権現岳(八ヶ岳)

天気:
メンバー:T
行程:天女山駐車場 5:40 …天の河原 5:55 …前三ッ頭(2365m) 7:45〜7:55 …三ッ頭(2580m) 8:30〜8:35 …権現岳(2715m) 9:20〜10:40 …三ッ頭 11:20 …前三ッ頭 11:45 …天の河原 13:05 …天女山駐車場 13:15
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

この週末の天気は晴れとの予報。梅雨入り直前の貴重な好天になりそうだし、それなら大展望が楽しめる高峰に登っておきたい。という訳で、南八ヶ岳の権現岳(標高2715m)に天女山から往復して登る計画を立てて、出かけてきました。

桐生を深夜3時頃に車で出発。八千穂高原ICで高速を降り、R141、八ヶ岳高原ラインを経由して、朝5時過ぎに天女山駐車場に到着する。日は既に高く、穏やかに晴れて青空が広がる。20台分程の駐車スペースには東京、神奈川辺りのナンバーの車が多く、もう7、8割方埋まっている。隣の車のハイカーさんと話をすると、同じく権現岳を往復する予定とのこと。

権現岳に向かう前に、駐車場からすぐの天女山に立ち寄ろう。途中にWCあり。頂上と言っても平坦な尾根上の広場で、三角点標石、山名を刻んだ大きな石碑、ベンチや東屋がある。樹林に囲まれて、展望はない。


天女山駐車場


天女山頂上の石碑

駐車場に戻り、権現岳への登山道に入って、笹とまだ緑が若いカラマツに覆われた高原情緒のある尾根を登る。林内には点々とレンゲツツジが咲く。


カラマツと笹の尾根


レンゲツツジ

程なく「天の河原」の標識のある尾根上のザレに着く。樹林が開けて南アの展望が広がるが、霞がかかって写真では判然としない。「海抜1600米」 「紀元2600年記念 甲斐八ヶ岳會」と刻まれた石柱がある。以降、標高100m毎に同種の石柱が置かれている。後日検索すると「八ヶ岳の標高石柱(2022-07-16追記:リンク切れ)に建てられた経緯が詳細に記されていて、興味深い。


天の河原


天の河原「海抜1600米」石柱
(帰りに撮影)


天の河原から南ア方面を望む


「海抜1700米」石柱

再び笹が下生えの樹林に入り、緩く登る。「海抜1700米」石柱を過ぎると樹林が開けて、行く手に高々と前三ッ頭と三ッ頭を仰ぐ。権現岳はその右奥にさらに高く聳え、これはなかなか登り応えがありそう。ここから権現岳へは、約1000mの標高差がある。


(左から)前三ッ頭、三ッ頭
(右に少し隠れて)権現岳


サラサドウダン

「海抜1800米」石柱は鬱蒼と繁る針葉樹林の中にあり、「賛助 千塚小學校」「開世務」と刻まれている。後日調べると千塚小学校は甲府市にあり、「開世務」は教育勅語の一節「進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ」から採ったものらしい。


「海抜1800米」石柱


針葉樹林と笹原を緩く登る

徐々に傾斜が強まり、「標高約2000m」の木の看板を過ぎるとつま先上がりの急坂の登りとなる。坂の途中に「海抜2000米」石柱がある。


標高約2,000mの標識


「海抜2000米」石柱

笹原の切り開きは新しく、最近、登山道が整備されて付け変えられたようだ。きつい登りが続くが、急な分だけ高度がグングン稼げて、その点は爽快だ。


笹原の新しい切り開きを急登


イワカガミ

やがて尾根の上に登り着く。岩場にイワカガミが咲き、「ここが一番きつい もう少しで前三ツ頭が見える」という道標がある。ようやく傾斜が緩んだ尾根の上を登って行くと、左斜面が広大なガレとなって一気に展望が開ける。行く手には先行するハイカーさんと前三ッ頭のピーク、左手には南アの仙丈ヶ岳から鳳凰三山にかけての連山が眺められる。


ガレ場に出て前三ッ頭へ登る


「海抜2200米」石柱

樹林に入り、再度、ガレた尾根上に飛び出たところが前三ッ頭の頂上。溶岩が点在し、三角点標石がある。ここの展望はさらに素晴らしい。行く手に三ッ頭を仰ぎ、左に目を転じると、釜無川の谷を隔てて鋸岳、仙丈、甲斐駒、北岳、鳳凰三山が連なる。甲斐駒の中程に見える白い所は、先日訪れた日向山の雁ヶ原のようだ。南アの右奥には中アの連山を遠く望む。振り返れば、まだ雪を戴く富士山が靄の上にフワッと浮かんで眺められる。


前三ッ頭頂上


富士山を遠望


南アを望む


中アを遠望

水を飲んで休んだのち、ガレた尾根を登って三ッ頭に向かう。ガレの上端からシラビソなどの針葉樹林帯に入って緩く登る。


ガレ場の上端から右上へ


三ッ頭への登り

ハイマツが現れると、左から小泉口登山コースを合わせる。左前方に、お椀型の優美な山容で岩塊に覆われた斜面を見せる編笠山が眺められる。


小泉口分岐


編笠山(左)と西山を望む

樹林を抜けて三ッ頭の頂上に着くと、正面に権現岳、阿弥陀岳、赤岳が鼎立してドーンと姿を現す。これは素晴らしい山岳景観だ。頂上には頭が欠けた「2534米」石柱や「南無妙法蓮華経」「維時昭和廿五年八月八日」と刻まれた石碑が建つ。休憩中のハイカーさんが数組いて、その中のお一人に話を伺うと、昨晩は青年小屋泊で、今朝、権現岳を越えてここまで来て、観音平に下ること。ここで権現岳の眺めは最後と、名残惜しんで居られた。


三ッ頭頂上の石碑


三ッ頭から権現岳(左)
阿弥陀岳、赤岳を望む

三ッ頭から、権現岳や赤岳を眺めながら、ハイマツ帯を緩く下る。ダケカンバ林の鞍部から権現岳への登りにかかる。すぐにハイマツ帯となり、終始展望が開けて、権現岳の小尖峰を仰ぎながらぐんぐん登る。大勢のハイカーさんと交差。途中に鎖場があり、降りてくる学生さんグループに遭遇する。初心者らしき女の子が鎖場の下りに苦戦していて、仲間の助言でようやく降りることができた。上りは鎖が不要なレベルで容易だ。


権現岳に向かう


三ッ頭と権現岳の鞍部


権現岳への登り


権現岳の鎖場
(帰りに上から撮影)

頂上は東側が切れ落ちた岩峰となり、すぐ手前に桧峰神社の石祠がある。登山道は岩峰の西側を巻いており、真の頂上は岩峰の上で狭いので、登頂の順番待ちの列ができている。権現岳に登るのは、1984年以来2回目。前回は吹き飛ばされそうな強風のため、岩峰には登っていない。列に加わり、頂上で自撮りする人やRICOH THETAで360度写真を撮る人を眺めながら順番を待つ。THETAはちょっと欲しいかも。岩峰の天辺には山名板の他、鉄剣、金毘羅大権現の石碑がある。写真を撮ってすぐに岩峰を降りる。


桧峰神社と権現岳頂上の岩峰


権現岳の山名標識


権現岳頂上へは順番待ち


権現岳頂上

頂上付近は狭いので、赤岳へ少し向かって、下りの長い梯子の手前のピークで大休止。少し早いが、昼食とする。360度大展望を楽しみながら飲む缶ビールは格別。遠くは靄がかかっているが、北東には諏訪湖まで見える。鯖味噌煮とカップ麺を食べ、1時間ちょっと、のんびり過ごす。


梯子上端から
赤岳への縦走路を俯瞰


阿弥陀岳と赤岳を望む


権現岳頂上を望む


ギボシと諏訪湖を望む

下山は往路を戻る。少し雲が増えて、南アの北岳辺りはすっかり隠れてしまったが、その他はまだまだ良い眺めだ。展望を楽しみながら、ゆっくり下る。


編笠山と南アを望む


権現小屋とギボシを望む


ミヤマキンバイ


権現岳の下りから三ッ頭

三ッ頭頂上で権現岳と赤岳が並び立つ最後の景観を振り返る。雲の陰影がいい感じだ。


三ッ頭から権現岳と
赤岳を振り返る


三ッ頭からの下り

小泉口登山コースを右に分け、前三ッ頭に下る。広大なガレ場からの山麓の眺めが良い。前三ッ頭を過ぎ、ガレた尾根を下って樹林帯に入り、山麓に向かって急降下する。下りは楽だが、標高が下がるにつれて暑くなる。ハルゼミの声も盛んに聞こえてくる。


前三ッ頭からの下り


山麓に向かって急降下

標高2000mの標識を過ぎると傾斜が緩み、あとは高原散歩だ。往路で交差した学生さんグループに追い付く。鎖場で苦労していた女の子は脚を引き摺って辛そうに歩いていた。権現岳は、初心者にはかなりハードな山だったかもなあ。他人事ながら少し心配になった。

天の河原に着くと、ここまでは観光客もちょっと脚を延ばして登って来ている。一下りで天女山駐車場に帰着。天候と展望に恵まれて、非常に快適な山歩きができた。


天の河原から茅ヶ岳を遠望


天女山駐車場に下り着く

帰りは甲斐大泉駅近くの甲斐大泉パノラマの湯に立ち寄る(820円)。露天風呂からのパノラマは残念ながら霞がかかっている。そう混んでなくて、ゆったり湯船に浸かる。途中のドライブインで土産に五一ワイン、千曲錦を買ったのち、桐生への帰途についた。