大室山〜加入道山
この週末、土曜は横浜の実家に帰って過ごすので、日曜は丹沢へ山歩きに行こう。丹沢でどの山に登るかを考えていて、昨秋、西丹沢の中川温泉に温泉旅行に出掛けて、周辺をドライブした際、西丹沢ビジターセンター(以下、西丹沢VC)辺りから中川川源流域に高々と聳える大室山(おおむろやま)を眺めたことを思い出す。
大室山は別名、大群山(おおむれやま)とも言い、昔のガイド本では大群山と書かれていることが多かったから、私はどちらかと言えば大群山の山名の方が馴染みがある。
高尾山から富士山を眺めると、富士山の左手前にデンと見える整った三角形の山が大室山だ。南北どちらから見ても雄渾な山容の山で、以前から登りたいと思っていたから、この週末は良い機会だ。と言う訳で、西丹沢VCから犬越路、大室山、加入道山、白石峠を経由して周回するルートを歩いてきました。
当日の未明、強い雨が降る中、横浜を車で出発。昼頃には止むとの予報だが、はたして、東名を大井松田ICで降り、R246、県道山北藤野線を走って丹沢湖を過ぎる頃には、周囲の山々に纏わり付く雲も巻きながら徐々に上がり、上空には青空も覗く天気となった。
西丹沢VCの駐車場に車を置いて出発。周辺の山々は良い感じに色付いている。行く手の大室山はまだ雲の中。この辺りの河原は広大なオートキャンプ場となっていて、大きなテントがたくさん張られている。キャンプブーム終了とも聞くけれど、まだまだキャンプをする人は多いようだ。皆さんまだ就寝中だが、起き出したキャンパーさんもちらほら。キャンプ場に沿って車道を歩く。
檜洞丸への登山道(つつじ新道)の入口を過ぎる。檜洞丸も登ったのは大昔だ。また登りたい。最奥の白石オートキャンプ場を過ぎて程なく、用木沢出合に着く。ここまで車で入ることも可能で、2台駐車もある。
ここで熊鈴を付け、東海自然歩道の案内看板を見て、右の用木沢沿いの登山道に入る。程なく立派な鉄橋(用木沢公園橋)が現れ、用木沢を左岸へ渡る。道は整備されているが周囲の山肌は急峻で、山深さを感じさせる。
すぐに広い河原に出、沢の屈曲部をショートカットして浅い流れを渡渉する。道標が完備しているので迷うことはない。今日は水量が少ないから良いが、ここは増水したら通過できない。さらに渓谷沿いの変化に富んだ楽しい登山道が続く。
再び広河原に出ると直線的に谷が開けて、奥に大小の急峻なピークが眺められる。これらのピークは檜洞丸〜犬越路の稜線上にある小笄(ここうげ)と大笄(おおこうげ)だそうだ。あの稜線も歩いてみたくなる。
広河原から右岸を進むと徐々に用木沢から離れ、やがて犬越路に直登する小さなガレ沢沿いの道となる。途中、昨晩は犬越路避難小屋に泊まったとの単独行の男性とすれ違う。小屋泊まりもいいなあ。ガレ沢を詰め上がると「この先200m 犬越路避難小屋あり→」の道標が現れ、陽が差し始めた樹林を登って犬越路に着く。
犬越路は低木越しに南面の眺めが開け、ベンチもあって休憩適地。しかし、今日は北側から強烈な風が吹き抜け、寒くて休んで居られないので、風から避難して小屋に逃げ込む。
避難小屋の中は綺麗で快適。これはやはり一度泊まってみたくなる。WCも有り(使用した紙は持ち帰り)。小腹が減ったので、菓子を食べてしばらく休む。
休憩を終え、犬越路から樹林に覆われた急斜面をジグザグに登り始める。傾斜が緩むと三角点標石がある。大杉丸の頂上だが、顕著なピークではないので、すぐに通過する。
大杉丸を過ぎると、ブナ林と草地の下生えに覆われた気持ち良い稜線となる。行く手には樹林の間に大室山の頂上稜線が眺められる。樹林はだいぶ落葉しているが、黄葉や中には鮮やかな紅葉も残り、晩秋の雰囲気を感じられる。ところどころの樹林の切れ間から、西丹沢VC周辺のキャンプ場を俯瞰し、箱根山を遠望する。高度感があって良い眺めだ。振り返ると檜洞丸から蛭ヶ岳、丹沢主脈へと連なる山々が眺められる。
急な箇所には丹沢でよく見かける構造型階段(縦板と横板を組み合わせた階段)が整備されている。展望を楽しみながら登って、ベンチのある大室山分岐に着く。ここから右へ、大室山の頂上まで往復して来る。
平坦な稜線をしばらく進むと、三角点標石や山梨百名山の山名標柱のある大室山の頂上に着く。誰もいなくて、ひっそりとした頂だ。頂上は小広い平地で、樹林に囲まれて展望はないが、北面へ少し下ると崩壊地の上端に出て、道志川の谷間の集落を俯瞰できる。約1000mの標高差があり、山肌は急峻で高度感が凄い。頂上に「←大室指 大渡・久保吊橋→」の道標があり、道志川からの登山道を指し示している。そっちのルートも歩き応えがあって面白そうだ。
山頂からベンチのある分岐に戻り、昼食休憩とする。まずはレトルトパウチの鯖味噌煮を肴に、ちょっと寒いが缶ビールを飲む。それから、お湯を沸かしてカップ麺を食べよう、と思ったらバーナーがない(車に置き忘れていた)。まあ、昨夜の夕食でご馳走🥩をたらふく喰っているから、昼食抜きでもいいか😅
昼食なし休憩後、加入道山に向かい、稜線を下る。ここも左手の中川川の谷間を俯瞰する眺めが良く、箱根や相模灘を遠望する。目を凝らすと箱根の大涌谷に立ち昇る白煙も見える。ドライフラワー化したバイケイソウが林立する草原の中に木道が通じる。花の時期は見事ではなかろうか。その代わり、ナナカマドの真っ赤な実が縦走路に彩りを添える。
雲が上がって、冠雪した富士山が姿を現す。残念ながら天辺はまだ雲の中だ。その手前には西丹沢の山並みが広がる。右側の一際大きくもっこりとした頂は御正体山だろう。
縦走路は古ぼけた構造型階段でドンドン下る。途中、数組のグループとすれ違う。行く手に小さな峰が現れ、あれが加入道山かなと思ったが、一つ手前の前大室と称するピークのようだ。階段を急降下して、破風口と称するキレット状の鞍部に着く。ブナと草地の林を登り返すと前大室のピークに着き、加入道山がそう遠くないところに見えて来る。
前大室から階段を下り、ゆるゆると登り返すと左手の林の中に加入道避難小屋が建つ。小屋の中を覗くと、内部は犬越路避難小屋と同様の作りで、新しく綺麗だ。ただし、WCはない。小屋の目と鼻の先が加入道山の頂上で、小広い平地に数基のベンチがある。樹林に囲まれて展望はない。
休憩したのち、白石峠に向かう。すぐに「道志村(和出村)→」の道標があり、右へ下る山道を分ける。尾根道を下るとすぐにベンチのある白石峠に着く。樹林に覆われた小さな鞍部で、犬越路のような開放感のある峠とは風情が異なる。
白石峠から、「この先、渓床の歩行となるため、豪雨時の通行はご遠慮下さい」との警告看板を横目に、用木沢出合に向かって下る。この道は東海自然歩道だが、一時水害で荒れたようだ。良くもまあこんな急斜面に道をつけたなあ、という感じの急坂で、階段が付けられているのだが、あちこちで崩壊、流失している。道型ははっきりしているので、通行に支障はない。
傾斜が少し緩むとガレ沢に沿った道となり、一部、水のない沢の中を歩く。やがて細い水流が現れ、杉林の中を歩いたり、道標に導かれて枝沢を渡る。標高が下がると見頃の紅葉もポツポツと現れる。
登山道は沢から離れて、左岸の高い所のトラバースに入り、桟道や細い踏み跡を辿る。右側は急斜面で深く切れ落ちているから滑落注意。途中に「白石の滝」の説明板があり、眼下に滝があるらしいが、まだ葉を残す樹林に遮られて、瀑身はほとんど見えない。
このあとも急斜面の緊張するトラバースが続き、沢に下り着いてようやく一安心。この沢が白石沢の本流で、あとは幅広い河原のある沢に沿って登山道を下る。
登山道は何度も沢を渡り返し、木橋が架かる箇所も多い。今日は水量が少なく穏やかだが、流失しかけの木橋もあり、白石峠で見た警告看板の通り、豪雨時の通行はやばそう。
やがて荒廃した林道となり、木橋で左岸に渡って下って行くと、モロクボ沢出合付近で舗装された車道に出る。車道を歩き、ゲートのすぐ先が用木沢出合だ。あとは往路と同じ道を辿る。河原のオートキャンプ場はキャンパーがみんな帰って、朝の賑わいが噓のようにガランとしている。すっかり晴れて、振り返れば青空を背景に大室山が高い。
西丹沢VCの駐車場に帰着。駐車は、周辺の駐車スペースも含めて少し空きがある程度。バス停では、十人程の登山者が新松田駅行きのバスを待っている。今日は登山のハイシーズンではないし、朝方雨も降っていたので、これでも登山者は少な目だったようだ。
帰りは中川温泉ぶなの湯に日帰り入浴で立ち寄る(750円)。県道から分かれて急坂を下ると、中川川の川辺に温泉があり、ロケーションが良い。ゆったり湯船に浸かって身体を温める。それから、東名、海老名JCT、圏央道、関越道、北関道を経由して帰桐。海老名JCTの手前で渋滞に巻き込まれたが、あとは順調であった。