稲含山〜黒内山

天気:のち
メンバー:T
行程:野上ルート登山口 9:50 …横見峠分岐 10:35 …神の池公園 11:15 …稲含神社 11:55 …稲含山(1370m) 12:20〜12:45 …茂垣峠 13:15 …黒内山(1112m) 13:40 …野上ルート登山口 15:35
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

先月、入馬山〜源五郎山〜大猿山〜白髪岩を歩いた際、道中のあちこちから稲含(いなふくみ)山の立派な山容を目にし、稲含山には二度登頂している(前回、2005年の山行記録)が、久し振りにまた登りたくなった。

稲含山の北の1112m標高点には、地形図では山名表記はないが、山と高原地図や山名事典では黒内山との山名が付されている。こちらは未踏なので、稲含山と合わせて登ってみようと思い付き、ネットでいろいろ調べているうちに、ヤマレコのyamadanuki氏の記事「西上州 黒内(くろうち)山ー稲含山(古の野上ルートを利用)」を見つける。

(後日気がついたが、山と高原地図「西上州」2021年版にも、野上ルートが赤破線で掲載されている。2012年版にはないから、最近、追加されたようだ。)

古の登山ルートと聞けば、とても興味を惹かれる。往路は野上ルートから稲含山に登頂、復路で黒内山の頂を踏み、黒内山の北尾根を下って周回すると面白そうだ。地形図では北尾根に破線路は記載されていないが、尾根に沿って送電線があるので、巡視路が尾根伝いに通じているに違いない。さらにネットを検索すると、唯一、ブログ「七黒爺の山日記」に北尾根を歩いた山行記録があり、案の定、巡視路が利用可能だ。という訳で、この週末に出かけてきました。

ちょっと寝坊して、桐生を朝遅めに車で出発。上信越道を下仁田ICで降り、下仁田CCを通り抜けて、野上川沿いの県道下仁田小幡線に出る。県道を下仁田方面に向かい、掠れた文字で「←稲含山登山口」と記された道標で左折。チップ工場を過ぎ、野上川源流の谷間の奥へ、植林の中の未舗装の林道(宮城林道)をずんずん進むと、行く手が開けた小平地に着き、ここに車を置く。この地点には「稲含山登山口」「登山者へ この先 熊 蛇 スズメバチに注意 H21.4.13 M.IWAI」との標識がある。

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県道下仁田小幡線から左の道へ
(帰りに撮影)

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野上ルート登山口

登山口から簡易舗装された作業道を登る。切り返すと舗装は終わって、伐採地をジグザグに登る。上空は雲が多いが青空も覗いて、日陰のない伐採地では陽射しが暑い。

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登山口の道標

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簡易舗装の坂道を上る

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すぐに幅広い山道となる

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途中の道標

伐採地の上端を歩き、トラロープに誘導されて崩壊地を巻いて、防獣ネットに沿って進む。キイチゴが蔓延り出しており、トレッキングパンツの布地を透して、棘が腿にチクチク当たる。夏は酷い藪漕ぎになるかも。途中で、頭蓋骨と背骨だけになった小動物の遺骸を見た。対岸には新緑に覆われ、送電鉄塔が建ち並ぶ黒内山北尾根が横たわる。復路は北尾根からこちらの谷へ、道なき山腹を下る予定なので、どこが下降できるか、観察して考えてみるが、まあ、実際に行ってみないとわからないな、という結論に達する😅

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トラロープで誘導される

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黒内山北尾根を望む

伐採地が尽きると杉植林に入って、山腹をトラバースする。枝打ちされた杉の枝葉が地面を覆うが、道型は明瞭だ。大きくS字にカーブして緩斜面を登り、尾根上の窪んだ道型を辿ると「←横見峠↓宮城 稲含山→」の道標のある地点に着く。左に分かれる横見峠への山道も道型が明瞭だ。そちらの道と横見峠にも興味を惹かれる。

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植林の山腹をトラバース

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緩斜面を登る

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窪んだ道型を辿る

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横見峠分岐

新緑の雑木林に覆われた緩斜面に窪んだ道型がウネウネと続く。これを登ると、やがて富岡市・甘楽町境稜線に達し、ほぼ平坦な稜線に沿って進む。途中の978m三角点は、三角点標石(点名:赤岩)を確認したかったが、北側を巻いてうっかり通過。「↓稲含山 」の道標から左へ杉植林帯を下ると、程なく舗装された車道(林道稲含高倉線)に着く。この地点にも「←宮城 横見峠」の道標あり。ここまでの野上ルートは、要所に道標が設置され、道型もはっきりしていて、なかなかの好ルートであった。

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富岡市・甘楽町境の尾根を辿る

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左折して下る地点の道標

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林道稲含高倉線に下り着く

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源五郎山(左)と1243m峰を望む

林道を辿って緩く登る。植林帯の切れ間から、先月、歩いた源五郎山から1243m峰にかけての稜線が眺められる。1243m峰への登りは崖のような急斜面で苦労したが、ここから眺めても急峻だ。林道の行く手には、稲含山のゴツゴツした頂上稜線が高く見えてくる。林道右脇に湧き水があり、冷たい水を掬って喉を潤す。また、左脇には稲含神社が建つ。社殿は比較的新しく、木の鳥居には新しい紙垂が張り渡されている。

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林道から稲含山を仰ぐ

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稲含神社

稲含神社のすぐ先が神の池公園で、稲含山の一般的な登山コースの入口となっている。路側の駐車場には8台程の駐車があり、県外ナンバーの車もあって、広い人気の程が窺える。神の池から登山道を登って林道を横断し、一の鳥居で右に赤鳥居への道を分ける。

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神の池公園

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登山道を登る

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林道を横断

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一の鳥居

二の鳥居へ向かい、直ぐに大ケヤキ(夫婦ケヤキ)への道を左に分け、稲含山の急峻な東面をトラバース。険しい沢に入って登ると程なく「神の水」の道標がある。沢にはチョロチョロと僅かな水流があり、これが神の水かな?

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夫婦ケヤキ分岐

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稲含山東面をトラバース

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険しい沢に向かう

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神の水

沢を渡って左山腹を巻き上がり、二の鳥居を潜る。この鳥居は木が朽ちて根本が細り、今にも倒壊しそうだ。さらに左へ山腹をトラバース。幹の瘤から一斉に葉っぱが芽吹いた楓の大木を見る。頭上に大岩壁を仰ぎつつ、その基部を左上へ斜上する。杉の大木が立ち並び、根元に二十二丁と刻まれた石があって、参道らしい風情がある。枝尾根の上に出て、さらに少し登ると稲含神社に着く。

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二の鳥居

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幹から芽吹いた楓の葉

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杉の大木が立ち並ぶ

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稲含神社(旧秋畑社殿)

ここは秋畑側の稲含神社で、山頂にはもう一つ、下仁田側の稲含神社がある。こちらの稲含神社は神の池公園の下に遷座されたため、社殿は荒れている(後日調べると、2007年11月に新築移転されたとのこと)。二対の狛犬があり、立髪や尾の毛並み、牙や爪の造形に迫力があって見事。信仰が盛んだった往時を偲ばせる。説明板によると、稲含神社の祭神は豊稲田姫(とよいなだひめ)、創建は530年頃と伝えられ、非常に長い歴史を誇る。

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狛犬(吽形)

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狛犬(阿形)

社殿の右脇から、急階段が連続する登山道を登り、稜線上に出て赤鳥居からの登山道と合流する。看板があり、ペット連れ登山は(猟犬・認定犬を除き)ご法度と書いてある。

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社殿の右脇から頂上に向かう

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キジムシロ

さらに、頂上稜線の直下の急斜面をトラバースする。手摺が設置されているので危険はないが、下は岩壁を交えた急斜面だ。鎖が設置された石段の脇には地蔵尊が祀られている(後日調べると、過去に滑落事故が起きている)。

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頂上直下のトラバース

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石段と地蔵尊

頂上稜線の一角に登り着いた平地に、下仁田側の稲含神社が建つ。稲含山の頂上は、稜線を登って僅かの距離だ。

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稲含神社(下仁田社殿)

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神社前の建屋と石灯籠

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頂上に向かう

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稲含山頂上
背景は赤久縄山(左)と白髪岩

頂上からの眺めは、一部が梢に邪魔される他は、360度に開ける。まず南に白髪岩、その左に赤久縄山、大猿山を望み、稲含山東峰の向こうに御荷鉾山を遠望する。西から北にかけては西上州の山並みが続くが、今日は遠方が靄って、小沢岳と鹿岳、肉眼で荒船山が視認できる程度だ。北西には稲含神社の向こうに浅間山を遠望し、妙義山のギザギザの稜線を望む。北東には、これから向かう黒内山、その右に那須秋畑地区の山村を俯瞰する。

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稲含山から小沢岳を望む

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稲含山から黒内山を俯瞰

西上州の展望を堪能しつつ、パンとペットボトル飲料を腹に入れて、頂上を辞す。秋畑稲含神社への道を右に見送り、茂垣峠へ、階段や鎖が良く整備されたハイキングコースを下る。途中、「褶曲」の説明プレートが付いた岩があり、確かにパイ生地を折り重ねたような岩の層がある。どれだけの熱・圧力・時間を加えればこうなるのか、想像を超える。

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茂垣峠へ下る

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良く整備されたハイキングコース

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褶曲したチャート

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赤鳥居

赤鳥居を潜り、未舗装の作業道の終点に出る。ここに「茂垣峠(鳥居下)」「ガイドブック等には鳥居峠とありますが誤りです。訂正をして下さい 稲含神社」との看板がある。

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茂垣峠(鳥居下)

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茂垣峠(駐車場)

作業道を下って、林道稲含高倉線が通る峠に着く。ここのだだっ広い駐車場にはポツポツと駐車が2台。黒内山へは(多分、送電線巡視路だろう)明瞭な道型が通じている。

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黒内山入口

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尾根上に踏み跡が続く

尾根を小さく上下して辿り、上空から響くキィィーンとかコォォーンという送電線の虎落笛を耳にしつつ登ると、送電鉄塔に着く。その先の平坦な高みの奥で、立木に架かる「すかいさん」の山名標識を見出す。樹林に囲まれて展望は全くなく、地味〜な頂だ。

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送電鉄塔114号(新榛名線)

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黒内山頂上

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頂上の山名標識

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送電線巡視路の黄色標柱

北尾根の送電線巡視路の入口はどこだろう。巡視路の道標の黄色標柱が見当たらないので、広く平坦な尾根を適当に北西に向かうと、それらしい踏み跡に出合う。入口がどこか確認するため元を辿ると黄色標柱があり、送電線は新榛名線、頂上の鉄塔は114号、これから向かうのは113号とわかる。

踏み跡が巡視路であることが確認できたので、これを北に辿る。広くなだらかな尾根を下り、行く手の高みを左から巻いて取り付く。プラ階段の痕跡を登ると黄色標柱があり、その先に113号鉄塔が建つ。

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広くなだらかな尾根を下る

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巡視路の微かな踏み跡を辿る

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プラ階段の痕跡を登る

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送電鉄塔が見えるので立ち寄る

113号鉄塔からは、富岡や甘楽の市街、御荷鉾山や赤久縄山、稜線が背景に溶け込んで分かり難いが入馬山、源五郎山が眺められる。

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113号鉄塔

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御荷鉾山(左奥)を望む

新緑の雑木林に覆われたなだらかな尾根を下る。尾根が細くなると「一二七六」と刻まれた石標のある瘤に着き、二手に尾根が分かれる。ここは右へ。プラ階段が続いているので、巡視路を外すことはないだろう。

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尾根上の巡視路を辿る

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細い尾根を下る

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トウゴクミツバツツジ

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112号鉄塔

次の112号鉄塔を過ぎると、樹林が低く疎らになり、先に延びる送電線と鉄塔の列、下仁田辺りの平野や大桁山、妙義山を望む。赤茶けたザレと低木に覆われ、眺めが開けて爽快な尾根を下る。赤茶けた岩も多く、鉱山のボタ山を連想させる。

後日調べると、黒内山はかんらん岩からなる山で、黒内山岩体は北関東山地最大の超苦鉄質岩体だそうだ。地学は全くの素人だが、興味が湧く。

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展望が開ける

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赤茶けた岩が散在

地味(ちみ)に乏しく根が深く張れない地質なのか、高い木が生えていなくて見晴らしが効き、豪雪地帯の低山にも似た景観が広がる。アオダモが満開で、新緑の中にポワッとした白い塊があちこちに見られる。

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アオダモが満開

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送電鉄塔群と山麓を展望

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アオダモ

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111号鉄塔

小さな瘤の上に建つ111号鉄塔で振り返ると既に112号鉄塔が高く、その左(東)には樹木越しに(写真では分かり難いが)帯状で大きく赤茶けた岩壁が見える。地形図では岩や雨裂が密に記載されている辺りだ。巡視路も岩壁の縁を進む箇所があり、危険はないが険しさが覗く。

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112号鉄塔を振り返って仰ぐ

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岩壁の縁を進む

なおも赤茶けたザレ尾根を、周囲の山肌の新緑や、行く手の送電鉄塔の列と山麓を眺めながら下る。斜面にはアオダモの白い花の他、ヤマツツジの真っ赤な花も目立っている。

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赤茶けたザレ尾根を下る

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ヤマツツジ

やがて開けた眺めは終わって、薄暗い杉植林帯の中に入る。110号鉄塔を過ぎ、幅広く杉林に覆われた尾根上の巡視路を辿る。プラ階段が巡視路の在処を示すが、崩壊、流出した個所が多く断続的だ。

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植林帯に入る

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崩れたプラ階段を辿る

杉林に囲まれた109号鉄塔を過ぎ、細くなった尾根を辿ると、尾根上の広く帯状の伐採地に出て、次の送電鉄塔を見る。この辺りで尾根上の巡視路から離れて右折、野上川本流に向かって下り始める。

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109号鉄塔

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開けた伐採地に出て右折

道のない杉林を下って、小さな沢の源頭の窪地に降り立つ。沢は倒木に塞がれて、沢沿いに下るのは難儀そう。対岸の枝尾根に這い上がり、枝尾根を辿って下る。

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沢を横切る

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右岸の枝尾根を下る

枝尾根末端の急斜面をずり落ちつつ下って、野上川本流のゴーロに出る。細い水流を渡って杉林の斜面を登ると宮城林道に出る。林道を少し上がって、駐車地点に帰り着いた。

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野上川本流を渡る

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駐車地点に帰り着く

最後、北尾根から離れて林道に出る所までは道がなく、少々強引に突破したので、もう少しましなコース取りがあったかも。その前までの北尾根は巡視路が通じて歩き易く、展望も開けて快適な山歩きが楽しめた。黒内山は何の変哲もない地味な低山と思っていたが、地形や地質が興味深く面白かった。帰りは蒔田(まいた)を経由して下仁田ICに向かい、上信越道に乗って帰桐した。

参考URL:甘楽町HPの稲含山登山道パンフレット