医王山
金沢に所用があり、ついでということで、所用後の金土日の3日間で石川県のいくつかの山に登ることを計画した。石川県の山については、大昔に白山に登ったことがあるだけで他は全く知らないから、まずはガイド本を参照。『新・分県登山ガイド[改訂版]石川県の山』を読んで、一座目は金沢近郊にあって公共交通機関でアプローチでき、かつ、日本三百名山の一つでもある医王山(いおうぜん)を選んで、登ってきました。
なお、桐生を発つときのドタバタでうっかりしてGPSを持って行くのを忘れたので、今回の石川県の山歩きのルート地図はいずれもGPSの軌跡ではなく、手書きです。
金曜日の朝、所用の間に滞在していたホテルをチェックアウトし、登山以外の荷物を金沢駅のコインロッカーに預け、出先の山歩きの軽装(トレランシューズ+布製ザック)で東口のバス乗り場から7:52発「医王山スポーツセンター前」行きの路線バスに乗る。平日の朝なので通学のJKが多く、ハイカーさんは皆無。
バスは香林坊(北陸随一の繁華街)や兼六園(言わずと知れた日本三名園の一つ)の前を通り、途中でJKが降りて乗客は数人となる。市街地を抜けて医王山山麓のなだらかな丘陵を上がり、1時間弱で終点の医王山スポーツセンター前に到着、下車する。
スポーツセンター前の車道を直進すると、すぐに見上(みあげ)峠に着く。「医王山総合案内板」があり、今日の登山ルートを再確認。ここから登山道と林道菱池広谷線が並行して医王山に向かい、マイカーならば林道をさらに奥に入った地点から登ることもできるが、私はもちろんここから登山道に入る。
樹林の中の登山道を緩く登る。道型ははっきりしているが、マイカーで奥まで入って登るハイカーさんが主流で、こちらはマイナーなのか、踏まれている感じがあまりしない。道は雨水で抉れ、蜘蛛の巣が多くて閉口する。杉林の平坦な尾根を辿り、医王の里のオートキャンプ村とバンガローを通り抜ける。平日なので、キャンプ村にもひと気はない。
再び樹林の中の登山道に入ると、道端に大日如来の石仏がある。傍の案内板によると、見上峠〜白兀山(しらはげやま)の間の登山道には、寛政年間に紙屋嘉兵衛が行方不明になった娘の慰霊のために建てた十体の石仏があるとのこと(今回は、二、三体を見た)。
右下に杉林を透かして医王の里の菅池を見ながら下ると林道の三叉路に出る。林道を横切り、「西尾平→」の道標に従って、良く刈り払いされた登山道に入る。
登山道は左山腹の緩やかな斜面をトラバースして続く。途中、水場あり。平坦な尾根上に出て進み、再び林道菱池広谷線に接する地点に西尾平の標識があり、駐車場と休憩所、WCがある。
西尾平から再び登山道に入って、なだらかな尾根を辿る。紙屋さんの二体目の石仏を過ぎると「しがらくび」の道標があり、すぐ右下を林道菱池広谷線が通っていて、ベンチや駐車場もある。多分ここに車を置いて登り始めるハイカーさんが多いのではないかと思う。
ここから樹林の中の急登となり、ひとしきり登って小兀という小さなザレ地に出る。展望が開け、振り返れば辿って来たなだらかな尾根を俯瞰し、金沢市街と日本海を遠望する。
灌木と笹の中を緩く登ると白兀山の頂上に着く。普通はこの辺りを医王山と称しているとのこと。頂上にはベンチや石仏を祀る祠、展望台がある。低い樹林に囲まれているが、展望台に上がれば360度の展望が得られ、金沢市街、医王山最高峰の奥医王山、遥か遠くに白山や剱岳の山影を望む。今日はもちろん奥医王山まで行く計画だ。
白兀山からさらに緩く稜線を辿ると、左にナカオ新道(初心者不向き)を分ける。やがて右の樹林が切れた開放的な稜線となり、奥医王山がスッキリと眺められる。眼下の山腹を横切る車道は林道菱池広谷線だ。
ちょっと高山的な雰囲気の稜線が終わると樹林帯の下りとなり、林道菱池広谷線に出る。すぐ右が夕霧峠(菱広峠)で、無国籍風の良くわからないデザインの展望台がある。せっかくだから登ってみると、西側の金沢市街方面と東側の砺波(となみ)平野との眺めが良い。また、東斜面には峠の直下までIOX-AROSA(イオックスアローザ)スキー場が広がる。ということは、積雪期でも医王山に登るのは簡単そうである。
夕霧峠から奥医王山への登山道に入ると、いきなり擬木の階段の一直線の急登となる。浄土坂といい、288段あるらしい。
浄土坂を登り切って着いた小平地には「見返りの大杉」というそんなに大きくない杉の木がある。一息ついて振り返ると、ところどころに草原を交えた白兀山付近の稜線がいいアングルで眺められる。
樹林に覆われた稜線を辿り、小鞍部に下ると、左に龍神池がある。泥と藻に覆われてあまり綺麗な池ではないが、結構大きい。
さらに小さなアップダウンをこなして、奥医王山の頂上に着く。ご夫婦のハイカーさんが1組休憩中。ケルンや立派な山名標識、ベンチ、一等三角点標石がある。樹林が展望を遮るが、鉄骨組みの展望台があり、梯子で上がれば梢越しに360度の展望が得られる。地元の常連の方と思しきハイカーさんによると、最近天気が悪く、剱岳まで見えるくらいの良い展望は久しぶりだそうである。それはラッキー。やはり日頃の行いは大事だな(^^)
ベンチでパンとペットボトルのお茶で昼食を済ませ、下山にかかる。西に尾根を下って周回するコースもあるが、医王山スポーツセンター前からの帰りのバス時刻は14:15と17:04だから、14:15には間に合わせたい。ということで、安全策をとって夕霧峠から林道菱池広谷線を下る。これはこれで、林道歩きは展望が良いというメリットもある。
白兀山の山腹をトラバースして林道を下る。終始、谷を隔てて深い緑に覆われた奥医王山が眺められる。しがらくびからは白兀山を仰ぐことができ、駐車場には3台の車がある。やはりここから登るハイカーさんが多いようである。
西尾平を過ぎ、医王の里に入る。総合案内所に自動販売機があり、冷たいジュースを買って飲んで一息つく。林間広場から南方の白山方面の奥深い山地を眺めると、綺麗な三角錐の山が目を惹く。後日調べると、大門山(だいもんざん、1572m)らしい。これも三百名山で、今回登る山の候補にも挙げたが、金沢市側からの登山道がないので断念した山だ。
さらに林道を下って、バスの発時刻の1時間前には医王山スポーツセンターに着いてしまった。体育館ではバスケの練習中らしく、ボールが弾むダムダムという音が響いてくる。
バス停には待合所の類がないので、周辺をウロウロして時間を潰す。バスは定時で出発。金沢駅に戻り、コインロッカーから荷物を出して、JR北陸本線普通列車で今晩の宿泊地の大聖寺(だいしょうじ)駅に向かった。
(石川県の山2日目の大日山に続く。)