志々伎山・佐志岳
(この記事は佐世保周辺の山1日目、烏帽子岳・隠居岳・国見山からの続きです。)
志々伎山
佐世保周辺の山2日目は、まず、平戸島(ひらどじま)の南西端にある志々伎山(しじきさん)を目指す。標高347mの低山ながら山頂は鋭い岩峰となり、玄界灘と東シナ海を見渡す展望が良いとのこと。九州百名山の1座で、今回の遠征中で一番の目玉の山である。
佐世保の宿からレンタカーのLOOXで出発。R204を走り、平戸大橋を渡って平戸島に入る。平戸大橋の周辺は観光地で賑わいがあるが、南西端に向かうにつれて鄙びた雰囲気が強まり、丘陵の間や入江に疎に集落が現れるのみとなる。このドライブは楽しい。
「←志々伎山」の案内標識で左折。脇道を上がって阿弥陀寺の前を過ぎると志々伎神社の参道入口で、案内看板や駐車スペースがある。ここから登ることもできるが、今日も猛暑日の予報が出ていて暑くなりそうなので、さらに車で登って楽をしよう。直進してすぐ先で左折。細い車道を九十九折りに登ると志々伎山登山口の駐車場に着く。既に車が3台。駐車場から志々伎山の犬歯のように突き出した山頂部が仰がれる。あの天辺に登れるとは、とてもワクワクする。
今日も出先の山歩きの軽装(トレランシューズ+布製ザック)で歩き出す。車道を上がるとすぐに志々伎山への登山道を右に分けるが、このすぐ先の志々伎神社の中宮に立ち寄って行こう。目と鼻の先に神社の駐車場があり、麓から上がって来た参道を合わせる。駐車場には軽が1台。その後ろに隠れてなにやらゴソゴソと動いている……。うわっ、猪だ。猪突猛進を喰らうと大事(おおごと)なので、距離を取りつつ静かにシャッターを切る。幸い、餌を探すのに夢中なようで、こちらを気に掛ける素振りはない。
猪を横目に志々伎神社に参拝する。十城別命(とおきわけのみこと)を祭神とし、創建年代は不詳だが5世紀頃とも言われているとのこと。社殿は比較的新しい。
神社から戻って登山口に向かうと、先程の猪がまだ車道をウロウロしている。道を塞いでいるので、おっかなびっくり声をかけて追い立てたら、山の中に逃げてくれた。
登山道に入って幅広い石段を緩く登る。石垣の角を左折すると中宮跡がある。昭和36年頃まではここに志々伎神社の社殿があったとのこと。先程参拝した中宮は、元はここにあったようである。
中宮跡から本格的な山道に入る。しばらく平坦だが、すぐに岩場が現れて急坂に差し掛かる。気温が高いうえに、海の真ん中に聳える山だけあって湿度が高く、ねっとりした空気に包まれて汗が噴き出る。台風が太平洋上を進む間は発達する訳だよなあ、と実感する。ひとしきり登ると「腰掛け岩」の説明板がある。側の小さな岩がそれらしい。賊の矢に当たってこの岩に腰を掛け、矢を抜いたのち、落命した人がいるとのこと🙏
さらに登って岩場をトラバースする。樹林が切れて、志々伎山頂上部の岩峰が間近に仰がれる。頂上は岩壁に取り囲まれて、こちら側からは登れそうにない。
という訳で、登山道は頂上の向こう側を目指して山腹をトラバースする。途中に「稚児の塔」という説明板があるが、塔は100m程上にあるそうなので通過。その先の石塔のあるY字路は右へ。少し下りとなり、岩場をトラバースして登りに転じる。
ロープを手摺りに伝って急登すると「草履置場」の説明板がある。それによると、志々伎山は古くは女人禁制で、男子もここで草履を脱ぎ、頂上まで素足で登ったとのこと(現在は男女とも普通に登れる)。この先ですぐに稜線上に出て、左へ稜線を登る。
やがて樹林から抜け、眺めが開ける。岩場が現れ、その上に先行パーティが見える。岩場を鎖で登るとなだらかな細尾根となり、頂上はその先すぐだ。
周囲に広がる大海原を見渡しつつ、志々伎山の頂上に登り着く。頂上には志々伎神社上宮の大きな石祠があり、その裏手に三角点標石がある。頂上は狭く、空中に飛び出たような360度の展望が得られる。東には平戸島の中央部を望み、北松浦半島を遠望する。
西には平戸島の南西端を俯瞰し、眼下には志々伎山登山口の駐車場も見える。目を左に転じれば、水平線上に五島列島の島陰が連なる。五島列島も機会があれば行ってみたい。
頂上からの展望は期待以上に素晴らしく、ゆっくりしたいところだが、日差しを遮るものがなく、強烈に暑い🥵(この日の最高気温は平戸で33.4℃)。一通り写真を撮り、水分を補給して一休みしたのち、往路を戻って下山する。志々伎神社への車道には猪がまた居た。
下山後、平戸島のどん詰まりで「橋で結ばれた日本最西端の港町」と称される宮ノ浦漁港まで車で行ってみる。そこから引き返す途中、福良漁港越しに志々伎山が眺められるポイントがある。"山"の漢字を体現したかのような山容や頂上の尖りっぷりが素晴らしい。
志々伎山では暑さに参ったので、今日はもうサクッと帰ろうかとも思ったが、折角の機会なので次の佐志岳へ向かう。佐志岳は平戸観光協会HPの「ひらど山ガール」で志々伎山と共に紹介されている山なので登り易いだろう。この暑さで低山の藪漕ぎは避けたい。
往路のR383を戻り、津吉町の集落に入り、「←佐志岳 屛風岳」の標識で左折して古田川の幅広い河口に架かる恵比須橋を渡る。対岸には頂上まで草斜面が広がる佐志岳が眺められる。橋を渡って右折。カトリック大佐志教会を過ぎ、「←佐志岳」の標識で左折。山麓を大きく蛇行して上がる。宮地嶽神社を過ぎ、次の分岐は左へ(どちらでも行ける)。最上部の民家の三叉路から左へ脇道にはいると、墓石の上に石の十字架が乗ったカトリック墓地があり、向かいに「←佐志岳登山道」の道標がある。その先も車道が続くが、草藪が被り気味。レンタカーで突っ込むのは止め、三叉路に戻って路側スペースに車を置く。
登山道入口から落ち葉が積もった車道を歩く。最後に短い急坂を登ると広大な草斜面に突き当たって、車道終点となる。数台分の駐車スペースがあり、お勧めしないが、ここまで車で来ることも可能。さて、この草斜面を登る訳だが、日を遮る樹林が全くなく、見るからに暑そう。登りきれるか不安になるが、まあ行ってみよう。
車道終点の左端から草斜面に取り付き、明瞭な道型を辿る。日差しは強烈で暑いことは暑いが、無木立で風が通るので、意外と涼しくて耐えられる。草斜面を直登し、途中から右へ斜上する。振り返れば山麓を俯瞰し、駐車地や古田川の河口、周辺の集落を一望する。
草斜面の右端まで進み、蛇行して左端に戻って、あとは尾根上を登ると数基の石碑が建つ佐志岳頂上に着く。頂上は小広いが草藪が繁茂し、三方を樹林に囲まれて、登って来た草斜面の方向のみ展望が得られる。僅か30分程の登りだが、なかなか高度感があり、見晴らしが良い。しかし、この頂も日差しを遮るものがなくて暑い。僅かな木陰に腰を下ろし、少し休憩する。
下山は往路を戻る。途中、草斜面の下部で、日傘をさして登って来た2人組ハイカーさんとすれ違う。志々伎山ほどの人気はないが、そこそこ登る人がいるようである。隣りの屛風岳(394m)も山麓で案内標識を見たので、登路があるようだ。ちょっと興味を惹かれるが、下調べしていないし、今日は暑過ぎて低山歩きはお腹いっぱいな感じ。車のクーラーを効かせて、佐世保への帰途についた。
(佐世保周辺の山3日目の牧山に続く。)