聖山・𣘹原山・四阿屋山

2018年4月21日(土)
天気:
メンバー:T

長野県の麻績(おみ)村を三方から取り囲んで聳える聖山(ひじりやま、1447m)、四阿屋山(あずまやさん、1387m)、冠着山(かむりきやま、1252m)の3座は、総称して筑北三山と呼ばれている。三山と聞くと興味を惹かれるし、先月、五里ヶ峯に登った際にこの三山を眺めて、ますます登りたくなった。

筑北三山の登山コースを調べてみると、いずれも2〜3時間程の軽い行程。桐生からのアクセスの手間暇とコストを考えると、まとめて登った方が良さそうだ。この週末は土日とも好天との予報。ネットでいろいろ調べているうちに、麻績村に隣接する筑北村に草湯温泉冠着荘という宿を見つける。値段はリーズナブルだし、土曜に空き部屋があったので、ポチッとインターネット予約。土日の2日間で筑北三山と、これも以前から山名が気になっていた𣘹原山(たららやま、1392m)、険しい岩稜歩きが楽しめるという岩殿山(いわどのさん、1008m)の5座をまとめて登ることにして、出かけてきました。

聖山

行程:道路開削記念碑 6:35 …聖峠 7:15 …聖山(1447m) 7:30〜7:50 …聖峠 8:05 …道路開削記念碑 8:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

聖山は頂上からの北アの展望で知られる山なので、空気の澄んだ午前中の早い時間帯に登頂できるよう、桐生を深夜3時過ぎに車で出発。途中、姨捨SAで休憩。レストランで朝食にしようと思ったら、営業時間前だった(T_T)。善光寺平と冠着山を眺めて先に進む。

麻績ICで高速を降り、R403沿い聖高原駅前付近のコンビニで朝食のパンを買って、聖山南麓の田園が広がる緩斜面を登る。見上げる聖山の頂上稜線は左右に長く延び、なかなか雄大な山容だ。頂上には数基の電波塔が建っているのが見える。

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姨捨SA(上り線)より冠着山を望む

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南麓より仰ぐ聖山

坊平登山道入口を少し過ぎた所の道路開削記念碑のスペースに車を置く。早朝なので、車の外に出ると空気がひんやりと冷たい。記念碑には「陸上自衛隊の偉業を讃えて 流汗淋漓峻険を征す 田中角栄」と記されていて、何故、ここにあるのか不思議(後日検索すると、六十里越の道路工事に関係ありそうだが……)。パンを食べて出発する。

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道路開削記念碑に車を置く

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坊平登山道入口

少し戻った所に登山道案内図と道標があり、分岐する車道に入る。カラマツ林の中に別荘が点在し、分岐点には道標がある。道端の湿った所にはハシリドコロが密生し、瑞々しい葉の下に紫色の花を付けている。綺麗だが毒草なので、この多さはちょっと引く。

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カラマツ林の別荘地を登る

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ハシリドコロ

別荘地の外れで「聖山山頂 約1.6km 徒歩約40分」の道標に従って山道に入る。まだ冬枯れのカラマツや雑木に覆われた山腹を斜上し、大きくジグザグを切って聖峠に登り着く。

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山道に入る

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山腹をトラバース

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大きくジグザグに登る

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聖峠

右の道は尾根伝いに三和峠へ、峠越えの道はお種池に通じる。聖山頂上は左へ、ダケカンバやカラマツとササに覆われたなだらかな尾根を登る。やがて東屋のある小ピークを巻き、左側が急斜面となった尾根を少し辿ると聖山の頂上に着く。

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ダケカンバとササの尾根

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頂上の電波塔が見えてくる

頂上は芝生の広場となり、片隅に一等三角点の標石が鎮座する。視界が開けて、まず正面に白銀の北アがドーンと展開する。一部の方向は電波塔と樹林の梢が邪魔をして、360度の展望とまでは行かないが、西には後立山連峰の烏帽子岳辺りから蓮華岳、爺ヶ岳、鹿島槍、五竜岳、唐松岳、白馬岳辺りまで、青空に白皚々の峰々が連なる。その手前、レーダードームが建つなだらかな山が𣘹原山だ。そちら方面を指して「芦ノ尻 8.4km(約120分)」の道標と道があるので、𣘹原山へ縦走するコースもあるようである。

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聖山頂上

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北ア蓮華岳、爺ヶ岳、鹿島槍の展望
手前左に𣘹原山のレーダードーム

北には高妻山や妙高山、黒姫山、飯縄山の山群を遠望する。その右の善光寺平は朝靄に覆われて見えない。南面は麻績村の平野部を俯瞰し、背景には四阿屋山、遠くに美ヶ原、八ヶ岳を望む。期待通りの大展望だ。冬の快晴の日はもっと良いだろうな。

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高妻山、妙高山、飯縄山の展望

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麻績村を俯瞰し四阿屋山を望む

頂上にはベンチや各方面の展望図が整備されていて、ゆっくり展望が楽しめる。早朝だが、やはり展望が目当てのハイカーさんが数人居る。展望を堪能したのち、往路を車へ戻って、次の𣘹原山に向かう。

参考URL:麻績村公式観光サイト「聖山登山MAP

𣘹原山

行程:駐車地点 9:35 …𣘹原山(1392m) 9:45 …駐車地点 9:55
ルート地図 GPSのログ(緑:車で移動、赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

𣘹原山は難読山名の最たるもので、これを「たららやま」と初見で読める人は皆無だろう。それもそのはず、「𣘹」は𣘹原山と麓の𣘹原池しか用例のない漢字である。おまけにJIS第4水準漢字なので、Windows Vistaより前のPCでは表示すらも難しかった(詳しくは難読・稀少漢字山名を参照)。地形図では未だに「たら原山」とひらがなで表記される。

𣘹原山は頂上のすぐ近くまで林道が通じているので、普通の登山の対象にはなっていない。それでも、その筋の方の山行記録が「たら原山」で検索するといくつか見つかる。それらによると、頂上は笹藪の平坦地で、三角点標石を見つけるにはGPSが必須とのこと。GPSには予め正確な経緯度を入力しておく。

聖山を登ったのち、南麓を車で移動して𣘹原山に向かう。途中、かつての聖山修験道の中心地という福満寺に寄り道する。修験道の片鱗は窺えなかったが、門前の桜、境内のシャクナゲ林の一部が満開。寺の前に広がる傾斜畑にはルリムスカリやタンポポが群れ咲いて、春爛漫の田園風景。今日は気温がかなり高く、遅い春が一気に来たという感じだ。

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福満寺入口の桜

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シャクナゲ

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ルリムスカリ

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タンポポ

県道丸子信州新線に出て、信州新町方面に走る。この道は聖山の中腹に点在する集落を結んで走り、北アを背景とする山村風景が素晴らしい。ドライブに超お勧め。

途中の見晴らしの良いカーブに芦ノ尻道祖神がある。芦ノ尻集落では正月七日に松飾りの注連縄をここに持ち寄り、石碑に神面を形作って藁製道祖神とし、古い藁はどんど焼きの火にくべる祭が行われているとのことである。ユニークな造形が面白い。また、ここからの北アも絶景。手前の京ヶ倉のゴツゴツした稜線も目を引く。あれも登りたくなるな。

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芦ノ尻道祖神

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道祖神から北アを望む

芦ノ尻集落の外れで県道から分岐し、𣘹原池の奥から林道聖山頂線に入ろうとすると、入口に全面通行止の看板がある。しかし、脇にどかされているし、こういう場合は「多分置きっ放しになってる奴でそのまま通れる」とゆるキャン△でも言っていた(^^)。自己責任で進入。なお、入口には「聖山 たらら山 登山口」「タララ登山口水飲場二キロ」と書かれた古い道標もあったので、昔は𣘹原山への登山道があったのかも知れない。

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林道聖山頂線の入口

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急斜面を斜めに上がる

林道は𣘹原山の急斜面を斜めに登ってグングン高度を上げる。道幅が狭い上にガードレールがなく、崖っぷちを走るのと同じなので慎重に運転。山上の平坦地に着き、レーダードームへ分岐する車道の入口付近に駐車する。車で登れるから楽勝と思っていたが、運転で緊張した。あとは平らで直ぐの所なので、スポーツサンダルのままで頂上に向かう。

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レーダドームへの車道

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聖高原レーダ雨雪量観測所

しかし、サンダル履きは失敗だった。レーダードームまでは車道を歩くが、その先は平坦で全く道のない笹藪に突入。GPSを頼りにして、杉植林帯の中に三角点標石を見出す。展望はなく、山名標の類もなし。目印?のビニル袋が木の枝に結び付けられているが、ゴミとなって目障りなので持ち帰る。これで登頂クエスト完了。車に戻る。

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笹藪に突入

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𣘹原山の三角点標石

次は四阿屋山に向かうが、その前に昼食にしよう。長野に来たら、やはり蕎麦だな。麻績村の中心部からR403を聖高原方面に向かい、峠の手前にある「大峠お仙の茶屋」という蕎麦屋に行く。まだ開店時間の11時の少し前だったが、店内で待たせて貰えて、店のおばちゃんからお茶やかぶら漬け、落花生を頂く。蕎麦は天ざるを注文。麻績村産の蕎麦粉を使っているそうで、ツルツルで腰のある麺が美味い。営業時間になるとわらわらとお客さんが来店して、繁盛していた。

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大峠お仙の茶屋

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天ざるそばを頂く

四阿屋山

行程:駐車地点 11:55 …二の鳥居 12:20 …四阿屋山(1387m) 13:05〜13:30 …二の鳥居 14:05 …駐車地点 14:25
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

四阿屋山には四方から四つの登山コースがあり、そのうちの草湯温泉コースから登る。麻績村の中心部から県道丸子信州新線を青木村方面に向かって篠ノ井線を横断、「まんだらの庄」という直売所の先の十字路を右折して、漸々(ようよう)沢沿いの林道に入る。十字路を左折すると今宵の宿の草湯温泉冠着荘なので、下山後は便利だ。

林道はやがて未舗装の悪路となり、大きな杉と「四阿屋山登山道入口」の道標のある地点に着く。周辺に良い駐車余地がないので苦労して転回し、少し戻った路側に車を置く。

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駐車地点

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四阿屋山登山道入口

登山道に入り、新緑が萌えだした浅い谷の中を登る。落ち葉が積もって道型は微かだが、とにかく谷を登れば良く、迷うところはない。

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浅い谷を登る

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微かな踏み跡を辿る

尾根に登り着いた所が二の鳥居で、朽ちかけた木の鳥居が建つ。ここから尾根を辿って登る。結構急坂となるが、ジグザグに道が切られているので、登るのは楽だ。途中、小さな瘤の上の展望地があり、𣘹原山や北アの眺めが良い。

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二の鳥居

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尾根を登る

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展望地より𣘹原山と北アを望む

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頂上直下の木の鳥居

さらに尾根を登ると再び木の鳥居があり、木の祠もある。ブナが現れ、最後の鳥居を潜って石段を登ると、四阿屋神社の社殿に着く。社殿の横には避難小屋が繋がって建つが、中は少々荒れている。社殿の裏手を一段上がったところが、四阿屋山の頂上だ。

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鳥居と四阿屋神社

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四阿屋山頂上

頂上は南北に長く平坦で、北端に三角点標石と山名標がある。樹林に囲まれて、展望は良くない。しかし、四阿屋神社の前は樹林が切り開かれて、正面に明日登る予定の冠着山の鋭鋒、その背後に霞んでいるが善光寺平が眺められる。微かに汽笛が聴こえて来たので目を凝らすと、冠着山の麓の篠ノ井線を走る列車が見える。

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冠着山を望む

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JR篠ノ井線を走る列車

少し頂上で休んだのち、往路を車に戻り、冠着荘に向かう。冠着荘は高台にあり、眺めが良い。3階の客室の窓から聖山が大きく見える。早速、温泉へゴー。一風呂浴びて汗を流した後のビールは、特に今日は暑かっただけに最高。

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草湯温泉冠着荘を望む

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冠着荘の客室から聖山を望む

夕食は食堂で。お客さんは4組くらい。牛肉の陶板焼き、蕗味噌を腹に詰めた岩魚の塩焼き、はぜかけ米(天日で干した米)のご飯などを美味しく頂く。生ビールと日本酒「大雪渓」を飲んで気持ち良く酔い、自室に戻ってぐっすり眠った。

参考ガイド:信州ふるさと120山(信濃毎日新聞社、2011年)

(筑北三山と周辺の山(2日目)の冠着山・岩殿山に続く。)


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