鞍掛山
2月に男抱山に登ったとき、頂上から鞍掛山を眺めて、その右に突き出た鋭峰に目が留まった(写真右)。『栃木の山150』によると、この峰は鞍槍といい、鞍掛山から稜線伝いに登山道が通じているとのこと。鞍掛山も栃木百名山でまだ登っていない山なので、鞍槍と合わせて歩くと面白そうだ。という訳で、Kさんに同行頂いて出かけてきました。
桐生を車で発ち、高速を宇都宮ICで降りて、古賀志山山麓の宇都宮市森林公園に向かう。途中、サイクルジャージにレーサパンツの自転車乗りが大勢走っていて、その手の大会(サイクルピクニック)が開催されているらしい。加えて晴天の休日なので、行楽客や古賀志山に向かうハイカーさんも多く、森林公園の広い駐車場は8,9割方埋まっている感じ。ここに車を置いて歩き出す。
今日の行程は、森林公園駐車場から長倉山という小さな山を越えて鞍掛山登山口に出、鞍掛山と鞍槍を周回する予定である。駐車場から出てすぐのところに長倉山への登り口がある。道標はないが、立派な階段道が杉林の中に通じている。
杉植林帯を緩く登り、赤いヤマツツジの花がポツポツと混じる新緑の雑木林を経て、長倉山の頂上に着く。樹林に覆われて展望はない。
長倉山からちょっと急な尾根道の下りとなる。周囲は新緑の森林で、意外と山深い感じがする。ひとしきり降り、沢を渡って林道鞍掛線に出る。鞍掛山登山口は林道を右へ僅かに下がったところだ。Y字路に3台分くらいの駐車スペースがあるが、ハイキング日和の今日は案の定、埋まっている。木立の間から、なかなか急で高い鞍掛山が仰がれる。
Y字路の右の林道に入ると、杉林の中にぽっかりと開けて明るい草地があり、「鞍掛山登山道のご案内」の奥に丸太のベンチや「弐の鳥居」の石鳥居、杉林の中に「国有林拂下記念碑」の大きな石碑がある。Kさん差し入れの黒酢ジュースを頂いて一服したのち、鳥居を潜って沢沿いの登山道を登る。
最初は杉林の中の緩やかな登りだが、すぐに両側が切り立つ谷に入り、傾斜が増す。左岸の大岩に下に首のない2体の石像が置かれている。双対神と呼ぶそうだが、剣や羂索、衣服を見るとどちらも不動明王像のような気がする。
水流の少ない沢に沿って登ると「鞍掛神社→」の道標があり、枝沢の奥に三段の滝が細く水を落としている。両岸は高い岩壁でゴルジュ状になっており、里山の滝にしてはなかなかの迫力。「鞍掛山神社」の石碑があるから、こちらが正式名称だな。滝の左壁に岩窟があり、入口に新しい注連縄と紙垂が張られている。梯子を登って中に入ると内部は真っ暗。何やら円形の石碑が祀られているが、碑銘は読めない。
登山道に戻り、本流を登るとすぐに岩コース(奥の院)と尾根コース(大岩)の分岐点に着く。ここは右の尾根コースへ。
小尾根を越えて、鞍掛山神社の滝の上流の沢に沿って登る。新緑に覆われた急斜面に取り付き、最後はロープを伝って急坂をこなすと稜線に出る。
さらに稜線上を登る。ヤマツツジの群落が見頃だ。小さな岩場を登ると鞍掛山の頂上稜線の東端にある大岩に着く。
大岩は南側が切れ落ちて、絶好の展望台となっている。登ってきた谷や長倉山を俯瞰し、古賀志山のギザギザの稜線を間近に眺める。ハイカーさんも多数休憩中。我々もここで大休止。暑いので缶ビールが美味い。それから、ちょっと早いがパンで昼食とする。
展望を楽しみながらのんびり昼食を終え、山歩きを再開する。大岩を短い梯子で降り、平坦な痩せ尾根を歩く。稜線が少し広くなると、杉林に囲まれて三角点標石がある。ここが鞍掛山の頂上で、とても地味な場所である。休憩するならば大岩に限る。
頂上のすぐ先に岩コースの分岐と鞍掛山神社奥の院の石祠がある。祠にはお神酒がお供えされている。岩コースを上から覗き込むと、杉林の急斜面に鎖の手摺が付けられている。ここから見る限りでは、登ってきた尾根コースの方が趣があって面白そうである。
「↑古賀志山方面」という立派な道標に従って、縦走路に入る。杉植林帯の稜線を下り、鞍槍への登りに転じると雑木林の稜線となる。樹林に隠れているが両側の斜面は切り立っていて、進行方向に見てみれば鋭鋒となっているのも頷ける。
登り着いた頂上は北面の眺めが開け、日光連山の裾野に小さな山塊が点在しているのが俯瞰される。「シゲト山480M」との山名標もある。足尾にも同名の山があるが、どういう由来なのだろう。
鞍槍から長く稜線を下る。降り着いた鞍部は杉植林帯の中で、猪倉峠との標識がある。
峠から雑木林の急坂を登り返す。細い稜線から振り返ると、鞍槍と鞍掛山がどちらも丸みを帯びた頂を連ねている。この辺りの自然林の雰囲気はなかなか良い。小ピークに登り着き、古賀志山北尾根への道を右に分けて、左の枝尾根を下る。
この枝尾根上の道も良く踏まれており、木の階段まで設置されている。やがて左側斜面が広大に伐採された区間に出て、鞍掛山の方向が遮られることなく眺められる。小さく上下する尾根の途中の高みで展望休憩。直下の斜面には縦横に荒れた作業道が走るが、青空の下、鞍掛山から鞍槍に緩く弧を描いて連なる稜線はなかなか良い眺めである。
伐採地を抜け、雑木林の尾根を下ると林道鞍掛線に出る。あとは杉林の中の車道を歩く。暗く鬱蒼とした森林に囲まれた細野ダムを過ぎ、以前歩いたことのある古賀志山北コースの登山口の前を通る。バーベキューのいい匂いが漂う赤川ダムの湖畔を辿り、ダムサイトから古賀志山を眺めたのち、森林公園駐車場に到着した。
帰りはろまんちっく村の湯処あぐりに立ち寄る。今日はサイクリング後のお客さんも多いが、広い露天風呂にゆっくり浸かることが出来る。汗をさっぱり流したのち、桐生への帰途についた。
参考URL:計画の際、山歩き遊悠湯の鞍掛山の記事を参考にさせて頂きました。