黒斑山〜蛇骨岳

天気:
メンバー:T
行程:天狗温泉浅間山荘 8:00 …火山館 9:55 …湯の平口分岐 10:10 …トーミの頭 11:05 …黒斑山(2404m) 11:25 …蛇骨岳 11:50〜12:30 …仙人岳(2319m) 12:40 …Jバンド下り口 13:10 …三ツ石 13:30 …賽の河原分岐 13:45 …火山館 14:05 …天狗温泉浅間山荘 15:15
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、緑:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

この週末は久し振りに丸一日の空きがある。天気も良さそうなので、標高の高い山に登りたい。という訳で、浅間連峰の黒斑山と蛇骨岳を湯の平から周回して歩いてきました。

桐生を朝6時過ぎに車で出発。上信越道を小諸ICで降りて、車坂峠に通じるチェリーパークラインを上がる。浅間連峰は雲の中だが、青空が覗いていて晴れつつある。山間に入り、途中で右折して、浅間山・火山館コース登山口の天狗温泉浅間山荘まで未舗装道を4km走る。浅間山荘前から少し下った所に登山者用駐車場(無料)があり、ここに車を置く。他の車はなく、閑散としている。現在、浅間山は火山活動がレベル2で登山禁止(火口から2km以内の範囲へ立入禁止)となっており、浅間山に登るハイカーがいないためだろう。

天狗温泉浅間山荘
登山者用駐車場
浅間山登山道入口

火山館コースを歩くのは、2006年10月の浅間山、2012年10月の剣ヶ峰に続いて3回目だが、季節が異なるので新鮮な感覚がある。既に標高1400mの高所なので、涼しくて快適。里山ではこうはいかない。昨日の雨で登山道の土はしっとりと水を含み、周囲の緑はまだ新緑のように瑞々しい。道端にはウツボグサがたくさん咲いている。今日は初夏の花がいろいろ咲いていそうで楽しみだ。

鮮やかな緑の中を歩く
ウツボグサ

登山道は湯の平から流れ出す沢(蛇堀川)に沿って登る。橋から見下ろす流れは赤褐色に濁り、如何にも火山の沢らしい。梅雨時なので水嵩も増している。沢を3度渡り、左岸の林間を緩く登る。道端にはトリアシショウマの白い花がポツポツと咲いている。

赤褐色の沢水
左岸を辿る

一ノ鳥居で登山道は不動滝経由の道と右岸を登る道に分かれる。ここは不動滝に向かい、沢沿いの道を辿る。沢の水は濁っているが、もう赤褐色ではない。

一ノ鳥居
不動滝への沢沿いの道

渓流沿いの道を緩く登る。周囲の樹林や笹、シダの緑が綺麗だ。注連縄が張られた水場を過ぎると谷が狭まって、やがて不動滝が現れる。そう大きな滝ではないが、今日は水量が多くて見栄えがする。

水場
不動滝

左手の山腹をジグザグに登り、一ノ鳥居で分れた登山道と合流。二ノ鳥居が建つ。このすぐ先に薪がたくさん積まれていて、火山館に1本でも持って来て欲しい、との依頼の看板があるので、ザックのサイドに付けて2本持って行く。

二ノ鳥居
火山館への薪の置き場

登山道はここから長坂の登りにかかる。背後に迫る足音に驚いて振り返ると、トレラン風体の屈強そうな男性が凄いスピードで登ってきたので、道を譲る。両手に1本ずつ薪を持っていて、ますます驚く。

坂を黙々と登っていて、ふと脇の樹林に目を向けると、石碑がある。これは前回気づかなかった。道に背を向けて少し離れている上、黒々とした石碑で目立たないので、見逃したようだ。「大開山皇覺霊神」と刻まれているから、御嶽信仰に関係するもののようだ。

他にもあるかもと思って注意して登って行くと、長坂のジグザグ坂を登り切った辺りで、また石碑を見つける。これも前回見逃している。「羽黒大神 大天狗 小天狗」と刻まれている。羽黒大神は出羽三山の羽黒山だろうから、大天狗、小天狗が一緒なのは謎。後日調べたら、偏平足さんのブログの石仏466浅間山(長野)の記事でも紹介されている。

「大開山皇覺霊神」碑
(明治三十年)
「羽黒大神」碑

長坂を登るとカラマツが点在する緩い笹原に出て、正面に牙(ぎっぱ)山を望み、左手には雲巻くトーミの頭の岩峰群を仰ぐ。この辺りから、開放的で明るい山岳風景が続く。道端にはヤマオダマキが群生し、グンナイフウロやハクサンフウロも咲いている。

長坂を登って草原に出る
ヤマオダマキ
草地をトラバース
雲がかかるトーミの頭

山腹をトラバースすると硫黄臭が漂ってきて、白くザレた沢に出る。有毒火山ガスが噴出しているため、登山道以外は立入禁止の看板がある。ここから仰ぐ牙山は正に巨大な牙だ。沢を渡って少し登った所に「三里三丁」の丁石があり、火山館が建つ。屋根の煙突からは薄青い煙が上がり、管理人さんがいる模様。チップ制のWCが新設されている(2014年11月にできたらしい)。担ぎ上げた薪を置き場に積み、ベンチで一休みとする。周囲にはグンナイフウロが多い。

硫黄臭のする沢を渡る
牙山を望む
火山館
グンナイフウロ

火山館から浅間神社の前を通って一段上がると、湯の平の高原の一角に出る。草原の薄い緑とカラマツ林の濃い緑のパッチワークが美しい。湯の平口分岐で前掛山方面への登山道から分かれ、トーミの頭と黒斑山に向かう草すべりコースに入る。草すべりを降りてくる若い女性二人のハイカーさんを始め、数組のハイカーさんとすれ違う。車坂峠を起点として、逆回りで蛇骨岳〜黒斑山を周回するハイカーさんが多いようだ。

湯の平口分岐
黒斑山に向かう

カラマツ林を抜けると、草原の急斜面の登りとなる。頭上にはトーミの頭の岩峰群を仰ぎ、目を転じれば仙人岳辺りの外輪山の岩稜や湯の平の盆地を望む。背後には常に浅間山の巨大な円頂がある。開放的で実に素晴らしい山岳展望だ。

トーミの頭を仰ぐ
湯の平と仙人岳を望む

登山道は急斜面をジグザグに切って付けられている。眺めが良くて登りが苦にならない。ここもヤマオダマキやグンナイフウロの花が多く、マルバダケブキがポツポツ咲き始めている。風景や花の写真を撮るため、しばしば足を止める。

剣ヶ峰を望む
草すべりを急登

ぐんぐん高度を上げ、振り返れば急傾斜の草原とジグザグに刻まれた登山道を俯瞰。高度感が爽快だ。見上げればトーミの頭が近づき、頂上にたむろするハイカーさんの声が風に乗って聞こえてくるし、姿も小さく認められる。

湯の平と浅間山を望む
草すべりを俯瞰
トーミの頭を頭上に見る
稜線は近い

草すべりを登り切って稜線に出ると、いきなりハイカーさんの数が増えて、喧騒の渦に巻き込まれる。トーミの頭はすぐ左だから立ち寄って行こう。頂上はハイカーさんで大盛況(人のいない写真を撮るのに苦労した)。頂上東側は断崖絶壁で、湯の平の高原を遥か下に俯瞰し、その向こうに浅間山が膨大な質量で聳える。この大展望に、あちこちで感嘆の声が上がっている。晴れ間が広がって、北アも遠望できる。ゆっくり眺めを楽しみたいところだが、続々とハイカーさんが登ってくるので、黒斑山に向かおう。

トーミの頭頂上
トーミの頭から槍ヶ鞘を望む

オオシラビソなどの針葉樹林に覆われた稜線を緩く登る。途中、団体の中高年ハイカーさんに追い付くと、私としては特に急いでいないのだが、すぐに前列まで声がかかって道を譲って頂いた。最近の団体ツアーは色々気を使っておられるようである。

黒斑山は、2010年9月(山行記録)以来、3回目の登頂となる。ここも団体のハイカーさんが程なく到着して大賑わいとなる。そろそろ昼時で腹が減ってきたが、ここでは落ち着けないので、蛇骨岳まで進んで休もう。

黒斑山頂上
黒斑山から蛇骨岳、仙人岳を望む

針葉樹林に鬱蒼と覆われた稜線上の山道を辿る。所々で東面の展望が開け、これから辿る稜線や湯の平、浅間山が眺められる。この辺りには、盛りは少し過ぎているが、ハクサンシャクナゲも咲いている。

蛇骨岳の2366m標高点のピークは右を巻いて通過。その先の開けた岩場に山頂の標識がある。こちらもハイカーさんが大勢休憩中だが、トーミの頭よりは少ないし、場所も広くてゆったりとしている。黒斑山や浅間山、仙人岳の他、北側の展望が開けて、嬬恋村の広大な高原と四阿山から白根山にかけての上進国境稜線を遠望する。岩場の一角に腰を下ろして缶ビールを開け、ラーメンを作って食べる。展望を楽しんでゆっくり過ごす。

蛇骨岳頂上
蛇骨岳から四阿山(左)を望む

蛇骨岳からは岩とガレが露出した高山的な稜線を東へ辿る。樹木が低く、終始展望がある。南面は断崖絶壁、北面は嬬恋村に向かって大きくなだらかな斜面が落ちる。正面にはますます浅間山の山体が大きい。

ちょこんと尖ったピークに登り着くと、仙人岳の山名標と三角点標石がある。岩尾根の縦走の中間点にあたり、どちらを向いても眺めが素晴らしい。

仙人岳頂上
仙人岳から黒斑山を望む
仙人岳から蛇骨岳への稜線
虎の尾への稜線と浅間山

さらに岩とガレの稜線を辿り、虎の尾という小ピークを越える。南面はすっぱりと切れ落ち、覗き込むと湯の平を縦断する登山道が、まるで真上から見下ろすように眺められる。

虎の尾から鋸岳との鞍部に下る。鋸岳から北に無木立で直線的な尾根が下り、地図に破線路はないが歩けそうで興味を引かれる(後日調べると、バカ尾根と称するらしい)。

湯の平と黒斑山
鋸岳とJバンド(右斜面)

鞍部から右へ、Jバンドに入る。バンドと呼ばれる通り、急峻な岩肌のトラバース道で、よくこんなところに道を拓いたものだと感心する。出だしは足元が切れ落ちて高度感があるので慎重に通過。トラバース気味に降ったのち、草原に覆われた急斜面を湯の平に向かってジグザグに下る。草原の中にはハクサンシャクナゲの群落があり、ちょうど見頃だ。振り返ると、虎の尾の岩壁がのしかかるように聳え、なかなかの壮観である。

Jバンドをトラバース
湯の平に向かって下る
シャクナゲ
Jバンドを見上げる

湯の平に下り着いたところが三ツ石で、三個の巨大な噴石がでんと並ぶ。あとは、周囲の山々を眺めながら、ほぼ平坦な湯の平を直線的に縦断する。あちこちに大きな噴石やクレーターがあり、火山の噴火のとてつもないパワーを物語る。

浅間山と巨大な噴石
湯の平を縦断

樹林帯に入って緩く下ると、賽の河原分岐に着く。浅間山への登山道が分岐するが、現在、噴火警戒レベルが2のため、入口で閉鎖されて立入禁止である。カラマツが点在する草原を進むと湯の平口分岐に戻って、周回完成。この周回コースは終始眺めがよく、素晴らしい風景を満喫した。あとは往路を天狗温泉浅間山荘へ戻る。

賽の河原分岐
湯の平口分岐に戻る
カモシカ平からトーミの頭を仰ぐ
天狗温泉浅間山荘

下山して早速、浅間山荘で日帰り入浴する。ここのお湯は赤褐色に濁って、とても温泉らしい。浴室に入ったときは他の客がなく、湯船を独占できてラッキーだったが、すぐに若いお客さんがどっと入ってきた。さっぱりと汗を流したのち、桐生への帰路についた。