで遠望される。道の脇の梢に咲いている薄黄の花はロウバイとは違うような。福寿草は既に終わっていて、咲き残りを数輪見かけたのみ。花期に合わせて来たかったなあ。




立派な展望休憩舎があり、そこから山腹をトラバースして尾根道に戻る。しばらく尾根を辿ると、右斜面にボーッとピンク色が広がっているので、立ち寄って見に行く。女坂というジグザグ道を下ると芝地の斜面に出る。ピンク色は花桃のようだ。武甲山や熊倉山を遠望し、先日登った猪狩山の山頂もちょこんと飛び出て見える。春爛漫の良い風景だねえ。展望を楽しんだのち、尾根道に戻る。




尾根道をさらに下ると車道に出る。この車道を右に進んだ所には大きな駐車場があり、園地の入口まで車で来ることもできる。




直進して車道を横断。尾根道を辿ると小さな休憩舎があり、右に道の駅に降りる薬師コースを分ける。ここは左へ、花菖蒲園に降りる薬師堂コースに進む。


いくつか「寺沢福寿草園地」の道標があり、左に園地への山道が分岐するが、あまり歩かれていない模様。福寿草はあるのかな。程なくキャンプ場に下り着き、渓流を左岸に渡る。左岸には花菖蒲園が広がるが、まだ芽が出る前で、鹿の食害を防ぐために防獣ネットで囲われて、中を通り抜けることはできない。綺麗に整備されているから、時期が来れば見事な花が咲くのではないかと思う。




花菖蒲園入口の向かいが鳥居山コース入口で、「友好の林」という額を掲げた中華風の門が立つ。車道を下って行くと両神神社里宮の横手に着く。境内のアセビの叢には鈴なりに可愛い花が咲いていて、春の訪れを感じさせる。


両神神社に隣接して、薬師堂が建つ。説明板によると、平安時代の創建と伝わり、目の病気に霊験あらたかな薬師として庶民の信仰を集め、日向薬師(神奈川県伊勢原市)、鳳来寺薬師(愛知県新城市)とともに「日本三體薬師」に数えられているとのこと。本堂正面は広い間口に太い円柱が建ち並び、重厚な趣きがある。また、多数の千羽鶴が飾られていて、信仰の篤さが窺える。ここから僅かな距離で道の駅に帰着する。


山中ではチョコを齧っただけで、もう昼近いから腹ペコだ。薬師の湯で一風呂浴びたら、併設の食堂で昼食にしよう。全く知らなくて偶々だが、入浴料金(700円)とわらじカツ丼(900円)を合わせて1,400円とお得なセットが販売されていたので即購入。入浴後、小鹿野名物わらじカツ丼を食す。揚げたての熱々の衣は甘塩っぱいタレで味付けされ、中の肉は柔らかくて、大変美味い。


それから直売所にも立ち寄って、土産を買う。以前、毘沙門山に登った時に通りがかった醸造所(Deerlet Field Brewery)の製品で、蜂蜜を醗酵させた作った酒があり、どんな酒か興味が湧いたので、シトラス・ミードを購入。つまみに黒ニンニクも買って、帰桐した(後日飲んだ蜂蜜酒は、甘さの中にキリッとした味わいがあり、独特の風味でなかなか美味しかった)。