ニュウ〜稲子岳〜天狗岳〜高見石

天気:時々
メンバー:T
行程:麦草峠駐車場 5:15 …白駒池 6:05 …ニュウ(2352m) 7:25〜7:45 …稲子岳(2380m) 8:30 …中山峠 9:55〜10:00 …東天狗 11:00 …天狗岳(2646m) 11:25〜12:00 …黒百合平 13:40 …中山峠 13:50 …中山(2496m) 14:15 …高見石小屋 15:25〜15:40 …丸山(2330m) 16:00 …麦草峠駐車場 16:45
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

先々週は休日出勤、先週は台風接近のため、山歩きは休み。今週末は3週間ぶりの山歩きとなる。酷暑が続いているので、手軽に日帰りで涼しい高峰に登ることにし、この夏、3回目の北八ヶ岳へ。前回は麦草峠(標高2120m)から北に向かって北横岳まで周回したので、今回は麦草峠から南に向かい、天狗岳まで周回する計画を立てて、出かけてきました。

麦草峠へのアプローチは前回と同じ。桐生を深夜2時頃に車で出発。八千穂高原ICで高速を降り、R299(別名メルヘン街道)を上がって、麦草峠の登山者用駐車場に車を置く。駐車場は4割の入り。外は霧に覆われて、車の外気温計は17℃を示している。ここはやはり涼しい。朝食にパンを齧ったのち、出発する。

赤く大きな三角屋根の麦草ヒュッテに立ち寄ると、早起きの宿泊者がヒュッテの前で朝の一服を楽しんでいる。ヒュッテ周辺の草原にオレンジ色の朝日が射し始めると、霧が晴れ始めて青空が覗く。天気は良くなりそうだ。草原の中の歩道に入り、狭霧苑地・五辻、続いて丸山・高見石への道を分けて白駒池(しらこまいけ)に向かう。

麦草ヒュッテ
狭霧苑地・五辻(右)分岐

草原を抜けると針葉樹林帯を緩く下る道となり、「黒曜の森」の案内板がある。白駒池周辺には苔と原生林を周遊する歩道が整備され、10ヶ所の森に名前が付けられているそうである(北八ヶ岳苔の会)。ここもその森の一つ。R299からの道を合わせると、岩石帯に矮小な針葉樹が生えた「白駒の奥庭」に入る。岩石帯だが、木道が整備されて歩き易い。

黒曜の森
白駒の奥庭

R299沿いの有料駐車場からの道に合流。板敷の立派な歩道で、さらに歩き易い。この辺りは「白駒の森」という。常連らしきハイカーさんに行き会い、最近は雨が少ないせいか、苔にちょっと元気がない、との話を伺う。言われて見てみれば、そんな感じがしないでもない。程なく道は四つ辻となり、左に折れて青苔荘(せいたいそう)に向かう。

白駒の森
四つ辻は左へ青苔荘に向かう

青苔荘の前には、早朝にも関わらず人が多い。宿泊したお客さんが結構いるようだ。林間のキャンプ場にも多数のテントが張られ、朝食の準備をしている人達も。岸に降りて、白駒池を見渡す。水は深く透き通っている。対岸には白駒荘が見え、その後ろには鬱蒼と繁る針葉樹林に覆われたなだらかな山がゆったりと広がる。

青苔荘
白駒池

池の岸を左回りに辿ると、四つ辻から来た遊歩道に合流して、白駒荘に着く。手前の新館はブルーシートで囲われて工事中で、人もいなくて静かだ。しかし、奥の本館の玄関には軽食メニューの看板が出ているので、こちらは営業しているらしい。

池の岸の遊歩道
白駒荘

池の岸をさらに辿り、「←乳(ニュウ)」の道標に従って右へ。樹林帯の坂を登る。この辺りは「もののけの森」と名付けられている。ほどなく、白駒湿原に着く。ここも雨不足のためか、湿原というには水気が十分でない感じだが、暗い樹林の中にぽっかりと明るく草原が開けて、景観に変化を与える。

もののけの森
白駒湿原

再びオオシラビソなどの針葉樹林帯に入って緩く登る。今日、見た中では、この辺り(にゅうの森)の苔が一番青々、ふかふかとした感じ。大荷物のソロハイカーさんに追い付いて、泊まりですか、と伺うと、今日はミドリ池にテント泊とのこと。それもいいなあ。

にゅうの森
セイタカスギゴケ

稲子湯への道を左に分け、ニュウに向かって岩石帯にコメツガの根が絡まる道を登る。稲子湯から直登して来た道を左から合わせると、広くなだらかな尾根の上の道となる。ハイカーさん数組と交差。昨晩は上で泊まったのだろう。

稲子湯(左)とニュウ(右)の分岐
コメツガ林を登る

稜線に登り着き、左手の岩場に登ると三角点標石のあるニュウの頂上だ。切り立った岩峰から、360度の素晴らしい眺めが得られる。南には間近に非対称な鈍角三角形の稲子岳を眺め、その奥に天狗岳の双耳峰を望む。今日は天狗岳まで行く計画だが、なかなか高く遠いな。さらに奥には硫黄岳があるが、今は雲がかかって頂上は見えない。

目を転じて北には樹海の中に白駒池の深青色の水面を望む。その右奥、平坦な稜線の右端にちょこんと持ち上がる峰は、前回登った八柱山だ。一度訪れた頂には自然と目が向く。

ニュウより稲子岳と天狗岳を望む
ニュウより白駒池を望む

ニュウの岩峰を降り、中山方面へ稜線を辿る。短い鉄梯子の5m程手前で、登山道から外れて左の斜面を降りる。微かな踏み跡があり、テープのマーキングもある。ここが稲子岳への道の入り口だ。この分岐点の様子は、事前に調べたネットの情報の通り。

ニュウの岩峰を振り返る
稲子岳への踏み跡に入る

短い急斜面を降りると尾根上に明瞭な踏み跡が続き、緩やかに登る。苔むした岩石帯だが、意外と良い道で歩き易い。写真を取りながらゆっくり歩き、ふと気が付くと、後続にハイカーさんが居る。おやと思ったが、その後、追い付かれることもなく、いつの間にか姿が見えなくなった。

尾根上に明瞭な道型
中山方面の眺め

樹林に覆われて展望のない、なだらかな尾根歩きが続く。途中、小さな瘤の上から中山方面が見える箇所があり、そろそろ頂上かと思ったが、まだ先だ。小藪を搔き分け、倒木の多い樹林帯に入ってほぼ平坦な尾根を進むと、木の幹に付けられた「稲子岳 2320m」の標識のある稲子岳頂上に着く。頂上は平坦で、頂であることを示すものはこの標識だけ。樹林に覆われて展望は全くない。左の灌木藪を搔き分けて入ると、稲子岳東面の崖の縁に出るが、やはり木立が邪魔をして、眺めはいまいちだ。

樹林に覆われた平坦な稜線
稲子岳頂上

頂上の直ぐ先は倒木帯で踏み跡が不明瞭だ。ここを過ぎると、左側に砂礫地が開けた展望地に飛び出る。砂礫地の先は岩稜となり、その向こうはすっぱりと切れ落ちた大岩壁となっている。この岩壁はロッククライミングの対象になっているそうだ。岩壁の縁から俯瞰すると、遥か下には緑深い樹林が広がり、小さくミドリ池が見える。また、荒々しい崩壊斜面を抱く天狗岳や硫黄岳の眺めも素晴らしい。砂礫地にはオンタデの他、イブキジャコウソウの群落がある。展望と花を楽しんで、しばし休憩する。

展望地から硫黄岳(左奥)と
天狗岳を望む
展望地からミドリ池を俯瞰

展望地から先に進むと、樹林を抜けて、再び広大な砂礫地に出る。植生の保護のため、電気柵で囲われている。今はオンタデがポツポツ咲いているくらいだが、コマクサの葉っぱが散見されるから、もう少し早く来れば咲いているところを見ることができたかも。

イブキジャコウソウ
砂礫地に出て天狗岳を望む

砂礫地の幅広い尾根を下る。右手には中山の岩壁と稲子岳の間の大きな凹地があり、どういう成り立ちなのか、不思議な地形だ。樹林帯に入って急降下、小さな岩場を下る。

オダマキの仲間?
→ハナイカリと判明
中山峠との鞍部に下る

中山峠との鞍部に下り、樹林に覆われた岩石帯の踏み跡を辿ると、崩壊地に突き当たる。急斜面に岩角が新しく鋭い巨石が山積し、ここは落石に要注意。崩壊に沿って少し下り、テープの目印に従って崩壊地を横断する。さらに樹林をトラバースすると、ミドリ池から中山峠への登山道の途中に出る。ここには「⚠︎注意 この先、稲子岩壁ルートにつき、関係者以外進入ご遠慮ください。」との警告看板がある。

崩壊地を横断
登山道との合流点の警告看板

登山道を中山峠に向かう。ここは今日一番の急登。針葉樹林帯をジグザグに登る。最後は草に覆われたガレを登って、中山峠に着く。峠を越す道は木道となり、黒百合平へ緩く下っている。

中山峠へ登山道を急登
中山峠

小休憩したのち、天狗岳へ向かう。天狗岳登山のメインルートらしく、ハイカーさんの数が格段に増える。樹林帯と岩石帯が混ざる尾根道を登る。日の当たるザレにはトウヤクリンドウがたくさん咲いている。行く手に東天狗と西天狗の双耳峰を望み、登山道を歩くハイカーさんが点々と見える。右手には溶岩台地が広がり、黒百合平から天狗の奥庭を経由して東天狗に登る道が眺められる。あちらの道も人影が多い。

東天狗(左)と西天狗を望む
岩石の多い尾根道を登る

傾斜が増した尾根を登り、黒百合平からの登山道を合わせる。岩峰を右から巻き、左に切れ落ちた崩壊斜面を見て最後の坂を登ると、東天狗の頂上に着く。

タカネオトギリ
すりばち池・黒百合平分岐
岩峰を巻いて東天狗への登り
東天狗頂上

頂上はハイカーさんで大賑わい。雲が出て展望は遮られてしまったが、360度に開けた頂だ。振り返ると、垂れ込めた雲の下に稲子岳が見える。ここには長居せず、すぐに天狗岳(西天狗)に向かう。

東天狗から岩峰を振り返る
東天狗から稲子岳・ミドリ池を俯瞰

雲が切れて姿を表した西天狗に向かって、緩く弛んだ稜線を歩く。麦草峠から6時間以上歩いて来たので、最後は少々疲れを感じつつ頂上に登り着く。

天狗岳(西天狗)に向かう
天狗岳頂上

天狗岳頂上は低いハイマツに囲まれた広場となり、三角点標石と風化した石仏、石碑がある。こちらの頂もハイカーさんで大賑わい。広場の片隅に腰を降ろして昼食にする。まずはレトルト鯖味噌煮をつまみにノンアルで喉を潤し、カップ麺の酸辣湯麺を食べる。これ、酸味が効いて、夏バテで食欲減退気味でも美味しく食べられるな。

食事の間に雲の切れ間が広がり、展望が開けてきた。南には根石岳や大きな台形の山容が特異な蓑冠山(みかぶりやま)が眺められ、二山の鞍部には根石岳山荘も見える。その奥には、巨大な爆裂火口壁を巡らせた硫黄岳が雲間に見え隠れする。一方、北は青空が広がって、蓼科山まで遠望される。今日を含む最近3回の山行で、天狗岳〜蓼科山の稜線が踏破したルートで繋がるから、感慨深い。

天狗岳より根石岳と蓑冠山
奥に硫黄岳を望む
天狗岳より蓼科山を遠望

休憩で元気を回復。展望を楽しんだのち、天狗岳の山頂を辞して東天狗に戻り、黒百合平への道を下る。天狗の奥庭の溶岩台地やすりばち池を眺め渡し、黒百合ヒュッテの屋根も見える。展望の良い道だが、岩石帯の下りなので足元は常に要注意、気が抜けない。

トウヤクリンドウ
天狗の奥庭へ下る

ひとしきり下って、少し登り返すと「天狗の奥庭上」の道標がある。ここから溶岩台地上の道となる。振り返ると、東天狗に向かって岩石帯が延びる。あそこを下って来て、さらにこの先、天狗の奥庭と称する岩石帯が続くから、なかなか難儀なルートだ。すりばち池に近づいて、岩石の丘に囲まれた水面を見おろす。自然の庭園の景観が素晴らしい。

東天狗を振り仰ぐ
すりばち池と中山を望む
岩石帯の道が続く
すりばち池

すりばち池を半周した辺りで一休み。眼下に黒百合ヒュッテが見える。振り返ると池越しに仰ぐ東天狗と西天狗の眺めが、これまた素晴らしい。

すりばち池から東天狗・西天狗を望む
黒百合ヒュッテを見おろす

黒百合平へ下ると、黒百合ヒュッテの前は休憩のハイカーさんで大賑わい。一番搾り(生)の立て看に目を引かれるが、ここで飲む訳には行かない(^^;)。中山峠への道はキャンプ場の狭い広場を突っ切って、奥の木道に入る。キャンプ場には10張程のテント有。人通りが絶えるまでは、ちょっと騒がしそうな場所だ。

黒百合ヒュッテ
中山峠への木道

中山峠までは平坦な木道が続き、ほとんど登りなし。程なく峠に着き、山と高原地図を取り出して、麦草峠までの所要時間と休憩ポイントを確認する。高見石小屋まで1時間半、そこから麦草峠までさらに1時間で、なだらかな道だから、あとは楽だ。

峠から少し登った地点に「見晴らし台」の標識があり、樹林の間から稲子岳と南壁が眺められる。右側は稲子岳との間の凹地に切れ落ちる急斜面で、その縁を緩く登る。ニュウへの道を右に分け、広く平坦な針葉樹林帯の中の道を進む。岩石帯を緩く登り、樹林に入ると中山頂上に着く。眺めは全くないので通過。

見晴らし台から稲子岳を望む
断崖の縁を辿る
ニュウ分岐
中山頂上

頂上から4分程で、開けた岩石帯となった中山展望台に出る。縞枯現象が目立つ丸山の向こうに蓼科山や北横岳が眺められる。また左(西)に少し行くとケルンがあり、茅野側を俯瞰する眺めが良い。

中山展望台
中山展望台より蓼科山を遠望

中山展望台から針葉樹林中をほぼ真っ直ぐに下る。傾斜は緩いが、例によって岩が多くて歩き難く、展望もないので、この下りはとても長く感じる。ようやく下り切って、少し登り返すと高見石小屋に着く。

中山から樹林帯の長い下り
高見石小屋

高見石小屋の前もハイカーさんで大賑わいだ。テラスのテーブルではビールを飲んでいるグループも。名物の揚げパンでも買っておやつに食べようかと思ったが、もう終わっている雰囲気だったので、ペットボトルのオレンジジュース(300円)を買って飲む。冷たくて一息つけた。

小屋の右脇にザックを置き、カメラだけを携行して、巨岩が積み上がる高見石に登る。ここの岩の大きさは今日一番。天辺からは白駒池を間近に俯瞰し、佐久平を遠望する。

高見石に登る
背後の山は丸山
高見石より白駒池を俯瞰

高見石小屋に戻り、今日最後のピークの丸山に向かう。渋の湯への道を左に、続いて白駒池への道を右に分ける。XCツアースキーコースの古い看板があるが、樹林帯の中なのに滑るところがあるんだろうか。一直線の急坂を頑張って登ると「丸山頂上」の標識と石標に着く。しかし、その奥の登山道が右折する地点にも石標があり、これが三角点標石らしい(未確認)。まあ、平らな頂だし、僅かな距離なので、どっちが頂上でもいいか(^^;)

丸山へ樹林帯の登り
丸山頂上?

丸山から急な斜面をジグザグを切って下り、傾斜が緩むと「丸山の森」の標識がある。緩く登って平坦なピークを越え、麦草峠へ向かって下る。笹原が現れ、正面に茶臼山が見えてくれば、麦草峠へはあと僅か。麦草ヒュッテの前を通って、駐車場に帰着した。11時間半の行程で、今回もたっぷり一日の山歩きを楽しんだ。八ヶ岳連峰は車で来やすくなったし、根石岳、阿弥陀岳、編笠山など未踏の山もまだあるので、また来よう。

急斜面をジグザグに下る
笹原に出れば麦草峠は近い

帰りは前回に続いて八峰の湯に立ち寄る。ゆったりと湯船に浸かって汗をさっぱり流し、帰宅の途につく。今回は高速の渋滞はなく、順調に走って帰桐した。