黒髪山・天山

天気:
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9月中のほぼ毎週続いた「所用のついでに山歩きシリーズ」もいよいよ最終回。佐賀に出かけたついでに、奇岩と山岳信仰で知られる黒髪山(くろかみざん)と、佐賀平野の北辺を画して優美に聳える天山(てんざん)の2座に登ってきました。子供の頃、福岡に住んでいて、家族で福岡近郊の山歩きを楽しんでいた私にとって、これらの山は(当時、福岡からは)少し遠くてなかなか行けないけれど、いつか登ってみたいと思っていた山でした。数十年経って、ようやく登る機会を得ました。

黒髪山
行程:駐車場 9:50 …西光蜜寺 9:55 …黒髪山(516m) 10:15 …雌岩 10:40 …見返峠 10:50 …青螺山(618m) 11:20〜11:30 …駐車場 12:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

佐賀で所用を終えて一泊。翌朝、佐賀駅前からレンタカーで出発して、R34(長崎街道)を西に向かう。今日は良く晴れて暑いくらいだ。JR佐世保線三間坂(みまさか)駅付近でR34から北に分かれ、黒髪山をつづら折れに登って、西光蜜寺下の駐車場に車を置く。ここは黒髪山の頂上直下と言って良い地点である。

車道から苔むした石段を上がり、石鳥居を潜ると西光蜜寺の境内に出る。実はここまで車で来られる。説明板によると、黒髪山は古来より山岳信仰で栄えたが、明治の神仏分離により黒髪神社上宮が分けられ(鳥居があるのはそういう訳か)、西光蜜寺は火災で焼失し、佐世保に移転したとのこと。現在、お堂はあるが無住のようである。周囲には大日如来や不動明王の石像が祀られ、今も信仰を集めている様子が窺える。


黒髪神社上宮下の駐車場


西光蜜寺

境内左手から苔むして磨り減った石段を登る。周囲には山岳信仰の跡を残す石碑、石像の類が多い。やがて大岩壁の下に出る。これが黒髪山の頂上部を成す天童岩である。少し左に行くと、岩壁の基部の岩屋に黒髪神社上宮がある。


石段を登る


天童岩を見上げる

天童岩へは右側から回り込んで登る。岩場があるが、鎖や鉄梯子がきっちり整備されていて問題ない。稜線に出て岩稜を渡り、最後の鎖場を登ると黒髪山(天童岩)頂上に着く。


天童岩への鎖場(1)


天童岩への鎖場(2)


天童岩


頂上直下の鎖場

頂上は岩峰の天辺なので、周囲は断崖絶壁、展望は360度で頗る良い。北には怪異な雄岩の岩峰群と、この山塊最高峰の青螺山(せいらさん)がこんもりと盛り上がっているのが望まれる。その他の方角は、どちらを見ても、なだらかで南国らしく明るい緑に覆われた山並みが広がる。頂上には単独行のハイカーさんがお二人。私と話すときは標準語だが、お二人で話しているときはバリバリの佐賀弁である。まあ、当然地元の方ですよね。


黒髪山(天童岩)頂上


青螺山と雄岩を望む


黒髪山から東麓を俯瞰


ご当地有田焼の展望指示盤

黒髪山だけではちょっと歩き足りないので、青螺山まで往復することにする。天童岩を降り、見返峠への道標に従って北へ稜線を辿る。


雄岩を望む


見返峠へ下る

途中、「雌岩→」という道標に従って、雌岩に寄り道する。直ぐに凝灰角礫岩の岩場に出る。この先は深く垂直なギャップがあり、行き止まりである。両側も断崖絶壁で、崖っぷちに立つとクラクラする。岩頭には聖観音像が祀られている。ここはなかなか凄い岩峰で面白い。


雌岩(左奥は雄岩)


岩頭に聖観音像


すごいギャップ


ツメレンゲ

縦走路に戻り、少し先に進むと雌岩と雄岩を眺められる場所がある。雄岩は雌岩以上に凄そうな岩峰である。見返峠はこのすぐ先である。


雄岩(左)と雌岩


見返峠

見返峠から青螺山へは、ちょっと急な登りが続く。尾根の左斜面をトラバースし、眺めの良い岩尾根を登って再び樹林に入る。雄岩の近くを通る登山道は通行止めになっているようだ。雄岩に登りたかったのに残念。スダジイやリョウブなどが密に生えた林の中を登り、青螺御前という山名標のある小ピークを越える。最後はロープが張られた急斜面を登ると、青螺山の頂上に着く。


青螺山を仰ぐ


常緑広葉樹林を登る

頂上は狭くて、ハイカーさんが数組休んでいるともう満杯である。樹林に囲まれて展望は限られるが、北に伊万里湾、南に黒髪山を望むことができる。


青螺山頂上


青螺山から伊万里湾を遠望

パンとペットボトルのお茶を軽く腹に入れたのち往路を戻り、黒髪山頂上は巻き道でパスして、駐車場の車に戻った。天童岩や雌岩、雄岩などの岩峰群が思いの外凄くて、また山岳信仰のモニュメントなども多数あり、変化があって面白く、手軽な山歩きながら結構楽しめた。


青螺山から黒髪山を望む


東麓より黒髪山(左)と青螺山

帰りのフライトまで時間に余裕があるので、軽い山ならばもう1座行けそうである。次は、車で頂上直下まで上がれるコースで天山を目指す。

天山
行程:上宮駐車場 14:00 …天山(1046m) 14:35〜14:45 …上宮駐車場 15:05
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

時間短縮のため、長崎道を武雄北方IC〜多久ICの一区間だけ走り、羊羹と鯉こくで有名な(今回は残念ながらどちらも食する機会なし)小城の市街から天山の南面を登る。こちらから見る天山は佐賀平野から屹立して左右に長く頂上稜線を延ばし、1000m級の山とは思えない風格がある。

意外と深い山懐に入り、つづら折れの車道でどんどん標高を稼ぎ、終点の上宮駐車場に到着する。ここは既に標高850mの高所で、佐賀平野を一望でき、ハイカーさんやドライブの車が多い。上空が少し暗くなって、何やら雲行きが怪しい。さくっと登ろう。


小城郊外から天山を仰ぐ


上宮駐車場

九州自然歩道としてよく整備された登山道を歩き始めると、すぐに天山神社上宮がある。鯉が泳ぐ池のほとりに大きな石祠が建ち、竜神や琵琶を奏でる弁財天の石像が祀られて、神さびた雰囲気がある。


上宮の低い鳥居


天山神社上宮


弁財天


上宮の池

上宮から擬木の階段を登って樹林帯を抜けると、ササやススキの草原に覆われた斜面に出、ゆるゆると登ってなだらかな稜線に上がる。草原の緩斜面を登ること僅かで、平坦な草地が広がる天山頂上に到着する。


九州自然歩道を登る


樹林帯から草原に出る


頂上直下の草原の登り


天山頂上

頂上には三角点標石や「郷土神守」と刻まれた石碑(阿蘇八郎墓碑)があり、周囲の草地ではハイカーさんが昼寝をしたりお弁当を広げたりして寛いでいる。曇ってきて遠望は利かないが、遮るものがない展望は素晴らしく、南に佐賀平野を俯瞰して一望する。また、東には広く緩やかで気持ち良さそうな草原の稜線が続く。これは是非歩いて見たかったなあ。再訪する機会があるだろうか。


東に延びる頂上稜線


天山頂上から佐賀平野を俯瞰

大展望を惜しみつつ往路を戻って下山。その後、佐賀市街の佐賀ぽかぽかに立ち寄り、暑くて結構かいた汗をさっぱり流す。そして有明佐賀空港でレンタカーを返却し、18:45発の羽田行の便で帰途についた。