甲武信ヶ岳〜十文字峠

天気:
メンバー:T
行程:毛木平駐車場 4:35 …ナメ滝 6:20 …水源地標 7:20 …甲武信ヶ岳(2475m) 8:10〜8:25 …三宝山(2483m) 9:15 …十文字峠 11:50〜13:05 …毛木平駐車場 14:25
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

桐生を深夜に車で出発。八千穂高原ICで高速を降り、真っ暗な川上村を走り抜けて、未明に毛木平駐車場に着く。駐車場の少し手前から路側に転々と駐車があったが、駐車場には空きがある。歩き出す頃には空が白んで、武信国境辺りの稜線が見える。天気は上々だ。

今日は千曲川源流から甲武信ヶ岳に登り、十文字峠を経由して周回するポピュラーなコースを歩く予定。ネット情報によると、十文字峠でシャクナゲが見頃を迎えているとのことで、楽しみだ。


毛木平駐車場


カラマツ林の中の林道を歩く

カラマツ林の中の林道を少し歩くと、「三峯山大権現」の石碑と石像があり、「左ハ三峯山 右ハ山道」と刻まれている。かつての十文字峠道はここで左に向かっていたようだ。現在の分岐はもう少し林道を進んだ先にある。

千曲川の瀬音を聞きながら林道を歩くと、大山祇神社の小さな木の鳥居と社、「千曲川源流 4km」の道標があり、この辺りからコメツガなどの針葉樹林の中の山道となる。

谷が狭まり、岩壁の基部を進む。再び谷が広がると、大岩の上に慰霊碑がある。碑文によると、昭和13年9月の集中豪雨に因る山津波のため、この地で遭難殉職した林業従事者9名の慰霊のため、昭和37年に建てられたものとのことである。


三峯山大権現


大山祇神社


千曲川源流 4km


慰霊碑

慰霊碑から、しばらく道は左岸の少し高い所を進む。谷間にも朝日が差し込んで来て、新緑を照らす。渓流沿いの道となり、苔むした転石の間を滔々と流れる千曲川を眺めながら緩く登る。


山道を朝日が照らす


千曲川に沿って歩く

やがてナメ滝に到着。一枚岩の上を優美に流れ落ちる傾斜の緩い滝だ。上流に向かうと徐々に水流が穏やかになり、ダケカンバやシラビソに覆われた緩やかな谷を詰めて行く。


ナメ滝


源流の雰囲気

木橋で右岸に渡ると「至千曲川源流 あと0.9km」の道標がある。鬱蒼と繁る針葉樹林の中、サラサラと流れる小川を左右に渡り返しながら緩く登ると、「千曲川信濃川水源地標」の標柱の立つ広場に着く。ハイカーさん数組が休憩中。水源は沢に下ったすぐの所にあり、木の根の下から水が湧き出している。コップで掬って飲むと冷たくて美味しい。日本で一番長い川(全長367km)がここから始まると思うと、感慨深い。


千曲川信濃川水源地標


千曲川の水源

水源地標から苔むした針葉樹林を登り、甲信国境稜線の上に着く。稜線も針葉樹林に覆われて、如何にも奥秩父らしい風情。


稜線に向かって登る


甲信国境稜線に登り着く

甲武信ヶ岳に向かって稜線を辿ると、右斜面がガレとなって展望が開ける。国師ヶ岳から黒金山にかけての稜線や鶏冠山が眺められ、甲武信ヶ岳の頂上も仰ぐことができる。


針葉樹林の稜線を登る


甲武信ヶ岳を仰ぐ

ガレた稜線を登って、甲武信ヶ岳の頂上に着く。ハイカーさん数組が休憩中。北から南西にかけて展望が開け、なだらかで大きな三宝山、登って来た千曲川源流域、小川山、五丈石を戴く金峰山、国師ヶ岳、黒金山など、奥秩父西部の主要な山岳が一望できる。また、遠くには八ヶ岳や甲斐駒、北岳、富士山が雪を残して白く薄らと認められるが、靄がかかって写真では判らない。


甲武信ヶ岳頂上


甲武信ヶ岳から三宝山を望む


甲武信ヶ岳から国師ヶ岳(左)
金峰山と小川山を望む


甲武信ヶ岳から千曲川源流域を俯瞰

甲武信ヶ岳に登るのは、1976年以来2回目。前回は戸渡尾根を登って甲武信小屋に泊まり、甲武信ヶ岳から十文字峠を経て梓山に下った。頂上からの大展望は印象に残っているが、ここからのコースの様子は(6年前にも訪れた十文字峠を除けば)トンと覚えていないので、以降も初めて来たのと同じ感覚で楽しめること間違いなし(^^;)

樹林に覆われた北斜面を下り、鞍部から緩く登る。シャクナゲ林が現れると、樹林の中にぽっかりと開けた広場の三宝山頂上に着く。三宝岩を通り過ぎてしまったので、少し引き返すと、シャクナゲ藪を切り開いた細道が分岐し、これを辿って三宝岩に登る。


三宝山に向かってガレ道を下る


三宝山への登り

巨石が積み上がった三宝岩は、千曲川源流域の深い樹林の上に屹立して、天辺からの展望は甲武信ヶ岳に勝るとも劣らない。特に東に延々と連なる奥秩父主脈は、まだ登っていない山も多く眺められて、歩いて見たくなる。


三宝岩に立ち寄る


三宝岩から甲武信ヶ岳(右)
と木賊山(左奥)を望む


三宝岩から東へ奥秩父主脈を望む
手前から破風山、雁坂嶺


三宝山頂上

三宝山の頂上は展望がないので、休まずに通過。シダや苔が下生えの針葉樹林の中のダラダラと長い下りとなる。下り着いた鞍部には尻岩と呼ばれる巨岩がある。確かにお尻のような縦の割れ目があり、奇観だ。


針葉樹林をダラダラと下る


尻岩

ここから急な登りとなり、岩場の多い斜面を登って、小ピークを左から巻く。さらに上りが続き、梯子を登って岩稜の上に出る。この岩稜も眺めが良く、振り返ると三宝山がゆったりと高く大きい。また、行く手には武信白岩山の切り立った岩峰が見えてくる。


岩の多い斜面を登る


岩稜に架かる梯子


三宝山を振り返る


武信白岩山を望む

岩峰を左から巻くと「武信白岩山→」の道標がある。前回の山行の記録には「登るのに一苦労した」と書いてあって、ここから武信白岩山に登ったようだが、全然記憶にない(^^;)。現在は残念ながら登頂禁止となっている。

稜線を辿ると、ふっくらとした花芽のシャクナゲが現れる。秩父側が岩壁となり、荒川源流域の眺めが開ける。ここは陽当たりが良いので、花芽が開いて綺麗に咲いている。


シャクナゲが現れる


荒川源流域を俯瞰

樹林に覆われた岩稜を辿り、短い急坂を上がって大山に登る。頂上は樹林から突き出た東西の小岩峰に分かれていて、西のピークからは川上村の白いシートに覆われたレタス畑を俯瞰する眺めが良い。東のピークが大山頂上で、十文字峠越えの稜線や、遠く両神山のギザギザの頂上稜線を眺める。振り返れば、三宝山が既に遠ざかって高い。


岩稜を辿る


大山を望む


大山から川上村を俯瞰


大山から両神山(左奥)を遠望


大山から三宝山を振り返る


大山の下りの鎖場

大山から鎖場を下って、樹林に入る。どんどん下って、シャクナゲが現れ始めると、十文字峠に着く。十文字小屋のまわりのシャクナゲはピークを少し過ぎたくらいだが、一面に咲いていて見事だ。シャクナゲ目当てのハイカーさんも多く、あちこちで花を楽しみながら休憩中。まずは昼食にしよう。今日は下山時間が短いのでノンアルを飲み、鯖味噌煮とカップ麺の鴨なん蕎麦を作って食べる。


シャクナゲ林を下る


十文字小屋

昼食後、峠からかもしか展望台を往復する。途中で枝道に入ると、針葉樹林の中に「乙女の森」と呼ばれるシャクナゲ林がある。木組みの展望台があり、その上に登って花を眺めることができる。満開のシャクナゲがみっしりと咲いて、これ程の密度と広がりでシャクナゲを見たのは初めて。実に見事だ。


乙女の森


かもしか展望台からの眺め

展望台はさらに小沢を渡った先の尾根末端の岩場だ。途中もシャクナゲが多い。展望台からは、今朝歩いた千曲川源流の谷を俯瞰し、左に三宝山を高く仰ぐ。ここでもハイカーさんのグループが休憩中。一通り写真を撮って峠に引き返し、小屋の周りのシャクナゲをもう一度鑑賞したのち、毛木平への下山にかかる。


シャクナゲ


小屋周辺のシャクナゲ

山腹をトラバースする道は、古の峠道らしく歩き易いが、意外とアップダウンがある。尾根を乗り越す地点に「梓山→」の道標があり、ここで右折して「八丁坂」と呼ばれる長い急斜面を下る。ここも丁寧にジグザグが切られていて歩き易いが、往時は馬も通ったのだろうか。それはなかなか大変そうだ。登って来るハイカーさん数組と交差する。


毛木平へ下る


山腹をトラバース


八丁坂


コミヤマカタバミ

やがて沢に下り着くと「十文字まで1時間 水場」の標識がある。ここから水量の少ない沢に沿って下る。途中にも湧き水の水場があり、冷たい水で喉を潤す。

水場の5分程先の道端、杉大木の根元に五里観音の石像がある。五里というのは武州側から数えての呼称だろう。一里から四里までの観音は十文字峠道を辿りながら訪ねたことがあり、ここの観音が最後の一体になるから是非見たかった。信州側から数えれば一里観音となる。石像には「元治元年子六月」「自梓山一里六丁」等と刻まれている。


沢に沿って下る


五里観音
元治元(1864)年子六月

木橋で沢を渡り、平坦なカラマツ林を歩く。千曲川本流を立派な「千曲川源流狭霧橋」で渡って往路の林道に合流すると、毛木平駐車場はあと僅かの距離だ。10時間弱の行程で駐車場に戻る。千曲川源流遊歩道は緩くて楽だったが、復路の十文字峠への稜線はアップダウンが大きく、思ったよりも大変だった。


千曲川源流狭霧橋


毛木平駐車場に戻る

帰りは海ノ口和泉館に立ち寄る。GWに立ち寄ったときは大賑わいだったが、この日は浴室内に1〜3人というところ。これが普通で落ち着ける。汗を流してサッパリしたのち、八千穂ICから高速に乗って、桐生への帰途についた。