永野三峰山
この冬は暖冬で、どこも雪が少ないと聞く。特に2月14日には春一番が吹き込んで、静岡、神奈川、千葉では最高気温が25℃を越える夏日になった。桐生でも21.2℃まで気温が上がって、GWの頃の陽気になった。例年ならばスノーハイクやスキーに出かける季節なのだが、少雪でこんなに暖かいと、いまいちモチベーションが上がらない。去年の今頃には桐生でも吹雪の週末があったのに、一体どうしちゃったんでしょ?(追記:次の週末の天気は真冬に戻って、山には久しぶりに雪が降った。)
一方、この暖かさで、各地から早めの花の便りが届き始めた。栃木市星野のセツブンソウも見頃という情報をネットで得る。セツブンソウは見たことがないし、ついでに三峰山にも登れるから、見に行こうかな。三峰山は、以前、南麓から鍋を伏せたような山容を眺めたことがあり、そのときの印象から穏やかな普通の里山とばかり思っていたが、ネットで調べてみると信仰登山の参道を周回するルートがあり、これがなかなか険しそう(下記の参考URLを参照)。花と参道に興味を惹かれて、出かけて来ました。
桐生を車で発って、足利、田沼を経由して葛生に向かう。葛生は石灰岩の一大産地で、行き交うトラックで道が白く埃っぽい。会沢トンネルを抜け、明るく開けた永野川の谷を星野に向かう。行く手には別名を鍋山ともいう三峰山がのったりと横たわっている。
星野のセツブンソウ自生地は三峰山の東麓にあり、県道に沿って走って行くと「四季の森星野」という看板があって、すぐに判る。近くには広い駐車場と売店があり、そこに車を置く。花を目当ての人が既にたくさん来ていた。花を見る前に、WCに行くついでに周辺を歩く。永野川沿いに公園があり、駐車場やWC、東屋、芝生の広場があるほか、川遊びも出来るように整備されている。ここから見る三峰山は、奥の院や権現山が急峻な山肌を見せていて、小さい山ながら登り応えがありそう。
さて、花を見に行きますか。セツブンソウ自生地は山の端にあり、遊歩道で一周できる。林間の草地には、びっしりとまでは行かないが、一面にセツブンソウが咲いていて見頃。小さくてかわゆい花だなぁ。本格的なカメラを持って来ている人が多く、熱心に写真を撮っている。花まで距離があるので、私のコンデジのズームではちと無理がある。こういう場面では、デジ一とか欲しくなるかも(^^)
セツブンソウを観賞したあと、三峰山登山口の御嶽山神社まで車で移動する。永野川にかかる蔵本橋を渡ると、「永野御嶽山入口」と刻まれた大きな石柱があり、ここを左折。道なりに進んで右に曲がると、御嶽山神社に着く。境内の駐車場は参拝者専用で、神社の左手に登山者用の広い駐車スペースがある。既に5台程の車があった。
神社の境内に入ると「北辰ヶ岳御嶽山」と書かれた案内図があり、三山参道の略図とともに次のような説明があった。
当御嶽山及び三峯山は、古来神々の宿る霊山として信仰されて来た山です。殊に御嶽山(お岩戸)は北辰様・星宮等とも言われて特に信仰されてきました。三峯山お岩戸は通称権現様と呼ばれ大日如来御祭祀の地として広く信仰されてきた御山です。
信仰登山の中心は御嶽山と三峯山のお岩戸で、ハイカーが目指す地形図上の三峰山(標高605mの三角点ピーク)は、それとはあんまり関係がないらしい。境内には○○霊神と刻まれた多数の石碑や滝行場があり、いかにも信仰登山の地らしい雰囲気がある。
本殿に参拝したのち、少し戻って三峯山里宮からジグザグの坂道を上がると祖霊殿があり、奥の院のピークがなかなか尖って聳えているのが眺められる。祖霊殿の裏の林に入り、谷川に沿って登ると小屋があり、その先に清滝不動の滝行場がある。
清滝不動から鳥居をくぐってコンクリの階段を登り、さらに谷を遡る。道には灰白色の石灰岩がゴロゴロ転がっていて、濡れると滑り易そうだ。ほどなく到着した普寛堂の周辺にも多数の石碑がある。普寛堂から、石灰岩を積み上げた急な石段で一直線に斜面を登って行く。石段の傍らには石祠が建ち並んで、さながら石祠の団地という感じ。
石段を登り詰めると「左 阿留摩耶山参道|右 御嶽山参道」と刻まれた石の道標がある。阿留摩耶山への道は滑り易いので初心者は避けるべき、とされているが、どんな場所か見たくてちょっと入ってみる。鉄製の古い手摺を伝って急な斜面を登って行くと、岩場にアルミ梯子が掛けられていて、その先に祠がある。これが阿留摩耶山?のようだ。この先に道はなさそうなので(あっても危ないので行く気なし)、来た道を元の分岐まで戻る。
分岐から右の御嶽山参道を辿ると、急な山腹を斜めに登って「御嶽大神御岩戸入口」という石碑の建つ岩場の下に出た。ベンチがあって休憩適地だ。岩壁には鎖がぶらさがっていて、その上が「お岩戸」らしい。鎖を攀じ登ると小さな岩穴があり、膝をついてにじり入ると、中は2、3人で満員になりそうなミニ鍾乳洞になっていて、祠が祀られていた。
御嶽大神からも阿留摩耶山に向かう参道があるが、急斜面に付けられたあるかなしかの踏み跡で、剣吞、剣吞。今度は大人しく、寄り道せずに奥の院に向かう。こちらの道も三笠山の急斜面をトラバースする道で、足元は険しく切れ落ちて、なかなか高度感がある。
杉林の緩い谷を詰め上がって稜線に出る。明るい雑木林の尾根道を右に向かい、鳥居をくぐって露岩の上に青銅像が祀られた奥の院に着いた。樹林に囲まれて木の間からの展望に限られるが、三峰山へ続く稜線が見渡せる。
奥の院から引き返し、さらに稜線を辿って三峰山に向かう。途中で寺坂峠への道を右に分ける。緩い尾根道はヒノキ林に囲まれて展望がなく、いささか単調。やがてすぐ右手は広大な石灰岩採掘場となり、立入禁止の看板が頻繁に立ち、登山道に沿ってロープが張られている。稜線上にもところどころ石灰岩の露岩がある。途中の剣ヶ峰は、樹林に囲まれて石祠があるだけの静かなピークだ。写真を撮っただけで先に進む。
剣ヶ峰から一旦下って、鞍部から権現山へ登り返す。権現山の頂上は平坦で、ここも林に覆われて展望はない。少し進んだ所に道標があり、左に分岐する道は「←三峰大神(鎖場)」となっている。その先はどんな道か、ちょっと偵察してみると、すごい急な道だった。ここも大人しく「三峰山(三角点)→」の道標に従って右の尾根道を進む。
権現山から少し下って、倶利伽羅不動明王を経由する下山道を左に分け、ヒノキ林の斜面を登って行くと、あっけなく三峰山の頂上に着いた。頂上には三角点、石祠、いくつかの山名標が背の高い笹に覆われてあるだけだ。
踏み跡を少し先に進むと石灰岩採掘場の端に出て、北から西にかけての展望が広がる。霞がかかって、遠くの日光連山や皇海山、袈裟丸山は残念ながらうっすらと見えるだけだが、安蘇の山並を一望することができ、眼下の広大な採掘場の眺めはなかなか迫力がある。日溜まりに腰をおろし、展望を楽しみながらランチパックを齧って昼食をとる。
三峰山から下るとき、頂上のすぐ北で林間に大きな窪地があることに気がついた。これは地形図の等高線にも現れている。カルスト地形に特有のドリーネかと思ったが、帰宅後にネットで検索すると、石灰岩の採掘でできた山中の空洞が陥没して生じたものらしい(三峰山 (栃木市・鹿沼市))。この辺の藪漕ぎは陥没の危険があるので、要注意。
分岐まで戻り、下山道を下る。大岩の割れ目の中に祠が祀られた倶利伽羅不動明王を過ぎ、急な谷間を下って行くと、右手の山腹に浅間神社鍾乳洞がある。鍾乳洞の入口は鉄格子で囲われて、入ることはできない。中を覗き込んでも、どれくらい奥行きがあるかは判らなかった。さらに下ると古い林道に出て、あとは林道を辿る。山ノ神を過ぎるともう山麓で、駐車場の裏手に出た。
帰りは出流原弁天池近くの赤見温泉・公園荘の風呂に立ち寄った(700円)。沸かし湯だが、湯船を独占してのんびり入れたし、露天風呂もあって満足、満足。
参考URL:計画の際、小山山岳会の三峰についての記事を参考にさせて頂きました。