六甲山西部縦走
神戸に所用があり、ついでに周辺の山に登ることを計画。神戸には昔、一度行ったことがあり、そのときは魚屋道(ととやみち)から六甲最高峰を越えて有馬温泉に下った(山行記録)。今回は、六甲全山縦走路を歩いてみようかな。これは須磨浦公園駅から宝塚駅に至る約53kmにも及ぶ縦走路で、毎年11月には六甲全山縦走大会が開催されている。全山縦走には標準で約15時間を要するらしい。外秩父七峰縦走の約42kmを上回り、一日で完全踏破は難しそうだが、果たしてどこまで行けるか、試しに歩いてきました。
前日は所用と宴会の後、JR須磨駅まで鉄道で移動して、駅前の旅館に泊まる。この日は阪神が18年振りにリーグ優勝を決め、それと関係あるかどうかは不明だが、JR甲子園口駅のホームでおきた転落事故のため、列車が遅れて大混雑。宿に着いたときはグッタリした。
当日は未明の4時に出発。縦走路は車道を歩く区間が長いので、靴はトレランシューズを選択。山歩きに不要な荷物や着替えはスーツケースに入れて、JR須磨駅のコインロッカーに預けようとしたのだが、駅舎はまだ開いていなくてシャッターが降りている😱。これは抜かった。仕方ないので、駅近くのコンビニから宅急便で今晩の宿(甲子園近くの宿を予約してある)に送る。着くのは明日の午前中になるが、まぁ、なんとかなるだろう。
コンビニで食料と飲料を買った後、R2を歩いて須磨浦公園駅に向かう。途中から須磨浦公園に入り、遊歩道を歩いて須磨浦公園駅に着く。始発の時刻が近づいて、駅には煌々と明かりが灯っている。ここが全山縦走の公式なスタート地点となる。
駅から鉢伏山に向かって車道をジグザグに登り、途中から近道の山道に入る。山中はまだ真っ暗なので、ヘッドランプを点け、よく整備された石段を登る。まだ夜なのに全然涼しくない。風もなく、湿度も高くて、すぐに汗だくとなる。今日は暑い一日になりそうだ。
須磨浦ロープウェーの山上駅を過ぎ、鉢伏山の頂上は巻く。尾根道を少し登って、旗振山の頂上に着く。明るくなったので、ヘッドランプを仕舞う。頂上には売店があるが、早朝なので、さすがにまだ営業前だ。標高は253mと低いが、目の前には海が広がって、眺めはなかなか素晴らしい。神戸市街や須磨海岸を俯瞰し、淡路島や明石大橋も眺められる。
旗振山から尾根道を緩く辿る。鉄拐山(234m)の頂上は踏まず、左の巻き道を進む。分岐点には漏れなく「六甲全山縦走路」と書かれた道標があり、進路が分かり易い。常緑樹のウバメガシに覆われた尾根道を歩くと、花壇や休憩舎のある公園に入る。山歩している地元のお年寄りが多い。
おらが茶屋と「高倉山」の石碑を過ぎ、眼下の高倉台の市街地に向かって、幅が狭くて長い階段を急降下する。市街地に下り着き、団地の間の歩道を歩く。市街地にも全山縦走の道標が設置され、見落とさなければ迷わない。また、この区間は車道との交差点もない。
団地を通り抜けて歩道橋を渡り、山に突き当たって左折。左下に片側3車線の車道を見おろしてしばらく進み、道標に従って右折。階段道を一直線に急登する。この登りはきつい。立ち休みして振り返ると、通って来た高島台や鉄拐山を眺め、明石大橋と淡路島を遠望する。周辺のなだらかな山地は至る所が切り開かれて市街地が広がり、高速が通じている。
階段道を登り切り、さらにひと登りして栂尾(とがお)山の頂上に着く。木組の展望台があり、眺めが良さそうだが、先は長いので休まず通過。細い尾根上の山道を辿って、15分程で三角点標石のある横尾山の頂上に着く。樹林に囲まれ、神戸市街が僅かに見える位で、こちらの頂は展望があまりない。
横尾山の頂上から風化してザレた岩盤が露出した尾根道を下る。やがて木立のない花崗岩の尾根となり、鞍部に向かって階段を下る。鞍部から岩尾根を登り返すと「名勝 馬ノ背」の標識が建つ。この岩尾根を中心とする山稜は「須磨アルプス」と呼ばれている。規模は小さいが岩稜が続いて面白く、アルプスと称されるのもうなづける。
岩尾根から樹林に入り、ベンチのある小ピーク(東山)を越える。木の階段道を交えて斜面をジグザグに下り、横尾の住宅街に出る。要所の道標に導かれて車道を歩き、途中から歩道に入る。歩道の上で寛ぐ猫にご挨拶。階段を下り、阪神高速の下を潜り抜ける。
小さな谷間の住宅地に入り、妙法寺の前を通る。川を渡り、通学中の大勢の生徒とすれ違い、交差点を直進して坂道を緩く上がっていく。時刻は8時少し前。既に4時間近く歩いている。ジリジリと暑くなってきて、上から下までぐっしょり汗だくだ。たまたま見つけたコンビニで冷たいペットボトル飲料を買ってがぶ飲みし、一息つく。ここでGPSを取り出して現在位置を確認すると、右折ポイントを見過ごしていたことが発覚する。でもまあ、冷たい物が飲めたから、結果オーライ。
右折ポイントを探しながら車道を少し戻り、「六甲全縦⇨」の案内プレートを発見。背丈の高い草に隠れていたので見落とした。住宅地の坂を上がり、小さな谷間に入って登る。
野路山公園という児童公園に登り着いて右へ。山道に入り、尾根の上を登る。頂上に近づき、左に石段道を分ける。この石段を登ると荒熊神社と春日神社があるそうだが、通過。平坦なトラバース道を進む。
高取神社の参道石段の下に着く。高取山の山頂は石段の上にあり、鳥居と神社が見えているが、ここも割愛して通過。参道を下ると月見茶屋がある。店先にはカリカリを与えられた数匹の猫がベンチを占拠し、まったりと寛いでおられる。もう一軒、安井茶屋を過ぎると広場とWCがあり、人はこちらで休憩できる。「六甲全山縦走路 スタートより14km地点」の案内があり、これが正確とするとようやく1/4を歩いたことになる。須磨浦公園駅からここまで約4時間を要しているから、単純計算で全行程16時間。六甲全縦、半端ない。
せっかく登ったと思ったら、三度目の下りとなり、林間をゆるくジグザグに下り、巨大な鋼製スリット砂防堰堤を見上げて谷間を下り、丸山町の住宅街の一角に出る。ここから「六甲全縦」の標識を目印に車道を歩いて、住宅街を通り抜ける。川を渡ったり、丘を越えたりして屈曲と上下が多い。いよいよ高くなった太陽が照りつけて、汗がだらだらと流れる。この市街地の歩きは、かなり応える。
市街地を通り抜けて、神戸電鉄有馬線の鵯越(ひよどりごえ)駅に着く。鵯越と言うと、源平の戦いで源義経が仕掛けた「鵯越の逆落とし」の鵯越かしらん。踏切の手前で右折。「菊水山周辺案内図」の看板がある。山道に入り、森に覆われて薄暗い公園を抜け、山腹をトラバースする。木陰に入り、少し涼しい。一旦、車道に出、短い山道を経て鳥原川の渓谷沿いの車道に出る。路面は落ち葉に覆われ、車通りはほとんどない。バイパスの高架橋の下を通り、不動明王を祀る小さな社を過ぎる。
鈴蘭台下水処理場を回り込んで通過し、その奥から歩道に入る。右下の渓谷と左上の鉄道に挟まれて、しばらく歩道を歩く。かつては、この辺りに菊水山駅があったらしい(現在は廃駅で立入禁止)。
鉄道の橋梁を潜り、その先で右折。鳥原川を歩道橋で渡って山道に入り、菊水山へ標高差約290mの登りにかかる。谷に沿って緩く登り、小さな尾根上の擬木の階段道となって急登する。右手にはゴルフ場が見える。
段差の大きな階段の登りで汗だくのバテバテになって、大勢のハイカーさんが憩う菊水山の頂上に着く。頂上は広場となり、神戸市街や淡路島の眺めが良いが、疲れて展望を楽しむ余裕はない。東屋の日陰に入り、腰掛けに寝っ転がって、ひと眠りする。
20分程休憩して復活。縦走路を進み、行手にこんもりと盛り上がる鍋蓋山、左下に住宅地を眺めながら、ザレた尾根を下る。この辺りに城ヶ越と呼ぶらしい。溜池のほとりを歩き、深い渓谷に架かる長い吊り橋(天王吊橋)を渡る。橋下には渓谷に沿ってR428(有馬街道)が通じ、車の往来が非常に多い。
吊橋を渡ると、鍋蓋山に登る山道から分かれて、有馬街道に下る道がある。この分岐で一休み。このあとはどうしようか。暑さで体力を消耗して、余裕がない(この日の神戸の最高気温は32.6℃に達した)。食料、飲料とも尽きかけて、鍋蓋山を越えようとすれば、マジで遭難する気がする。と言う訳で、ここで縦走を中断し、有馬街道にエスケープすることにする。スマホで検索すると、北の鈴蘭台にコンビニがある。まずは水分補給のため、コンビニを目指そう。
有馬街道に降り、交通量の多い車道の路側を身を竦めながら歩く。長いトンネル(小部トンネル)をヘッドランプを付けて通り抜けると水吞バス停があり、地蔵尊石塔が建つ。
水吞交差点で左折して、鈴蘭台に入る。坂を上がったところのコンビニで買い物をしてパンを食べ、ペットボトル飲料をがぶ飲み。生き返った〜。それから、起伏の多い市街地を抜け、鈴蘭台駅に向かう。
鈴蘭台駅から有馬線に乗車。平日なので乗客は少ない。エアコンが効いて快適。新開地駅で阪神電鉄本線に乗り換え、今夜の宿のある甲子園駅に向かう。翌日、宅急便で送ったスーツケースの到着を宿のロビーで待ち、11時半頃に受け取ったのち、帰宅の途につく。
六甲全山縦走53kmのうち、今回は前半の約21kmを歩いた。低山ながら大きなアップダウンが続き、暑さもあってヘロヘロになった。六甲全縦、侮り難し。この続きは、涼しい季節に機会を作って、是非歩いてみたい。
参考ガイド:『六甲全山縦走マップ』