経ヶ岳〜仏果山

天気:
メンバー:T
行程:田代運動公園 7:25 …道ノ入沢 7:40 …経ヶ岳(633m) 8:50〜9:00 …半原越 9:20 …仏果山(747m) 10:30〜10:50 …撚糸組合前バス停 12:10 …田代運動公園 12:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

4/30に横浜の実家に帰省し、5/1〜2に1泊2日で飯山温泉に出かけて、七沢森林公園と白山を歩いた。その後、5/3に桐生に戻るが、帰りがけの駄賃で、またどこかに登ろうと考えて、東丹沢の経ヶ岳と仏果山(ぶっかさん)を思い付く。中津川と小鮎川に囲まれた小山脈(中津山地。別名、相州アルプス)の主要な2峰で、関東ふれあいの道(首都圏自然歩道)が整備されている。関ふれのコースマップを参考にし、⑰北条武田合戦場のみちと⑫丹沢山塊東辺のみちを利用して登ってきました。

S&Sに見送られ、実家を早朝に車で出発。R246、R412、県道相模原愛川線を走り、田代運動公園に入って、中津川河川敷入口付近のスペースに駐車する。ここには「河川敷の利用は控えてください」と記された看板が立ち、河川敷への侵入路は厳重なバリケードで塞がれている(4/28〜5/11の措置)。ここの河川敷は無料でオートキャンプができるスポットとして人気が高いが、BBQでの感染例が増えていることと、4都府県に緊急事態宣言が発令されたことを受けて、閉鎖されたらしい。家族のBBQならば問題ないのでは、とも思うが、ここは管理されたキャンプ場ではないので、まあ致し方ない措置か。

(河川敷の閉鎖は、5/11現在、5/31まで期間延長された。)

中津川河川敷入口
中津川に架かる平山橋

中津川に沿って堤防の上の道を歩いて下流に向かい、人道橋の平山橋で対岸に渡る。平山橋は大正時代に建設され、すぐ下流に平山大橋が架けられるまで、幹線道路の車道橋として利用されていたとのこと。桐生の渡良瀬川に架かる先代の錦桜橋と同じく、トラス構造の鉄橋で、レトロな雰囲気が郷愁を誘う。橋上から中津川の上流を見遣ると、青空の中、新緑に包まれた仏果山がゆったりと両翼に稜線を延ばしている。

平山橋(国の登録有形文化財)
橋上から中津川と仏果山(右奥)の眺め

勝楽寺(田代半僧坊)の山門前を通過し、R412の平山坂のヘアピンカーブから経ヶ岳への登山道に入る。登山口では、ちょうど、数人の大人に率いられた小学生位の子供のグループが出発準備中で、何やら登山に関するレクチャーを受けている。その他、バイクで来た単独行の兄ちゃんが出発したところだ。

登山口には「道ノ入沢」と刻まれた御影石製の石標や関ふれの道標がある。道標に架けられたポストの中に「荻野西山登山マップ」という黄色いチラシが入っていたので、ありがたく1部頂く。これは西山を守る会が配布しているもので、経ヶ岳、華厳山、高取山の登山ルートが解説されている。

道ノ入沢・経ヶ岳登山口
沢沿いの道を進む

最初は薄暗い谷の中、渓流に沿って未舗装の林道を歩く。途中、ヤマビル対策として、塩やヤマビル忌避剤が設置されている。東丹沢はヤマビルの巣窟として悪名高い。出現時期にはまだ早いとは思うが、やはり足元の地面が気になって、何となく足が早まる。

ヤマビル防止用塩置き場
スリット式砂防堰堤

やがて砂防堰堤が現れて、林道終点から渓流沿いの山道に入る。二つ目の砂防堰堤の上で右岸に移り、山腹をなだらかに登り上げて、枝尾根の上に出る。

沢を右岸へ渡る
枝尾根上に出る

下草の緑が濃い杉植林帯を、枝尾根に絡みつつ登る。途中の小平地にはベンチが設置され、単独行のおじさんが休憩中。樹林が切り開かれて、山麓の中津川と集落、丘陵の上に広がるゴルフ場などが、まだまだ近くに眺められる。

ベンチのある休憩地
休憩地より山麓の眺め

休憩地から傾斜が徐々に増して、10分程で舗装された林道(法華峯林道)に出る。この地点で左後ろに山道が分岐し、「用野・平山坂上方面入口(西山を守る会)」と書かれた簡易なプレートが架かる。この山道は、登山口で貰った黄色いチラシにも記載されている。

林道を横断
山腹をトラバースして登る

林道を少し右に進んで、再び登山道に入る。階段を登り、大沢ノ頭(536m標高点)は南面を巻いて、尾根上に出る。杉の根が張った尾根道を登るとベンチのある小ピークに着き、木立の切れ間から江ノ島が眺められる(後日のニュースによると、GW中の江ノ島は観光客で激混みだったそうだ)。

尾根上を登る
江ノ島を遠望

さらに尾根道を登り、左に高取山・華厳山への縦走路を分けると、三角点標石とベンチのある経ヶ岳頂上に着く。頂上は樹林に囲まれているが、南西面が切り開かれ、登り着いた途端に正面にドーンと丹沢山塊の大パノラマが広がって、感動的だ。

仏果山を望む
経ヶ岳頂上

まず、パノラマの左端には端正な金字形の山容の大山(1252m)が大きく聳える。その手前には、稜線が溶け込んで見分け難いが、大山三峰山(935m)や辺室山(653m)も眺められる。

大山から右に連なるスカイラインは丹沢表尾根で、もこっとした山容の三ノ塔(1205m)を経て徐々に高くなり、塔ノ岳(1491m)に連なる。

塔ノ岳からさらに右に連なるスカイラインは丹沢主脈で、鍋を伏せたような頂の丹沢山(1567m)、丹沢三峰の間にちょこんと頂を覗かせる蛭ヶ岳(1673m)へと連なり、圧巻だ。これらの山には登ったことがあるが、40年以上も昔のことだし、改めて勇姿を拝むと再訪したくなるな。

経ヶ岳から大山を望む
経ヶ岳から塔ノ岳(左端)
丹沢山、蛭ヶ岳を望む

丹沢山塊の展望を堪能した後、仏果山に向かって縦走路を辿る。すぐに、経ヶ岳の山名の由来となった経石がある。弘法大師がこの大岩の南面の穴に経文を納めたとのこと。

縦走路はここから急坂の下りとなる。階段と手摺りのロープが整備されているから歩行には問題ないが、低山といえども丹沢の山は険しいなあ、と感じさせる。

経石
急坂を下る

一旦、傾斜が緩んで、ベンチのある小ピークから大山を眺める。また、急坂となり、樹林中を下って半原越(はんばらごえ)に着く。

ここは南西の煤ヶ谷と北東の半原を結ぶ峠だ。説明板によると、昭和の初期まで、養蚕が盛んだった煤ヶ谷から、糸の町として栄えていた半原へ、繭を背負って越えたとのこと。現在は舗装された林道が通じ、ハイカーさんの車と思しき駐車が2台ある。なお、法論堂(おろんど)側の林道は通行止となっていた。

新緑の尾根道
大山を望む
再び急坂の下り
半原越

仏果山へは、向かいの階段道に取り付いて急登。さらに尾根上も急坂の階段登りが続く。木立の合間から、ググッと頂を擡げた仏果山を眺める。煤ヶ谷のリッチランド・キャンプ場への道を左に分けると、土山峠分岐までは比較的なだらかな尾根歩きが続く。

急な階段道を登る
尾根上も急登
仏果山を望む
土山峠分岐

土山峠分岐には休憩中のハイカーさんが2組程いる。長い階段道の急登をこなして、肩のような平坦なピークに登り着くと「革籠石山」の標識がある。この山名は、桐生にある神籠石山を連想させる(読み仮名はどちらも、かわごいしやま)。

長い階段道を急登
革籠石山頂上

ここから細い稜線上の道となる。ベンチを過ぎ、痩せたザレ尾根を辿ると「山岳修験者のはなし」と題する説明看板のあるピークに着く。山名標識はないが、後日調べると、八州ヶ峰と称するピークのようだ。この説明看板には、かつて行われた、愛川町八菅山(はすげさん)から大山まで7宿30か所を巡る八菅修験の行程地図が記され、大変興味深い。

さらに階段道を急登
ベンチのある肩に登り着く
八州ヶ峰頂上
痩せ尾根を辿る

八州ヶ峰からは、アップダウンは大きくないが、痩せて岩場混じりの面白い稜線歩きとなる。低山だが、こういう所は丹沢らしい。展望が開ける箇所もあり、山間に宮ヶ瀬湖の湖水をチラと見て、大山〜丹沢主脈を一望する。鎖場も出て来るが、使わずに済むレベルで、危険箇所はない。

痩せ尾根の岩場に差し掛かる
宮ヶ瀬湖と大山を望む
辿ってきた稜線を振り返る
容易な鎖場の登り

高取山(705m標高点。中津山地には高取山が二つある)への縦走路を左に分けると、すぐ先が仏果山の頂上だ。石積みに石仏やケルンが置かれ、深い樹林に覆われて、ここからの展望はない。緩斜面の樹林中にたくさんベンチがあり、休憩中のハイカーさんが多い。

高取山分岐
仏果山頂上

頂上の一角に展望台があり、もちろん登ってみる。この展望台は頑丈な鉄骨造りだが、とても高くて、登ると怖くなるレベルだ(後日調べると高さ10mで、3階建てビル相当)。

仏果山頂上の展望台
展望台の階段からアオダモを撮影

展望台の天辺は樹林の梢から高く飛び出て、360度の大展望が得られる。西には宮ヶ瀬湖の青緑色の湖面を俯瞰し、塔ノ岳から丹沢山、蛭ヶ岳、黍殻山、焼山へと続く丹沢主脈を展望する。蛭ヶ岳〜焼山の間は、まだ歩いたことがない。行きたいな〜。

目を右に転じて、北には峰続きの高取山を前景に、小金沢連嶺や奥多摩の山々を遠望。東には広大な関東平野を一望し、南には辿ってきた稜線の向こうに霞んだ相模湾を望む。

宮ヶ瀬湖と丹沢主脈を望む
高取山(手前)と小金沢連嶺を遠望
関東平野を一望
相模湾を遠望

大パノラマを堪能し(しかし、立ち位置が高過ぎて落ち着かない😅)、展望台を降りてベンチでペットボトル飲料とパンの昼食を摂ったのち、半原に向かって下山にかかる。

(なお、4/29〜5/31の間、宮ヶ瀬ダム周辺が立ち入り禁止となっているため、高取山から宮ヶ瀬ダムへの通り抜けができなくなっている。)

下山路は自然林の緑に覆われた尾根を一直線に下る。傾斜はそれほどきつくなく、歩き易い。樹林に杉檜が混じり始めると、広く伐採された斜面に出て、古くレトロな送電鉄塔が現れる。眺めが開け、中津川の流れと平野に広がる市街がだいぶ近づいたことがわかる。

仏果山から半原へ下る
新緑に覆われた尾根道を下る
送電鉄塔が現れる
眺めが開ける

再び植林帯に入って尾根を下り、林道を横断する。階段道を下ると、交通量の多い県道宮ヶ瀬愛川線に突き当たる。右に行くとすぐに県道に出る。ここは左へ。県道の宮沢大橋の下に潜って、沢沿いの道路に降りる。こちら方面から仏果山に登る場合は、この辺りに数台の駐車スペースがある。

ホウチャクソウかな?
植林帯の尾根を下る
林道を横断
階段道の下りが続く

あとは中津川の河岸段丘に深く切れ込んだ谷の底に通じる車道を下る。途中に「この地の産業」という題の関ふれの説明板があり、それによると、文化四(1807)年に小島紋右衛門が桐生から八丁式撚糸(ねんし)機を導入したのが始まりで、半原に撚糸業が興ったとのこと。意外な町に桐生との繋がりがあった🤝

R412の両向橋の下を潜る地点には「両向坂(両向新道)」の地名標識がある。松葉沢ホタルの里の看板もあり、6月上旬頃が見頃とのこと。

宮沢大橋の下に下り着く
R412両向橋の下を潜る

最後に半原神社の広い境内の脇を通って、県道相模原愛川線に出る。県道を少し左に進んだ所に神奈中バスの撚糸組合前バス停がある。1時間に1本、バスの便があり、タイミングが合えば田代運動公園の最寄りの田代坂下バス停まで利用できるが、元よりトレーニングのため、歩くつもりだ。

松葉沢に沿って下る
半原神社

半原の市街を抜け、中津川のゆったりとした流れに沿って歩く。対岸には低いが急峻な山並みが迫る(後日調べると、この山並みには大峰、向山、富士居山のピークがあり、ハイキングコースが通じている)。

県道相模原愛川線を歩く
中津川の流れ

馬渡橋を渡って田代市街に入り、この辺と思う地点で右折して、田代球場に出る。球場では少年野球の試合中で、普段と変わりない休日の風景がある。堤防上のジョギングコースをのんびり歩いて、駐車地点に帰り着いた。

田代球場
駐車地に戻る

経ヶ岳と仏果山はハイキングコースが完備した低山だが、さすが丹沢の山といえる険しさもある山々であった。また、丹沢山塊の展望台として絶好のロケーションにあり、山岳パノラマが楽しめた。相州アルプスを南北に全山縦走するのも面白そうだ。ただし、今回は遭遇しなかったが、ヤマビルには御用心。帰りは相模原ICから圏央道に乗り、関越道、北関東道を経由して帰桐した。