有馬三山

天気:のち
メンバー:T
行程:有馬温泉駅 8:10 …落葉山(533m) 8:45 …灰形山(619m) 9:50 …湯槽谷山(801m) 9:50〜10:00 …湯槽谷峠 10:15 …紅葉谷道に出る 11:00 …有馬温泉駅 11:45
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

(この記事は鍋蓋山〜摩耶山からの続きです。)

有馬三山とは、有馬温泉の西から南に峰を連ねる落葉山(おちばやま)、灰形山(はいがたやま)、湯槽谷山(ゆぶねだにやま)の総称である……。

……と私が有馬三山の存在を知ったのは、実は登った日の前日で😅、鍋蓋山〜摩耶山を歩いたのち、次に登る山を考えていたときである。当初は別の山に登る計画を立てていたが、予報によると午後から天気が崩れるらしいので取り止めて、半日行程で登れる適当な山を探す。ネットで調べるとふるさと兵庫100山というものがあり、このうちで神戸近郊の山を見ると、横尾山、高取山、菊水山、摩耶山、六甲山など登頂済の山の他に、湯槽谷山という山があることを知る。有馬温泉駅から歩いて登ることができ、アクセスが便利。半日行程で三山を周回できるので、充実して面白そう。という訳で、出かけてきました。

新開地の宿をチェックアウトし、コンビニで朝食のおにぎり1個、昼食のパンと飲み物を買い、登山装備以外の荷物はスーツケースに納めて新開地駅のコインロッカーに預け入れる。有馬温泉行きの直通列車に乗車し、行儀は悪いが車内でおにぎりをパクつく。乗客はそこそこの数で、座席にはゆったり座れる程度。終着駅の有馬温泉駅で下車する。

有馬温泉には一度、南から北へ魚屋道(ととやみち)を辿って六甲山に登ったとき、下山先として訪れたことがある。そのときは銀の湯で日帰り入浴しただけで帰ったので、残念ながら宿泊したことはない。駅前から有馬川の親水公園を左に見て歩き、温泉街のメインストリートの太閤通りに入る。まだ朝早いせいか、人通りは少ない。

有馬温泉駅
太閤橋から親水公園を眺める

すぐに右に石段道が分岐し、「妙見宮参詣道」の石標がある。石段道の奥には「有馬三山 落葉山 灰形山 湯槽谷山」とデカデカと書かれた看板が見えている。ここが落葉山の登山口だ。石段道に入り、温泉街裏手の急斜面をジグザグに登る。参道に沿って西国三十三所観音の石仏が置かれ、台座に三番粉川寺、四番槙尾寺などと刻まれた石仏が順番に現れる。

落葉山登山口
参道石段を登る
路傍の西国三十三所観音(三番粉川寺)
車道に出て急登

一旦車道に出、右手に有馬グランドホテルの庭園を見ながら登る。程なく車道は終点となり、2台分の駐車余地がある。ここから再び石段道に入り、路傍の石仏を数えながらジグザグに登る。急登に加えて、梅雨時らしい曇天で、日差しはないが湿度が高く、一汗かく。

車道終点
石段道でジグザグに急登

ようやく妙見寺境内に登り着き、平坦になって一息つく。ここは有馬温泉を俯瞰する眺めが良い。一対の狛馬の石像があり、台座には「有馬城山」「開運妙見宮」と刻まれている。

妙見寺境内に登り着く
有馬温泉の展望

境内を進むと西国三十三所観音の「三十三番谷汲山」の石仏と「開運の亀」という案内のあるお堂が建つ。お堂の中には大きな亀の剝製が鎮座している。説明板によると、この亀は明治時代に御影の浜で漁師30人がかりで引き上げられたもので、剝製にされ、大阪の商人の応接間を飾っていた。しかし、会社が傾いたのでここに奉納したところ経営が好転し、それ以来、開運・商売繁盛のご利益があるとして祀られているとのこと。狛馬にも「開運」の銘があったし、このお宮は阪神の商売人の信仰が篤いようだ。

開運の亀
参道石段を登る

最後に参道石段を一直線に登ると、妙見寺の本堂が建つ頂上の境内に着く。境内は開けて明るいが、樹林に囲まれて展望はない。石畳の通路がまだ白くて新しい。本堂は二重屋根で、建築面積の割に高く見える。壁面や屋根下の木彫りの彫刻が見事だ。

落葉山の頂上は本堂のすぐ裏手で、竹藪の切り開き道の途中に「有馬三山 落葉山 五三三米」と刻まれた御影石製の山名標柱が建ち、その脇の竹藪の間に三角点標石がある。

妙見寺本堂
落葉山頂上

頂上を過ぎると緑滴る雑木林の下りとなる。「→高丸山尾根を経て有野団地4.2km」の道標があり、右に登山道を分ける。さらに少し下った鞍部で左に有馬温泉へ降りる道を分ける。鞍部からは、瘦せ尾根を小さく上下する道がしばらく続く。

高丸山尾根分岐
有馬温泉への道を左に分ける
瘦せ尾根を辿る
灰形山への急登

灰形山への登りに取り付くと、階段道を交えた急斜面の登りとなる。後ろから軽装のソロハイカーさんがハイペースでやってきて、小ピークに登り着いたところで追い抜かれる。灰形山まで0.1kmの道標があり、頂上はもうすぐだから、そこまで頑張ろう。

登り着いた灰形山の頂上には落葉山と同様の御影石製の山名標柱があり、「有馬三山 灰形山 六一九米」と刻まれている。樹林に覆われ、この頂も殆ど展望がない。水を飲んでちょっと休んだのち出発。

急登が続く
灰形山頂上

しばらく平坦な稜線を進み、湯槽谷山との鞍部に向かって下り始める。行く手には梢越しに湯槽谷山が間近に迫って眺められる。結構高く急に見え、塩っぱい登りがありそう。

鞍部で左に有馬温泉への道を分け、湯槽谷山へ標高差約250mの登りに取り付く。杉と雑木に覆われた急斜面を階段道で一直線状に登る。時折、上空からカラカラと微かな音が響いてくるのは、六甲有馬ロープウェイが動いている音のようだ。

湯槽谷山へ向かう
左に有馬温泉への道を分ける
湯槽谷山への急登
急登が続く

ようやく傾斜が緩み、小さなピークを越える。ゆるゆると尾根道を辿り、最後は階段道を交えてひと登りすると、湯槽谷山の頂上に着く。

ようやく傾斜が緩む
なだらかな尾根を登る
湯槽谷山頂上
頂上の山名石標

頂上はなだらかで樹林に覆われ、全く展望がない。ここにも御影石製の山名標柱がある。時間は早いが腹が減ったので、昼食休憩にしよう。平たい石に腰掛けてパンを食べて、ペットボトル飲料を飲む。食事中、ソロのトレイルランナーさんが通りがかって挨拶。アップダウンがきっつい、とおっしゃっていたが、そこを走るなんて凄い。

腹を満たしたのち、下山にかかる。尾根道を進んで緩く下る。左斜面には常緑樹のミヤマシキミが群生し、まだ緑色の実をつけている。

頂上の先へ下る
ミヤマシキミ(有毒)

程なく「←極楽茶屋跡」の道標が現れ、道標に従って尾根を左折して下る。尾根を直進すると高尾山(739m)に至るようである。急な斜面を下ると湯槽谷峠に着く。三方に道標があり、直進すれば六甲全山縦走路上の極楽茶屋跡に至り、右(西)に下る道は横谷を経て逢山峡へ2.7kmとある。また「←湯槽谷を経て紅葉谷道1.0km(難路)」の道標もあり、左に下る道が分かれる。「難路」とは、少し不安もあるが、面白そう。湯槽谷へ下ってみよう。

尾根から左折
急降下
湯槽谷峠
紅葉谷道へ下る

最初は水のない沢の源頭の急斜面を下る。道型は細く微かだが、そこそこ踏まれている様子。ザレて滑り易く、固定ロープが張られた箇所もあるが、問題ない。

沢の源頭を下る
固定ロープを伝って降りてきた

少し傾斜が緩み、水が流れ出した沢に沿って下る。流れを覗き込むと、水底に小さくて茶色い生き物がいる。サンショウウオだ。これは初めて見た。手に掬って写真を撮りたかったが、逃げるし岩の溝にいるので掬い難く、何が写っているか不明な写真を撮って終了。

水中の岩の溝にサンショウウオ
お分かり頂けただろうか
荒れた沢を下る

土石が押し出して伏流となり、荒れ気味の沢を下ると、石組みの砂防堰堤や三面張り工が現れる。いずれも古く小規模のもので、石組みは苔むしている。ガレ沢で踏み跡も定かでない。やがて水流が復活し、堰堤の下の水抜き穴からコンコンと湧き出ている。飲んでみたら冷たくて生き返る。まさに「六甲のおいしい水」だな。

石組みの堰堤や水路に沿って下る
堰堤から湧き出す水

ガレて荒れた沢を下り、水流を何度も渡り返す。踏み跡が途切れる箇所もあり、ハイキングコースとしてはやはり難路。谷が広がって河原が現れると大きな砂防堰堤(湯槽谷第四砂防ダム、高さ20m)が現れ、その左脇を下る。さらに深緑色の水を満々と湛えた砂防ダムが連続し、左岸の杉林の踏み跡を辿って通過する。

水流を何度も渡る
広い河原の左岸を歩く
砂防堰堤が連続
杉林の中の踏み跡を辿る

踏み跡を辿ると砂防堰堤上流の堆砂敷に降りる。はて、道はどこだろう、と見渡すと、堰堤を左から越える箇所に固定ロープがぶら下がっているのを見つける。ついでに変な植物も発見。これは出始めのツチアケビのようだ。熟すと赤茶のサヤエンドウのような実が鈴なりに成る。ガードレールも見えるので、車道が来ているのかと思ったが、ロープを手繰って登って見ると只のガードレールだった😅。

砂防堰堤を左から越える
出始めのツチアケビ

この砂防堰堤(湯槽谷第三堰堤)を越えて少し下ると紅葉谷道に合流する。この地点に道標はあるが、湯槽谷を指し示す道標はない。案内板があり、その地図に現在地がマークされている。ちなみに、湯槽谷峠〜極楽茶屋跡の尾根には番匠屋畑尾根と記載されている。

紅葉谷道に出る
湯槽谷の道(右)を振り返る

紅葉谷道は意外と幅が広く、平坦で歩き易い道だ。ところどころ簡易舗装が残る区間もある。木橋で渓流を渡ると右に炭屋道が分岐し、入り口に東屋が建つ。東屋で休憩していると、学生さんと思しきグループがワイワイ騒ぎながら紅葉谷道を登って行った。元気があって、大変よろしい。

簡易舗装された道を辿る
ヤマアジサイ
木橋を渡る
炭屋道入口と東屋

あとは未舗装の車道を辿る。左手上空を眺めるとロープウェイの搬器が移動中。乗っていれば、眺めが良いだろうな。ここには紅葉の時期にも来てみたいものである。

未舗装作業道を下る
有馬六甲ロープウェイを仰ぐ

やがてロープウェイの山麓駅に着き、家族連れや外国人観光客がちらほら居る。車道をテクテク歩いて、高級そうなホテルの間を歩く。温泉街に入ると金の湯辺りから内外の観光客がどっと増え、活況を呈している。インバウンド凄いなあ。

ロープウェイ有馬温泉駅
有馬温泉金の湯
観光客で賑わう温泉街
有馬温泉駅に帰着

有馬温泉駅に昼前に帰着。天気が保って良かった。有馬三山は手軽ながら山の雰囲気が良かったし、湯槽谷の道は野趣に富んで面白かった。お勧め。

有馬温泉駅から有馬口駅まで一駅乗り、新開地駅の列車に乗り換える。チェックインの時間調整のため、新開地駅周辺のアーケード街や湊川公園をうろついていると、14時過ぎから雨が降り出す。コインロッカーに預けていたスーツケースを取り出して、今晩の宿のある堺筋本町駅に向かう。チェックインして、シャワーで汗を流したのち夕食を食べに外出。とんかつを食べたかったが、目当ての店が営業していなくて、2晩続けて中華となり、🍺と🥟と台湾炒飯を頂く。しかしというか、やはり大変美味かった。

翌日も山歩きの計画を立てていたが、朝から雨降りだからサクッと帰ることにする。梅雨にも関わらず、二日間はがっつり山歩きできたから、大満足である。新大阪駅のみどりの窓口で、予約していた新幹線指定席券を早い時刻の列車に変更して貰い、東京駅へ。さらに上越新幹線、両毛線を経由して帰桐した。