堂山・大七山

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一昨日、足利百名山(以下、足百)の三日月山〜名草山の2座に登った。この日も連続して近場の軽い山歩き。足百の堂山と大七山(だいしちやま)の2座に登ってきました。

堂山

行程:平石八幡宮 11:35 …堂山(70m) 11:40 …平石八幡宮 11:45

桐生をのんびり車で出発。足利に向かって三重小俣通りを走る。途中のコンビニで昼食のパンとペットボトル飲料を買い、「←栃木県立足利清風高等学校」の標識で左折。山に向かって道なりに進み、足利清風高の裏手にある平石八幡宮に向かう。八幡宮の隣、山下町五丁目自治会館の前の道幅が広いところに車を置く。

まず、八幡宮に参詣する。「平石八幡宮と智光寺跡」と題する説明板があり、次のように記されている。

往古、この土地には浄土庭園をもつ東西二百メートル、南北三百メートルという大伽藍の智光寺という寺院があった事が発掘調査により確認されている。
文永二(1265)年、足利家四代当主・足利泰氏(やすうじ)が建立したとされている。泰氏は鎌倉幕府に出仕していたが、ある日突然出家し、その後、この平石に閑居したと伝えられている。この八幡宮は「智光寺」の鎮守と思われ、智光寺の唯一の遺構である。

歴史に疎いので時代背景もわからないが、突然の出家と閑居の理由はなんだろう。それにもよるが、大伽藍を建てる財力があるなら実質的に FIRE のようなもので羨ましい。

八幡宮の裏山、と言うか丘が堂山だ。やまの町桐生「堂山」の記事によると、八幡宮の東隣にかつて智光寺の阿弥陀堂があったことが山名の由来らしい。

自治会館(左)と平石八幡宮
西隣りの溜池へ

堂山へは西側の溜池のほとりから道がある。登山靴で歩くような行程はなく、スポーツサンダルのままでOKだろう。カメラとログ記録用のGPSだけを持って行く。簡易なコンクリート橋を渡って登り始めると、すぐに大岩を背にした石祠がある。正月にお供えされた🍊が残っているな、と思ってよく見たら、何故か蛍光ピンクのゴルフボールであった。

溜池のほとりから山道を辿る
石祠
安政四丁巳(1857)年六月吉日

緩やかな尾根の上の明瞭な踏み跡を登る。意外と山らしい、と思ったが、あっという間に終了。足百の山名標識を見つける。周囲を見渡すと、木立を透かして民家や溜池が見える。この先に道はない。写真を撮って、往路を戻る。

緩やかな尾根の上の踏み跡を辿る
堂山頂上の山名標識

溜池に戻り、眺めが良いので、堤の上を歩いて見る。次に登る大七山や、その北に連なる山々を仰ぐことができる。奥の頂上は樹林が疎らで岩場があり、見晴しが良さそうだ。溜池越しに見る堂山も、池と築山のある庭園のように見えなくもなく、ちょっと良い風景。

溜池から展望テラスの峰(左)を仰ぐ
溜池越しに見た堂山

堂山は往復10分しかかからず、あっさり登ったが、堤の上で写真を撮る際、うっかりセンダングサの枯れ藪に足を踏み入れて、ズボンや靴下に種を大量にくっつけてしまい、面倒なことに。特に靴下に付いた種は登山靴を履いたときに異物になるので、念入りに取り除いていたら、堂山の登頂よりも余程時間がかかった。以後は面倒がらずに履き替えよう😅

大七山

行程:春日神社 12:05 …長松寺 12:15 …大七山(170m) 12:35 …展望テラス 12:50〜13:15 …見晴し 13:40 …大七山 14:05 …春日神社 14:15

次は大七山に登る。中腹に「酒は大七」という白い大文字の野立て看板があり、山麓一帯から目立ってよく見える山である。

私の場合は、両毛線の車窓からみた看板が、印象に残っている。長旅からの帰路で、小山駅から両毛線で桐生駅に向かうと、最後は所要時間約1時間のローカル線の旅となる。山前駅辺りで右(北)側の車窓にこの看板が見えると、もうすぐ桐生駅だから、ようやく帰り着いたな、と実感される。

そんなこともあって、看板があることは以前から知っていたが、「大七山」と呼ばれる山だと知ったのは、足百にちょくちょく登り出した最近のことである。

平石八幡宮から車で移動して、春日神社の前のスペースに駐車する。すぐ隣には長松寺(ちょうしょうじ)の霊園が広がっている。

春日神社に駐車
春日神社

神社に参拝したのち、麓から見た看板の写真が一枚欲しいと思って、回り道して長松寺に向かう。神社の石鳥居を潜って市街に出、山に近い所からは樹林に隠れて看板は見えないので、長松寺入口の寺標まで遠ざかって撮影。文字ははっきりとは読めないが、在処はわかるから、この写真でまあいいか。

長松寺寺標より大七山を望む
中腹に白く文字が見える
長松寺本堂

長松寺に着くと山門の前に「長松寺の宝篋印塔」の説明板がある。実物は墓地の中にある、とのことで、立ち寄って見に行く。南北朝時代の宝篋印塔として貴重なものらしい。

大七山へは、本堂の前から向かって右(東)へ進み、新築の民家の前を横切ると墓地の端に作業道があり、これを上がる。

長松寺宝篋印塔(真ん中の塔)
墓地の端の作業道を上がる

すぐに右に分岐して樹林に分け入る山道がある。この山道に入って緩斜面をトラバースすると、50m程先で左に分岐して斜面を直登する道型があるので、これを登る。

山道に入りトラバース
左折して斜面を直登

あとは斜面を一直線に登る。落ち葉が積もり、ポサポサと笹藪があるが、道型は明瞭だ。ところどころにマンリョウがあり、鈴生りの赤い実が鮮やか。

一頻り急登して「酒は大七」の看板に登り着く。これはかなり大きな看板だ。木製の台座は年季が入った色をしているが、文字は白色が鮮明。「酒は」に強調の下線がある。看板の前は樹林が切り開かれて展望が開け、関東平野が一望できる。放置すると木が成長して看板を隠してしまうから、定期的に手入れがされているようだ。

明瞭な道型が上へ延びる
野立て看板からの展望
酒は
大七

看板までは明瞭な道型が通じているが、この先は不明瞭だ。とにかく、幅広い斜面を急登する。樹林の下枝が少し煩い所もあるが、藪はない。真っ直ぐ上に登って行くと、ポンと開けた平地に着いて、ここが大七山の頂上だ。この平地は明らかに神社などの大きな建物があった跡地だろう。樹林に囲まれて、展望は全くない。

道型のない急斜面を直登
大七山頂上

平地の奥に石段の痕跡と石祠がある。石祠の塔身には「…巳年」の銘があるが、全部は読み取れない。木の幹に「足利百名山 第44座 大七山」の山名標識が掲げられている。

頂上の石祠
頂上の山名標識

既に13時近くでお腹が減ったが、ネット情報によると、この先に展望が開けた岩場があるそうなので、そこで昼食にしよう。頂上から北へ、幅広くなだらかな稜線を辿る。ヒサカキなどの樹林に覆われているが、藪はなくて気分良く歩ける。

北へ尾根を辿る
214m標高点

緩く登って、214m標高点のなだらかな頂上に着く。ここから南南東の枝尾根を少し進み、松が生えた岩場に突き当たって左から巻くと、テラス状の大岩の上に出る。山麓を見渡すように石祠が置かれ、神さびた雰囲気がある。これはなかなか良い展望台だ。

展望テラス
松の枝の間に石祠

山麓に堂山や足利清風高の校舎とグラウンドを見おろし、北関東道の向こうに点在する小さな山々を眺める。右へ目を転じると大七山のこんもりとした頂があり、その向こうに金山、さらに遠くには微かに奥秩父や御荷鉾山の山影を望む。

山麓と北関東道を俯瞰
大七山と金山(奥)を望む

一方、左手(東)にはここから峰続きの障子岩と野山が意外と高い。手前には堂山の溜池からも眺めた岩尾根が見え、ちょっと興味を引かれる。あそこまで行ってみようかな。野山の右の尾根はガクンと落ちて、その向こうには天狗山が見えている。

障子岩(中央)と野山を望む
天狗山(中央)を望む

テラスの上は絶好の休憩スポットだが、今日は風が強くて寒い。風を避けて岩陰で昼食休憩とし、コロッケ&たまごドッグを齧る。

昼食後、先程見た岩尾根まで行ってみる。214m標高点のピークから北へ尾根を辿る。こっちもあまり藪はない。樹林に覆われているが、切れ間から左手(西)に足百のどんつく山(219m標高点峰)と、その向こうに赤城山を望む。

214m標高点の北のピーク
どんつく山と赤城山(奥)を望む

ちょっとザレた下りがあり、それから尾根の右を巻き気味に進むと、どんつく山と障子岩を結ぶ稜線に着く。地形図で見ての通り、稜線から向こう側はゴルフ場で、広大な芝地となっている。人影、人声はなし。芝地の向こうには、以前歩いたことのある羽黒山〜行道山の尾根が見える。

稜線に近づく
稜線の向こうはゴルフ場

稜線を東に進む。地面にはゴルフのロストボールが点々と落ちている。堂山の石祠のお供物は、ハイカーさんがこの辺りから持っていった物に違いない。幸い、今はプレーヤーはいないようだから大丈夫だが、こんな代物が飛んで来たら危険極まりない。この稜線を歩くことは避けた方が良い。

稜線から右折し、荒れた作業道を横切って枝尾根に入る。作業道の痕跡が縦横にあるが、路面に樹木が生えて完全に廃道化している。枝尾根の先端には期待通り、見晴しの良い岩場がある。

主尾根を絡んで東へ
作業道跡を横断して枝尾根へ
作業道の痕跡が残る枝尾根の先端へ
見晴しの岩場

この岩場に立つと、山麓がより急角度で俯瞰される。堂岩と隣の溜池も良く見える。右隣の尾根上には先程の展望テラスも(写真では分かりにくいが)見える。なかなかの好展望だが、展望テラスに較べると小さくて狭く、雰囲気も少々殺風景なところがある。ゴルフ場の件もあるし、好事家以外にはお勧めしない。でもまあ、好奇心は満たされたので良しとして、引き返して下山にかかる。

見晴しの岩場から山麓を俯瞰
見晴しから金山を遠望

帰りは作業道の痕跡を辿り、ゴルフ場から離れて緩斜面をトラバース。枝尾根に復帰して、大七山の頂上に戻る。その先、「酒の大七」の看板までは広い斜面で道型が不明瞭、樹林に覆われて見通しもない。往路で登っているので、なんとなく方向がわかるが、初見で下る場合は分かり難いかも。まあ、とにかく真っ直ぐ下るべし。

大七山頂上に戻ってさらに下る
下る方向が分かり難い

看板まで下れば、あとは明瞭な道型を辿って長松寺に下り着く。墓地にお邪魔させて頂いて中を突っ切り、春日神社の駐車地に帰り着く。2時間ちょいの里山歩きながら、看板に展望テラスと好スポットもあって、なかなか楽しめた。

春日神社は墓地の向こう
春日神社の駐車地に帰着

「酒は大七」の看板に惹かれて大七山に登ったら、やはり大七の酒が飲みたくなるでしょう😃。ちょうど、晩酌でちびちび飲んでいた一升瓶も切れたしな。という訳で、すぐ近くにある酒屋で大七酒造の酒が買える「オレンジショップいいだ」に立ち寄り、純米生酛(きもと)1.8ℓを買う。

店主に、大七山に登って来ました、と話したら喜ばれて、話を伺う。藪が酷くなって以降、登っていなかった、とのこと。展望テラスのこともご存じだった。地元だから当たり前か。美味しそうなチーズケーキもあって、お土産に買って帰宅した。この純米生酛は、最近飲んだ酒の中ではダントツに美味かった。濃厚な風味ながら後味さっぱり。お勧め。

参考URL・ガイド:ヤマレコ pisai5 氏「だいじょうぶマイフレンド 足利百名山さんぽ 大七山」、新ハイキング No.701(2014年3月)「大七山ー大岩山」。