丹沢山〜塔ノ岳
横浜の実家に帰省するついでに、久し振りに丹沢主脈の山に登ってきました。
桐生を未明に車で出発。北関東道、関越道を経由し、圏央道を相模原ICで降りる。宮ヶ瀬湖畔を通過し、中津川沿いの県道秦野清川線を走って、丹沢山塊の奥深くに入って行く。道路は狭隘で、すれ違い困難な区間が多い。
塩水橋を渡り、登山口となる本谷林道入口に到着すると、既に路側に登山者の車がズラーっと縦列駐車していて、残り少ない余地に滑り込む。丹沢の人気は凄いなあ。
なお、本谷林道は関係車両が通行するので、入口を塞ぐように駐車してはいけません。
先日、新調した登山靴(AKU ALBA TREK WIDE GTX)を履いて歩き出す。先代の登山靴(AKU TENGU GTX)はソールが擦り減って、3年で退役となった。
今回からカメラも新しい。これまで愛用してきた Canon PowerShot G9X Mark II は、バッテリーパックを交換するたびに日付が初期化されたり(日付保持用キャパシタが劣化したためらしい)、電源ボタンに触れただけで電源がON/OFFしたり、と不具合が生ずるようになった。発売開始日にポチって5年だから、そろそろ寿命なのだろう。後継機種が出ればまた即ポチる所存だったが、Canon にその気がなさそうなので、RICOH GR III を購入した。
入口にある頑丈なゲートの脇をすり抜けて本谷林道に入り、数人のハイカーさんと前後しつつ、本谷川の上流に向かう。両岸の急峻な山肌の樹林は色付き始めて、緑に黄や赤が点在する。すぐに林道が分岐し、右へ本谷川本流に瀬戸橋を架けて塩水林道が分かれる。
本谷林道を直進すると、少し先で左岸に渡る。河原が広く水量の多い本谷川を眺めながら、林道を歩く。やがて、本谷川本流に架かる吊り橋(本谷橋)が現れ、その手前に天王寺尾根の登り口がある。今日は、天王寺尾根を登って丹沢山と塔ノ岳に登頂し、長尾尾根を下ってここに戻ってくる予定である。
林道歩きで体が温まったので長袖シャツを脱ぎ、Tシャツ一枚になって天王寺尾根の登りに取り付く。杉林の急斜面を木の階段道で登り、しばらく枝沢に沿って進む。要所に新しい道標が設置され、整備が行き届いている。
枝沢を離れ、山腹を登って尾根上に出たところに天王寺峠の道標がある。天王寺尾根の末端に近いところで、なんでこんなところを峠と称しているのか不思議(後日調べると、塩水川の中流に抜ける鷹ノ巣経路と称する古道が越えていた峠らしい)。
天王寺峠から尾根道となり、始めは杉植林帯を登る。古い防獣フェンスの扉のないゲートを潜ると雑木林に入る。雑木の黄葉がなかなか綺麗。なだらかな尾根を緩く登る。
高度が上がってくると、さすがにもう11月、尾根を強風が吹き抜け、結構寒い。尾根が細くなり、右手の木立の間に丹沢三峰を望む。ブナ林に入り、傾斜が増した尾根を木の階段道で登る。ところどころに紅葉が混じり、風情がある。塩水林道から堂平を経由して上がって来た登山道を右から合わせ、ブナやアセビ、雑木に覆われた尾根をさらに登る。
樹林に遮られて展望に乏しい中、左手のガレの源頭から表尾根が見える地点がある。本谷川源流域の紅葉が見頃だ。黄葉が終盤で、ほぼ冬枯れして明るくなったブナ林を登っていく。下生えの枯れたカヤの草原が良い雰囲気。
傾斜が増すと木の階段道が現れ、両側からガレの源頭に挟まれた急登となり、一ヶ所に鉄梯子が架かる。日溜まりに一株のリンドウ。新カメラで接写してみるとピントが合わせ易く、なかなか優秀だ。
鉄梯子の上で振り返ると、登って来た天王寺尾根が見おろされる。その向こうに経ヶ岳〜仏果山の山並みを望み、霞がかかってぼんやりしてるが関東平野まで遠望する。
ブナとカヤの広い斜面を、木の階段道で登る。既に丹沢三峰を俯瞰する高さまで来た。階段にはブナの実や殻、カエデの実が沢山落ちている。ブナの実も山栗のように茹でれば食べられるのかな。しかし、山栗よりさらに小さいので、まとまった量を集めて食べるのは、すごく手間がかかりそうだ。
さらに階段道を登って、丹沢三峰への縦走路に合流。なだらかな稜線を辿って、丹沢山の頂上に着く。丹沢山に登頂したのは約30年振り3回目。頂上の様子は全く記憶にない😅。頂上の広い平地にはベンチが置かれ、ハイカーさんが休憩中。左手にみやま山荘が建つ。2階建ての綺麗な山小屋だ(2004年11月に建て替えたそうだ)。
奥のミヤマクマザサに覆われた高みに三角点標石と「日本百名山 丹澤山」の立派な山名標識があり、その向こう(南西の方向)に冠雪した富士山が優美に山裾を広げている。北西には不動ノ峰(1614m)、蛭ヶ岳(1673m)と主脈の山々が連なる。そちらには笹原に覆われたなだらかそうな稜線が続き、蛭ヶ岳まで足を延ばしたくなるが、コースタイムを確認すると片道2時間もかかるので、止めておく。
ベンチに腰を下ろして休憩する。風当たりが弱く、日差しもあって寒くはない。小さな柿を3個、皮を剝いて食べて喉を潤したのち、塔ノ岳に向かって出発する。目指す塔ノ岳は、ちょこんと飛び出した三角ピークだ。頂上に建つ山小屋も識別できる。
縦走路から右手を眺めると、白く広大な河原の箒杉沢と山腹の紅葉を俯瞰し、箱根や愛鷹山、富士山を遠望する。この山岳景観は素晴らしい。笹原とブナ林に覆われたなだらかな稜線を辿り、明るくて雰囲気の良い縦走路が続く。
竜ヶ馬場の平坦な笹原のピークを通過し、少し下ったところにベンチがある。ここは大山を望む休憩適地。大山の左に北尾根が延び、その左奥には三峰山(935m)の小さなギザギザの稜線が眺められる。
さらに展望を楽しみながら縦走。日高(ひったか)のピークを越え、小さなギャップを通過し、最後に短い急坂を登って塔ノ岳の頂上に着く。
塔ノ岳の登頂は3年振り(前回の山行記録)。元から人気が高い山だが、今日は一段とハイカーさんが多い。コロナ禍でのアウトドアブームによる登山人口の増加、旅行制限の撤廃、快晴の休日といった要因が寄与していそうである。
今日は快晴で、頂上からの展望は抜群だ。まず、富士山が相変わらず存在感を示し、その右奥に南アが薄らと遠望できる。これまで隠れていた檜洞丸も姿を表す。蛭ヶ岳との間に見える彼方の山並みは大菩薩連嶺かな。
東には表尾根と大山を望む。南には大倉尾根・花立の向こうに秦野盆地と相模湾を俯瞰し、箱根や大島を遠望する。高度感があって素晴らしい眺め。海が見える山頂はいい。
強い西風が吹き抜けて寒いので長袖シャツを着て、風下のベンチに陣取って昼食休憩とする。熱いカップ麺を食べると、体の芯から温まる。
休憩後、表尾根の縦走路へ。木道や階段が良く整備され、途中に一ヶ所ある崩壊地には迂回する桟道が設置されている。交差するハイカーさんがとにかく多い。「こんにちは」を「ちわー」と略していても、挨拶が面倒になる程。丹沢の人気は凄いなあ(←2回目)。
木ノ又大日の樹林に囲まれた小ピークを越え、少し下ったところに木ノ又小屋がある。小屋の前の日当たりの良い平地にはベンチがあり、ハイカーさんが休憩中。
稜線を小さく登り降りして、すぐに新大日の頂上に着く。こちらも大勢のハイカーさんが休憩中で、どちらにカメラを向けても、ハイカーさんが映り込む😅。頂上の新大日茶屋は倒壊している。どう撤去するか問題になっているそうである(神奈川新聞の記事)。
新大日から長尾尾根を下る。ここも真新しい木の階段道が長く続く。新大日頂上にあった説明板によると、神奈川県民が2007年度から収めている水源環境保全税をもとに、植生回復と土壌流出防止を図って登山道の整備が行われているそうである。この税の平均負担額は年額890円!とのことで、それ位、丹沢のオーバーユースは問題になっているようだ。
階段道が尽き、急斜面をジグザグに下って平坦な尾根となると、右にケヤキ沢経由で札掛に下る登山道が分岐する。この道の入口には「下山時上級者向き」との警告看板が立つ。
分岐からは「長尾尾根」の名の通り、雑木林に疎に覆われた広くなだらかな尾根が長々と続く。高度が徐々に下がるに連れて、終盤の紅葉が見頃に変わる。
登山道の右脇にモノラックと乗用台車を見かける。これは一度、乗ってみたいかも。傾斜が増して杉林に入る。途中、ベンチで一休み。尾根を絡んでジグザグに下り、上ノ丸(879m標高点)の山腹を横切って斜めに下ると、T字路の分岐に着く。右に札掛へ下る道を分け、左の本谷橋への道に入る。
なお、分岐には昨年10月の日付で、本谷コースは桟道崩落のため通行止、との掲示がある。事前に神奈川県自然環境保全センターHPで登山道の通行状況を確認したけど、この通行止の情報はなかったような気が……。まあ、なんとかなるでしょう。
本谷コースを進むと、急斜面のトラバースとなる。日陰で陰鬱な雰囲気。道型は微かで、最近、踏まれた様子があまり窺えない。途中、右に大洞橋への道が分かれる。この分岐には新しく立派な道標が立っているから、廃道という訳ではなさそう。
急峻な斜面をやや緊張しつつ横断して行くと、桟道の崩落箇所に着く。土砂災害ではなく、老朽化による崩落のようだ。そこはかとなく踏み跡があり、注意して通過する。
このあとも古い桟道や道型の崩落が点々と続くが、通過可能。枝尾根を回り込んで本谷川に面する斜面に入ると、日陰から出て雰囲気が明るくなる。切り返して急斜面を下ると、土砂崩れで道がガレに埋もれている。赤テープに導かれてガレ場を通過し、本谷川沿いの歩道に着く。落石で荒れ気味の歩道を伝い、本谷川にかかる吊り橋(本谷橋)を渡る。あとは往路の本谷林道を戻る。入口ゲートに帰り着くと、駐車の大半が帰った後であった。
久し振りに登った丹沢山は、ブナ林などの自然環境が良かった。稜線からの大展望も素晴らしく、お勧め。ハイカーさんが多く、人気の高さには改めて喫驚。丹沢は圏央道を使えば桐生からも意外と近いし、未踏の山も多いので、また来てみよう。
宮ヶ瀬湖から半原に出、R412、R246を経由し、多少の渋滞に巻き込まれつつ、夕方の明るい内に横浜の実家に帰った。