福田頭・葦嶽山

天気:のち
メンバー:T

(この記事は広島県の山3日目、道後山・猫山からの続きです。)

広島県の山歩きも4日目の今日が最終日。帰りのフライトは広島空港20:20発、レンタカーの返却期限は18:00@広島空港なので、山歩きに使える時間はたっぷりある。

今日はまず、2日目に登った吾妻山から眺めて興味を惹かれた福田頭(ふくだがしら)に登ることにする。福田頭の標高は、吾妻山(1238m)よりも高い1253m。1995年に地元の比和町(現在は庄原市)が登山道を整備復元したとのこと。

福田頭に登った後、庄原市街から東へ約10kmの距離にある葦嶽山(あしたけやま)に登る。庄原市の観光案内で「日本ピラミッド」なる惹句と共に紹介され、世界最古のピラミッド本殿、というどこかで聞いたことのあるような怪しい伝説が語られる山である。

福田頭

行程:福田頭登山口 6:05 …林道終点 6:40 …大波峠 7:55 …福田頭(1253m) 8:25〜8:40 …兎舞台頭 8:55 …福田頭下山口 9:30 …福田頭登山口 10:15
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

三次の宿を未明にチェックアウトして、車で出発。庄原市街からR432で松江方面に向かい、「比和町総合運動場 宿泊施設かさべるで →」の案内標識にしたがって右折。以下、案内標識を頼りに総合運動場に向かうが、総合運動場の入口は直進して通過。程なく車道の右に「福田頭登山口」の案内看板と駐車場があり、ここに車を置く。他の車はない。駐車場の隣りには福田上集落の集会所がある。

福田頭登山口の駐車場
福田頭を仰ぐ

登山口から福田頭の頂上付近を仰ぐことができる。ここでは風は強くないが、上空はすごい速さで雲が流れ、福田頭の頭をかすって行く。準備を整えて出発。陽が昇って、雲の一角が暁色に染まる。青空も覗いているし、雨に降られる可能性は低そうだ。

黄金色の穂が出始めた棚田の間を上がり、集落に入ると「福田頭登山コース→」の道標があり、右折。橋を渡り、ゲートを開閉して、幅広い畦道で田圃を横断。再度ゲートを通過すると林道に合流する。あとはしばらく林道歩きで、分岐には道標がある。

上空の雲の流れが速い
畦道を進む
未舗装の林道を歩く
林道界谷小峠線

道端の草花を眺めながら林道を20分程歩くと終点となり、「福田頭登山案内板」や仮設トイレがある。終点といっても延長工事中で、林道は左に曲がって延びている。

ここから登山道に入り、すぐに朽ちかけた木橋を渡って、渓流の左岸を緩く登る。杉林を抜けて自然林に入り、丸太橋で右岸に渡ると「一の滝→」の道標がある。

林道終点(延長工事中)
渓流に沿って登る

道標から一の滝を往復する。岩壁をU字に抉って優美に流れ落ちる滝で、なかなか見応えがある。道標に戻り、右岸を高巻いて一の滝を越える。

一の滝
右岸を高巻く

渓流を右下に見ながら山腹をトラバースして登ると、二の滝に着く。下から見ると4段の滝だが、その上も小滝を連ねる。この滝もなかなか。

二の滝を越えると、すぐに三の滝が現れる。3段で落ち、最後は2条に広がって深い滝壺に流れ落ちる。三つとも佳い滝である。

二の滝
三の滝

三の滝を左岸から越えると穏やかな渓谷となり、水量も減じて、低木やシダに覆われた浅い谷間を歩くようになる。周囲の自然林が瑞々しくて綺麗だ。ブナ林に入ると「水吞場」の標識があり、冷たい水で喉を潤す。

沢に沿って登る
水吞場

水吞場から、なだらかな沢を詰め上げると、10分程でササやブナなどに覆われた稜線上の鞍部に登り着く。「大波峠」の道標があり、『ひろしま百山』によると「おおはのとうげ」と読むらしい。鞍部は風が吹き抜けて、グッと涼しい。樹林に覆われて展望は乏しいが、林間には陽が差し込んで、雰囲気は明るい。

大波峠
稜線を緩く登る

峠から稜線をゆるゆると登る。登り着いたピークが福田頭肩だが、標識等がなくて気付かずに通過。それから、ほぼ平坦な稜線を辿ると木立が切れて開けたコブに着く。山名標識と三角点標石があり、ここが福田頭の頂上だ。

頂上は東西方向の樹林が切り開かれ、吾妻山、猿政山、大万木山などの展望を示す標識もあるから、晴れていれば広島・島根県境稜線の山々まで眺められるのだろう。しかし、今日は流れる白い雲に遮られて、残念ながらそれらの山々は見えない。

平坦な稜線を辿る
福田頭頂上

休憩して、しばらく展望待ちをしてみたが変化なし。そろそろ先に進もう。ブナとササの稜線を北に辿って緩く下る。「展望所」の標識があり、木立の間から福田上の集落を俯瞰することができる。目を凝らすと、登山口の駐車場も識別できる。

さらに平坦な稜線を辿る
展望所から福田上集落を俯瞰

さらに稜線を緩く下ると、角張った露岩が点在し、「兎舞台頭」の標識のある地点に着く。この露岩を舞台に見立てたのかな?

登山道はここで左に折れて、枝尾根を下る。急坂だが、足元が適度な柔らかさなので、快適にぐんぐん下る。途中「比婆山→」の標識があるが、やはり雲に遮られて見えない。

兎舞台頭
枝尾根を下る

やがて左の谷に向かって下り始める。下り着いた谷を少し遡ると昇竜の滝がある。階段状の滝であまり落差はないが、緑に覆われた谷を段々に流れ落ちる様は風情がある。

谷に向かって下る
昇竜の滝

滝から沢に沿って下ると、程なく舗装された林道に隣接する広い草地に着く。ここが福田頭下山口で、登山口にあったのと同じ案内板がある。

沢に沿って下る
福田頭下山口

ここから登山口までは車道を歩いて下る。自転車があれば、下山口にデポしてダウンヒルしたい所だ。しかし、車は全く通らないし、適度に風があって涼しいので、歩きも悪くはない。周囲の山々や、ときおり福田頭の稜線を仰ぎつつ、てくてく下る。45分程の車道歩きで登山口駐車場に戻る。結局ハイカーさんには全く遭わず、静かな山歩きとなった。

林道を歩いて福田上集落に戻る
青空に福田頭を仰ぐ

葦嶽山

行程:野谷登山口 11:45 …葦嶽山(815m) 12:45〜12:50 …野谷登山口 13:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

福田頭登山口から葦嶽山の野谷登山口まで、カーナビ頼りで車にて移動。三河内、坊地峠、西城、平子を経由し、中国道に沿って県道を走り、「日本ピラミッド」の案内標識で左折。次の「日本ピラミッド(野谷ルート)」の案内標識で細い車道に入り、左右から覆いかぶさる雑草でレンタカーの側面が擦られるのを気にしながら、奥へ分け入る。

車道終点が野谷登山口で、駐車場とWCがある。他に駐車1台。先行者がいるようだ。「日本ピラミッド」という古い案内板もあり、次のような説明文が記されている。

神武天皇陵との伝説がある葦嶽山(815m)は、昭和九年ピラミッドの研究家である酒井勝軍により世界最古のピラミッドであると紹介され大きな話題を呼び、今日に至っております。

突っ込めない所は「葦嶽山(815m)」くらいしかない、何だか分からないけど素晴らしい文章である(^^)。

ここは庄原郊外の里山で標高が低いし、天気も良くなって陽射しが強いので、ちょっと蒸し暑い。登山道に入り、10m先で道標にしたがって右折。小さな水流のある谷を緩く登る。

野谷登山口
野谷ルートに入る

笹原と杉植林帯の中の道は良く刈り払われていて、整備の手が入っている。植林帯を抜け、水流を渡ると、雑木林に覆われた谷間の道となる。緩い登りで気分良い道が続く。

植林帯を抜ける
沢に沿って登る

水流が細くなると傾斜が増し、設置されたプラ階段を登る。しばらく急登すると鞍部に登り着く。稜線を跨ぐように休憩所が建つ。ベンチに腰掛けて、息が整うまで休憩する。

鞍部に向かって急登
鞍部に建つ休憩所

鞍部から左(北)に登ると巨石群のある鬼叫山(ききょうざん)、右(南)が葦嶽山だ。まずは巨石群を見学しに行こう。

稜線を少し登ると、ドルメン(供物台)と呼ばれる巨石がある。巨石と言っても、山の中で普通に見かけるサイズだ。説明板には「机のように巨石が重ねてあるが、この巨石構造は世界各地の古代遺跡と同じもので(以下略)」と記されている。そ、そうだったんだー。山を歩くときは気をつけて探してみよう(^^;)。次の方位石と獅子岩の説明板は錆びて読めない(が、多分大したことは書いてない)。

ドルメン(供物台)
方位石

稜線上の道は「巨石群終着点 これより先はコース外です」の看板で行き止まり。巨石巡りの道は右下に続く。次の鏡岩は綺麗に平らな面を持つ大岩で、これはなかなか。説明板には「かつては、穴に光る玉がはめ込まれ、光が鏡岩に反射していたとも伝えられ、一種の光通信装置だったのではないかとも推論されている。」と記されている。玉(点光源)を鏡岩(平面鏡)にはめ込んだら、玉から出た光はどう反射すんだ、と、しばし頭を捻る。

獅子岩
鏡岩

神武岩(屛風岩)は大きな直方体の岩で、周辺にも同様の岩が倒れて折り重なる。柱状節理か何かだろうか、これはちょっと珍しい。説明板には「神代アヒル文字が刻まれていたというこの岩一帯は(以下略)」と記されている。アヒル文字ってなんだよ(笑)。こういうのかな→🦆。後日調べると、阿比留(あびる)文字という、ハングルに似た文字があるらしい。

神武岩
葦嶽山頂上への登り

巨石巡りを楽しんだのち、鞍部に戻って葦嶽山に向かう。短い急坂を登ると葦嶽山の頂上に着く。頂上は小広く、疎らな樹林に囲まれて、一部の方向を除いて眺めが開ける。周囲には緑に覆われた低山の山並が広がり、展望の中でこれは何と分かるのは、中国道と庄原市街くらいだ。

葦嶽山頂上
葦嶽山から庄原市街を遠望

下山は往路を戻る。途中で、軽装のソロハイカーさんと交差した以外には、ハイカーさんに遭わなかった。

これにて、4日間に渡る広島県の山歩きは終了。いやー、たくさん登ったなあ。実に充実。楽しかったなあ。広島の田園や山地のドライブも、風景が関東甲信越のそれとは感じが大きく異なる点が物珍しく、楽しめた。

かんぽの郷庄原の日帰り温泉に立ち寄り、汗をさっぱり流して着替えたのち、下道を走って広島空港に向かい、レンタカーを返却。空港のレストランで生ビール+カキフライ・アナゴ定食の夕食を食べ、お土産を買い、予定のフライトで桐生への長い帰途についた。

参考ガイド:ひろしま百山(中国新聞社、1998年)