牧山
(この記事は佐世保周辺の山2日目、志々伎山・佐志岳からの続きです。)
佐世保周辺の山歩きの最終日。今日も猛暑日になるとの予報(この日の佐世保の最高気温は35.6℃に達した)。当初は佐世保市街に近い弓張岳(365m)や赤崎岳(240m)を歩こうと考えていたが、いずれも里山で行程もごく短い。低山歩きの暑さには、この2日間で耐性がついた気がするが、今日はもう少し標高が高くて、行程が長い山歩きがしたいと考えて、黒髪連山を思い付く。黒髪山(516m)と青螺山(618m)は既に登っている(山行記録)が、有田観光協会HPの「黒髪山公式ページ」を参照すると牧山(552m)という未踏のピークがあり、竜門山の家から周回するコースが面白そう。という訳で、牧山に出かけてきました。
佐世保の宿から車で出発。R35、R202を東進して佐賀県有田町に入り、黒髪山西麓の竜門ダム湖に向かう。ダム湖の奥には円錐形の山容の青螺山が青空にすっくと聳え、湖を取り巻く山々には岩峰や岩壁が点在して、低山らしからぬ険しさを見せる。これはワクワク。ダム湖の奥の竜門山の家の駐車場に車を置く。既に多くの車があり、ハイカーさんの姿も散見されて、黒髪山の人気の程が伺える。駐車場はとても広く、キャパは余裕がある。
まだ8時半だが、既に日は高くて強烈に暑い。WCをお借りし、自販機でペットボトル飲料を2本買ってザックに入れて歩き出す。今日は水分を十分に持たないと危ない予感。
ダム湖右岸の車道を少し戻って、牧山の登山口に向かう。牧山の南尾根が見えてきて、衝立岩や蛙岩と呼ばれる岩峰を仰ぐ。牧山への登りは急峻で、なかなかしょっぱそうだ。
湖岸の車道を辿ると水汲場があり、かじか橋で沢を渡ると牧山の登山口に着く。ここから登山道に入ると、すぐに「←牧山 Mt.Maki ようこそ最強の低山へ」と書かれた道標に出迎えられる。登山道は常緑のアオキを交えた樹林中の斜面を小さくジグザグに登って行く。
徐々に傾斜が増し、大きな岩壁の基部を通過。ザレた急斜面を登る。道型があまりはっきりしていない箇所もあるが、要所に設置された道標でルートを確認しつつ進む。また、通し番号が書かれたレスキューポイントの標識もあり、整備が行き届いている。
レスキューポイント24で右に分かれる道(牧山の南面をトラバースして青牧峠に至る)は通行不能。左へトラバースすると小尾根上に出て、レスキューポイント25、「展望岩←」と「牧山 Mt.Maki ひたすら登ればそのうち山頂に着くと思う →」という投げ遣りな😅道標がある。早くも急登と暑さでへたばり始めたので、展望岩(蛙岩)は割愛(後で調べたら竜門ダム湖の眺めが良いそうで、行っておけば良かった)。
ここから小尾根をひたすら登る。手摺りにロープが張られた急坂もあり。尾根を絡んで左斜面を登り、岩場を越える。ここもロープあり。
レスキューポイント29で牧山展望台への道を分けるが、そちらは少し登りがあり、ばてているので割愛して通過。岩場を混えた急坂を登って、三角点標石のある牧山に着く。
頂上には「牧ノ山 552.6m いまり山岳会」の山名標識がある(地形図上の記載も牧ノ山だが、この山行記録では黒髪山公式ページや現地の大多数の標識に合わせて牧山としている)。樹林に囲まれて展望はないが、西側だけ樹林が切り開かれて、一昨日に登った国見山が眺められる。暑いせいもあるが、標高の割には登りが険しく、最強の低山と呼ばれるのもちょっと納得。ペットボトル飲料を飲んで、長めの休憩をとる。
このあとは青牧峠から竜門山の家に下るか、余裕があれば青螺山を越え、見返峠から竜門山の家に戻る予定。まずは青牧峠に向かう。頂上からすぐのところに隠居岳でも見た「海軍省」の標石があり、さらに北へ腰岳への尾根道を分ける。
稜線を東進してしばらく下り、登り返すと牧Ⅱ峰(別名、青牧山)に着く。樹林に囲まれて展望は全くないが、頂上から数分進んだ所に樹林に穴を開けたような切れ間がある。覗き込むと竜門山の家の駐車場が眼下にあり、牧山の険しさが見て取れる。
細い尾根を下り、道標にしたがって右に折れ、ところどころ手摺りのロープが張られた急坂を下る。行手には木の間を透かして青螺山の円錐形のピークが高く聳えているのが見える。あれを越えるのは、ちょっと大変そうだなあ。
傾斜が緩むと竜門下降点で、右(南)に竜門山の家に下る道を分ける。ここで腰を下ろし、水を飲んでしばし休憩。ここから最短経路で下るか、青螺山を越えて見返峠から下るか、思案する。通常なら見返峠経由で即決なのだが、暑さと急登でバテバテで、青螺山の登りがつらそう。GPSの地図で確認すると約200mの標高差。まあ、何とか登れるかな。
青螺山に向かうとすぐに青牧峠で、左(北)に大川内山キャンプ場への道を分ける。さらに進むとすぐにY字路となり、左には「青螺山→」、右には「見返峠→」や「国体縦走コース→」の道標がある。ということは、右は青螺山の巻道か。下調べが不十分で、この巻道の存在は知らなかった。青螺山は登頂済だし、この巻道がどんな道か、興味が湧く。
という訳で、さっき決めたルートをあっさり変更して、巻き道に入る。樹林を透かして見上げる青螺山の南面は急峻で、その頂上は高い。いつの間にか上空に灰色の雲が広がって日が翳り、樹林中の巻き道は薄暗い。ところどころで急斜面から押し出されたガレを横切る箇所があり、若干荒れ気味だが、要所に道標があり、道型も良く踏まれている。
ほぼ水平にトラバースして、青螺山から見返峠に下る登山道に合流。日向坂と呼ばれる岩尾根を下って、見返峠に着く。一休みしていると、乳待房登山口から女性ソロハイカーさんが上がって来て、黒髪山へ登って行った。私はあとは竜門山の家に下るだけである。
竜門への道を下り始める。最初は傾斜が緩い石畳の階段道が続く。谷間に下り、大岩壁の基部を通る。見上げると恐ろしい程高い。涸れ沢を何度か渡ると水流が現れる。説明板があり、この辺りの岩盤は流紋岩で、有田焼の磁器の原料になっているそうである。
左に後ノ平を経由して黒髪山に登るルートを分ける。両岸の山肌は急峻だが、谷底の傾斜はなだらかで、渓谷美を楽しみながらのんびり下る。途中、右に銀竜ノ滝への枝道を分ける。上空から微かにゴロゴロという音が聞こえ始め、雷雲が近づいているようだ。ここは安全圏だが、少し先を急ごう。
右手に屛風岩の大岩壁を垣間見ると、程なく竜門山の家に着く。雨がポツリポツリと落ち始め、車に乗り込んでクーラーで涼んでいると、轟然と降り始めた。間一髪、際どいタイミングだ。どこかで少しでも時間を食っていたら、雷雨に見舞われるところだった。
これにて佐世保周辺の3日間の山歩きは終了。佐世保に帰り、レンタカーを返却して宿に戻る。シャワーを浴びて汗を流したのち、夕食で「させぼ四ヶ町」というアーケード街に出かけて、「かつ亭」という店でヒレカツ定食を頂く。運動した後の🍺と良質の蛋白は美味い。翌日、高速バスで長崎空港に移動し、羽田空港への航空便で桐生への帰途についた。