丸山〜日向山
このところ遠方での山歩きが続いたし、ようやく涼しくなってきたので、この週末は近場の低山に登ろう。と言う訳で、外秩父の山で展望が良いという丸山に出かけてきました。
未明に桐生を車で出発。本庄、秩父を経由して西武秩父線芦ヶ久保駅に向かい、道の駅「果樹公園あしがくぼ」の第二駐車場に車を置く。この駐車場は長時間駐車可能で、以前、二子山〜武川岳〜伊豆ヶ岳を歩いたときにも利用させてもらっている。早朝なので、広い駐車場にはキャンピングカーなど数台の車しかない。
橋を渡って坂道を上り、芦ヶ久保駅へ。坂の上から、道の駅や日向山、日向山の斜面に点在する農園が眺められる。今日は、西武秩父線で正丸駅に移動し、正丸尾根を経て丸山、日向山に登り、ここに戻ってくる予定である。
芦ヶ久保駅7:04発の列車に乗車。乗客は疎ら。正丸トンネルを抜けて6分で正丸駅に到着、下車する。なお、両駅とも無人で、Suicaで入場する。
駅前の駐車場には年配のバイク乗りが集結している。R299に出て、芦ヶ久保の方へしばらく歩く。R299もバイクと車の通りが多い。
「←旧正丸峠 狩場坂峠」の道標にしたがって、R299から左に分岐する細い車道に入る。この道は明治まで、江戸から秩父盆地に通じる重要な街道(吾野通り)だったそうだ。高麗川の細い流れを渡って小さな集落に入ると、八坂神社と子育地蔵尊のお堂がある。鳥居の額束は「八阪神社」で、ちょっと珍しい神社名と思ったが、後日調べると阪は坂の旧字だそうで、普通に八坂神社だった😅
高麗川支流の谷間に入るとすぐに人家が絶えて、杉林の中の山道を辿る。道端には苔むした石仏が一尊。沢を左右に渡り返しながら緩く遡って行く。
水量が減じた沢から離れて右斜面を登ると、正丸峠越えの車道に出る。1982年に正丸トンネルが開通する前は、この道がR299だったそうだ。車道を左へ少し進んだ所から再び山道に入り、杉植林の中を緩く登って行くと旧正丸峠に着く。緑に遮られて眺めはなく、また、稜線が少し広く切り開かれている他は古の峠らしい趣がなくて、些か味気ない。
峠から右(北)へ、正丸尾根を辿る。旧正丸峠から大野峠までは関東ふれあいの道「峠の歴史をしのぶみち」を辿る。木の階段を急登したのち、小ピークを二つ程越える。意外とアップダウンがある。途中に短いが岩尾根があったり、右側の斜面は急峻だったりで、奥山の雰囲気がある。
700m圏ピーク(山と高原地図には「親不知」の記載がある)を越えると急坂の下りとなる。木の階段が流出しており、赤土で非常に滑り易い急斜面を新旧何本も垂れているロープを摑んで下る。ここの下りは要注意。
下り着いた鞍部はサッキョ峠とも呼ばれ、R299の正丸トンネルの真上辺りにある。737m標高点峰は右から巻き、なだらかな尾根道を辿ると車道(林道苅場坂線)に出て、広場の一角に「虚空蔵峠」の標識がある。車道の緩い坂の途中の場所なので、あまり峠という感じがしない。「奥武蔵ロングトレイル」の標識もあり、興味を惹かれる(後日調べると、今年の6月、このトレイルで第1回のレース大会が開催されたそうだ)。
車道を少し辿り、左斜め前へ分かれる山道に入る。杉林の中を急登し、尾根を絡んで進むと、中低木が生えた浅く平坦な窪地に入る。少し上がると奥武蔵の主稜線上の縦走路に着き、「牛立久保」の道標がある。牛立久保とは多分、先程の窪地のことだろう。
主稜線を右(南東)に辿れば横見山を経て刈場坂(かばさか)峠に至る。ここは左(北西)へ。すぐに「二子山」の標識のある小ピークを越え、なだらかな稜線を下って七曲り峠に着く。ここで、稜線の直下を並走する奥武蔵グリーンラインに接する。
ここからしばらく、右下にグリーンラインをちらちら見ながら、なだらかな縦走路を辿る。ときおり、グリーンラインを走るバイクの排気音が微かに聞こえてくる。杉林に覆われて展望はなく、途中、小さな岩場がある他は変化に乏しい。カバ岳も平坦な縦走路の途中という感じで通過。グリーンラインに接したり離れたりして、大野峠に到着する。
大野峠で車道は三差路となり、右へ白石峠、左へ林道丸山線が分かれる。バイク乗りのおっさんがぱらぱらと来ていて、一服したり、峠の標識の前で写真を撮ったりしている。
休憩舎の脇から丸山への尾根道に入る。木の階段道を急登すると開けた草地に出て、パラグライダーの人が数人、離陸の準備をしている。草地からは東面が開けて、剣ヶ峰や白石峠、堂平山にかけての山並みが眺められる。今日は東からコンスタントに軽く風が吹いているので、(自分はやる気はないが)飛んだら気持ち良いだろうな。
ここからはなだらかな尾根道を辿る。右斜面は若い植林帯となっている。樹林中の滑り易い急坂をひと登りし、電波塔の左脇を通って、白亜の展望台が建つ丸山の頂上に着く。頂上は展望が良いという話だったが、展望台があるからか〜、知らなかった😅
早速、展望台に登ってみる。屋上に上がると、大勢のハイカーさんが展望を楽しんでおられる。周囲の樹林が成長して、360度までの展望はないが、南から西にかけて横瀬二子山、武甲山、秩父市街、両神山などが綺麗に眺められる。これはなかなか良い眺望だ。
展望台の周囲は草地となっていくつかベンチがあり、ハイカーさんが休憩中。私もその一つに陣取って昼食とし、缶ビールとレトルト鯖味噌煮、カップヌードル・シンガポール風ラクサを食べる。食べ終わって後片付けしてしていたら、ボトっと何かが地面に落ちた音がする。見ると山栗の毬で、なかなか綺麗。登って来る途中でも山栗がたくさん落ちていたが、古かったり踏まれたりした物ばかりだった。
のんびり休憩した後、頂上を辞す。樹林の中を下ると真っ赤なタマゴタケの幼菌が出ている。今日はタマゴタケをたくさん見る。美味しいキノコだそうだが、近縁に猛毒のキノコがあり、手が出なくて食べたこともない。
樹林に覆われた尾根を緩く下ると、切り通しで尾根を横切る車道に出会う。切り通しの所は、かつてはトンネルだったようだ。綺麗なWCがあるので、お借りして尾根に復帰。少し進むと、三差路と東屋がある。芦ヶ久保は左の道だが、右の道へ進んで寄り道しよう。少し下ると埼玉県民の森の森林学習展示館があり、ムーミン谷にありそうなメルヘンチックな建物が寄り集まっている。
「←札所四番金昌寺」の道標にしたがって建物の間を擦り抜け、山腹をトラバースする山道を歩く。すると「←尾根道に至る」という道標があり、右に登る道が分岐する。これを登ると広葉樹林の斜面を登って、920m標高点峰の頂上に着く。平坦な頂で、植林に囲まれて展望はない。何故、このピークに登ったかというと、旧高篠村(現秩父市)の最高地点なので、何かあるかも、と思ったのだが、道標の他は何もなかった😅
寄り道を終え、三差路の分岐点まで戻って、芦ヶ久保方面へ尾根道を緩く下る。少し下で歩道と交差し、小広い平地に「出会いのテラス」という標識とベンチが設置されている。歩道は森林学習展示館に通じているようだ。残念ながら、樹林が育って展望はない。
さらに尾根を下り、林道丸山線を横断する。尾根道は広くて緩く、快適に下る。この尾根は「六番通り」と呼ばれているらしい。やがてY字の分岐となり、左の芦ヶ久保方面への道を見送って、右の日向山への道に進む。
この道は掘割のように抉れて、杉林の斜面をジグザグに下る。途中、木の鳥居と小さな社があり、そのすぐ先の分岐には石柱道標が建つ。石柱の四面にはそれぞれ「左 横瀬村ヲ經テ秩父町ニ至ル」「正面 本村内道」「右 大椚村ヲ經テ西平村ニ至ル」「大正拾年拾月三十一日 芦ヶ久保村」と刻まれ、昔はこの道で村の間を往来していたことが偲ばれる。
山道から車道の三差路に出る。古い案内看板があり、右と正面の道は丸山林道、左は苅米林道で、日向山は左と分かる。林道を少し下った鞍部から尾根上の山道が分岐する。特に道標はないが、これが日向山への登山道だろう。
この尾根道を登ると左斜面は樹木園となって、武甲山が眺められる。右に芦ヶ久保駅への道を分け、木の階段道を登ると日向山の頂上に着く。
頂上には展望テラスがあるが、それに上がらなくても南面が開けて展望が素晴らしい。左には芦ヶ久保駅とその背後に聳える横瀬二子山、右には武甲山が一望できる。横瀬二子山と武甲山の間の奥には武川岳と大持山も見える。日向山は小さな里山だが、この眺めは訪れる価値ありと思う。
頂上からさらに尾根道を西進し、道標にしたがって左折。木の階段道を急降下し、防獣ネットを開閉して通ると琴平神社のこぢんまりとした社殿に着く。参道石段を下り、鳥居を潜ると車道に出て、日向山の南斜面の農園の眺めが開ける。立派なWCと休憩舎があり、立ち寄って休憩する。
琴平神社入口からは南へ新しい車道を下る。左に眺められるなだらかな尾根は、さっき丸山から下ってきた六番通りのようだ。「芦ヶ久保駅 風の道コース→」の道標から山道に入り、雑木林の中を下る。途中、左に農村公園への道を分ける。樹林の一部に切れ間(放棄された農地?)があり、穂が出始めた芒やその他の草が雑然と繁茂している。
左にカーブして沢を渡り、少し登って開けた平地に出ると、突然、大仏の座像が現れてビックリする。観光の方もいて、大仏の写真を撮っている。後日調べると、ここは源寿院別院で、大仏は芦ヶ久保大観音というらしい。
大仏からは芦ヶ久保の駅と集落を見おろしながら、車が走るのは限界と思える程、急で曲がりくねった坂道を下る。「たけのこ」というコーヒー&軽食の店の前で右の道へ(左でもOK)。R299に下り着く。交通量が多いR299は信号機のある交差点で渡って、道の駅の第二駐車場に帰り着いた。
今回の山歩きは、特に丸山から後半は気軽なハイキングで、展望や農村風景が楽しめて、なかなか良かった。また、行程も程々に長くて、良いトレーニングになった。涼しくてあまり汗をかいていないし、今日は人出が多くて混みそうなので日帰り温泉は割愛し、サクッと桐生への帰途についた。