飯能アルプス

天気:のち
メンバー:T
行程:正丸駅 5:17 −(西武線)− 飯能駅 5:46 …天覧山(197m) 6:35 …多峯主山(271m) 7:10 …天覚山(445m) 9:45〜9:55 …大高山(493m) 10:55〜11:00 …子の権現 13:10〜13:40 …天目指峠 14:20 …正丸駅 15:40
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

関東甲信地方は6月7日頃に梅雨入りした(気象庁速報値)が、この週末の天気は土曜日がそこそこ良さげ。午後にはにわか雨が降るところもあるとの予報なので、高山の登山は止めて低山でトレーニングを兼ねて長距離を歩くことを考え、以前ハイトスさんが歩かれた奥武蔵の「飯能アルプス」を思い出す。低山を歩くには既に暑い時期だが、まだ真夏じゃないし、大丈夫だろう、とたかをくくって出かけたところ、当日は各地で最高気温が30℃を超える真夏日となり、暑さと長い行程にヘロヘロとなって歩いてきました。

桐生を深夜2時半に車で出発。秩父から正丸トンネルを抜けて、西武秩父線正丸駅に4時20分頃に着く。今日はここの駅前駐車場(24時間まで500円)に車を置き、5:17発の始発で飯能駅に移動。飯能アルプスを縦走して、ここに戻ってくる計画である。早朝なので駐車は(月極の車以外は)ないが、すぐに一台来て、ソロハイカーさんが出発していった。

私の方は始発まで時間があるので、のんびり準備を済ませて、予定時刻の電車に乗車。車内でぐっすり眠って、終点の飯能駅に着く。駅ビルが大きくてびっくり。北口から市街に出、近くのコンビニで買い物してから、天覧山に向かう。市街地内には要所に案内標識があり、コースは分かり易い。

正丸駅前駐車場
飯能駅北口
駅前の観光コース案内図
天覧山登山口

歩いている間にグングン気温が上がっていくのが感じられ、飯能中央公園を通り抜けて天覧山登山口に着く頃にはTシャツ1枚でも暑い陽気となる。湿度が低めなのと、登山口からは木陰に入るのが救いだ。車道を登り、中段の広場(WC有)から山道に入る。

途中、十六羅漢像を通る。岩場にたくさんの仏像が置かれている。五代将軍綱吉が重病に伏した際、天覧山南麓にある能仁寺の泰基和尚が江戸城に召されて病気平癒の祈願を行い、快癒したことから、綱吉の生母桂昌院により寄進された、という由緒をもつそうな。

岩場の山道を登って、天覧山の頂上に着く。展望テラスがあり、豊かな緑に接する飯能市街や関東平野を一望する。奥多摩では大岳山の凸とした山容が判別し易い。遥か遠くにはまだ白い富士山を望む。天覧山の名の由来は、明治天皇が山麓で行われた軍事演習をこの頂から統監したことに由来するとのこと。

十六羅漢像
天覧山頂上
天覧山から飯能市街の眺め
天覧山から富士山を遠望

天覧山から木の階段が整備された遊歩道を下って、夏草に覆われた谷間に着く。かつての水田の跡地で、このような谷間の田をこの辺りでは「谷津田」と呼ぶらしい(他の地域では谷戸、谷地という呼び名もある)。初夏の里山らしい風情が好ましいが、「マムシに注意」という看板があるのは怖い。

谷津田跡から再び山に入って、一直線の坂を木の階段で登る。ここは「見返り坂」といい、源義経の母・常盤御前が風景を振り返りながら登ったという言い伝えがあるそうだ。樹林に覆われて、この時期は展望は全くない。

谷津田跡を通る
見返り坂入口

やがて尾根上について、幅広く緩い歩道をしばらく辿る。左に雨乞池経由で多峯主山(とうのすやま)に至る道が分岐するので、そちらに進んでみる。山腹をトラバースすると、浅い窪地にある雨乞池に着く。結構深く溜まった水に藻が繁茂し、この暑さの中でも涼しさを感じさせる。古くは高龗(たかおかみ)、闇龗(くらおかみ)の神を祀り、旱天が続くと雨乞の祭りが行われたとのこと。

雨乞池分岐
雨乞池

雨乞池から多峯主山に向かうと、尾根の上に新しいバイオトイレ棟がある。尾根を絡んでジグザグに登ると多峯主山頂上に着く。

頂上は小広く、三角点標石と石経供養塔の石碑、ベンチがあって、四方の展望が開ける。来し方を振り返れば、緑に覆われて緩やかにうねる丘陵の先にもっさり盛り上がる天覧山と飯能市街が眺められる。奥多摩方面では大岳山と御前山の山容が大きく目立つ。行く先の多峯主山の西には、広大な住宅地が山上に開発され、その向こうに飯能アルプスの山並みが低く奥へと連なる。ベンチに座ってしばし休憩。強い日差しに肌がジリジリ焼ける。

多峯主山頂上
多峯主山から天覧山と
飯能市街を望む

天覧山から多峯主山にかけては公園のように良く整備された気持ち良いハイキングコースだが、ここから天覚山(てんかくさん)までの道程は宅地やゴルフ場の開発が迫り、少々怪しげでマイナーなコースだ。尾根道をバイオトイレまで戻り、その少し先の「久須美坂→」の道標から縦走路に入る。右側は草藪に覆われた宅地造成地で、金網フェンスに沿って細い山道を辿る。

縦走路入口
宅地造成地の迂回路を辿る

山道は尾根上を進んだのち、宅地造成地を迂回して左の谷に下って登り返す。再び左の谷に下ると、交通量の多い車道に出る。この地点には道標あり。「天覚山 久須美坂」の道標に従って車道を右へ、けやき並木の坂を登る。

尾根を迂回して谷を渡る
車道に出る

道標と「飯能アルプス 永田入口」と書かれた小さな案内板があり、ここから山道に入って尾根を辿る。右斜面は下生えが刈り払われた雑木林で、右側に広がる住宅地が木の間越しに眺められる。土曜のまだ朝8時だから、多くの家は内でのんびりしているだろう。

再び山道に入る
住宅地に沿って尾根を辿る

右に芝生の斜面が広がる山上公園を見て、尾根を登り上げると、278m三角点峰の頂上に着く。三角点標石(点名:久須美)と道標の他、ベンチやケルンがあり、ケルンの天辺に「永田山」の山名標がある。この名は山麓の町名「永田台」からとったのだろう。

永田山で縦走路は左折し、住宅地から離れて杉植林帯の尾根を進む。木の祠と「久須美山」という山名標のある小ピークを越え、少し下った鞍部が久須美坂だ。道標があり、左に久須美への山道が分岐する。

永田山(278m三角点峰)頂上
久須美山の祠

この先はアオキやシダが下生えの杉林の尾根道が続く。左にはゴルフ場があり、時々、ショットのインパクト音が微かに聞こえてくる。途中、「釜戸山入口」の道標があり、右へ山道が分かれる。変化に乏しく緩い尾根道をひたすら突き進む。標高が上がって、杉林の間から吹き抜ける風が涼しいのは助かる。

久須美坂
杉林とアオキに覆われた尾根道

やがてゴルフ場から離れて少し長い急坂に差し掛かり、登り上げて送電鉄塔を通過。尾根を辿り、車道が通じる東峠に下り着く。

一つめの送電鉄塔
東峠

道標に従って車道を少し左に辿り、「天覚山 0.8km」の道標から谷筋の山道に入って尾根に復帰。二つめ送電鉄塔があり、北面の眺めが開ける。緑濃い奥武蔵の山々に包まれた谷間には、東吾野駅周辺の市街が見える。

谷筋から縦走路に復帰
二つめの送電鉄塔から北面の展望

ここから少し大きな登りに取り付く。東吾野駅への山道を右に分けると急坂となって、天覚山頂上に登り着く。

天覚山への登り
天覚山頂上

頂上には三角点標石、山名看板の他にベンチがあり、東から南にかけて展望が開けて、休憩に適している。東には歩いてきた山並み(というか丘陵)が連なり、飯能市街は既に遠い。南には奥多摩の川苔山や蕎麦粒山辺りの山々を仰ぐ。ベンチに腰掛けて、展望を楽しみながら休憩。水分を補給するが、ペットボトルのお茶1Lしか持って来ていなくて、残量が心許ない。子の権現までは持たさないと。

天覚山から飯能市街を遠望
天覚山から奥多摩の山々を望む

天覚山の北側頂上直下には両峯神社跡がある。大きな岩場を背にした平地に石垣や石段が残り、往時は立派な社があったのでは、と想像させる。

なおも尾根道を進んで、ハイカーさん数組とすれ違う。「吾野の頭」のプレートのある小ピークを越え、登り返して大岩を過ぎると、木の根が張った急坂となって大高山の頂上に登り着く。御影石の立派な山名標石と、少し離れた所に若宮八幡大神の石祠がある。天覚山からちょうど1時間の行程で、特にどうということのない低山尾根歩きなのだが、結構疲れてきて、また一休み。樹林の切れ間から南面を望むことができ、なかなか山深い所に入り込んでいることがわかる。

両峯神社跡
大岩
大高山への登り
大高山頂上

大高山から木の根が張った急坂を下り、平坦な尾根を進んで小ピークを巻くと車道に出る。山と高原地図にはジョウロという謎の地名が記載されている地点だ。

巻き道
車道を横断

車道を横断して尾根道を進む。小ピークには巻き道があって、ありがたい。「前坂」の標識のある小鞍部(この辺りでは、峠を坂と呼ぶことが多いようだ)で、左に中藤・竹寺、右に吾野駅への道を分け、まっすぐ「スルギ・子の山」方面に向かう。

前坂
左山腹をトラバース

少し進んで尾根の左をトラバースし、民家の屋根を見ながらジグザグに下って車道(栃屋谷林道)に出る。ここからしばらく林道を辿る。稜線の北側には石灰採石場(吾野鉱山)があり、尾根の上まで削り取られて、北方の奥武蔵の山々が眺められる。道標に導かれて縦走路に戻る。

栃屋谷林道に出て北面の眺め
縦走路の入口

縦走路の入口には石段と石祠があり、すぐ先には地蔵尊や墓地があって、この辺りだけ人里くさい。尾根が痩せ、小さな岩場を登ると、三角点標石と「栃屋の頭」のプレートのある小ピークに登り着く。北面は切れ落ちて、梢越しに採石場や奥の山並みが眺められる。

縦走路入口の石祠
地蔵尊
痩せ尾根を登る
栃屋の頭から北側の眺め

細い尾根を辿り、「堂平山」の標識のある地点から右へ下る。アセビとシダが下生えの杉植林帯の尾根を辿り、右山腹をトラバースすると、スルギと呼ばれる地点に着く。周囲には大岩や大きな岩場が点在する。

杉とアセビ、シダの林を下る
スルギ

トラバース道から尾根に戻り、子の権現に向かって緩く登る。疲れてきて、子の権現はまだかと思いながら重い足を運ぶと、微かに鐘の音が聞こえて来て元気付けられる。

ようやく子の権現の駐車場に着くと、一気に人が増えて賑やかになる。一般参拝者やハイカーさん、サイクリストに混じって参道を歩き、二本杉に着く。数軒の売店があり、500mlペットボトル飲料(200円)を買って一気飲み。生き返る。ベンチに座って、持ってきたパンを齧って昼食とする。売店では軽食も提供しているので、それで昼食にしてもよかったな。なお、今日は子の権現の開山日だそうで、午前中は参拝客がもっと多かったと聞いた。

子の権現の参道
子の権現の鳥居

赤鳥居と黒い山門、仁王像(修復工事中)を通り、境内に入って藁葺き屋根の立派な本坊の前を右に登ると子の権現の本堂に着く。本堂は新しくて、本坊の方が風情が感じられる。足腰守護の神仏として有名な子の権現のシンボル、鉄のワラジは本堂の脇にある。末長く足腰が元気で山歩きできますように、と祈念して参拝する。

子の権現本堂
子の権現の鉄のワラジ

本坊の左の通路を通り、さらに縦走路を進む。予報通り曇って来て、樹林帯に入ると薄暗い。短い急坂を登ると岩場の上に祠が祀られた小ピーク(愛宕山と呼ぶらしい)に着く。しばらく尾根をアップダウンして、ガクッと下ると車道が通じる天目指(あまめざす)峠に着く。ここにもサイクリストが来ていて、奥武蔵はサイクリングが盛んなようである。

天目指峠の休憩舎で一休みして、この先の行程について思案。当初は伊豆ヶ岳を越えて正丸駅に下る予定で、ここまでは計画通りの時間で歩いている。日の長い季節だから時間の余裕はあるが、脚力・気力が結構限界に近い。天目指峠から伊豆ヶ岳まで標高差360m、コースタイム2時間はなかなかきつい。伊豆ヶ岳は登ったことがあるし、今回はまあいっか。という訳で日和って、ここから車道で正丸駅に下ることにする。

愛宕山
天目指峠の休憩舎

そうと決まれば後は気楽で、車道をテクテクと下るだけである。幸い、天気も持ち直して雨の心配はなさそう。爽やかな風に吹かれて歩く。車の通りも少ない。谷間の集落に降り着き、魚の多い渓流に沿って下る。峠から1時間程で高麗川を渡り、R299を西進して正丸駅に帰り着く。飯能駅から約26kmを10時間で歩いたから、先週の大滝山よりきつかった。伊豆ヶ岳まで縦走のリベンジは、気が向いたらやるかも(^^;)

県道南川上名栗線を下る
高麗川に下り着く

帰りは武甲温泉(800円)に立ち寄って汗をさっぱり流す。下道が混む時間帯なので花園ICから高速に乗って、サクッと桐生に帰った。