高宕山
3/18〜20の3連休はS&Sと房総半島へ温泉旅行。鴨川温泉と安房温泉に1泊ずつ宿泊し、『分県登山ガイド 千葉県の山』を参考にして、周辺の4座(高宕山、清澄山、烏場山、鋸山)に登ってきました。いずれも2〜300m級の低山ですが、意外と険しかったり山深かったりして侮れないところがあり、山歩きとして大変楽しめました。
初日の18日は朝9時過ぎに横浜の実家を車で出発。アクアラインを経由して君津ICで高速を降り、丘陵地帯の広く浅い谷間を走って、高宕山の登山口に向かう。沿道は菜の花が満開で、あちこちに黄色の花畑が広がる。
集落を外れて山間に入り、石射太郎山(いしいたろうやま)登山口に着く。ここは林道高宕線の起点で、高宕一号隧道の入口に10台分程の駐車スペースがある。既にハイカーさんの車で一杯で、なかなか人気の山だ。高宕林道は崩落のため、トンネル入口から先は通行止となっている(徒歩での通行は可能)。今日はここから石射太郎山→高宕山→高宕林道の周回コースを歩く予定である。
トンネル入口の右脇から登山道に入る。「天然記念物 高宕山のサル生息地」の石碑があり、ガイド本によると、運が良ければ野生のニホンザルに出会うことがあるらしい。この登山道は高宕山を経由して東麓の豊英(とよふさ)に至る関東ふれあいの道で、階段などが良く整備されている。下生えのシダなどの緑が多く、南国の山らしい植生が広がる。今日は快晴でこの時期にしては気温が高く、南国らしい陽気である。
なお、今回の写真は、先日、新調したデジカメ(Canon PowerShot G9X Mark II)で撮影したもの。サイトには縮小した写真しか掲載していないので、あまり代わり映えがしていないと思うが、色合いが見た目に近く自然な感じで、なかなかイイ。
苔むした転石の斜面や石切場跡を通って、約20分程で展望の良い鞍部に登り着く。左に切り立った岩壁を擁する小ピークがあり、この辺り一帯が石射太郎山だ。案内看板によると、関東大震災で被害を受けるまで、明治初期から大正初期にかけて大量の石が切り出されたとのこと。鞍部にある小屋は、かつてサルの餌付けに使われたものだそうだ。
東面は崖となって切れ落ち、複雑に入り組んだ小さな尾根と谷を隔てて、高宕山と八良塚(はちろうづか、342m)を望む。目指す高宕山は遠くに見えるが、そこに至る稜線に大きな登降はないので、そう大変ではなさそう。なお、ここから北西のマザー牧場にも関東ふれあいの道が通じている(現在、歩道崩落のため通行止)。
ベンチで休憩し、パンとペットボトル飲料で昼食としたのち、高宕山に向かう。小ピークの頂に大日如来・馬頭観世音の石碑があり、そこから平坦な稜線を辿る。左側は岩壁となっているが、樹林に遮られて登山道からは見えない。短い急降下があり、道標に従って左に折れると、再び平坦な稜線歩きとなる。小さな瘤も丁寧に巻いていて、大変歩き易い。
やがて、急な石段の下に着く。一対の狛犬と阿吽の大きな金剛力士の石像が立ち、石段の上に見える赤い屋根が高宕観音のお堂だ。狛犬の台座には「元治元甲子(1864年)三月十八日 世話人 庄兵衛 彌左エ門 半平」の銘がある。石段の途中には岩屋があり、これも大きな石造りの仏塔が建つ。
細く急な石段を上り詰めたところに、垂直の岩壁に半身を埋めたお堂が建つ。お堂の正面からは展望が開け、緑深い樹林に覆われた高宕川源流域と幾つも重なる山並みを見渡す。奥山の趣きがあり、素晴らしい。遠くに頭一つちょこんと突き出てた三角ピークは、鋸山のようだ。
高宕山へは、岩壁を刳り貫いたトンネルを潜って向かう。左に高宕大滝コースを分けると傾斜がきつくなり、ロープや梯子が架かる岩場が現れて、S&Sはここでギブアップ。私単独で頂上を往復する。
高宕山の頂上は小岩峰となり、梯子でその上に登ると小さな平地と壊れた石祠がある。最高地点は狭い岩場の上で、山名を記した木柱が立つ。四方に展望が開け、西には鋸山や東京湾、北には鹿野山を望む。目立つピークはないが、さざ波のように広がる山地は独特の景観だ。
頂上から戻ってS&Sと合流し、頂上直下の分岐点から高宕大滝コースに入る。コース入口には、遊歩道には急斜面や崖等の危険箇所があるので注意、との看板があり、S&Sはちょっと不安気。しばらく水のない窪を下り、右の小尾根に上がって、尾根を絡んで緩く下る。枝尾根と枝沢が多い複雑な地形で、明瞭な登山道が続いているから良いが、そうでなければ簡単に迷いそうな場所だ。
やがて痩せ尾根の道となり、あとは尾根道を下る。コンクリを固めたような露岩が多く、所々で岩稜となって展望が開ける。露岩にはステップが刻まれ、岩稜には手摺が付いて大変良く整備されており、危険箇所はない。
杉林に入り、木の階段で急降下して谷底の高宕林道に下り着く。すぐ下流に高宕大滝がある。滝下に降りて滝を見上げると、水量が少なくて水流は細々としているが、全体が濡れて黒光りする岩壁が威圧的な滝だ。落差約13m(君津市HP)。林道からも全容を眺めることができる。
あとは川沿いの未舗装の林道を歩く。三叉路で右に怒田沢、R410宿原バス停に抜ける林道(こちらは舗装道)を分け、左の通行止の林道を辿る。車の通行が途絶えて久しいらしく、路面は荒れている。素掘りのトンネルを抜け、曲がりくねった渓流に沿って歩く。水量は少ないが、U字谷となって両岸は切り立ち、周囲には至る所に崩壊壁や急斜面があり、2〜300m級の山地とは思えない険しさがある。藪山歩きには相当手強い山域だろう。ヘビ、ダニ、ヤマビルに注意との看板もあった。
途中の高宕監視所で八良塚・怒田沢方面への登山道(高宕山探鳥路として清和県民の森が整備している)を分け、左岸に渡って崩壊箇所を横断し、山腹をトラバースして緩く登る。素掘りのトンネルを二つ潜り、三つめが高宕一号隧道だ。これを抜けて、駐車地の石射太郎山登山口に戻り、今晩の宿の鴨川グランドホテルに向かった。
(房総の山2日目の清澄山・烏場山に続く。)