谷倉山(栃木市)
安蘇山塊には二つの谷倉山(やぐらさん)がある。一つは鹿沼市中粕尾の谷倉山(標高747m)。もう一つが今回登る谷倉山(標高599m)で、栃木市星野町にあり、こちらは栃木百名山に選ばれている。Kさんに同行頂いて歩いてきました。
桐生を9時に車で発ち、高速を経由して1時間程で星野遺跡憩の森に到着。約10台分の駐車場があり、ハイカーさんのものと思しき車が1台ある。今日は穏やかに良く晴れて、空気がキンと冷えて寒い。目の前には永野川を隔てて三峰山がくっきり眺められる。標高600m程の低山にしては、なかなか険しい山容だ。
目を転じて望む谷倉山は、左右になだらかな稜線を広げて、三峰山とは対照的にのったりした感じの山容である。頂上に電波塔が建っているのが見える。谷倉山の山行記録はネット上に多数あるが、今日は『栃木の山150』(随想社)に記載されていて一番標準的と思われる周回ルートを歩く予定である。
林道に入ると、ネット上の写真で良く見かけた分岐がある。林道開鑿記念碑と新旧の石の道標が建ち、新しい道標には「左地層たんけん館 右山口沢」、古い道標には「左粕尾道 右岩倉山道 明治十七年…」と刻まれている。岩倉山というのは、谷倉山のことかな。
分岐を左の林道寒沢線に進むと、星野遺跡地層たんけん館がある。入場無料だし、折角の機会なので中に入って見学する。星野遺跡を発掘調査したときの地層断面(深さ10m)が保存されており、ここから多数の石器が発掘されたとのこと。
地層たんけん館を出、林道を辿って山懐に入って行く。杉林の中に入ると程なく林道は終点となり、「小山芳姫(おやまよしひめ)の墓 570m↑」との道標がある。丸太橋を渡ると、沢沿いの登山道となる。
登山道を辿ると、昨冬の大雪で倒れた杉が折り重なって進路を塞ぐ。倒木を跨いだり潜ったりして進むが、しまいには沢を全面的に塞ぐような倒木帯に遭遇。これは酷い。山腹をトラバースしてこれを越える。沢登りで滝を高巻くことはままあるが、倒木帯の高巻きは初めてかも。高巻き中に、倒木の上を渡って降りて来る単独行のハイカーさんを見かける。挨拶すると、そのままトラバースした方が良いですよ、とのアドバイスを頂く。確かに、倒木渡りは見るからに不安定で、大変そうである。
高巻きを終えてなんとか沢に戻ると、左に芳姫の墓、右に谷倉山への道を分ける地点に着く。「小山芳姫の墓 250m↑」の道標や「遊古道」と書かれた古い案内看板がある。芳姫の墓に立ち寄るので、ここは左に進む。
芳姫の墓まで250mの間にも倒木が多く、難儀する。あと何mという道標は頻繁にあるが、なかなか着かない。途中で、犬を連れたハイカーさんに会う。あと85mの道標を過ぎると山腹の杉林をジグザグに登る道となり、ようやく芳姫の墓に着く。ここまで来るのに意外に苦労したので、なんだか秘境に辿り着いた気分である(^^;)
小山芳姫の墓について、『栃木の山150』には次のように書かれている。
南北朝時代に下野の守護であった小山義政は、鎌倉公方であった足利氏満にそむき粕尾城に籠もったが、戦いに敗れて赤石河原で自害した。芳姫はその小山義政の正室で、義政に会うために侍女を1人伴って粕尾城に向かっていたが、持っていた乾飯の袋を宝の袋とまちがわれ、案内役のものに殺されてしまった。その後、村人はこれをあわれんで芳姫の墓を建て供養したという。
墓碑には新しい絵馬が供えられている。あとで調べると、芳姫は埼玉県久喜市の鷲宮神社の再興にも関わったそうで、そちらの関係からお参りに来た人が供えたようだ。
休憩して一服したのち、少し戻ったところの「←谷倉山」の道標から小尾根上の踏み跡を登って、稜線を目指す。巻道と直登の分岐は直登へ。最後は急斜面を直登すると、幅広く平坦な稜線に登り着く。
稜線には明瞭な道型があり、これを辿って谷倉山に向かう。この稜線は広く緩やかで、なかなか気分がいいプロムナードである。杉の植林が続くが、やがて雑木林の尾根となり、落ち葉の積もる坂を登れば、谷倉山の頂上まで一息である。
登り着いた頂上は緩やかで、フェンスに囲まれて大きな電波塔が建つ。電波塔の前は最近ブルで整地されたらしい平地になっていて、その中央に三角点標石がぽつねんとある。些か情緒に欠ける頂上だが、里山ではまあ仕方ないか。
頂上から北に向かう稜線上に眺めの良い場所があるそうなので、行ってみる。電波塔の配電線路に沿って整備された歩道が通じ、これを辿ると伐採地に出て眺めが開ける。杉植林が育って展望を邪魔するが、北に冠雪した日光連山を眺めることができたので満足。
こちらには休憩できそうな所はないので頂上に戻り、樹林で風を避けられる陽だまりの落ち葉の上に腰を下ろして、昼食にする。今日は鍋焼きうどん。それにKさん差し入れのサラダと果物を頂いて、のんびり過ごす。
下山は南南東に延びる稜線を下る。こちらも杉林に覆われた広く緩い稜線で、楽ちんな道程である。単車らしい轍があるのは謎。
493m標高点(標識あり)を過ぎると、雑木林の残る稜線となり、木の間越しに三峰山が眺められる。陽が傾き始めた山道を快調に下る。振り返ると、谷倉山が既に結構高い。麓から眺めたときの凡庸な印象とは異なり、谷の深いどっしりとした山容である。
杉林に覆われた広い尾根をゆるゆる下って行くと、「梵天山見晴台→」の道標があり、ここから右寄りに下ると赤松に「梵天山見晴台」の看板が掛かる地点に着く。しかし、見晴らしはないし、どこが梵天山なのか不明。
ここからはやや荒れた山道を下る。途中には道標が多く、かつては麓のキャンプ場からのハイキング道として整備されたもののようだ。
尾根から右へ山腹を下ると、すぐにひと気のないキャンプ場に下り着く。ハイトスさんの山行記録によると、キャンプ場の中を下ると民家の庭先に出てしまうとのこと。それを避けて、右に見えている林道山口沢線に出るルートを探してうろうろするが、結局、同じ箇所で沢を渡って林道に這い上がる。あとは林道を歩いて、駐車地点に戻った。
帰りは栃木市大平町のゆうゆうプラザ四季彩の湯に立ち寄る(300円)。浴室が広くて快適。お客さんも多くて繁盛していた。お勧め。ゆっくり温まったのち、帰桐した。