金城山
予報によると、この週末の天気は関東甲信ではいまいちだが、新潟県で日曜に晴れ間がありそう。それなら、久し振りに中越の山に登ろうと考えて、金城山(きんじょうさん)を思い付く。金城山には1999年11月に滝入コースから水無コースへ周回して登ったことがある(山行記録)。水無コースの下りは物凄い急傾斜で、膝がガクガクになった。現在では水無コースは下り禁止となっている。今回は観音山コースを往復して登ってきました。
桐生を早朝、車で出発。赤城ICから関越道に乗る。今日の高速はガラガラに空いている。群馬県北部は高曇りで、赤城山や武尊山、谷川連峰が眺められる。関越トンネルを抜けて新潟県に入っても天気はあまり代わり映えしない。もう少し晴れると期待していたんだがなー。まあ、周囲の山は良く見えているので御の字だし、だんだん晴れるだろう。
高速を塩沢石打ICで降り、観音山コースの登山口に向かう。田植えの終わった水田の向こうに金城山から巻機山にかけての稜線が高く眺められ、久し振りに接する越後の険しい山岳風景にテンションが上る。登山口の少し左手に駐車スペースがあり、ここに車を置く。既に4台の車があり、人気が高いコースのようだ。
登山口には石碑や石像、「こぶし遊歩道」の看板を掲げたゲートがあり、良く整備されている様子が窺える。遊歩道に入るとすぐに赤鳥居と石祠がある。その奥に擬木の階段が続いて、実際に整備が行き届いている。「第一展望広場」の標識のある地点には立派な石仏(観音像)が祀られている。年代は不明だが古そう。この後も道端に点々と石仏が建つ。
遊歩道をジグザグに登ると東屋のある第二展望台に着く。水田が広がる山麓の眺めが良い。向こう側の緑深い山は、飯士山北東の946m三角点峰(点名:松出山)のようだ。
この先は中低木に覆われた緩い尾根上の道となり、所々から金城山の頂上を高く仰ぐ。石仏が点々と続き、松の生えた広場に着くと、二十数基の石仏がぐるりと立ち並ぶ。ここが石仏巡りの終点で、二合目の標識がある。
二合目から先も中低木帯の切り開き道が続き、ゆるゆると登る。風がなく、少し湿気が高くて、蒸し暑さを感じる。林内の落ち葉の間には湿気を好むギンリョウソウが鎌首を擡げている。太い幹が裂けたアカマツの大木のある三合目を過ぎ、所々で正面に金城山、左手に坂戸山を眺めつつ、緑に覆われた尾根を緩登する。道端にはひょろ長い茎の先端に実をつけたショウジョウバカマが多く見られる。
やがてブナ林に入り、ヤマボウシの花を見る。少し急な登りがあり、四合目の標柱のある狭い平地に着く。ここで早くも下山してきた若者二人組と交差する。四合目から見上げる金城山の頂は少し近づいたが、まだまだ見上げる高さにある。
少し下って登り返し、窪んで滑り易い土の道を急登する。傾斜が増すとトラロープも現れる。五合目も狭い平地だが眺めがあり、金城山の頂上を見上げる他、仙ノ倉山から苗場山にかけての上越国境の山並みの展望が得られる。水を飲んでしばし休憩後、先に進む。
日の当たる道端にはイワカガミやアカモノが咲いている。ブナとササの林に入り、六合目の標識を通過。尾根上が明るく開けると、左手に八海山や坂戸山が眺められる。
再びブナとササの林に入る。林内には地滑りによる地割れや段差が生じている。ブナ林の中の七合目の標識があり、小広い平地となって休憩適地だ。ここで左から雲洞コースが合流するが、このコースは廃道で、下り口はトラロープで塞がれている。
七合目から樹林中の急登の連続となる。鎖も現れるが、頼らずとも登れるレベル。やがて、小さな瘤に登り着いて眺めが開け、左手に駒ヶ岳を中央に据えた越後三山を展望する。この地点には「←雲洞コース」と「大月、五十沢コース→」の道標が倒れていて、ここで左から滝入コースが合流しているようだ。このコースを覗き込むとかなり急そうで藪っぽく、良く歩かれているようには見えない。
ここからは前回、歩いた道だが、全く記憶にない(^^;)。小さな岩場を鎖でトラバースし、開けた尾根を急登する。後方左に坂戸山が既にずいぶん低く見える。尾根が平坦になり、八合目の標識が現れる。行く手には金城山の頂上稜線が間近に横たわり、ポチンと飛び出た岩塔(ベザイ岩)も(写真では分かり難いが)視認できる。
尾根上にはタムシバの花が咲き、この時期に見られると思っていなかったから嬉しい。少し下がると左の谷から水音が聞こえてくる。木の枝にぶら下げられた「←60M 水場」の標識があり、その指す先は残雪で埋まった窪となっている。傾斜が急で雪が滑りそうなので、水場に立ち寄るのは止めて通過。
すぐ先で兎平と呼ばれる小平地に着く。四方に展望が開け、右に高棚コースの尾根を俯瞰する。眺めが良さそうなコースで興味を惹かれるが、下り口はトラロープで塞がれている(後日調べると、近年は整備されておらず、廃道となっているらしい)。
再びブナとササの林に入って登る。道端に倒れた九合目の標識を過ぎると、右斜面が大規模に崩壊している。近年の水害によるものらしい。山道まで崩壊が進んでいるので通行注意。最後の急坂に差し掛かり、久し振りの1000m越えの標高差の登りに加えて前夜の睡眠不足が祟って、ヘロヘロになって登る。
ようやく頂上稜線に登り着くと、反対側は断崖絶壁で、正面に深い谷を隔てて雪渓やスラブを鏤めた山並みが広がる。これは素晴らしい眺めだ。絶壁の縁を辿り、岩稜を左から巻いて鎖場を登ると、金城山の頂上に着く。
頂上は小広く平坦だが、南面は切れ落ちた岩壁となる。北面を除く三方の展望が抜群だ。前回の登頂ではガスガスだったので、展望はほぼなかった。再訪した甲斐があった。頂上では二組のハイカーさんが休憩中。この先もちょっと危ない岩稜が続く。避難小屋まで往復し、山頂に戻ってから大休止としよう。
右側がすっぱり切れ落ちた岩稜を辿ると、岩場の上に三基の石碑が建つ。岩場を登って近づくと、三笠山、八海山神社、摩利支天の銘が読み取れる。
岩と岩の間を縫うように進む。八合目からも見えた巨大な岩塔(ベザイ岩)は左から巻いて通過。振り返ると頂上稜線直下の岩壁が凄い。この眺めは紅葉の時期にも見てみたい。
岩稜を抜け、灌木帯に入ってしばらく進むと金城山避難小屋が建つ。小屋の中を覗くと綺麗に使われていて、利用可(WCもあるが見ていない)。小屋の前の残雪で缶ビールを冷やしたのち、頂上に戻る。
頂上の一角に腰を据え、スモークタンをつまみにキンキンに冷やしたビールを飲む。五臓六腑に染み渡るー。昼食はカップ麺を用意していたが、熱い物を食べる食欲が出ない。昼食はなしにして、ビールを片手に大展望を楽しむ。青空が広がり、緑と残雪のコントラストが鮮やか。曽遊の八海山や銅倉尾根を遠望する。圧巻は膨大な山容の巻機山だ。三角形の頂は割引岳か。未踏なので、登りたいなー。
展望を楽しんだのち、往路を戻って下山にかかる。下り一方なので楽だ。所々で山麓の展望も楽しめ、行程が捗る。それでも最後は疲労に下界の暑さが加わってグロッキー気味になり、第二展望広場で休憩舎の屋根の下でベンチに寝っ転がって昼寝。日陰にいると爽やかな風が涼しく心地良い。これでシャキッと復活して、車に戻る。
帰りは日帰り入浴施設の金城の里に立ち寄り、汗をさっぱり流す。それから八海山山麓の魚沼の里に立ち寄り、八海山大吟醸、ライディーンビール、八海山ゼリー、塩麴焼まんじゅうと土産をたんまり買い込んだのち、六日町ICから関越道に乗って帰途についた。