大芝山〜荒神山
毎年のことながら2月は忙しくて山に行く間がなかったが、ようやく目処が立ったし、この週末は天気が良さそうなので、3週間ぶりにどこかに登ろうかな。足が鈍っている自覚があるので手軽な近場の低山で、しかし調子を戻すために少し長めに歩きたいし、下山後は♨︎に浸かってまったりしたい。
という訳で、大間々町塩原と浅原の境界をなす無名の山稜を南端から荒神山稜まで辿り、荒神山を越えて水沼温泉に下るコースを考える。この山稜の北側2/3はオッサンの山旅の「荒神山」に歩いた記事があるが、南側1/3を歩いた記録はなさそうなので、通しで歩いてみたい。歩き応えも十分ありそう。
また、山稜の中間点にある474m三角点峰は地形図に山名の記載がなく、オッサンの記事でも無名峰の扱いだが、やまの町桐生の「続 桐生地域百山 大間々編」の記事によると大芝山という名があるそうで、興味を惹かれる。この山名は『山田郡誌』1521頁の次の一節に現れる。
福岡村大字鹽原字高松十二神社の石宮は、昔下田四郞といふ五人力を有する男大芝山の峰つづきなる一峰巒の頂きに獨力にて背負上げ建立したるものなりといふ。
この石宮のあるピーク(天狗山)も面白そうなので、いずれ機会を作って登ってみたい(追記:早速、次の週末に登ってきた)。
桐生駅の立ち食いそばで朝食にカレーを食べたのち、8:09発のわたらせ渓谷鐵道・大間々行に乗車して、終点に8:22着で下車。久しぶりに訪れた大間々駅前には、「大間々駅前観光案内所」なる新しい建物があり(1年前にリニューアルオープンしたらしい)、Free Wi-Fiも使えるそうで、みどり市も観光に力を入れているようだ。
駅前通りを北に進み、R122沿いのセーブオンで昼食用に袋ラーメン等を買ったのち、新栄橋に続く通りを緩く下る。風もなくポカポカと暖かくて、すっかり春の陽気だ。途中、間坂踏切を渡った先の辺りは、わ鐵の線路と桜並木が並行し、桜の開花時期には鉄道撮影の好スポットとして賑わう場所だ。正面にはこれから登る山稜の末端のピークが見える。
新栄橋で渡良瀬川を渡り、右折して県道小平塩原線を小平方面に向かうと、直ぐに支流の塩沢川を渡る。河岸段丘の崖を割って本流に流れ込む小さな渓谷をなしているので、覗き込んでみると、渓流に面した岩場の上に2体の石像があるのに気付く。近寄って見てみると不動尊像だ。どちらも風化が進んでいるが、一方の像には「明治六酉八月」と刻まれているのが読み取れる。
県道を進むと東京電力福岡発電所の水圧鉄管があり、その手前から左の山側に入る送電線巡視路がある。これを辿れば、目的の山稜にうまく取り付けそうだ。登ってみると石祠がある。本来、渡良瀬川を見おろして建てられたようだが、正面の木が成長して、眺めを遮っている。石祠から少し登ると笹原に出て、黒保根線105号鉄塔が建つ。
密な笹藪を綺麗に切り開いた道を辿る。送電線巡視路さまさまである。右に水圧鉄管を渡る橋を見て、左の巡視路を登る。笹藪が少々被さって来るが、次の104号鉄塔までは明瞭な山道が続く。
ここまでは首尾よく目的の山稜の末端を歩いて来たが、この先は密な笹藪だ。こんなのがずっと続いたら嫌だなあと思いつつ分け入ると、やがてそこはかとなく藪が薄い獣道が現れ、2基の電波塔が建つ小ピークに登り着く。やれやれ、藪はここまでかな。電波塔の片方はTV中継局で、もう片方は不明。管理用の山道が東から上がって来ているので、笹藪漕ぎを避けてこれを登って来ても良いだろう。
電波塔からは雑木林の尾根上の山道を辿ると、右斜面が広大に伐採された緩やかな尾根となる。陽気で霞んでいるが、小平川流域に点在する集落や、長尾根から駒見山、赤地山にかけての赤柴山稜の山並みの展望が開け、その奥に鳴神山稜を遠望する。
伐採地から再び雑木林に入り、緩やかなピークに登り着くと、東へ僅かに下がった所に麓を向いて立派な石祠が建っている。祠の中には白い紙垂(しで)が見えるので、最近もお参りする人があるのだろう。
石祠のピークの先にも尾根上に山道が続くが、鞍部から右斜面を下ってしまうので、山道から外れて真っ直ぐ尾根を辿る。雑木林と笹藪の中を急登すると、三角点標石(点名:浅原)のある368m峰に着く。こんな低山藪山にまでR.K氏の標高プレートがあって、まあ毎度のことだが改めて一驚。冬枯れの樹林に囲まれて明るい日差しが差し込むものの、展望には恵まれない。少し休んだら先に進もう。
尾根を辿ると再び伐採地に出て左右の眺めが開け、正面には大芝山のまるっとした山容を望む。枯れ枝をペキペキ踏みながら進んで行ったら、少し先を丸々と大きく太ったイノシシ2頭が慌てて逃げていった。斜め左前方には、荒神山稜の向こうに赤城山を遠望する。例年この時期なら真っ白の赤城山だが、この冬は寡雪で、白い部分がほとんど見えない。
少し下って、鞍部を越える高名木林道に出る。無名山稜の1/3を歩いた訳だが、やはり足が鈍っているせいか、思ったより疲れる。チョコレートを齧り、水を飲んで一休み。
林道から正面の伐採された尾根に取り付き、金網フェンスに沿って登る。丈の低いイバラが蔓延り、冬枯れの時期でなければ敬遠したいルートだ。しかし、伐採地から東面の眺めは良い。以前、登ったことがある396m三角点峰や、その奥に綺麗な金字形のピークを並べる駒見山と赤地山が眺められる。
伐採地から倒木が目立つアカマツ林に入り、急坂を登りきると、三角点標石(点名:塩原)のある大芝山の頂上に着く。この頂上も樹林に囲まれて展望に乏しい。R.K氏の標高プレートはなく、代わりに「大柴山」と記した比較的新しい山名標が立っている。どなたが設置したのかは?だが、芝と柴、どっちなのかは気になる処である。
三角点から少し進むと、3基の石祠が並んで建っている。真ん中の石祠の落ちた屋根の正面には石尊宮、左右の石祠の塔身にはそれぞれ小天狗、大天狗と刻まれていて、紛う事なく石尊信仰の山であることがわかる。さらに少し進んだ尾根上には、岩の上に置かれた小さな石像がある。銘はなく、何の像なのか謎である。
雑木林とアカマツに覆われ、小さなアップダウンのある尾根を辿る。緩く下ると「高松社営林」の標識があり、登りに転じてアカマツ林の幅広い尾根を辿ると、556m標高点のピークに着く。特に目印になるものはない。右に尾根を辿ると、林道塩沢小平線の切り通しに突き当たる。林道に降りるが、対面には高い法面が続いているので、尾根に復帰できる場所を探して、林道を左に辿る。
林道を200m程辿って、杉林の中の小さな谷に入って登る。杉林中は藪がないから、倒木さえなければ歩き易い。途中で右の急斜面に取り付いて稜線上に出、荒神山稜との合流点に向かったが、谷を真っ直ぐ詰め上がっても合流点に行けそうである。
荒神山稜に着けば、あとは大畑山〜荒神山を縦走した際に歩いたことがある行程である。合流点のピークは、大畑山から来た場合、ここで90度右折して杉林と篠竹の藪を下るので、迷い易いポイントとして覚えがある。
やがて、冬枯れの雑木林に覆われた緩やかな尾根となるので、正午も回ったことだし、風を避けて陽だまりに腰を下ろし、大休止。ゆで卵をつまみに缶ビールを飲み、サッポロ一番みそラーメンを作って、遅い昼食を摂る。
昼食後、荒神山に向かう。と言っても残り僅かの距離だ。雑木林の尾根を辿り、短い坂を上がると荒神山頂上に着く。今日三つ目の三角点標石と山名標識があるだけで、展望は全くない。後は温泉を目指して下るだけだ。
頂上から林道終点の手作り広場は数分の距離。水沼駅方面に下山する遊歩道が分岐するが、林道を下って展望台に立ち寄る。陽気で霞んでいるが、赤城山も袈裟丸山も雪が少ないことがわかる。今シーズンは雪遊びはまだ一回しかしていない。これから残雪期の山歩きがどうなるか、心配である。
展望台から遊歩道に入り下山する。杉林の中をジグザグに下る平凡な山道だが、久しぶりの山歩きだとこういう道も楽しく感じる。車道に下り着き、くろほね大橋を渡って水沼温泉に到着。途中、梅が満開だったし、水沼温泉では桜がほころび始めていた。気候はもうすっかり春である。
早速、温泉に入る。のんびり湯船に浸かっていて、14:19発桐生行の列車を数分の差で逃したが、全く問題なし。食堂で生中2杯と鹿刺し、鶏唐揚げを飲み食いして過ごす。むしろ、これがしたくてここに来た(^^;)。程よい疲れと温泉、ビールですっかり良い気分となり、次の15:57発の列車で桐生に帰った。