ククリ岩〜二子岩〜大岩

天気:
メンバー:T
行程:三段の滝登山口 7:00 …三段の滝下 7:30 …碧岩入口 7:50 …小滝 8:40 …稜線に出る 9:45 …ククリ岩(1355m) 10:10〜10:40 …二子岩東峰 11:20〜11:55 …二子岩西峰 12:05 …碧岩分岐 13:25 …大岩(1133m) 13:45〜14:00 …碧岩入口 14:50 …三段の滝登山口 15:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、緑:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

先日、大津と三ッ岩岳に登ったとき、西方に尖った頂をひときわ高く擡げるククリ岩を見て、あの山は登ってみたいな、と思った。ククリ岩について調べてみると、新ハイキングNo.662(2010年12月)にガイド記事があるほか、ネット上にも多くの山行記録がある。それらを参考にさせて頂いて山行計画を立て、GW後半の初日に出かけて来ました。

桐生を5時に車で出発。上信越道を下仁田ICで降りて南牧村を走り、三段の滝登山口の駐車場に車を置く。ここに来るのは碧岩と大岩に登ったとき以来2回目。既に県外ナンバーの車が2台あり、外で朝食を食べているハイカーさんに挨拶して、先に出発する。

三段の滝下までは遊歩道が整備されている。水道施設の下を通って、居合沢沿いの遊歩道に入る。谷間の中はまだ日が差し込まなくて薄暗く、空気がヒンヤリと冷たい。

三段の滝登山口
三段の滝への遊歩道

木橋や鉄橋で何度も沢を渡り返す。鉄梯子で小滝を越えると三段の滝が現れる。落差約50mと言われ、綺麗に三段に分かれて滑るように落ちる美瀑だ。

途中の鉄梯子
三段の滝

滝を眺めながら右の急斜面をジグザグに登って、滝の上に出る。両岸から岩壁が迫り、頭上には新緑を透かして碧岩が聳り立つ。碧岩沢出合のすぐ先が碧岩入口で、ここで登山道は居合沢から離れて左に登る。この地点には「←碧岩・大岩 二子岩→」と書かれた道標があり、今日は二子岩の方に向かうのだが、そちらに道型はあるのかないのか、かなり怪しい。前回はここまで来て、ここから先が私にとって未知の道のないルートだ。一休みしたら、さあ行ってみようか。

碧岩入口の道標
道標から下流の渓谷を振り返る

最初は岩がゴロゴロ堆積した峡谷の底を遡るが、すぐに両岸とも新緑や杉林に覆われた緩やかな斜面となり、水流に沿って断続的に踏み跡が現れる。平凡な沢だが、のんびり歩けるのはいい。川岸にはハシリドコロが多い。沢を何度も右へ左へと渡るが、登山靴を濡らすような箇所はない。

居合沢を遡行する
穏やかな渓流が続く

やがて両岸の傾斜が強まって谷が狭まり、小さなゴルジュの中に小滝がある。ごく小さい滝だが、沢に変化が出てきた。これは簡単に通過。この辺りは二子岩西峰から西に落ちる岩稜の末端に位置し、左を見上げると小岩峰とその奥に大岩峰が聳えている。小岩峰の基部には大きな岩窟があり、なかなかの奇観だ。

小滝
岩窟と岩峰を見上げる

岩峰を見上げつつ遡行すると傾斜のあるゴーロとなり、水流は伏流となって消える。岩峰から崩れた落ちた岩が堆積したものと思われ、あまり長居はしたくない区間だ。

ゴーロを越えると水流が復活し、ハシリドコロやネコノメソウが群生して咲く。水流は徐々に減じて、沢の傾斜も増す。小滝が現れ、その上でククリ岩の西面の水を集めた小沢が左から出合う。地図とGPSで現在地と地形を確認して、この二股を左に入る。

斜度のあるゴーロを登る
この二股を左へ

小沢には岩と土砂が堆積し、少々ぬかるむが問題ない。次の二股は左へ。左の尾根が低くなってきたので、左斜面に取り付いて斜めに登ると、容易に広くなだらかな尾根の上に出る。雑木が混じるカラマツ林に覆われ、まだ冬枯れで殺風景だが藪は全くない。尾根を登り、ククリ岩と二子岩を結ぶ稜線上に着く。

左斜面に取り付く
稜線に登り着く

稜線上には明瞭な踏み跡が通じ、テープ類を見かける。昔の山行記録を読むと篠竹藪が酷いとの記述を散見するが、現在は全面的に枯死したようで、藪は皆無だ。枯死の原因は何だろう。何れにしても、藪漕ぎがないのは幸いだ。

まずはククリ岩に向かう。急な稜線を登ると、左斜面にアカヤシオが群れて咲いている。今回、アカヤシオは特に期待していなかったので、これはサプライズで嬉しい。振り返るとアカヤシオ越しに二子岩が見え、良い眺めである。

夢中でアカヤシオの写真を撮っていると、すぐ下でペキペキと枯れ枝を踏みしだく音がして、黒く大きな動物が目の前の少し先を横切って行く。クマだ!私に気づいた素振りはなく(熊鈴は付けていなかった)去って行ったので、全然怖くはなかったが、ぱったり鉢合わせしたらやはりクマったことになり、怖いかも知れない。

アカヤシオ越しに二子岩を望む
クマを目撃

稜線を急登するとアカヤシオも尽き、冬枯れの雑木とカラマツに覆われた小ピークを越えて、ククリ岩への最後の登りにかかる。残置ワイヤーがあり、かつては植林が行われていたのだろう。かなり急な坂だが、落ち葉に覆われた地面は適度に柔らかく、足を置きやすい。急坂を登りきり、緩やかな稜線をひと登りしてククリ岩の頂上に着く。

ククリ岩へ急登
ククリ岩頂上

頂上には三角点標石と黄色い看板があるだけで、看板に付けられたGさん山名標の他に山名を示すものはない。かつては頂上も篠竹に囲まれていたようだが、今は笹藪もなくて、小広くスッキリしている。雑木林に囲まれて展望は乏しいが、頂上から少し南に向かうとアカヤシオの群落があり、また南側は急斜面となって切れ落ちているので、アカヤシオの梢越しに展望が得られる。アカヤシオの咲き具合は五分咲きといったところだ。

まず、南を眺めると、カラマツ林に覆われた緩やかな上信国境稜線が低く横たわる。奥の平坦なスカイラインは四方原山辺りだろうか。目を西に転じると、大上峠から余地峠にかけて上信国境稜線がググッと盛り上がり、いくつかの顕著なピークを起こす。中腹のずいぶん高い所に見える集落は、南牧村自然公園キャンプ場のようだ。稜線の向こうに目を凝らすと、彼方に北アの白い峰々が見える。

ククリ岩より四方原山を遠望
ククリ岩より上信国境稜線と
北アを遠望

ククリ岩の頂上で、のんびり30分程も展望とアカヤシオを楽しんだ。そろそろ二子岩に向かい、東峰の頂上で昼食にしよう。登ってきた稜線を戻り、二子岩との鞍部に下る。鞍部の手前は痩せて急な岩稜となり、岩稜伝いでも下れなくはないが、左に巻き道がある。岩稜から二子岩の二つの岩峰を仰ぎ、碧岩と大岩が謂わば裏側から眺められる。

二子岩西峰(左)と東峰
碧岩(左)と大岩を望む

鞍部からザレた急斜面を登って、二子岩東峰の頂上に着く。マツやツガに囲まれた小平地があり、南から東にかけての眺めが得られる。南にはククリ岩の丸い頂を仰ぎ、その中腹にはアカヤシオのピンクが点描のように広がる。ここで昼食とし、鯖味噌煮を肴にDRY ZEROを飲んだのち、カップ麺の鴨だしそばを作って食べる。

二子岩東峰頂上
東峰よりククリ岩を望む

腹を満たして英気を養ったのち、本日の核心部の二子山西峰に向かう。見上げる西峰は、先日登った大津の北西峰以上に鋭く切り立って、これ登れるの?という感じ。岩峰基部を左に回り込むとマーキングがあり、急傾斜のバンドを登る。ここはホールド、スタンスともしっかりあって問題ない。そこから右上に、岩壁に生えた立木を頼りに直上する。最後はホールドがない急斜面となるが、先達が残してくれたテープスリングを摑んで登る。岩稜に出れば傾斜も緩んで、西峰の頂上に登り着く。

西峰に向かう
基部の左からバンドを登る
ここを登って来た
二子岩西峰頂上

頂上は小広いが、陽当たりが良く、訪れる人が少ないためか、低木が茂って藪っぽい。枯れ木に「二子岩西峰」とのGさん山名標がネジ止めされている。展望は四方に開け、ククリ岩や碧岩、大岩が眺められる。また、西に少し下ると岩場の先端に出て、居合沢を覗き込む高度感と秘境感が抜群の眺めが得られる。西には上信国境稜線の広小屋山がどっしりした山容を見せる。あれも登ってみたいな。

西峰から居合沢を覗き込む
西峰から広小屋山(左)を望む

大展望を楽しんだのち、注意して西峰を下る。一応、懸垂下降の用意はしてきたが、使わずに下降できた。

さて、次の核心部は、二子岩北面の下りである。西峰と東峰の鞍部から北面を覗き込むと、樹木は生えているものの、ほとんど崖と言って良い急斜面である。ネットの情報ではルートがあるはずだが、下り口はどこだろう。

少し東峰に戻って登るとテープが巻かれた木立があり、そこから明瞭な踏み跡が急斜面を下っている。これは恐ろしく急だが歩き良い山道で、小尾根を下ったり斜面をトラバースしたりを繰り返しながら、ぐんぐん下る。要所にテープがあり、進路は分かり易い。

二子岩北面の山道に入る
急斜面を下る

ようやく傾斜が緩み、新緑の雑木林に覆われた尾根に下り着く。振り返れば木の間に二子岩を仰ぐ。ここまで来れば一安心。あとは緩やかに上下する尾根をのんびり辿る。

少し先でテープに導かれて尾根を右折。左は碧岩沢源頭のふかふかに落ち葉が積もった緩斜面となる。計画ではここから碧岩沢をまっすぐ下るが、余裕があるので、尾根通しで大岩まで行ってみよう。大岩の頂上から、今日登ったククリ岩と二子岩を眺めてみたい。

雑木林の尾根を辿る
二子岩を振り返って仰ぐ
尾根の右折地点
碧岩沢源頭と碧岩

尾根を辿ると登りとなり、実は結構足が疲れていることを自覚する。でも何とか大丈夫。碧岩沢からの一般登山道に合流すると、あとは歩いたことのある道だ。しばらく進んで左に碧岩への道を分ける。今回は碧岩はパス。

途中、カップルのハイカーさんと交差し、大岩の岩稜に取り付く。振り返ると碧岩がキリキリと尖って聳える。何度見ても、すんごい岩峰である。

碧岩分岐
碧岩を望む

大岩の頂上直下の岩稜は、スタンスとホールドがガバチョとあって楽勝だが、左側の切れ落ちた岩壁の縁を歩くところは高度感があり、滑ったら一巻の終わり。慎重に登る。

大岩を望む
大岩の頂上直下の岩稜

登り着いた大岩の頂上には、誰もいない。ここのアカヤシオは既に終盤だ。東を除く三方の眺めが開け、北にククリ岩と、黒々とした岩峰が並ぶ二子岩が眺められる。よく見ると、ククリ岩の中腹にも小さな岩峰がひと続きとなって二子岩に連なる。地質的に固い層があるのかな。興味深い。

大岩頂上
大岩よりククリ岩と二子岩を望む

さらにぐるりと見渡せば、碧岩を中心に南牧村を取り囲む山々を望み、山襞に点在する山村集落を俯瞰する。山麓を覆う鮮やかな新緑が綺麗だ。

大岩より碧岩を望む
大岩より毛無岩(中央)を望む

大展望を堪能したのち、下山にかかる。岩稜を慎重に下れば、あとは安心して歩ける一般登山道だ。碧岩沢沿いの山道を下り、碧岩入口で往路に合流。居合沢沿いの遊歩道を下る。途中で単独のハイカーさんとすれ違ったが、三段の滝を鑑賞しに行くのだろう。

碧岩沢への下り口
新緑の谷を下る
碧岩入口に戻る
三段の滝駐車場に帰着

出発から8時間半(休憩時間込み)の所要時間で、三段の滝駐車場に戻る。大岩に立ち寄るのにプラス1時間くらいか。明日は午前中に仕事があるが、沢歩きや急登、岩峰の登攀で腿が筋肉痛になりそうである。でも、それだけ充実感があった。期せずしてこの春5回連続でアカヤシオを見る山行となった。こんなにアカヤシオを見た年は初めてだ(^^)。まあ、今回で多分打ち止めだろう。帰りは例によって嘉助ロールや炭付饅頭を土産に買い、高速経由(車は多いが渋滞はなし)で帰桐した。