烏帽子岳・隠居岳・国見山

天気:
メンバー:T

長崎に所用があり、その後の敬老の日の三連休を利用して佐世保に滞在し、周辺の山を歩いてきました。

三連休前日の13日(金)は所用を済ませたのち、長崎駅16:02発シーサイドライナーに乗車して佐世保に向かう。シーサイドライナーは銀色の車体にYC1という文字がペイントされていて真新しい。後日調べるとYC1系気動車というディーゼル・エレクトリック方式のハイブリッド車両だそうだ。ちなみに、YCはYasashikute Chikaramochiの略で、この文字もペイントされていた。

佐世保駅17:56着。駅前には片側3車線のR35、駅裏には西九州道が通じ、高層ビルが建ち並んで、高崎以上の大都会じゃないかな。駅前の東横INNにチェックイン。夕食は駅前の丸徳ラーメンという店でちゃんぽんを頂く。久し振りに食べたちゃんぽん、美味かった。

烏帽子岳

行程:烏帽子岳園地 8:40 …烏帽子岳(568m) 8:50〜8:55 …烏帽子岳園地 9:05
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

翌14日(土)。宿でバイキングの朝食を頂いたのち、出先の山歩きの軽装(トレランシューズ+布製ザック)で出立。近くのレンタカーでROOXを借り出し、まず烏帽子岳に向かう。烏帽子岳は佐世保市街の北東に位置し、佐世保を代表する山で、佐世保港を一望する眺めが良いとのこと。今日は快晴なので、展望が楽しみだ。

烏帽子岳は頂上直下まで車道が通じており、車を使えばごく簡単に登れる。市街地から真面目に登るコースもあるが、今日は猛暑日の予報なのでパス(実際、この日の佐世保の最高気温は36.8℃に達した)。山麓から蛇行して登る車道で高度を上げる。山上はなだらかで、山林中に集落もある。スポーツの里、県立佐世保青少年の天地などのアウトドア施設を過ぎ、車道終点の烏帽子岳園地の駐車場に車を置く。

広い駐車場は五割方埋まっており、その側の芝地には大きな望遠レンズ付きカメラを構えたカメラマンが大勢居られる。説明板によると、烏帽子岳はアカハラダカというタカ類の渡り鳥の観測地として有名だそうで、ちょうど今の時期が渡りの最盛期とのこと。上空高く1羽のタカが舞っているのがそれだろうか(多い時はもっと飛ぶらしい)。

烏帽子岳園地駐車場
背景の山は国見山〜八天岳
アカハラダカの渡り観測地
(画像クリックで拡大表示)

駐車場に隣接して、展望所や「風と星の広場」と称する芝生の広場があり、眺めが開けて気分が良い。ここから登山道に入って、烏帽子岳の頂上に向かう。

風と星の広場
登山道に入る

なだらかな尾根上の階段や手摺りが整備された登山道を緩く登る。尾根は緑濃い樹林と草に覆われ、まだまだ夏の低山の様相。緑陰から出ると日差しが強烈だ。最後に短い急坂の階段を登ると、烏帽子岳の頂上に着く。こちらにも渡り観察の方が一人居られる。

頂上は小広く、大岩と樹木が点在する。烏帽子岳大権現、猿田彦大神、戸尾大権現の新しい石碑が佐世保市街を向いて建ち並ぶ。

緩く登る
烏帽子岳頂上の石碑

頂上の石造のテラスから佐世保の市街と港が一望でき、期待通りの好展望だ。港は入り組んだ佐世保湾の奥にあり、九十九(くじゅうく)島で外洋から隔てられる。港内の米海軍佐世保基地の埠頭には(写真では小さいが)フリントグレーの軍艦2隻も見える。

湾の向こう側には小さいが整った円錐形が目立つ峰がある。赤崎岳といい、今回、登る山の一つに考えていたが、この暑さで標高240mの里山はちょっときつそう。

頂上から東を眺めると、なだらかな三角形の山がある。隠居岳(かくいだけ)といい、ゆったりと大きな山容が目を引いて、登ってみようかなという気になる。

佐世保の市街と港を俯瞰
隠居岳を望む

展望を一通り楽しんだのち、往路を園地の駐車場へ戻る。往復僅か30分弱の山歩きであったが、展望には大変に満足。佐世保に来たら外せない頂と思う。次は隠居岳に登ることにし、登山口まで車で移動する。

隠居岳

行程:里美農村公園 9:45 …隠居岳(670m) 10:15〜10:30 …里美農村公園 10:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

スマホで調べると、隠居岳には北、西、南側にそれぞれ登山口があるようだ。取り敢えず西登山口の大山口越をカーナビの目的地に設定して、烏帽子岳園地を出発。ナビ任せで車を走らせると、一旦、山を降りて北麓のR498を走り、県道柚木三川内線を経て、北登山口の宇土越に着く。ここから山腹をトラバースすると大山口越に至るが、ま、こっから登ってもいっか。隠居岳の次は国見山に登るつもりなので、ここが一番近くて便利だ。宇土越を通る車道は狭隘で駐車適地はないが、少し下った所の里美農村公園にお誂え向きの駐車スペースがある。ここに車を置いて、隠居岳を往復することにする。

里美農村公園に駐車
宇土越の隠居岳登山口

宇土越の切り通しの「隠居岳登山口」の道標から登山道に入る。すぐに用水路を渡ると、なだらかな尾根上の道となる。樹林に覆われて展望は全くなし。道型は明瞭だが湿った落ち葉が深く積もり、歩く人は多くない模様。度々蜘蛛の巣に引っ掛かるし、羽虫に集られて鬱陶しい。如何にも夏の里山歩きという感じ。

用水路を渡る
樹林の中を登る

途中、右に草藪っぽい林道を分ける。さらに5分程登ると「海軍省」「昭和五年十月八日」と刻まれた石標がある。この種の石標は初めて見た。後日、ネットで調べると残りの面には「第二九八號」「佐世保軍港境域標」と刻まれていたらしい。

林道終点
「海軍省」標石

尾根を直線的に登ると大岩が現れ、右から石段で越える。やがて頭上が明るくなり、樹林が切り開かれた草斜面に出て、程なく隠居岳の頂上に登り着く。頂上は草地が広がってベンチが設置され、居心地が良い。ベンチに腰掛け、ペットボトル飲料を飲んで休む。風通しが良いせいか、羽虫もいなくて快適だ。ただし、日差しが肌を刺すように強烈で熱い。

岩場の右を登る
隠居岳頂上

頂上の展望は三方に開けて素晴らしい。東には有田川の平野を隔てて黒髪連山を望み、北には国見山系の平坦な山稜が広がる。見えているのは八天岳(707m)のようだ。国見山系の最高峰の国見山(776m)はその後ろで隠れて見えない。

黒髪連山を望む
八天岳を望む

南には一際高い多良岳山系を遠望し、その右には大村湾の海面も見える。多良岳山系の手前の鋭峰は虚空蔵山か。黒髪山、多良岳、虚空蔵山は登ったことがあり、なつかしい。

上空にはそう高くないところを2羽のタカが飛んでいて、私のデジカメでも画像拡大すれば何とか姿が分かる写真が撮れた。これはアカハラダカかな?鳥は素人なので良く判らん。

多良山地を遠望
上空を舞う鷹

頂上で一休みした後、往路で宇土越の駐車地点に戻る。往復1時間ちょっとの、こちらも軽い山歩きだったが、頂上からの眺めが大変良かったし、珍しい標石も見られたので、思いの外、満足度が高かった。クーラーをガンガンにつけて涼みつつ、次の国見山に向かう。

国見山

行程:国見湖畔公園 11:40 …大日の杉 12:00 …栗ノ木峠 12:25〜12:35 …国見山(776m) 13:10〜13:25 …栗ノ木峠 13:55 …大日の杉 14:05 …国見湖畔公園 14:25
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

宇土越から佐世保側に戻り、R498の国見トンネルを潜って佐賀県に入り、トンネル出口からすぐのところにある国見湖畔公園の駐車場に車を置く。ここは桑々田(かかだ)池という農業用溜池の畔で、WCや展望台がある。そろそろ昼時なので、展望台の屋根の下で昼食休憩にしよう。日が高くなり、日陰でないとますます暑くて休んでいられない。国道沿いの休憩スペースの自販機でペットボトル飲料を買い足し、パンを食べる。

国見山へは溜池の畔を時計回りに回って車道に入る。この車道はR498の旧道で、国見トンネルの開通と無料開放により、2007年以降、栗ノ木峠〜国見湖畔公園間が廃道となり、始終点はゲートで閉鎖されている。歩いて通ることはできるが、落石や倒木には要注意。

桑々田池
旧道(R498)を歩く

最初は樹林に覆われた山腹を斜めに登る。かつての国道とは思えない程、道幅が狭く、離合(すれ違い)の難儀さが偲ばれる。山側の法面は石組みで、道の歴史を感じさせる。広い伐採斜面を横切る区間があり、東面の眺めが良い。道端に「さがの名木100選(81)大日のスギ」の小さな案内板があり、山側の踏み跡を僅かに登ると杉の古木がある。推定樹齢400年とのこと。太い幹が何本も枝分かれした威容を誇る。

大日の杉
黒髪連山を望む

ネットで調べると、大日の杉から栗ノ木峠に直登できるようだが、道が怪しいのでさらに車道を辿る。一度、大きくジグを切って登ると、長崎・佐賀県境の栗ノ木峠に着く。

切り返して旧道を辿る
栗ノ木峠

峠には石仏を祀る御堂が建ち、その側には清水が湧き出している。水に触れてみると冷たい。ちょうど軽トラで上がって来た人がいて、大きなポリタンに清水を汲み始めた。

峠の御堂
峠の清水

当初はここから八天岳を往復した後、国見山に向かうつもりだったが、暑くてげんなりしてきたので割愛する(後日調べると、八天岳の頂上には高射砲台跡があり、日本遺産に指定されているらしい。行けば良かった)。

峠から国見山への登山道に入る。九州自然歩道に指定されたルートで、階段や道標が整備されているが、人通りは少ない感じ。薄暗い樹林の中、湿った落ち葉が積もる道を進む。ゆるゆると登り、平坦でどこがピークかわからない726m標高点を通過すると、左から来た林道に合流する。

平坦な稜線を辿る
林道に接する

ここからしばらく、林道に並走して自然歩道が続く。どちらを歩いても大差はないが、行きはなるべく歩道を辿ってみよう。ところどころ道標もあり、道型も明瞭だが、落ち葉が深く、歩く人はあまり多くはなさそう。ほぼ平坦な稜線を小さくアップダウンして進む。

九州自然歩道の道標
国見山林道終点

程なく林道終点に着く。ここまで車で乗り入れることもでき、駐車も数台まで可能だ。WCもあり。ここから急坂となり、擬木の階段道を一直線上に登る。一汗かいて、平坦で細長い頂稜の一角に登り着く。国見山頂まであと0.14kmの道標あり。両側に夏草が繁茂する平坦な山道を進むと、樹林中に白亜の展望台が建つ。ここが国見山頂上だ。

階段の急坂を登る
平坦な頂稜を辿る

早速、展望台に上がる。周囲の木立が成長して、展望は僅かに八天岳と大村湾の方向が見えるだけだ。それにしても、日向に居ると日差しが強烈だ。限られた展望をカメラに収め、暑さから逃げるように展望台を下る。

国見山頂上の展望台
八天岳と大村湾(左奥)を遠望

最初は気が付かなかったが、展望台の下には「新観光百選の地」、側には「国見岳」と刻まれた石碑がある。かつてはよく登られていたが、今はマイナー化した感じ。一等三角点の大きな標石もあり、さすがこの辺一帯(北松浦半島)の最高峰、と言ったところ。

「国見岳」石碑
国見山頂上の一等三角点標石

帰りはほぼ往路を戻る。歩道と車道が並走する区間は車道の方がちょっと歩き易い。栗ノ木峠からはショートカットして下ってみる。下り口は夏草が繁茂した急斜面で、不法投棄されたゴミが散乱し、あまり宜しくない。しかし、その下は山林中に丁寧にジグザグを切った道が続く。これはもしかして旧国道より古い峠道かも。路面はゴロゴロと岩に覆われてちょっと歩き難い。最後は道が怪しくなるが、無事に大日の杉に下り着く。

往路を栗ノ木峠に戻る
古の峠道?を下る
大日の杉に下り着く
大日の杉入口

あとは旧国道をだらだらと下って、国見湖畔公園に戻る。今日の山歩きはこれにて終了。R498を西進して佐世保の宿に戻る。3座の行程を合計しても4時間ちょっとだから歩き応えはソコソコだが、頂上からの展望は楽しめたし、なにより暑くてばてた😅

クロアゲハ
国見湖畔公園に帰着

宿でシャワーを浴びてさっぱり汗を流した後、夕食で外出。佐世保駅近くのペッパーランチでステーキを食べる。これは美味かったが、肉だけ注文したので少し足りない。佐世保駅みなと口から西側に出てR497を渡ると、すぐに佐世保港に面した公園があり、港を見渡す観光スポットになっている。右手には「させぼ五番街」という大きなショッピングモールがこれも港に面してあり、内外の観光客や米軍関係者で賑わっている。佐世保、栄えているなあ。観光にもお勧め。ここで佐世保バーガーをテイクアウトし、宿に帰って食べる。パテや目玉焼きを重ねて口に入らない程の厚みがあり、美味かったー。

(佐世保周辺の山2日目の志々伎山・佐志岳に続く。)