鳴蟲山〜大高畑山〜大鳥屋山
最近、羽賀場山、笹目倉山と、鹿沼周辺の栃木百名山に続けて登ったこともあり、同じエリアにある栃百の鳴蟲山にも改めて興味が湧いてきた。ネットで調べると、鳴蟲山の西に大高畑山、大鳥屋山という顕著なピークがあり、鳴蟲山から縦走した山行記録がいくつかある(末尾参照)。この三山の縦走は、低山にしてはアップダウンが激しく、なかなか歩き応えがありそう。北麓の塩沢集落を起点とし、鳴蟲山北尾根から登って、鳴蟲山から大鳥屋山まで縦走、大鳥屋山東尾根を下降して塩沢に戻る周回ルートで歩いてきました。
桐生を車で出発。東北道を鹿沼ICで降り、鹿沼市街を抜けて古峰原街道を走る。先週に続き、今日も良く晴れて穏やかな天気。二股山や羽賀場山、そして全面的に白くなった男体山の頂きが、青空の中にくっきりと聳えている。
塩沢橋の真向かいにある西大芦東生活改善センターに車を置く。ここは1973年に学校統合で廃校となった西大芦東小学校の跡地で、かつての広いグラウンドの一部がゲートボール場になっている。グラウンドの片隅に駐車しても、差し支えはなさそうである。
出発すると、ちょうど9時台の上りのリーバス(羽賀場山の時にお世話になった)が、塩沢橋バス停を通過して行った。大芦川の清流に架かる塩沢橋を渡り、対岸の塩沢集落に入る。集落の上には登路に予定している鳴蟲山北尾根と、その奥にちょこんと三角形の頂上部が飛び出た鳴蟲山が見える(写真を撮ったが、完全に逆光で失敗。帰り撮った写真を最後に掲載)。
一方、下山予定ルートの大鳥屋山東尾根は、末端だけが見えている。杉林に覆われ、山裾には竹藪が繁茂している。どの辺りを降りて来るのが良さそうか、目星を付けておく。
右に林道塩沢線を分け、左に天気山を眺めながら道なりに歩くと、林道黄金沢線の起点に着く。石祠と「林道黄金沢線」の真新しい黄色看板があり、直進すると林道黄金沢線。ここは左折する。民家の間を通り抜けると未舗装の作業道となり、北尾根に向かう。
当初は北尾根を末端からダイレクトに登るつもりだったが、取り付けそうな手頃な場所がないので、取り敢えず作業道を辿ってみる。作業道は伐採地を大きくカーブして登り、沢筋に少し入ったところで終点となる。沢の右側の斜面は、杉林の八割方が倒れて折り重なり、倒木のジャングル状態になっている。これは今年2月の大雪の被害だろう。
終点から左側の斜面に取り付くと、杉林の中にか細いながらも踏み跡が続き、ピンクや水色のテープのマーキングもある。踏み跡は杉林の急斜面をジグザグに登っており、何もない所を直登するより格段に楽である。この道が尾根上まで通じていれば超ラッキーだ。道は、一時、沢の奥に向かうが、切り返して尾根上の606m標高点を目指して登って行く。ところどころで倒木が踏み跡を塞ぐが、数は多くなく、至極快適に歩ける。
踏み跡を辿って尾根上に登り着き、少し尾根を登って606m標高点の頂上に到着した。踏み跡があって、非常に助かった。この先は杉林に覆われた緩い尾根で、さらに歩き易い。最後に急坂を登ると、鳴蟲山の頂上に着いた。
頂上は樹林に囲まれて展望に乏しいが、南面の雑木林から日が差し込んで、意外と雰囲気は明るい。三角点標石と3基の石祠がある。石祠には「天保十四(1843)年卯二月」、「上久我村中」などの彫り込みがあり、古くから山麓の信仰があったことが窺える。
頂上の先を僅かに下ると、赤白ツートンカラーの送電鉄塔(南いわき幹線274号)が建つ。高さ132m!(プレートに書いてあった)もの巨大な鉄塔で、鳴蟲山の無粋なシンボルになっている。しかし、鉄塔基部からは展望が得られ、天気山や羽賀場山、二股山、安蘇山塊の山並みが眺められるから、その点はまあプラスである。
頂上でしばらく休憩したのち、大高畑山に向かう。最初から急角度の下りとなるが、その先は概ね緩やかな尾根となる。ずっと杉檜の植林帯が続き、藪はない。展望はところどころに混じる雑木林を透かして得られる程度である。振り返ると、鳴蟲山の端正な三角形の頂きが既に高く遠い。
やがて尾根は林道黄金沢線の深い切り通しによってぶった切られる。少し手前から右に降りる踏み跡を辿って、舗装された林道に出る。林道を右に進むと法面に鉄製階段が架かり、参考にさせて頂いた記録によると、以前はここから尾根に復帰できたようだ。しかし、今は階段の上の斜面が酷い藪と倒木で、通行不可能。他に上がれる場所を探そう。
林道を左に暫く辿ると、擁壁が切れて、すぐ上に尾根が見える箇所があり、楽勝で尾根上に復帰する。だいぶ林道を歩いたので、この辺りにあるはずの大岩に祀られた石祠をバイパスしてないか、という点が気がかり。
尾根上を辿ると露岩が現れ、幸いなことに大岩の石祠に着く。これが見たかったので、通り過ぎていなくて良かった。石垣の上に2基の石灯籠があり、「大正七年九月吉日」の銘がある。石祠の中には毘沙門天?の木像が納められているが、本来の祭神かどうかは不明。
大岩を右から巻き、小ピークを越えて下ると、地形図で破線路のある峠(ネット調べで白根峠あるいは芝クレ峠の名称あり)に着く。左右に微かに峠道も残っているが、当面は沢筋を下ると倒木で苦労する可能性が高い。
この峠から大高畑山へは、標高差約170mの急登となり、杉林の急斜面を一直線に登る。右側に防獣ネットが現れると、少々枯れた草藪が出てくる。約20分の登りで、大高畑山の頂上に着く。東西に長く平坦な山頂は杉林に囲まれて薄暗く、休憩しようという気にならない。正午をとっくに過ぎて腹ペコだが、もう少し先でお昼にしよう。
頂上から緩く下って、699m標高点ピークとの鞍部で昼食とする。本日は焼さんまもみじおろし缶+DRY ZERO ブラックと、もやし入りラ王味噌。食べ終わったのは13時半近くになっていた。そろそろ日没時刻が気になってきた。ここからは少しペースを上げよう。
小さな岩場を通過すると、699m標高点へ標高差約130mの急坂となる。かなりの急傾斜だが、品塩山の頂上直下よりはましかな。今日は地面が凍っていないし。しかし、途中ののっぺりした岩場を中央突破するときは、少々肝が冷えた。登り着いた699m標高点の頂上も杉林に覆われて展望なし。地味な尾根歩きが続く。
699m標高点から下ると、左斜面が広く伐採された地点に着く。ここで、右に折れて、小尾根を急降下する。小尾根の下り口は分かりにくいが、赤テープのマーキングがある。
下り着いた鞍部は、地形図に破線路のある峠(ネット調べで大塩田の名称あり)だ。右に下ると林道塩沢線に至り、塩沢集落にエスケープできる。16時半の日没まで、あと2時間半程。大鳥屋山東尾根が事前情報のない下山ルートな点に少々不安を感じるが、ここまで来たら計画通りに行くしかないでしょう。ということで、大鳥屋山への急登に取り付く。
急坂を上ると傾斜が緩み、右斜面の雑木林を透かして大鳥屋山らしきピークが結構遠くに見える。やがて露岩混じりの細い尾根となると、尖った大岩が現れる。これは左に下って通過。
あとは杉林と雑木林の境界の尾根を緩く登る。低木の小枝が少々煩い。鞍部から約30分の登りで、大鳥屋山の頂上に登り着く。頂上には三角点標石と比較的新しい山名標が一つ、杉の木に架けられている。ここも展望はないが、傾いた日が差し込んで、なかなか良い雰囲気。クッキーを食べて休憩する。
さて、下山である。平坦な頂上の奥で右に分岐する東尾根に入る。杉植林に覆われて、この尾根も藪はない。傾斜も適当で、これはなかなか良い下山ルートの予感。やがて尾根が痩せて小さな岩場があるが、問題なし。
その先の小ピークで尾根が分岐するので、ここは右へ。分岐となる要所には赤テープがあり、ここを歩く好事家も居られるようだ。標高が下がって若い杉林に入ると、ちょっと藪っぽくなるが、通行に支障はない。ところどころ植林の切れ間から、大高畑山の意外と大きな山容が見える。
644m標高点をえっちらおっちら登り返して越えると、岩場が現れる。ここは右側からトラバースして通過する。落ち葉の上に踏み跡が残っているのは、獣が通った跡だろうか。あとは杉植林帯の緩い尾根が続き、日没までに下山できそう。鼻歌交じりで快適に下る。
尾根を末端まで行くと藪に突入しそうなので、適当に見計らって尾根を離れ、右斜面を下る。落ち葉が積もる急斜面を杉の倒木が酷そうな方向を避けて下ると、塩沢林道に出た。林道から見ると、少しでも左右にズレていたら、物凄い杉倒木帯に突っ込んでいたところだったから、我ながらナイス山勘だった。まあ、結果的に運が良かっただけですが(^^;)
そう言えば、鳴蟲山北尾根に踏み跡があったのも幸運だった。あれがなければ時間切れになった可能性が高い。殆ど全行程が杉植林に覆われた地味な尾根歩きとなったが、未知のルートを踏破したから、妙な充実感はある。出発時刻をもう少し早めて、行程に余裕を持たせるべきだったのは反省点。茜に染まり始めた天気山を眺めながら、駐車地点に戻る。
帰りは再び鹿沼♨華ゆらりに立ち寄り、ゆっくり温まってから、桐生への帰途についた。