比婆山〜吾妻山

2019年9月14日(土)
天気:のち
メンバー:T
行程:公園センター 6:40 …展望園地 7:10 …立烏帽子駐車場 8:00 …立烏帽子山(1299m) 8:20 …池ノ段 8:35 …越原越 8:55 …比婆山(1264m) 9:20〜9:30 …横田別れ 10:00 …吾妻山(1239m) 10:40〜11:00 …横田別れ 11:30 …烏帽子山(1225m) 12:05〜12:10 …出雲峠 12:45 …公園センター 13:25
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

(この記事は広島県の山1日目、三倉岳からの続きです。)

三次の宿を未明に車で出発。コンビニで朝・昼食のパンと飲料を買い、R183を走って庄原に向かう。薄明の下、周囲の丘陵と田園風景が靄を通してぼんやりと眺められ、風情がある。しかし、上空は灰色の雲に厚く覆われて、今日の天気は先行きがちょっと心配だ。

庄原の市街を抜け、西城川とJR芸備線に沿って山間に入って行く。西城の町を過ぎると山と谷は険しくなり、人家も疎らだ。R183と芸備線から分かれて、島根県に抜けるR314とJR木次(きすき)線に並んでしばらく走る。それにしても、よくこんな山奥に鉄道を引いたものだ。次の機会があれば、芸備線や木次線で列車の旅はしてみたいかも。

「県民の森」の案内標識でR314から左折、川沿いの車道を上がって、ひろしま県民の森・公園センターに到着する。ここは比婆山(ひばやま)連峰の1200m級の山々に囲まれた森林公園で、キャンプ場やスキー場などが整備されている。公園センターは八角屋根の瀟洒な建物で、宿泊もできるようだ。広く閑散とした駐車場に車を置く。既に標高800mの高地なので空気がヒンヤリと冷たく、秋の気配を感じる。天気が良ければ周囲の山々の眺めが良さそうだが、残念ながら上の方は雲に隠れている。

出先での山歩きの軽装で出発。公園センターの左側から「展望園地」の道標に従って車道を歩く。やがて未舗装の車道、それから幅が広い歩道となり、樹林の中を大きくジグザクを切って登る。

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ひろしま県民の森・公園センター

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展望園地への遊歩道

ススキの穂が出始めた草斜面を横切ると、展望園地に着く。晴れていれば比婆山連峰が一望できるそうだが、今日はあいにくの天気。ガスに閉ざされて何も見えない。

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展望園地

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展望園地からの展望はガスの中

天気のせいでテンションが下がるが、とにかく先に進もう。WCを過ぎ、尾根を絡んでほぼ平坦な幅広い歩道を辿る。湿り気の多い林床には、いろいろなキノコが出ている。

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なだらかな尾根を絡んで進む

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タマゴタケ

徐々に高度が上がるにつれて、段々とガスも濃くなってくる。まあ、これはこれで幽邃な風情が楽しめる。どうか、雨が落ちてこないように。ブナが現れ、朽木には美味そうなキノコが生えている。だが、縦に咲くと根元に黒い染みがあり、ツキヨタケ(毒)だ。

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ツキヨタケ

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ガスが濃くなる

やがて、左から未舗装の車道を合わせて、立烏帽子駐車場に着く。WCと東屋あり。ハイカーさんのものと思しき駐車が数台ある。ここから立烏帽子山は標高差約100m、ここの案内図によると0.3kmの距離だ。

立烏帽子山への山道に入ると、すぐに右に千引岩を経由して比婆山に至る巻道を分ける。樹林に覆われた急斜面をジグザグに登り上げ、立烏帽子山の頂上に着く。

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立烏帽子駐車場

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立烏帽子山へジグザグに登る

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アキチョウジ

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立烏帽子山頂上

立烏帽子山は標高1299mで、比婆山連峰の最高峰だ。樹林が切れた方向もあり、晴れていれば良い眺めがありそうだが、ガスに巻かれて何も見えない。長居せず、先に進む。

立烏帽子山から、低木に覆われて高山的な雰囲気のある稜線を緩く下る。ここも晴れていれば、展望が楽しめただろうなあ。残念。道端にはママコナや終盤のハクサンフウロを見る。低木の中にはツツジ類があり、一部が赤く色付き始めていて、秋の訪れを感じる。

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ガスで展望なし

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ママコナ

草地の鞍部に下り着き、僅かに登り返して、池ノ段の平坦な頂稜の一角に着く。草地と笹に覆われ、展望盤もあるから、ここも好展望地のようだが、相変わらず濃いガスが巻いていて、何も見えない。

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池ノ段

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樹林帯に入って緩く下る

池ノ段から緩く稜線を下ると、ほどなく笹を下生えとする樹林帯に入る。しばらくなだらかな下りが続き、やがてブナに覆われた山肌をジグザグに下る。右から千引岩経由の巻道を合わせると、越原(おっぱら)越の鞍部に着く。

ここから、ブナ林の広くなだらかな稜線の登りとなる。「比婆山のブナ純林(国指定天然記念物)」という案内看板があり、それによると、日本海型と太平洋型の両方の要素を持つブナ林としては日本の最南限、とのこと。

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ブナ林が広がる

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なだらかな尾根が続く

途中、私は初めて見る花がある(名前は知らなかったが、翌日に登った道後山でも同じ花を見かけて、居合わせたハイカーさんにツルニンジンと教わった)。ゆるゆる登ると針葉樹の大木が出迎える。門栂(もんとが)と呼ばれるイチイの木とのこと。平坦な道を進むと石碑と水盤があり、ほどなく比婆山の山頂(御陵)に着く。

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ツルニンジン

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門栂(イチイの大木)

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「神聖之宿処」碑(徳富蘇峰書)

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水盤

この山稜は広く平坦で、この地点もおよそ山頂らしくない。祠が祀られ、背後に柵で囲われた一角が御陵だ。先着の若い女性ソロハイカーさんが大きなカメラを構えて写真を撮っている。広島県史跡「比婆山伝説地」という説明板があり、比婆山についての纏まった説明が記されているので、少し長いがテキストに起こして引用しておこう。

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比婆山頂上

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比婆山御陵

比婆山(1264m)の山頂は、古事記にいう伊邪那美命(いざなみのみこと)を葬った比婆山であるとして、古来より信仰の対象となってきたところである。南麓に遥拝所熊野神社があり、山麓に那智の滝(古名、鳥(ちょう)の尾の滝)がある。神域の巨石及びイチイの古木は神籬磐境(ひもろぎいわさか)として伝承されている。
古事記に「伊邪那美神は出雲国と伯伎国との境の比婆の山に葬りき」とあり、いわゆる「御陵の峰」が神稜のある山である。この御陵を奥の院といい、南方約6kmの山麓にある比婆山大神(伊邪那美神)を祀った熊野神社を本宮という。比婆山は別名「美古登山」ともいい、山上には3haにもわたる広大な平坦地がある。
その中央部にある径15mの区域内は昔から神域として伝えられ、雨露に崩れて露出した巨石数個が重畳している。南側正面には一対のイチイ(門栂という)がおのおの巨石を抱いて茂り、伝承にある神域の門戸を形造っているようである。
この栂(正しくはイチイ)は木の母の字意から神木と解し、東洋における最長寿木であり、古代の神殿の造営林として重用されたもので、「あららぎ」の古語がある。御陵の背後に烏帽子岩という大きな岩があり、叩けば太鼓のような音を発するので、太鼓岩とも呼んでいる。そしてその周辺にはそれぞれ巨石を抱くイチイの巨木があり、古来神域の象徴として崇められてきた。幕末以後、神稜参拝が盛んであったが、明治20(1887)年頃、比婆山を神稜として称することが禁じられたため、登拝は衰えていく。その後、地元出身の宮田武義、徳富蘇峰らによって全国に知られるようになった。

小休止してパンを腹に入れたのち、先の道を辿る。なだらかな稜線を下り、鞍部で左に折れて烏帽子山の巻道に入り、烏帽子山〜吾妻山(あずまやま)の縦走路に出る。今日はここから吾妻山を往復し、烏帽子山を踏んで、出雲峠経由で公園センターに戻る計画だ。少し下ると「横田別れ」と呼ばれる鞍部で、ベンチもあり、休憩中のハイカーさんに遭う。

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左に折れて烏帽子山を巻く

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横田別れ

ここから少し登ると、だだっ広いススキ野原に出る。大膳原(だいぜんばら)と呼ばれ、かつては牛の放牧場だったそうだ。折しもガスが消えて、野原の向こうには左右にゆったりと稜線を広げ、頂上が小さく尖った吾妻山が現れる。この景色が見たかった。振り返れば、烏帽子山と比婆山のなだらかな稜線も眺められる。

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大膳原から吾妻山を望む

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大膳原から烏帽子山(左)と
比婆山を振り返る

縦走路からは見えないが、島根県側に少し入った所にキャンプ場があるとのこと。テント泊、したいなあ。ハイカーさん数組とすれ違う。ススキ野原を突っ切ると吾妻山の登りに差し掛かり、低木帯の斜面を大きくジグザグを切って登る。振り返れば大膳原を俯瞰し、その向こうに烏帽子山と比婆山を眺める。天気が良くなり、眺めも効いて気分良い。

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吾妻山への登り

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烏帽子山と比婆山を振り返りながら登る

やがて吾妻山の頂上から南に延びる稜線に登り着く。向こう側にある休暇村吾妻山ロッジからの登山道と合流し、ハイカーさんの数が増える。ここから頂上へは、眺めが開けた稜線を緩く登って、僅かな距離だ。

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サラシナショウマ

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吾妻山の頂上稜線に登り着く

頂上は小広く、四方の展望が開ける。北の出雲(島根県)側は急斜面となって、山麓の集落と黄金色の田畑を見下ろす。あそこから仰ぐ吾妻山は、高く大きく見えるだろうな。

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吾妻山頂上

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吾妻山から島根県側の展望

西側は比較的なだらかな斜面で、下の方に休暇村吾妻山ロッジの赤い屋根や周囲の草原が見える。休暇村と頂上の標高差は約250mしかないが、その割に高度感を感じる。その向こうには1200m級の猿政山(さるまさやま)があるが、雲に遮られて確とは見えない。

東側には大膳原を隔てて比婆山連峰がなだらかな稜線を連ね、右奥には立烏帽子山の頂がちょこんと飛び出ている。今日はあの頂から来た。結構、歩いて来たなあ、と感慨深い。

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吾妻山から休暇村吾妻山ロッジを俯瞰

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吾妻山から立烏帽子山(右奥)を遠望

南側には稜線がゆったりと延びる。その向こうには標高の高い山塊があり、ちょっと興味を惹かれる(宿に帰ってから調べて、福田頭(ふくだがしら、1253m)とわかり、最終日に登ることにする)。吾妻山の山頂の開けた雰囲気と展望は爽快で、中国山地では数少ない300名山の1座に選ばれているのも頷ける。

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吾妻山から福田頭(奥)を望む

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大膳原から吾妻山を振り返る

眺めを楽しんでゆっくり休んだのち、来た道を戻る。天気はさらに好転して青空が広がり、空気が澄んでクリアな展望が得られるようになった。

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正面に烏帽子山

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烏帽子山の巻道(右)分岐

烏帽子山の巻道分岐まで戻り、ここから烏帽子山の頂上に向かう。斜面をジグザグに登ると、低木に覆われて広く平坦な頂上に着く。踏み跡が錯綜し、どこが真の頂上か分かりにくいが、適当に歩くと開けた平地に出て、ベンチや展望盤があるから、ここが頂上ということでよし(三角点標石は別の場所で、見過ごした)。

頂上の一角には、規則正しく人工的な溝のある条溝石がある。頂上は明るく開けているが、展望は低木の梢に遮られて、お隣にのっそりした比婆山が見えるくらいだ。ベンチに腰掛けて昼食にパンを食べる。

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烏帽子山頂上

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条溝石

後は下りだけだ。北東に広島・島根県境稜線を辿ると、ほどなく樹林帯に入って、小さくジグザグに下る。それから小沢を渡り、県境稜線に戻る。なかなか変化に富むルートだ。杉林に入って緩斜面の下りになると、出雲峠は近い。

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広島・島根県境を辿る

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樹林帯に入る

出雲峠は草地が開けてベンチもあり、休憩適地だ。ベンチに腰を下ろして一息入れる。ハイカーさんもポツリポツリ上がって来て、挨拶を交わす。さらに県境稜線を辿って毛無山(1144m)に立ち寄るルートもあるが、もう十分歩いたから止めておく。

出雲峠からの下りはゆるゆるだ。峠の直下にはWCあり。笹原を切り開いた幅広い道を下る。道端に、私は初めて見る怪しい植物を発見。実を付けたツチアケビだ。

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出雲峠

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なだらかな下山道

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ツチアケビ

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沢に沿って緩く下る

さらに沢に沿って山道を下る。途中、左に毛無山への道が数本分岐する。やがて車が通れそうな幅の道となり、県民の森に入って公園センターに帰り着く。出発時はガラガラだった駐車場には多数の駐車があり、ちょっと驚く。やはり三連休初日ということで、県民の森に遊びに来た人が多いのだろう。

朝来た道を戻り、三次の宿に帰る。この晩は三次の花火大会が開催され、次々に打ち上がる花火を宿の部屋の窓から見物した。

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公園センター駐車場に戻る

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宿から花火見物

(広島県の山3日目の道後山・猫山に続く。)


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