城山〜ハナント山
この週末は土曜が晴れの良い天気となったが、諸事情により、天気が下り坂との予報が出ている翌日曜に山歩きにでかけることにした。天気がいまいちなので、行き先は限られる。どこにしようかなと考えて、ハナント山を思いついた。
以前、二股山に登って展望地から安蘇山塊を眺めたとき、山並みから頭一つ出た奇麗な三角形の双耳峰が目に留まった。これがハナント山で、以来、気になる山の一つとなった。しかし、ネット上のその筋の方々の山行記録によると、杉植林に覆われて展望がない地味な山のようなので、他にも気になる山が多々あるなか、これまで後回しになっていた山でもある。今回はピークハントとトレーニングを山行の目的とし、城山公園から粟野中央尾根を辿ってハナント山に登ってきました。
桐生を車で出発。北関東道を栃木ICで降り、大越路トンネルを抜けて思川に沿って走り、下山予定地の馬置に向かう。馬置バス停の100m程上流に公共の駐車場と東屋、WCがあり、ここに車を置いて、バス停で7:27発JR鹿沼駅行のリーバスを待つ。ここから仰ぐ谷倉山の東尾根はすっぱり切れ落ちて、相変わらずの怪峰っぷりを見せている。
定刻通りにやって来たバスに乗車。乗客は最初は女の子一人だったが、旧粟野町の市街に近づくに連れて増えて、10人程になる。上仲町バス停で下車。運賃は400円也。少し戻ったところが粟野城山公園の入口となる。町角には「つつじまつり」の看板が立てられていて、観光客が大勢来そうな雰囲気があるが、まだ朝早いのでひと気はない。
車道を緩く登って城山公園に入る。明るく開けた斜面を覆うヤマツツジは七分咲きといったところ。ヤマザクラも咲いていて、新緑と赤や白の花の取り合わせが綺麗だ。粟野城の遺構やスカイローラーなどの遊具もあり、散歩道も縦横に整備されているので、なかなか楽しめる公園ではないかと思う。
「二重の塔 防空監視哨」の道標にしたがってツツジ群落の間の散歩道をジグザグに登ると、岩場の上に建つ二重の塔に着く。公園と市街を俯瞰する展望が爽快だ。
二基の石灯籠の間を通り、皆伐された尾根を登ると城山の頂上に着く。頂上には明治39年に建てられた「城山」の石碑と「祥風晃朗」の二基の石柱、それと風化したコンクリ製で井戸のような構造物があり、脇に「口粟野防空監視哨」と刻銘された石標が建つ。
防空監視哨の説明板によると、太平洋戦争中にウラジオストクから東京に飛来するソ連の爆撃機を想定して、それを監視するために建設されたものとのこと。実際には東京や宇都宮を爆撃したB29を監視し、戦闘機の機銃掃射を受けたこともあるとか。土木学会より「栃木県の防空関連施設群」の一つとして推奨土木遺産に指定されている。
頂上からは360度の展望が得られ、口粟野の街並みや、曽遊の三峰山や谷倉山などの山々、そしてこれから辿るハナント山に連なる山並みが眺められる。
城山までは遊歩道が整備されているが、この先は道がない。防獣ネットを跨いで越え、稜線を辿る。直進すると急斜面に行き当たるので、左寄りに下って小鞍部に着く。この先はだいたい杉植林帯に覆われた稜線で、微かな踏み跡が通じている。伐採されて陽当たりの良い区間は藪っぽいが、それ以外は藪はない。
アオキが下生えの杉植林帯の稜線を辿ると231m三角点の標石があり、その先少し下ったところに崩れた石祠がある。以降、杉植林帯の緩く上り下りする稜線を延々と辿る。展望に乏しく些か単調だが、トレーニングのつもりで歩いているので問題ない。
33m標高点を過ぎると伐採地の区間があり、右側に三峰山から横根山、遠く男体山まで眺められるが、低木とヒノキの幼樹の藪が酷い。ヤマツツジの濃い紅色の花がぽつんと咲いていて、慰められる思い。
伐採地を抜けると雰囲気の良い雑木林の稜線となるが、また杉植林帯に入って緩く登ると368m標高点のピークだ。
次の410m標高点まで行くと、木の間越しに509m標高点ピークがこんもりと見える。ここから標高差約100mの登りとなり、509m標高点を越えて100m下る。うーむ、勿体無い。414m三角点ではR.K氏の標識を発見。こんな山まで標識を付けに来るとはさすがである。
倒れて風化した石祠を過ぎ、460m標高点に着く。さらにゆるゆると稜線を登降し、漸く木立を透かしてハナント山の山影を認める。まだまだ遠いなあ。この辺りで数は少ないがアカヤシオの花を見る。
尾根が痩せると459m標高点に着く。ちょうど正午になったので、ここらで昼食にしよう。レジャーシートを敷いて腰を下ろし、レトルトパウチの鯖味噌煮を肴に缶ビールを飲み、COOPソース焼きそばを作る。暖かいのでビールが美味いが、既に曇って来ていて、予報通り雨が落ちてきそうな雲行き。腹を満たしたら、先を急ごう。
459m標高点からは鞍部へ大きく下る。地形図にはこの鞍部で稜線を越える破線路が記載されているが、峠道らしきものはない。ここからハナント山へ、標高差約270mの大登りとなる。杉林の急斜面を登り、緩やかなピークを一つ越えて再び登ると、ハナント山の東の肩に登り着く。ここには石祠が鎮座して、ひっそりと訪問者を待っている。
もう一段、緩く登って、ハナント山頂上に到着する。三角点標石と傍に割れて落ちた山名標がある他は、展望もなく地味な山頂である。しかし、はるばると歩いて来たから、少なからず達成感はあるかな。とうとうパラパラと雨粒が落ちて来たので、ザックにカバーをかけ、下ゴアだけを着る。
ハナント山から北西に落ちる主稜線を辿る。疎らな雑木林の中、枯葉を踏んで下るのはなかなか風情がある。途中で伐採地の上に出て、北東方面に粟野川沿いの集落を俯瞰し、羽賀場山や二股山を遠望する。雨具を着ると雨が止むという法則が発動したのか、雨粒が落ちて来なくなって暑いだけなので雨具を脱ぐ。
さらに稜線を下って、粟野川側と思川側を結ぶ林道に出る。看板に「羽遠線林道起点」とあるのは、多分ここで分岐する未舗装の林道のことじゃないかな。林道を横断して稜線を登ると528m標高点で、この先もゆるゆるの登降が続く。
480m標高点を過ぎると送電鉄塔があり、右(北)に石裂山のギザギザの稜線を間近に眺める。送電鉄塔まわりの切り開かれた草地には、食べ頃のワラビがたくさん出ている。採って行こうかな。しかし、さすがに疲れ始めて先もまだ長いので、採るのは止めておく。
やがて稜線の幅が広がって平坦になる。ここは今回の行程の中でも快適な歩きが出来た個所だ。600m標高点を過ぎて稜線が狭まると石祠が現れる。石祠は北東を向き、その方向には水沢の集落が木の間を透かして見える。
ここから急斜面を下って鞍部に着く。鞍部の左には地形図にも記載のある大きく深い凹地がある。水は溜まっていないようだが十分に湿り気があるらしく、カエルの声が響いてくる。しかし、凹地をよく見ようと近づいたら、ピタリと鳴き止んでしまった。
鞍部からの登りも相当の急斜面だ。つまり、この鞍部はキレットになっている訳で、凹地の成因と何か関係があるのかな、などと考えつつ登って行く。急斜面を登りきると、背の低い笹原が下生えに広がる杉植林帯の緩斜面となり、有るか無きかの踏み跡を辿る。
やがて作業道と合流して、ほとんど真っ平らな657m三角点のピークに着く。杉植林の中で展望ゼロ。少し先には送電鉄塔があるが、そこも展望はない。三角点標石は作業道の脇の杉林の中にあった。そこそこの標高と三角点のある山で、こんなに地味な山頂は記憶にないかも(^^;)。いずれにしても怪しい天候の中、予定のピークまで歩き通すことが出来て大満足だ。あとは駐車地点まで下るだけである。
657m三角点から南に落ちる尾根を下る。地形図から読み取れる通りの緩く広い尾根で、良く手入れされた植林帯の中で藪はない。下って行くと深く抉れた木馬道が何本も現れる。作業道を横断してさらに尾根を下るが、ここは作業道を左に辿る方が近道のようだ。
尾根末端は小ピークに行き当たるので、その前の鞍部を右に下ると神社の廃屋がある。神社前の踏み跡を下ると思川沿いの車道に降り立つ。正面には谷倉山東尾根が鋭く聳えている。車道を歩いて、馬置の駐車地点に戻る。最後まで本格的な降雨に遭わずに済んだのは運が良かった。
帰りは栃木♨湯楽(ゆら)の里に立ち寄って汗を流す(入湯税込で840円)。長丁場を歩いてさすがに足が疲れたので、温めの湯にゆっくり浸かって疲労回復を図ったのち、栃木ICから高速に乗って桐生への帰途についた。