太郎山〜虚空蔵山

天気:
メンバー:T
行程:上田駅 8:10 …表参道登山口 9:10 …太郎山(1165m) 10:20〜10:40 …虚空蔵山(1077m) 12:00〜12:50 …和合城跡(655m) 14:10 …下塩尻コース登山口 14:35 …西上田駅 14:55
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

霊仙山で転倒して右腿を打撲してから約3週間が経過したが、まだ完治していない気がする。この間に軽く山を歩いた際は特に支障はなかったものの、依然として寝起きに右足がだる〜い。今週末も軽い山歩きにしておくか。天気は快晴の予報なので、眺めの良い山に行きたいな、と考えて、長野県上田市の太郎山を思いつく。手軽に登ることができて、北アの眺望が良く、「上田市民の山」として地元で親しまれている山だ。

太郎山のメインコースは表参道だが、頂上まで登り1時間半程しかかからないので、その往復だけでは遠出にかける手間暇の割に、さすがに行程が短過ぎる。調べてみると、太郎山から西に延びる稜線上に虚空蔵山という山があり、縦走できるらしい。最近、長崎県の虚空蔵山に登ったことがきっかけで、全国各地に同名の山があることに気がつき、虚空蔵山はちょっとマイブームになっている。ここにもあったかー、これは登らねば。

という訳で、調子が良ければ太郎山から虚空蔵山に縦走することにして、(しかし、もう縦走する気満々で)出かけてきました。

JRで桐生6:24発。高崎で7:20発の北陸新幹線に乗車して、上田7:55着。お城口に出ると、バス乗り場で数組のハイカーさんを見かける。菅平行きのバスを待っているようだ。駅構内のタリーズコーヒーで朝食をとったのち、駅前通りを北北東へ歩き出す。頂上に雲がかかる太郎山を正面に仰ぎながら緩やかな坂道を直進し、市街を抜ける。

R18上田バイパスを地下道で横断し、四十八曲コースを左に分ける。表参道は右へ。山の端の車道を辿る。リンゴ畑があり、色付き始めたリンゴがたわわに実って、枝が重そう。

上田市街から仰ぐ太郎山
山麓のリンゴ畑

人家が途切れて山間に入っていくと、路側に多数の駐車があり、その奥に太郎山の表参道登山口がある。これから出発する人、既に登頂して降りて来た人がいて、人が多い。「熊出没注意」の看板があるが、これだけ人通りがあれば遭わないだろう。すぐ後ろには上信越道が通り、防音壁を越えて走行音が甲高く響いてくる。

登山口付近の駐車の様子
表参道登山口

表参道に入ると山腹のジグザグ登りとなる。道端に「道しるべ 太郎山表山道 三丁丁石」との看板と石祠を見る。以降も短い間隔(1丁は約109m)で四丁、五丁、と丁石の石祠が続くが、頂上は何丁だろう。登るにつれて高速の騒音が遠ざかり、静かな山歩きとなる。

六丁丁石
八丁丁石

十丁辺りで広い尾根上の道となり、十二丁で左から登って来た四十八曲コースを合わせる。十四丁は太郎山神社の石鳥居が建つ。傍らの石碑に「奉寄進石祠卅六社」との碑文があるので、頂上は三十六丁?まだだいぶ先があるなあ。

樹林の中で展望のない尾根をひたすら登ると赤鳥居に着く。「道しるべ 太郎山丁石復元記念 廾三丁 平成二十三年十一月 平成の大復元」と記した石碑があるから、実は二十三丁が終点だ。残りの36-23=13社はどこだろう(後日調べると、残りは四十八曲コースにあるらしい)。石碑の他に「太郎山 虚空蔵山 いにしえの山道マップ」の案内図とWCがある。

石鳥居
赤鳥居

赤鳥居をくぐり、石段を登る。途中、左手に神楽殿があり、その前は上田市街を俯瞰し、蓼科山や美ヶ原が遠望できる展望地となっている

石段を登る
神楽殿から上田市街と
蓼科山(右奥)の展望

石段を登り切って、太郎山神社に着く。まずは二礼二拍一礼で参拝。傍らの説明板によると、本殿は明治六(1873)年に再建されたものだそうだ(実は写真の建物は覆屋で、本殿は中にあって見えない、とは後日知った)。

太郎山神社の裏手に回り、わずかに下って登り返すと、草地の広場となった太郎山頂上に着く。南西から北西にかけての樹林が切り開かれ、期待に違わない大展望が得られる。

太郎山神社
太郎山頂上

南西には収穫の黄金色に染まる塩田平を俯瞰し、それを取り囲む独鈷山や女神岳などの山々、その奥に平坦な頂上稜線を広げる美ヶ原を遠望する。

西には北アを遠望し、槍ヶ岳を中心に針ノ木岳辺りまで見える。前景には雲が棚引く金字形のピークがあり、あれが虚空蔵山のようだ。なかなか格好いいな。元から行く気ではあったが、足の調子も全く問題ないし、縦走決定。

太郎山から塩田平と美ヶ原の展望
太郎山から虚空蔵山と北アの展望

頂上には三角点標石と展望盤の他に、お地蔵さんと「御嶽神社」の銘の真ん中で折れた石碑がある。広場の真ん中では3人組ハイカーさんがランチシートを広げ、車座で食事を楽しんでおられる。

頂上のお地蔵さん
ホソバオグルマ?

丸太ベンチに腰掛けて暫く休憩したのち、虚空蔵山に向かって縦走を開始する。頂上から稜線を西に下る。表参道に比べると道はぐっと細くなり、歩く人が少なくてあまり踏まれていないのか、落ち葉がフカフカ。拾う人もなく、ササグリがたくさん落ちている。

稜線を西へ下る
ササグリがたくさん

樹林に覆われて展望には乏しいが、所々に樹林の切れ間があり、後立山連峰が眺められる。やがて、草地の広場に下り着く。ここが西峠で、左に上田市緑ヶ丘、右に林道太郎山線への山道を分ける。どちらの道もちょっと草深い。

鹿島槍〜白馬岳を遠望
西峠

縦走路は直進。しばらく緩やかな道が続く。樹木には解説付き名札が架けられている。それによるとコナラが多く、ミズナラ、ズミ、コブシ、ホオノキ、クロモジなどがある。綺麗に紅葉するというオオモミジ、マユミもあるが、時期はまだ早いようだ。湿った山地に目立つカラコギカエデが尾根に多いのは、太郎山系名物の逆さ霧(春秋の天気の変わり目に生ずる滝雲)の影響だそうだ。また、昭和の初期に尾根筋に桑園があり、その跡がクワの群落として残っているとのこと。いろいろ興味深い。

緩やかな稜線を辿る
ノコンギク?
樹林の切れ間から大峯山を望む
緩やかな尾根道が続く

樹林に覆われて展望には乏しいが、所々で右(北)側の樹林が切れ、谷を挟んで大峯山を望む。また、峰展望台という地点では左(南)側の展望が開け、塩田平や蓼科山〜美ヶ原が少し方角を変えて眺められる。

峰展望台から蓼科山〜美ヶ原を遠望
峰展望台から虚空蔵山を望む

少し下ると「大覗」の標識があり、その先で左に秋和鉱泉へ下る藪っぽい道を分ける。里山らしい樹林の尾根道が続き、登り返すと展望の良い岩場の上に出る。北に坂城市街や白馬岳を遠望し、振り返れば太郎山から辿ってきた稜線やその奥の烏帽子岳が眺められる。

里山らしい尾根道
展望岩場から太郎山を振り返る

ここから道は少々険しくなる。登れない岩場が現れ、踏み跡を辿って左から巻き、ロープを頼りに登って稜線上に復帰する。西上州の山っぽいスリルがあって、ちょっと面白い。

稜線上の岩場
左からロープを頼りに登る

登り着いたピークには「村上連珠砦 亀井城跡」との標識がある。こんな険しい山上に城があったとはビックリ。続く小ピークには「積城(つみじょう)跡」の標識がある。

鞍部で左に兎峰・座摩神社への道を分けたのち、虚空蔵山への最後の登りに取り付く。岩尾根を上がると樹林帯から抜け出して、南面が草地で開けた虚空蔵山頂上に到着する。

亀井城跡
岩尾根を登る

頂上は狭く、南面は急角度で切れ落ちて山麓を見下ろし、低山とは思えない高度感がある。いやー、これは爽快な頂上だ。縦走して来て良かった。ここで昼食とする。まずは鯖味噌缶をつまみにWHITE BELGを飲み、マルタイ棒ラーメンを作って食べる。

虚空蔵山頂上
虚空蔵山から上田市街を俯瞰

頂上付近には大きな段差がある。説明板によると、かつての虚空蔵山城(御殿城)の曲輪の遺構だそうだ。頂上には虚空蔵尊が祀られているとの情報をネットで得ていたので付近を探したが、見つけられなかった。元からなかったのかな。何れにしても残念。

虚空蔵山からさらに西へ、稜線の突端を目指して縦走する。のぞきと称する鞍部に向かって、一直線の急降下となる。草深い上に滑り易い道で、張られたロープが頼りだ。ようやく鞍部に下り着いてホッと一息。右に林道太郎山線への道を分ける。振り返ると虚空蔵山が反り返るように聳える。

虚空蔵山からロープ伝いで急降下
虚空蔵山を振り仰ぐ

鞍部から急坂を上がると、鳥小屋山の平坦な頂上に着く。樹林に囲まれて展望はなく、比較的新しい二体の石仏が祀られている。

鳥小屋山から、ますます草深く里山っぽい稜線を辿る。盛夏にはあまり歩きたくないかも。ピークとは言えない稜線の途中に高津屋山の標識があり、北に坂城方面の眺めが得られる。ここから下った所の岩場には、陣馬鳥越山の標識がある。こちらはさらにピークらしくないが、展望は南北両面に開ける。しばらく緩やかで緑深い稜線が続き、左に座摩神社への道を分ける。

鳥小屋山頂上
坂城方面と千曲川の眺め
遠景は鹿島槍〜白馬岳
陣馬鳥越山の岩場
菖蒲平付近の尾根道

送電鉄塔の脇を通り、縦走路のすぐ右下に並行する林道を見る。広く平坦な尾根が続き、この辺りが菖蒲平と呼ばれる地点のようだ。少し下って、草に覆われて荒れた菖蒲平林道を横切る。ここから、和合城跡を見下ろして、一直線の急坂を下る。ここも滑り易いが、ロープはない。急坂の途中には石祠がある。

菖蒲平林道
和合城跡を見下ろす

急坂から下り着いた鞍部で、右に鼠宿、左に下塩尻への下山路を分ける。和合城跡は直進して僅かの距離だから、立ち寄ってみよう。城跡の天辺は草が茂る平地となり、「和合城跡」の山名標が立つ。また、少し先の草地の中に三角点標石がある。

ここは、太郎山から西に延びる稜線が、最後に千曲川を扼するように突き出して落ちる突端で、岩鼻と呼ばれている。三方向に山麓を俯瞰し、素人目にも山城を置くのに適地であることが納得される。

下塩尻コース分岐
和合城跡頂上

鞍部に戻り、下塩尻側に下る。山腹を斜めに横切って緩く下る、歩き易い道だ。道端に古い石垣があるので、昔からの峠道なのかも。最後は沢沿いに下って、山麓の車道に出る。登山口を示す道標はあるが、車道から少し奥まったところに立つので、逆コースの場合は登山道入口が分かり難いかも。

下塩尻コースを下る
下塩尻コース登山口

山麓の集落の中、用水路に沿った車道を歩く。立派な蔵を持つ沓掛酒造の前を通り、交通量の多いR18を横断して、しなの鉄道の西上田駅に着く。閑散とした駅前から、歩いて来た稜線を急峻な山肌の上に仰ぎ見る。全然軽い山歩きではなくなって、たくさん歩いたなあ。足の方は、歩いて血行を良くした効果があったのか問題なく、不安も払拭された。

しなの鉄道西上田駅
西上田駅から和合城跡(左)を望む

西上田駅15:15発の列車に乗車。しなの鉄道は初めて乗車する。学生や旅行者などで、ほぼ満員の乗客がある。上田駅15:19着。駅構内のラーメン屋で餃子とビールで一人宴会したのち、16:15発の北陸新幹線に乗車して、桐生への帰途についた。