猪狩山〜秩父御岳山

天気:☁️のち☀️
メンバー:T
行程:三峰口駅 7:48 =🚌= 古池バス停 8:00 …猪狩神社 8:05〜8:20 …猪狩山(760m) 9:00〜9:20 …タツミチ 10:20 …御岳山(1080m) 10:50〜11:30 …タツミチ 11:55 …御岳山登山口 13:10 …三峰口駅 13:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

桐生を未明に車で出発。R140バイパス、県道秩父荒川線、R140を経て、三峰口駅に到着。駅駐車場に車を置く。隣りに駐車したおじさんに挨拶して、駐車料金を払いに駅に行くと、ちょうど窓口が開いたところで、さっきのおじさんが駅員さんだった。料金は普通車1日530円也。

駅前のバス停で両神庁舎前行7:48発の小鹿野町営バスを待つ。三峰口駅は秩父鉄道の終着駅で、かつては三峯神社への玄関口として重要な役割を担っていたが、現在ではマイカーによるアクセスが主流になり、駅前は寂れた感がある。7:30に列車が到着すると、ソロハイカーさんが数人下車。しばらくしてバスも到着、一緒に乗り込む。他のハイカーさんは両神山に登るようだ。

三峰口駅
古池バス停から猪狩山を仰ぐ

バスで10分程移動し、古池(ふるいけ)バス停で下車する。料金は200円也。古池の集落から、間近に鋭く聳える猪狩山(いかりやま)を仰ぐ。バス停から車道を少し戻ると「そば福→」の看板と「猪狩山御嶽山登山口」の標識があり、そこから枝道に入る。「猪狩神社」の社号標を過ぎ、山裾を回って小さな谷に入って行くと谷の奥まで見通せて、すっくと聳える猪狩山を背にして、猪狩神社の参道石段とその上の社殿が見えてくる。これは雰囲気のある良い景色だなあ。

参道入口に着き、石鳥居を潜って石段を登る。右手には「松洗院」の扁額を掲げた朱塗りの山門が建ち、その奥には小さなお堂がある。

猪狩神社の背後に猪狩山が聳える
猪狩神社の参道入口

石段の途中の踊り場には「猪狩山」の額束を掲げた新しい木の鳥居が建ち、上段の石段の脇に一対の狛狼が鎮座する。左側は阿形の雌狼、右側は吽形で立派な一物が模られた雄狼だ。台座には「昭和八年四月吉日」の銘がある。

狛狼(左側)
狛狼(右側)

登り着いた境内には古びた社殿が建つ。説明板によると、この社殿は、日本武尊が東征の折、この地を荒らす猪の群れを退治した故事に因み、伊弉諾命(いざなぎのみこと)・伊弉冉命(いざなみのみこと)、後に日本武尊を合祀したもので、現在の社殿は寛政五(1793)年の建立とのこと。また、1月1日、4月第3日曜日、7月20日、11月第3日曜日に祭礼があり、祭典後、氏子・参拝者によって、奥宮のある猪狩山に登り、日本武尊が猪を追い払ったときに雄叫びを上げた故事に倣って「鬨の声」をあげる、という神事が行われるとのこと。現代にも信仰が続いており、興味深い。

社殿の右側面には「韓信股くぐり」を題材とする立派な彫刻がある。ところで、韓信股くぐりって何だっけ🤔。詳しい説明板があり、読んでみると面白い。長いのでAIで要約すると『韓信は若き日、長剣を背負いながらも無頼の徒に「俺の股をくぐれ」と挑発された。周囲が見守る中、韓信は抵抗することなく股をくぐり、嘲笑を浴びた。しかし、この屈辱は将来の天下を見据えた韓信の冷静な判断であり、「三十六計逃ぐるにしかず」を体現した行為であった』ということだそうだ。なお、彫刻は明治20年、秩父郡山田村の彫工、大島角太郎の作とのことである。

猪狩神社社殿
「韓信股くぐり」の彫刻

趣のある猪狩神社に参拝して、今日は出かけて来て良かったな、という気分に既になっているが、山歩きはここからだ。社殿の左から登山道に入り、杉林の急斜面を登る。途中、作業道を横断してさらに登る。

社殿の左から登山道に入る
急斜面を登る

林道御岳山線のカーブを通過すると、さらに急傾斜に。落ち葉に埋もれた微かな道型を辿り、小さくジグザグを切って急登する。ところどころに固定ロープが張り流されているが、古いので体重を掛けて頼るのは禁物である。

林道御岳山線のカーブを通過
さらに急になった斜面を登る

滑ったら止まれない急斜面が続き、特に左側は切れ落ちて恐ろしい。神事の際は皆んなここを登るのだろうか。お年寄りは無理なんじゃないかなあ。下を見るとクラクラするので、足元だけを見て必死に登る。昨年末に登った毘沙門山の急坂にはビビったが、この急坂の危険度はそれ以上だ。

ようやく傾斜が緩み、猪狩山の頂上に登り着いてホッとする。ここは下りたくない。先行のソロハイカーさんが休憩中で、急でしたねー、と挨拶を交わす。頂上には石祠が2基あり、紙垂が張られてカップ酒がお供えされている。樹林に囲まれて展望に乏しいが、木の間を透かし見ると古池の集落が俯瞰でき、ほぼ真下に見える。いやー、とんでもなく急な所を登って来たものだ。

左側は切れ落ちている
猪狩山頂上

ゆっくり休んだのち、御岳山に向かって縦走を開始する。幅は狭いが、平坦な尾根がしばらく続く。やがて幅広くなだらかな尾根となり、杉植林に入る。左に作業道が現れるが、尾根筋を忠実に辿る。道標があり、登山道として整備されているようだ。ゆるゆると登って、822m標高点を越える。

細尾根を進む
忠実に尾根を辿る
「←御岳山・大滝 猪狩山→」の道標
822m標高点

この先もなだらかな尾根道がだらだらと続くが、急坂に差し掛かると岩場が現れ、ちょっと変化がある。ここで先行していたソロハイカーさんに追いつき、先に行かせて貰う。

なだらかな尾根道が続く
岩場を登る先行者

834m標高点の辺りから、木立を透かして行く手に御岳山の頂が見えてくる。林道御岳山線に出て横断。案内図によると、御岳山線は秩父市大滝地区と荒川贄川(にえがわ)地区を結び、林業の他、御岳山登山のアクセス道路としての利用も想定されているらしい。確かにここまで車で来れば御岳山に楽に登頂できる(が、歩き応えがなくなってつまらなくなるから、私はしないけどな)。

御岳山を望む
林道御岳山線を横断

林道からザレた尾根を登る。右側は林道の法面で切れ落ちており、高度差があって結構危ない。

手摺りのロープに沿って登る
右側は林道の法面

程なく、三峰口駅からの登山道と合流する「タツミチ」と呼ばれる地点に着く。ピークかと思ったら、単なる尾根道の途中だった。帰りは三峰口駅へ下る予定。ここから御岳山の頂上を往復する。

タツミチ
行く手の尾根は傾斜を増す

10分程、緩やかに尾根道を辿ると、尾根は傾斜を増して、登山道は左斜面を絡んで急登する。猪狩山の登り程ではないが、ここも結構急だ。

左斜面を斜めに急登
痩せ尾根を辿る

尾根上に復帰して痩せ尾根を辿ると、御岳山の頂が間近に見えてきて、大滝(強石)分岐に着く。ベンチがあり、ソロハイカーさんが肉を焼いている。う、美味そう🤤。頂上は目と鼻の先だ。御堂と一対の狛犬を過ぎ、石段を登って三角点標石のある御岳山頂上に着く。

強石分岐
頂上直下の御堂
御岳山頂上
頂上の三角点標石

御岳山は、実は35年振り2回目の登頂だ。流石に昔過ぎて、全く記憶がない。頂上には普賢神社の奥宮があり、石組みの上に祠が祀られ、右脇には梵鐘が吊り下げられている。石組みには「秩父御嶽山」の銘板がある。

周囲の展望は、木立で一部の方向が遮られるが、北には両神山や二子山、毘沙門山を遠望し、南には荒川の深い谷を隔てて、雲取山や大洞山(飛龍山)、和名倉山(白石山)などの奥秩父の山並みが薄らと冠雪して眺められる。

両神山を遠望
雲取山(左)と大洞山を望む

石段の隅に腰をおろして昼食休憩とする。一応、ULDジャケットを羽織るが、風がなく、そんなに寒くない。ガソリンコンロでお湯を沸かし、カップ麺の天ぷら蕎麦を作って食べる。

ゆっくり休んだのち、下山にかかる。タツミチまで戻り、三峰口駅へのコースに入る。杉植林帯のなだらかな尾根で、途中の小ピークは登らずに巻いているので楽だ。枝尾根の迷い易い分岐には道標が設置され、間違った尾根に入り込まないよう、トラロープで塞がれている。

タツミチから三峰口駅に下る
尾根を絡んでゆるゆると下る

途中、平坦な枝尾根に突端にある標高733m三角点に立ち寄る。何かあるかのでは、と期待したが、展望もなく、何もなかった😅。この先も、同じような尾根を絡んでゆるゆると下る道が続く。登りに利用しても楽なルートではないかと思う。

標高733m三角点に立ち寄る
なだらかな尾根の下りが続く

やがて、細尾根の上に出ると眺めが開け、山麓にだいぶ近づいたことが分かる。しばらく細尾根を急降下し、登山道が右折して斜面を下り始める地点で尾根上を直進すると、すぐに見晴らしの良い岩場がある。荒川両岸の河岸段丘に広がる集落や三峰口駅を俯瞰し、武甲山を遠望する。これは絶景だ。後日調べると、この展望岩場は二番高岩(にばんたかや)と呼ばれているらしい。

細尾根となり山麓が見えてくる
二番高岩から三峰口駅を俯瞰

右斜面をジグザグに下ると、尾根上に建つレトロな送電鉄塔に着く。この辺も眺めが良い。さらに下って、墓地の脇を通る。「即道の墓 奇形な墓石」と書かれて倒れかけた標識があり、傍に2基の卵塔と不規則に穴が開いた石がある。この石にはなにやら文字が刻まれており、これが奇形な墓石か。なお、後日調べると、即道とは元禄時代に秩父に住んでいた僧侶で、伝説的な奇人らしい。

急斜面をジグザグに下る
送電鉄塔を通過
三峰口駅と熊倉山を望む
「即道の墓」奇形な墓石

墓地の横を下り、贄川の集落の一角に出る。この地点には道標あり。左手に広い芝地と梅林があり、白い梅が満開。大勢の人が集まって賑わっている。と思って、よく見たら、皆んなかかしだった。贄川は「かかしの里」として知られているらしい。昼は良いが、夜に見たらギョッとするだろうな。

御岳山登山口
梅林に集まった人々?

右手に車道を辿り、贄川宿の入口を通る。贄川宿は秩父往還の宿場で、江戸時代には栄えたらしい。また、明治時代には地質学者のナウマン博士や、宮沢賢治、幸田露伴が立ち寄り、東方の眺望を絶賛したとか。R140から荒川に架かる白川橋を渡り、三峰口駅に帰り着く。休憩込みで5時間半とそう長い行程ではなかったが、急坂の登りがあり、なかなか歩き応えがあった。

白川橋の橋上から下流の眺め
三峰口駅に帰り着く

帰りは日帰り入浴で久し振りに大滝♨️遊湯館に立ち寄る(後日調べたら、前回は妙法ヶ岳の帰りで11年も前だ。懐かしい)。それから、道の駅あらかわにも立ち寄り、自分用の土産に日本酒「武甲正宗」を買って、桐生への帰途についた。