庚申山〜鋸山

〜8日(月)
メンバー:T
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

この週末の6日〜8日の3連休はどこへ行こうか。6日は台風25号が接近するので様子見。7日は晴れ、8日は曇りの予報なので、7日にまだ歩いたことがなく、紅葉も期待できそうな庚申山〜鋸山間の稜線(鋸尾根)を歩くことにする。銀山平から日帰りしようとすると、復路は六林班峠道を使うとして、コースタイムで約12時間かかるので、ちょっときつい。8日も折角の休みなので、帰りは庚申山荘に泊まることにして、出かけて来ました。

10月7日
天気:
行程:銀山平 3:25 …一の鳥居 4:20 …庚申山荘 5:40〜6:20 …庚申山(1892m) 7:40〜7:50 …薬師岳 9:10 …鋸山(1998m) 10:10〜10:30 …六林班峠 11:50〜12:25 …天下見晴 15:15〜15:20 …庚申山荘 15:40(泊)

桐生を深夜2時過ぎに車で出発。途中、コンビニに立ち寄ったり、大間々の24時間GSで給油したりして、3時過ぎに銀山平のゲート前の駐車場に到着。車を置く。数台の駐車があり、そのうちの1台に明かりが点いていて、人が動いている。辺りはまだ真っ暗闇だが、上空は満天の星空で、予報通り天気は良さそうだ。ヘッドライトを点けて出発。最初は車道歩きだし、何度か通ったことがある道だから、ヘッドライトの明かりで不安なく歩ける。

一の鳥居から水ノ面沢沿いの登山道に入る。台風で出水があったのか、道型が少し怪しくなっている個所もある。道沿いに◆の標識が点々と設置され、ヘッドライトの光を向けるとかなり先の標識でも明るく反射して目立つので、これがとても良い目印になる。

仁王門を過ぎた辺りで、漸く背後の東の空に赤みがさす。庚申山荘に到着した頃に夜が明けて、山荘の背後に岩壁を巡らせて聳える庚申山が朝焼けで染まっている。庚申山の上には青空が広がるが、台風の影響で白い雲が物凄い速さで流れて行く。山荘には誰も居ないらしく、静かだ。山荘前のベンチでお湯を沸かしてスープを作り、パンの朝食を摂る。


赤黄標識を目印に夜道を歩く


夜明けの庚申山荘

朝食後、山荘内の荷物置き場に宿泊用の食料や着替えをまとめてデポする。他にもザックがデポされているので、昨晩の宿泊者は既に出発したのだろう。山荘前のWCの脇の水道で水を汲もうとしたが、かなり泥が混じるので、庚申山へ登山道を少し登った岩壁基部の湧き水(山荘の水源になっている)で2Lのプラティパスを満タンにする。

登山道は岩壁基部を左斜め上に登って行く。見上げる岩壁は高く、紅葉を交えて佳い眺め眺めだ。岩壁帯を鎖を手摺にトラバースしたり、梯子で登ったりして高度を上げる。


裏見の滝を裏から


鎖のヘツリと梯子

お山巡りの道を右に分け、岩場をトラバースしてガレた溝を急登する。中腹に見える紅葉はちょっとくすんでいるが、秋らしい風情があってやはりいい。


岩場のトラバース


中腹の紅葉

岩壁帯を登り切ると傾斜が緩み、笹が下生えの樹林帯を登る。所々の見晴らしの効く岩場から袈裟丸連峰を眺めたり、登って来た水ノ面沢を俯瞰する。


岩壁帯を抜けて緩斜面を登る


前袈裟丸山と後袈裟丸山を望む


水ノ面沢を俯瞰


庚申山頂上

1962年1月の遭難の慰霊碑を過ぎ、樹林帯を緩く登って庚申山の頂上に着く。ここは樹木に囲まれて展望がないのでスルー。すぐ先の展望地に行くと、眼前に鋸山と皇海山がドーンと現れる。今日は青空が広がり、山腹には紅葉が点在して、これまで庚申山に登った中では一番の好展望だ。風が強く、皇海山の頂上を掠めて雲が流れる。北方には三俣山が見えるが、その奥の日光白根山辺りの山々の頂は雲に隠れている。


展望地より鋸山と皇海山


展望地より三俣山を望む

眺めを楽しんだのち、鋸山に向かう。最初はちょっと急な下りだが、やがて笹に覆われた小鞍部に下って、南に袈裟丸連峰を望む。小さくアップダウンすると、尾根の途中という感じの地点に御岳山の古い山名標識がある。鋸尾根には庚申山と鋸山を含めて11の峰があり、庚申山が1峰、御岳山が2峰となる。


鋸山に向かう


明瞭な踏み跡が続く


袈裟丸連峰を望む(1)


御岳山頂上

御岳山から下生えが笹の針葉樹林の尾根を大きく下る。笹深い鞍部から急登となり、細い尾根を辿って駒掛山(3峰)に登り着く。ここも山名標識がある他は、樹林に囲まれて展望はない。写真だけ撮って通過。次の渓雲山へは、尾根の右側を絡んで下るところが深い笹原の中で、道が分かり難い。尾根に復帰して緩く登ると、渓雲山(4峰)に着く。ここも古い山名標識がなければ、それと気付かないピークだ。


駒掛山との鞍部


駒掛山へ急登


駒掛山頂上


渓雲山頂上

渓雲山から緩い下りとなり、行く手に木の間を透かして薬師岳の丸い頂を望む。途中に地蔵岳(5峰)があるはずだが、小ピークのため気付かずに通過。笹原と針葉樹林が混交する尾根を辿り、やや長い登りを経て、薬師岳(6峰)に着く。樹林の梢越しに、だいぶ近づいて来た鋸山が見える。


鋸山(左)と薬師岳を望む


薬師岳頂上

薬師岳と次の白山の間には小ギャップが切れ込んで、短いが急な坂を下る。小ギャップの松木川側は急峻なルンゼとなり、野猿谷の名がある。ルンゼから吹き上がる強風に煽られて、カメラを構える手の震えが止まらない。


左奥に鋸山を望む


白山との小ギャップから
皇海山を望む

短い急坂を登って白山(7峰)の頂上に着く。背の低いシャクナゲに囲まれた小平地は松木川側が切れ落ちていて、鋸山と皇海山の眺めが抜群だ。特に皇海山は松木川の深い谷底から大きく険しく聳えて、迫力がある。松木川源流域を俯瞰し、日光表連山を遠望する。奥日光の方は相変わらず雲の中だ。


白山頂上


白山から望む鋸山(右)


白山から皇海山を望む


白山から松木川源流域と
日光表連山を望む

白山から小さくアップダウンして稜線を辿る。途中の蔵王岳(8峰)は気付かず通過。シャクナゲの切り開きを抜けると笹原の小鞍部に出て、袈裟丸連峰が一望できる。こうして眺めると、袈裟丸山にも久しぶりに登りたくなる。

ここから小ピークを越えると、行く手にスラブ状に大きく崩壊した尾根が現れる。これは凄いな。崩壊壁の天辺が熊野岳(9峰)、左の三角ピークが剣ノ山(10峰)、右奥が鋸山(11峰)のようだ。崩壊壁はどこを登るのだろう。目を凝らすと、下の方に左にトラバースする鎖と、そこから登る梯子が見える。崩壊壁の左端を登るようだ。


袈裟丸連峰を望む(2)


剣ノ山(左)と鋸山(右)を望む

崩壊壁の登りも難所だが、手前のコルへの下りが最難関だ。ボロボロの急斜面に鎖が下がり、その先は右に下っているが見通せない。まずはそこまで降って下を覗き込むと、ほとんど垂直に見える岩壁だ。足場が少なく、腕力に頼って下る。ここはかなり緊張した。


鎖場を下る


下ってきた鎖場

鎖場を振り返って写真を撮っていると、鎖場の上に男性2人パーティが姿を表した。登りますかー、と声を掛けられたので、降りたところですー、と返す。追い付かれた訳だが、かなり速そうなパーティだ。

コルに降り立って、崩壊壁を左にトラバースする。ここは足場も良く、手摺の鎖もあるので問題ない。そこからアルミ梯子を上がり、急な岩斜面をトラロープを摑んで一直線に攀じ登る。途中で写真を撮っている間に、件の二人に追いつかれたので、先に行って貰う。


崩壊壁を左にトラバース


岩場を攀じ登る

急斜面を登り切り、稜線に復帰してほっと一息。振り返って、先程下った嫌な鎖場と、その先、庚申山に続く尾根を眺める。だいぶ歩いて来たなあ。鋸山まではあと少しだ。しかし、この先の稜線を見ると岩稜が続いていて、気が抜けない。


熊野岳から庚申山を振り返る


剣ノ山へ岩稜が続く

岩稜を辿ると、急な階段状の下りの岩場があり、鎖かロープが欲しいところだが何もないので慎重に下る。痩せた岩稜を渡り、短いアルミ梯子の架かる小岩峰に登ると、その先は切れ落ちていて、長い梯子で下る。


下ってきた梯子


剣ノ山から辿ってきた岩稜
男体山を遠望

登り返して着いたピークが剣ノ山だ。鋸山へは緩い稜線が繋がって、すぐ近くに見える。しかし、最後の難場あり。剣ノ山から鎖場を下って、鋭いV字状のキレットに降り立つ。この鎖も腕力に頼らざるを得なくて嫌らしい。このキレットは蟻地獄の険と呼ばれているそうだ。松木川側はルンゼとなって切れ落ち、V字の隙間から皇海山を望む。


鋸山まであと少し


下ってきた鎖場

ようやく難所を終えて、シャクナゲや針葉樹が繁茂する稜線を辿り、六林班峠からの登山道を合わせて、鋸山の頂上に着く。頂上は小広い平地で、誰も居ない。先行した2人は既に皇海山に向かったようだ。

頂上からの展望は、樹林に遮られる南面を除く三方に開けて、素晴らしい。西面には比較的なだらかな不動沢の谷が広がり、カラマツだろうか、黄葉が綺麗だ。北には皇海山が間近に大きく聳える。こちらから見ると稜線が左右に広がって、少しもっさりした山容だ。

目の前に皇海山を眺めつつ、ここから皇海山に往復するか、しばし迷う。鋸山に10:00までに着いたら皇海山にも登るつもりにしていたが、10分程過ぎているし、鋸尾根の縦走が思ったより難所続きで満足したし、何よりそんなに体力に余裕がなくて、楽したい気分が優ったので、皇海山往復は止めておく。皇海山には約20年前に登って以来(山行記録)、ご無沙汰しているので、またの機会で登ることにしよう。


鋸山頂上


鋸山より西面・不動沢側の眺め

そうと決まれば時間の余裕ができたので、のんびり展望を楽しむ。東面は松木川源流域を見渡し、オロ山や黒檜岳、遠く男体山を眺める。鋸尾根の松木川側の切れ落ち具合はなかなか。その先の尾根はなだらかに延びて庚申山に至る。紅葉の様子は、鋸山の頂上周辺や、庚申山北面が鮮やかだが、その他はまだ早いかな、というところ。しかし、秋の気配は感じられて、いい時期のいい天気の時に来られたと思う。


鋸山より男体山を遠望


鋸山より庚申山を望む

しばらくすると、4人Gr(グループ)が皇海山の方からやって来た。話を伺うと、今朝、庚申山荘を発ったとのこと。昨夜の山荘の宿泊は彼らだけだったらしい。六林班峠経由で山荘に戻るそうだ。私も彼らの後から出発する。

鋸山から笹原の急斜面を下る。眺めが開けて気持ち良いところだ。小ピークを越えると広くなだらかな尾根の下りとなり、道は笹原に覆われて判然としない。笹藪に没して道型が消滅した区間が長い。木の幹の微かなマーキングと、所々に張られた古いロープが、登山道があることを示す。


六林班峠へ下る


笹原の踏み跡を辿る


笹藪が深い


女山の三角点標石

広い笹原をガサゴソ搔き分けて歩くと、足元に三等三角点標石を見出す。ここが女山(1836m)の頂上らしい。この先に道型はなく、先行者が笹を踏み付けた跡を辿って緩く下る。しかし、笹藪と言っても身の丈を没する程の高さはなく、搔き分けて進むのにそう困難はないから、野趣に富んでちょっと楽しくはある。

そうやって笹原を歩いて、笹を切り開いた小平地となった六林班峠に着く。ここは休憩適地だが、先行した4人Grはさっさと先に行ったようだ。そろそろ正午なので昼食にしよう。お湯を沸かし、COOPカップ麺の鴨だし肉うどんを作って食べる。


笹原を突っ切る


六林班峠

庚申山荘へは、山腹を巻いて長いトラバース道を辿る。道型は埋もれかけて外傾し、笹に覆われて歩き難い。峠から10分程で、最初の沢を渡る。


庚申山荘へ向かう


最初に横切る沢

もう一つ小さな沢を渡り、次の少し大きな谷に回り込んで入ると、鋸山の岩峰を見上げる。この辺りの斜面は緑の樹林と黄葉に覆われ、少しの紅葉が混じる。沢を渡るところには「境沢」の標識がある。


鋸山を仰ぐ


境沢を渡る

山腹の微かな山道を進んで行くと、朝の2人に追い付かれる。皇海山往復だけ余分に歩いているのに、何という快足。先に行って頂こう。少し話を伺うと、皇海山の頂上には誰もいなくて、途中、1組(庚申山荘泊の4人Grだろう)にしか会わなかったそうだ(後日調べると、栗原川林道は台風24号の影響で9/30〜10/12の間、車両通行止めとなり、群馬県側からは入山できない状態だった)。

次の大きな沢には「三才沢」の標識がある。沢を渡ると傾斜の緩い山腹のトラバースとなり、笹原と黄葉の樹林の向こうに袈裟丸連峰が眺められる。秋らしい佳い風景だ。


三才沢付近の黄葉


袈裟丸連峰を仰ぐ

笹原の中の外傾した微かな踏み跡のトラバースが続く。数ヶ所、沢を横切る所があり、その前後には崖っぷちや崩壊地のトラバースがあって気が抜けない。また、台風の影響で倒木に道を塞がれることも数度あって、鬱陶しい。


トラバース道が続く


ところどころに倒木


谷に回り込んで渡る


ようやく歩き易くなる

時々ハッとする鮮やかな紅葉を楽しみつつも、思いの他の難路に難儀する。前は、こんなに苦労したっけ。傾斜が緩んで、ようやく歩き易い道となると、「天下見晴 0.2km」の道標のある分岐に着く。天下見晴には行ったことがないので、立ち寄ってみよう。


天下見晴分岐


天下見晴へなだらかな尾根を辿る

なだらかな尾根を辿り、簡単な鎖場のある岩場を登って着いた天辺が天下見晴だ。360度に開けて、名の通りの素晴らしい展望が得られる。振り返ると庚申山を間近に仰ぐ。左手前の三角ピークが、その筋の方々の山行記録に出て来る銀峰(ぎんぽう、1681m)だな。目を左に転じて庚申渓谷を見渡し、源流の奥に袈裟丸連峰を望む。この秋の紅葉はどうもイマイチのようだが、それでも全山色付いた様子は風情がある。さらに転じると関東平野の一部や筑波山の山影まで遠望できる。


天下見晴から銀峰(左)と庚申山


天下見晴から袈裟丸連峰を望む


天下見晴から筑波山を遠望
左手前は地蔵岳


天下見晴付近の紅葉

大展望に満足して分岐に戻る。庚申山荘までは平坦な良い道で、僅かな距離だ。


あとは平坦な道


夕暮れの庚申山荘

山荘には先行した4人Grの他、大勢の人が居て、食堂で宴会中。管理人さんも居て、きのこ鍋が振る舞われたようだが、私は到着が少し遅かった(^^;)。管理人さんに宿泊料2050円をお渡しする。4人Grはやがて下山し、数人が泊まりで残る。ウィスキーと豆菓子で宴会に参加。夕方になって数人が到着。話を伺うと今日は東京から来て、小法師岳(こぼうしだけ)に登ったそうだ。マイナーな山が好みで、やまの町桐生や本HPもご覧頂いているとのこと。奇遇だ。実は私があにねこですと名乗る。管理人さんは用事があるそうで、夜になって下山。トック(餅)入りコーンスープを食べ、小屋備え付けの布団で就寝する。

10月8日
天気:
行程:庚申山荘 6:10 …一の鳥居 7:30 …銀山平 8:30

翌朝、のんびり起床。予報通り、天気は曇りだ。皇海山を目指す人は疾うに山荘を発っている。朝食にパンを食べ、寝室を軽く掃除して、6時過ぎに出発する。今日は銀山平へ下るだけの楽な行程だ。


今日の庚申山荘は曇り


旧猿田彦神社前を下る

途中の樹林はようやく色付き始めたところ。林間にうっすらと白いガスが漂い、空気がひんやりと冷たい。仁王門や夫婦蛙岩、丁目石などを見ながら下る。下の方の樹林はまだまだ緑が多い。途中、登って来るハイカーさん数組と交差する。


色付き始めた樹林


夫婦蛙岩


「百六丁目」標石
文久三亥(1863)年四月


水量豊かな渓流を渡る

一の鳥居に下り着いて一休み。ここからは、庚申渓谷を眺めながら、荒れた車道を歩く。ハイカーさん多数とすれ違う。


一の鳥居


天狗の投石

丸石沢を渡った所(がけ崩れで車はここまでしか来られない)に2台の消防車両が停まっている。ここまで消防の方には出会っていないし、付近には誰もいない。何があったのだろうか。後日、日光市HPの消防出動情報を見ると、「午前4時28分頃、一の鳥居付近にて捜索事案が発生、消防車が出動」とあった。大事なければ良いが。


庚申渓谷の紅葉


銀山平の駐車場に戻る

8時半に銀山平の駐車場に戻り着く。かじか荘と水沼温泉はどちらも日帰り温泉は10時半から営業だから、温泉に入るには早すぎる。サクッと帰ろう。連休中だが午前の早いうちなので空いているR122をスイスイ走って、桐生へ帰った。