碧岩〜大岩
南牧村が作成して、村内の各施設・店舗で無料配布しているNTG(Nanmoku Trekking Guide)は、1:32,000地図に13の山々の登山コースを記載していて、西上州の山歩きを計画する際にとても参考になる。13の山々のうち、11には既に登ったことがあり、2つが未踏で残っている。未踏コースのひとつ、碧岩・大岩は、NTGでは次の様に紹介されている。
南牧村役場付近から西の空に槍を突き上げているように見える碧岩、その左に樹木をまとい、マッターホルンのように見える山が大岩です。一般的でないので、岩場に自信がある方向きです。
昔のガイドブック(ハイグレード・ハイキング、山と渓谷社)を読むと「碧岩の登降でザイルが欲しい」など書いてあったため、出かけるのが後回しになっていた。しかし、最近の山行記録をネットで見ると、難所にはロープが固定されていて問題なく登れるらしい。桐生山野研究会のMさんご夫妻に同行頂いて、長年の宿題を登って来ました。
Mさんご夫妻を車に乗せて桐生を出発し、北関東道、上信越道を経由して南牧村に向かう。3連休+高速1,000円のために、上信越道を走る車は渋滞一歩手前くらいに多い。
南牧村の奥へ入るに従って谷は狭く深くなり、点在する山村集落を民家の軒先を擦りそうな狭い車道で通り抜ける。今日は青空が広がる好天だが、谷間の底には陽が差し込まず、薄暗いままだ。三段の滝登山口に到着して車外に出ると空気がひんやりと冷たい。登山口にはWCと約7台分の駐車スペースがあり、既に2台の車があった。
「三段の滝遊歩道、滝まで1,050m(約30分)」という道標に従い、グラウンドの脇を通って居合沢沿いの遊歩道に入る。木道で流れを左右に渡り返しながら沢を遡る。両岸を急峻な岩壁や岩峰に囲まれた綺麗な小渓谷だ。紅葉は既に終盤だが、所々に鮮やかな赤やハッとする黄色があった。
小滝を鉄梯子で越えると三段の滝が現れる。落差50mと言われ、名の通り三段に落ちる見事な滝だ。ここまでのルートは整備された遊歩道で、問題なく歩ける。終点にはベンチもある。
三段の滝から先の道は少し険しくなる。テープに導かれて、滝の右側の斜面をジグザグに登る。途中、滑り易い岩場をロープを頼りに越える。三段の滝の上段だけで高さ20mくらいはある。立派な滝だ。滝の落ち口のすぐ上流に出て、沢を遡る。落ち葉に覆われて道型ははっきりしないが、要所にテープがある。
左から碧岩沢が小滝をかけて出合うと、そのすぐ上流に「←碧岩・大岩 二子岩→」という道標がある。二子岩へ沢沿いのルートがあるようだが、道型は不明瞭で怪しい(=面白そう)。上流にはククリ岩というピークもあり、まとめて周回したら面白そうだ。
碧岩・大岩に向かって左に進むと、小さな尾根を越えて碧岩沢に出、沢を遡る。やがて山腹を斜めに登る道となり、左手に碧岩の岩峰が現れる。
滑り易い急坂を登ると、明るい雑木林の稜線に出た。稜線上は風が強い。小さなアップダウンのある稜線を辿ると、程なく碧岩と大岩の分岐に着く。まずは難しい方と思われる碧岩を往復することにする。
雑木林の尾根を下って、2、3の岩峰を巻き、碧岩への登りに取り付く。最初の岩場は無問題。次の岩場が件の難所だ。垂直の壁に複数のロープが下がっていて一見難しそうだが、意外とスタンスがあり、腕力に頼ることなく登れる。あとは急斜面を登り詰めて、碧岩の頂上に着いた。
頂上からは、東を除く広角度で西上州の展望がひらける。北西には、眼下に熊倉の集落が山麓の斜面に張り付く様に固まっているのが見え、群馬・長野国境稜線の山々を遠望する。北には兜岩山から行塚山、毛無岩にかけてギザギザの稜線が続き、立岩の大岩壁がひときわ白く光っている。西には居合沢の深い渓谷を隔てて、タカノス岩の尖峰が側に控えている。南にはククリ岩と二子岩が見える。二子岩は一目でそれと分かるピークで目を惹くが、ククリ岩は一見普通の山容のピークだ。
展望を楽しんだのち、碧岩を下って碧岩分岐に戻り、大岩へ向かう。途中で「砥沢」への下降路を右に分ける。小さな岩場を登ると小ピークに立ち、振り返ると碧岩の尖峰がキリキリと聳えている。この尖り具合は西上州随一だな。
行く手には大岩へゴツゴツした岩稜が続いている。次の小ピークを越えると大岩への最後の登りとなり、岩場が続く。左側はすっぱりと切れ落ちて高度感があるが、ま、先月登った戸隠山の蟻の塔渡りに較べれば楽勝、爽快だ。あっけなく頂上に着いた。
大岩の頂上で昼食とする。岩壁を吹き上がる風は頭上を越えてしまうため、腰を下ろすと風は弱く、日溜まりでポカポカと暖かい。例によって私は鍋焼きうどんを作って食べる。Mさんから稲荷やおにぎり、ゆで卵などを頂き、デザートにリンゴを食べる。帰りに岩場の下りが残っているので、缶ビールは今回は無しだが、満腹になって満足。
下山は往路を戻る。稜線から碧岩沢に下ると日陰に入って、まだ午後一時を回ったばかりだというのに、空気が冷え冷えとしている。深く積もった落ち葉を蹴散らしながら下る。三段の滝の下に着けば、あとは遊歩道を辿るだけだ。ベンチで最後のリンゴを食べて喉を潤したのち、日暮れの様に薄暗い渓谷を下って登山口に戻った。
帰りは、菓子処信濃屋嘉助でお菓子(嘉助ロールうまーい!)、オアシス南牧で地元産ブルーベリージャムと刺身コンニャクを買う。それから、かぶら健康センターかのさとに立ち寄って、お風呂で冷えた身体をゆっくり暖めて、桐生に帰った。